(超)強化訓練 2
完成しました!お楽しみください!
次回更新は12月19日 0時更新です!
「ん~?」
「ここ!…あれぇ?」
「よっと!」
リリアナとクリスの双子は、10m先にある的を狙って攻撃を繰り出すが、当たる気配すらない事に顔を顰め、横にいるアイシャが9割の確率で当てている姿を見て、更に表情を曇らせた。
「ねー!全然当たらないんだけど!どうすればいいの?」
クリスが的を見ながら、後ろで釜の中をかき混ぜているソウルに尋ねると、ソウルはクリスをチラ見して質問に答えた。
「あん?当たるまでやり続けろ」
「って言われてもさぁ…」
「ちゃんと考えてやってるか?」
「考えるって何?ただ引き金を引いて弾を出せばいいんじゃないの?」
クリスの言葉に、ソウルは「何言ってんだこいつ?」と言いたそうな顔をしながら、クリスに視線を向けた。
「銃を撃つ姿勢、銃の握り方、手のブレ、反動、風向き、対象の動き…色々考えてやらないと1~2mの距離で撃っても当たらないぞ?」
「え!?そんなに!?…う~ん…銃使うの辞めようかな…」
クリスが、右手で持っているフリントロックピストルを見ながら呟くと、錬金釜で作っていた物を完成させたソウルが近づいてきた。
「別の武器に持ち替えるのも一つの手だが~…それは少し勿体ないな」
「う~ん…でも、撃つ度に言われた事を考えてたら大変だし…」
「そうだな。正直言ってめんどくさい。だが、それらの事を簡単にする方法があるとしたらどうだ?」
「そんな方法あるの?」
首を傾げるクリスに、ソウルは頷いた。
「線と四角の枠をイメージすればいい」
「線と四角の枠?」
「実際見せた方が良いな。マギア、銃口から線を出してその先に四角い枠を出してくれ」
「了解です」
ソウルは、腰のホルスターから茶色のリボルバーを抜いて的に向けると、銃口から白い線が勢いよく伸び出て、その線が的に当たると四角い枠が現れた。
「あー…線だと見ずらいか?マギア、線を破線に出来るか?」
「可能です。変更しますか?」
「頼む」
「了解です」
マギアに変更を指示すると、ソウルの銃口から伸び出ている白い線が、一定間隔の隙間がある線に変わって行った。
「これが線と四角の枠だ。銃口から伸び出る線は弾道で、四角の枠内の何処かに当たると思えばいい」
ソウルは、線と四角の枠の説明を終えた後、リボルバーの引き金を6回連続で引くと、銃口から放たれた6発の弾頭は全て的のほぼ中心に当たった。
「それにこの線と四角の枠は銃に限らず他の投射物にも応用できるから、このイメージをしっかり覚えてくれ」
「おー!なるほど!」
「なるほど。線と四角の枠をイメージですね。じゃあ私の場合なら…」
リリアナは、頭の中で計算した事を口から零ながら、杖の先端を近くにあった小石に向けると、小石がふわりと浮かび上がり杖の先端に追従する様に動き出した。そして、野球バットを振る動きで杖の先端を的に向けると、追従していた小石が勢い良く飛んで行き、的の端近くの位置に当たった。
「あ…当たった!」
「やったねリリちゃん!」
「当たる様になったなら、次は四角の枠を小さくして行って精度を高める。そして9割当たる様になったら今度は不規則に動く的で9割だ」
「きゅ…9割!?出来るかな?」
「出来なかったら死ぬだけだからやるしかないんだよ。死ぬ気でやれ」
「「ひぇぇ…」」
「マギア、アイシャさんの的を不規則に動く的に変更だ」
「了解しました」
「不規則に動く的に9割かぁ…頑張らないと!」
アイシャは、動き出した的を見ながら、フンスと気合を入れ直した。
-2時間後-
「ん~?あれ~?おっかしいなぁ…」
「どうしたクリス?」
「なんか急に当たらなくなっちゃった…」
「…少し銃を貸してみろ」
クリスは、線と四角の枠を意識しながら的当てを続けて行き、ようやく中心近くに当たるようになったが、数分前から一切当たらなくなってしまった事に首を傾けると、ソウルが銃を渡す様に言って来たのでので、素直に銃を渡した。
「…」
クリスの銃を受け取ったソウルは、無言で隅々まで調べた後、弾を装填して的の中心を狙いながら引き金を引くと、放たれた弾丸は的に当たらず、的の後ろにある流れ弾を防ぐ為に張られた障壁に当たった。
「これは銃が歪んでしまっているな」
「え?!」
「それにこの銃は寿命まじかだ」
「そんな!?私のブラックフェンリルが寿命!?」
「ああ、だから新しい銃にした方が良いんだが…当てはあるか?」
「うちめっちゃ貧乏だからない!」
「クーちゃん…そんなにはっきり言わないで…恥ずかしい…」
「事実じゃん!」
「う…うん、そうなんだけどそんな大声で言っちゃダメ…」
「別にいいじゃん!同情したら飯をくれ!って大声で言って行こうよ!」
「…止めなさい。…いいわね?」
「あ…ハイ…」
リリアナが、ふざけるクリスの頭を両手で挟む様に掴んだ後、顔を近づけながら嗜めると、クリスは顔を青筋を立てながら反省した。
「ん~…新しい武器だけじゃなく防具とかの装備品も必要か…マギア?出来物と作り物ならどっちが安く上がる?」
「マスター、その質問はアイテムLvによって変わるのでもう少し詳しくお願いします」
