常人には理解できないハンマー
お楽しみください!次回更新は
1月9日か16日 0時更新予定です!
16日なのは9日に更新できない事情があった場合の為です。なかったら9日に更新します!
また、時間があったら1月4日~8日に記念話を書いて掲載したいと思います。
「【鬼金砕棒】…よっと!」
「「「ぅわぁ…」」」
少ない時間で準備を済ませた3人が、ティカルとの戦闘訓練を始めると、ティカルは最初にスキル名を言い、右の掌から棘が付いた金棒を上に伸ばす様に出して行き、全て出した後に持ち手部分を両手でしっかり握って先端を地面に叩きつけると、重い衝突音と共に半径50㎝程のクレーターを作った。
「無理無理!あんな物で殴られたら死んじゃう!」
「当たらなきゃどうという事は無いから問題ないよ!」
「それは避けれる人が言うセリフですー!」
「大丈夫!黄色のCボタン倒したらカキーン!してうわぁぁぁ…したらKO!するだけだから!」
「「「意味が分からない!!」」」
「実際に見せてあげるから誰か僕の前に立ってくれる?」
金棒で野球のスイングをしながらティカルが言うと、残像が見える程速いスイングを見た3人は、顔を青くさせながら首を横に振って拒否した。
「「「遠慮します…」」」
「大丈夫痛くしないから!」
「「「いやです!」」」
「先っちょ!先っちょだけ!」
「「「いやぁぁぁ!!」」」
ティカルがゆっくりと迫りながら言うと、身の危険を感じた3人は悲鳴を上げながら逃げ出した。
「ん?追いかけっこするの?じゃあ絶対に捕まえるよ!」
3人がそれぞれ別方向で逃げ出すと、ティカルは肩に金棒を担ぎ、幼い少年の様な笑顔をしながら追いかけ始めた。
「あの金棒は初めて見るけど…新しいスキルか?」
「鉱山に行く道中でオーガ2体とエンカウントしたのですけど、その内の1体をティカルさんがモグモグしたら獲得出来たみたいです」
「…なるほどなぁ」
ソウルが、3人を追いかけるティカルを見ながら仲間に尋ねると、隣にいたマナリアが獲得した時の事を話し、ソウルは納得して頷いた。
「…そう言えばソウル?」
ソウル達と一緒にティカル達を見ていたアップルだったが、ふとティカルの持つ金棒に視線を向けると、水底で沈殿していた物が、突然水面に向かって浮かび上がっていく様にとある事を思い出し、ソウルに視線を向けた。
「ん?」
「私のハンマーはどうなったの?」
「…」
アップルの質問に、ソウルは一滴の冷や汗を流しながら視線を明後日の方向に向けた。
「私も今まで忘れてたんだけどティカルの金棒見たら思い出したわ」
「い・・・」
「い?」
「い…今鋭意構想中だ…」
「本当に?」
アップルは、訝しみながら尋ねると、ソウルは一時しのぎ的なあやふやな答えを言った。
「あの時「凄いのを作る」って言ってましたから、きっと常人には理解できない位の凄いハンマーなんですよね!?」
「(何故ハードルを上げたマナリアぁ…)」
「常人には理解できない位…それは楽しみね!」
マナリアの発言で、ハードルが宇宙に届きそうな程あがってしまった事に、ソウルは慌てて否定した。
「流石にそれは無理だ」
「え!?出来ないのですか?でもソウルさんなら…」
「そうね。ソウルなら…」
「そんなどこぞの自衛官なら…みたいに言わないでくれ。常人には理解できないハンマーなんて作れる訳ねぇだろ!」
「ソウル?あんたあの娘らに「最初から無理だと出来ない事だと自分自身で」ってうんたらかんたら言ったのに自分はやらないのはおかしいんじゃないさね?」
「いや、流石に…ぐぬぬ…」
アンジェラの指摘に、ソウルは何も言い返す事が出来ず嫌そうな顔をした後、溜息をを吐いた。
「はぁ…分かった。一応やってみる…やってはみるが…予想してた物より以下だったとしてもガッカリしないでくれよ?」