「あ~…じゃあ最上の物で頼む」
「その場合は買った方が安く上がりますが…現在のマスターが所持しているオカーネンでは購入できません」
「…マジか!ちなみにどの位だ?」
「こちらが詳細です」
マギアが、ソウルの前にウィンドウを開いて情報を渡すと、一覧表示された装備品の値段と性能を見て目玉が飛び出そうな程驚いた。
「頭だけで200億以上だと!?しかも俺が装備している物より強いし!」
「はい。最上の物と仰られたのでこの世界で一番強い装備品を提示しました」
「やめやめ!俺達には無縁な物だ。もっと現実的で手ごろな物を頼む」
「では、こちらをどうぞ」
「…うん。いいじゃないか。こういうのでいいんだよ。こういうので」
ウィンドウには、値段もそれほど高くなく性能も悪くない物が一覧表示されて行くと、ソウルは下にスクロールしながら頷いた。
「ちょっと買って来るから戻ってくる間2人はそのまま続けてクリスは走ってろ」
「はーい」
「サボったらPバスか筋肉破壊運動刑だからな?まぁアンジェラさんがいるから無いとは思うが…」
「ぷら…?よく分からないけど分かりました」
「じゃあ行ってくる」
ソウルとマギアは、3人をその場に残してアークライトの競売所に向かって行くと、ソウル達の姿が見えなくなった事を確認したクリスが、その場に座って休み始めた。
「…ふぅ。一息一息っと~」
「早速さね?はぁ…クリスあんたって子は…」
「だってここまで休憩なしだよ?流石に疲れたよ…」
「的当てしてただけなのに何が疲れたさね?ソウルにお仕置きされてもあたしゃ助けないよ?」
「大丈夫、大丈夫。ばれないって~」
「駄目だよクーちゃん。ちゃんとやろうよ…」
「そうだよ、クリスちゃん。ちゃんとやってないと怒られちゃうよ?」
「あの人に千里眼なんて無いんだから大丈夫だって。ちょっとサボってもバレないから安心だよ」
アイシャとリリアナは、真面目にやるように促すが、クリスは二人の言葉に聞く耳を持たなかった。
「はぁ~疲れたぁ~」
クリスは体を伸ばした後、大の字で地面に寝転び、青い空を見つめながら深呼吸した。
「あ゛ぁ~…天気も良くて風も気持ちいいからこのまま寝れそう…」
「…ならそのまま寝てろ」
「え?」
突然男性の声がした事に驚いたクリスは、声がした方向に視線を向けると、鬼の顔したソウルが立っていた。
「あ゛!やば!にげ!」
「逃がさん!」
ソウルは、逃げ出したクリスを吸い込んだ様に両手で掴み、クリスの体を両肩に担いでエアリアルを使いながら高く跳躍した後、そのまま重力に従って落下して行き、着地と同時にバックブリーカーの様な姿勢を取った。
「ごふぉ…」
「お見事な模倣技です!マスター。修正案件の投げ間合いで掴んだのは台パン不可避でしたよ!」
「ふぅぅぅぅぅ…」
ソウルは、担いでいたクリスを投げ捨てた後、口から蒸気の様な白い息を吐いて3人を睨んだ。
「俺は間違っていた…最初だから丁寧に説明して簡単な訓練から始めようと思ってたけど、間違いだった!!もういい!もうわかった!お前らがそういう態度でいるなら難易度MUST DIEに変更してやる!マギア!的を消してフィールドを広げろ!」
「了解です」
ソウルがマギアに指示すると、半透明の的が全て消え去り、訓練フィールドと外を隔てていた障壁が倍に広がって行った。
「これから貴様らには俺と殺し合いをしてもらう…」
「「「…え?」」」
「殺し合いと言っても死にはしないから安心しろ…ただ死ぬほど痛いがな」
「ま…待ってください!ソウルさん!?殺し合いなんて嫌です!」
「拒否は認めない」
「このまま重りを付けた状態でですか?」
「んなもん当たり前だ!馬鹿が!寝ぼけてんのか?それとも考える知能が足らない阿呆か?」
「あの…私の武器は?」
「後で仲間が持って来る…が無いなら無いで工夫しろ」
ソウルに殺し合いすると言われて、アイシャは冷や汗を流しながら拒否したが認められず、リリアナの質問には罵倒の言葉が返って来ると、気分が落ち込んでがっくりと肩を落とした。そして、自分だけ武器が無いクリスはどうすればいいのかと尋ねたが、無いなら工夫しろと言われてしまい、どうするべきか分からずパニック状態に陥った。
「最後に言っておく!俺は仲間の中で一番下の強さだ…最弱と言っていい。…だが、その最弱すら超えられなかったら…俺はお前たちを撃ち殺す!速やかに死ね!これは何かの比喩や冗談の類ではないぞ!」
吠える様に言ったソウルは、腰のホルスターから赤色と緑色のリボルバーを引き抜き、親指で撃鉄を起こした。
「それが嫌だと、まだ生きていたいと願うのなら…死ぬ気で掛かって来い!!」
ソウルは、今だ如何するべきか分からず、オドオドと迷っている3人に銃口を向けると、躊躇する事なく引き金を引いた。
破線は、ミシン目や鎖線とも呼ばれています。
ソウル達がすぐ戻って来れたのは、その道中で買い出しに来ていたティカルとマナリアに出会い、買い物を頼めたからです。
ソウル、キレる!果たして3人の運命は如何に!
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