「楽しみに待ってるわ」
「そうか…なら細部まで拘って作ってやろう!行くぞアップル!オカーネンの貯蔵は十分か?」
「…このぐらいなら出せるわ」
ソウルがやけっぱちになって聞くと、アップルは所持オカーネンが表示されたウィンドウをソウルに見せた。
「…おい…なんでこんなに持ってるんだ?」
「使うとしても家具と食事だけだったからかしら??…あ、裏カジノのファイトマネーが結構いい額だったのもあるわね」
「…マジか。これなら問題なく作れるな」
「じゃあ前金として1億渡しておくわ。足りなかったら追加で渡すから言ってね?」
「わ…分かった。(1億をポンっと出すってアップルの金銭感覚はどうなってるんだ!?ブルジョア?ブルジョアなのか!?)」
トレード機能で1億オカーネンを渡されたソウルは、高額のオカーネンを何の迷いも無く渡してきたアップルの金銭感覚に驚愕した。
「マギア、ちょっと競売所行ってくるからここは頼む!」
「了解です。お任せください」
「あたしもそろそろ戻るとするさね…あ、その前にソウル?1ついいかい?」
「何でしょうか?」
「その右手から出る~え~っと…ブルーローズだったかい?それを少し分けては貰えないさね?」
「いいですよ」
「ありがとうさね。ちょっと気になったから研究してみるさね」
「研究結果は教えてもらえますか?」
「勿論さね」
「ありがとうございます」
ソウルは、アイテム欄の中にあった500ml入る空き瓶を取り出し、その瓶の中にブルーローズを入れてコルク栓で閉じた後、アンジェラに渡した。
「ふむ…改めて見ても良く分からない物さねぇ…おっと!こうして見てても仕方ないから戻るよ」
上機嫌で錬金術ギルドに帰って行くアンジェラを見送った後、ソウルは競売所に向かって行った。
-アークライト・競売所-
「う~ん…どれにしようか…」
「ん?あ!ソウルじゃん!」
ソウルが、競売所でハンマーの素材を何にしようかと悩んでいると、突然名を呼ばれ、声がした方に顔を向けると、そこにユメミルクが立っていた。
「よう、ユメミルク」
「奇遇だな!こんな所で何しとん?」
「実はな…」
ユメミルクに、アップルのハンマーの事情を説明すると、その事情を聞いたユメミルクは豪快に笑い始めた。
「ガハハ!まぁじかよ!常人には理解できない位のハンマーってなんだ?」
「俺も分からねぇよ…」
ソウルが、どうしようもないと言う様に手を上げるジェスチャーをすると、ユメミルクは顎を指先で触りながら口を開いた。
「ならうちの生産者と相談してみるか?さっき街の外にテント張ったからくるといいぞ!」
「ありがたいがいいのか?他に予定があるんじゃ?」
「ここにはプレイヤー勧誘に来ただけだから問題ないぞ!」
「そうか…じゃあお邪魔しようかな」
「おう!連絡しとくわ!テントがある場所は東門を出たすぐの所にあるから、付いたら副団長のシヴァ子と話してくれ」
「分かった。ありがとう」
「おう!じゃあまたな!」
ユメミルクが、軽く手を上げるジェスチャーをして離れて行くと、ソウルは競売所のウィンドウを閉じ、東門の先にあるヴァルハラのテントに向かって行った。
-アークライト・東門・ヴァルハラのテント-
「こんにちは~。シヴァ子さんいますか?」
「あら?ソウルさん、こんにちは。副団長に用ですか?今呼んできますね」
「お願いします」
ソウルはアークライトの東門を出て、ヴァルハラのテントにたどり着くと、すぐ近くにいた女性プレイヤーにシヴァ子を呼びに行って貰い、その場で少し待っていると、奥のテントから出てきたシヴァ子がこちらに向かって走ってきた。
「こんにちはソウルさん。団長からお話は聞いてますので案内します。私の後について来てください」
「分かりました。ありがとうございます」
シヴァ子に頷いて付いて行くと、リズム良く金属を叩く音が聞こえるテント前に案内された。
「このテントにドクダミンという名のドワーフみたいな姿をしているプレイヤーにお声がけください。彼は鈍器系を主に扱っているのでお力になれると思います」
「分かりました。ありがとうございます」
「では、失礼しますね」
シヴァ子に軽く頭を下げて感謝した後、テントの中に入って行くと、様々な生産職のプレイヤーが忙しなく何かを作っている光景が目に入ってきた。ソウルは周りを見渡して、目当てのプレイヤーが製図台の前で首を傾げているのを見つけると、そのプレイヤーに近づいて行った。
「すみません。ドクダミンさんですか?」
「んあ?なんだ?…あれ?あんたは確か~…」
「ソウルです。初めましてですよね?」
「ああ、初めましてだな。それで~俺になんか用かい?」
「とある特徴を持つハンマーを作らないといけなくなり悩んでいたんですが、偶然ユメミルクと出会い悩みを話してみると、メンバーに相談してみるといいと言われ、シヴァ子さんにこのテントまで案内された後、鈍器系を扱うドクダミンさんを紹介されました」
「あ~…副団長がなんか言ってたけどこの事だったか…上の空でほぼ聞いてなかった…」
「そうでしたか…それで~…相談よろしいでしょうか?」
「あ…ああ。いいとも。で~…さっきとある特徴のハンマーって言ってたけど詳しく頼む」
「常人には理解できない位のハンマー…です」
「常人で…は?…え~あ~っと聞き間違えたかな?すまないがもう一度頼む」
「常人には理解できない位のハンマーです」
「…」
ドクダミンは、聞き間違っていなかった事にどうしていいか分からず、しばらく口を噤んだ。
「それは~…その~…どういう事だばい?」
「無理難題ですよね…俺もそう思います。俺も無理だって言ったのですが、普段からお世話になっている方から色々言われてしまい断れませんでした」
「あ~…俺もリアルで似た様な目に遭った事あるわ…」
ソウルの言葉を聞いたドクダミンは、上に目を向けて思い出しながらしみじみと言うと、ソウルは申し訳なさそうに尋ねた。
「それで~どうでしょうか?」
「とりあえず、常人には理解できないって事だけど、それは意外性を持たせればいいんじゃないかな?ハンマーになんかのギミックを仕込むとか?それか、この世界特有の謎理論で動いている物を素材として使うとか?」
「意外性…そう聞くと行けそうですね」
「うん。とりあえず「なんだこれ?」と思うものを考えてみようか?」
「そうですね」
ソウルはドクダミンの言葉に頷き、意外と思われそうな物を考えて行った。そして、しばらく2人で話し合っていると、相手が出したアイディアに別なアイディアが閃くという事があり、その事に楽しさを感じた2人は、テンションが徐々に上がって行くのを感じながら、時間を忘れて話し続けていくと、1つの形が見えてきた。
「そのアイディアなら釘抜きハンマーみたいに別の武器を付けてもいいと思う」
「いいですね!あ、なら一層のこと付けれるだけ付けちゃいますか?」
「いいね!それならなんだこれ?って思えるな!そうしよう!」
「じゃあここまでアイディアを一つにした物を図面に起こしてみましょう」
「テンプレートは任せろー」
ソウルとドクダミンは、ハイテンションで協力し合いながら、心の赴くままに線を引いて行き、1つの武器の図を書き上げた。
アップルの所持オカーネンは3億くらい持ってます。
もう年越し…1年が過ぎるのが早いですね。クーガーのニキも満足な速さですよ。
今年はこれで終わりですが来年もお読みいただけたら幸いです!
それでは皆様いいお年を!
モチベ維持に評価お願いします!
「ブックマークに追加する」ボタン登録もよろしくね!
いいね登録!よろしくお願いいたします!
誤字脱字報告 アザマス!




