ガッカリの宝箱と金銀財宝の山
完成しました!お楽しみください!
次回更新は9月5日 0時更新です!
「(ふむ…特に傷もないし店売りだな)」
盗賊が物置としていた場所で、金目の物が無いか探していたソウルは、金で装飾された杯を見つけて傷などが無いか確認し、アイテム欄の中に入れた後、他に何かないか探し始めた。
「おや?これは…」
ソウルは、まとめる様に積み置かれた物の中に、錠前が付けられた如何にもな宝箱を見つけると、期待感を膨らませながら、右人差し指からブルーローズを伸ばして鍵穴に入れ、右手を捻って開錠した。
「(罠の類は無いようだな…)」
錠前を外し、ほんの少しだけ宝箱を開けて中を確認すると、罠の仕掛けなどは見えなかったので、宝箱を全開にして、中に入っている物を確認した。
「おお!」
宝箱の中には、金銀財宝と言える程に金貨や宝石で装飾された装身具や短剣などが、大量に入っていた。
「これは何処国の金貨だ?…いや、昔使われていた金貨という線もあるか!結構持ってるじゃ…ん?」
ソウルは、宝箱の中に入っていた金貨を1枚手に持ってみると、妙に柔らかく、重力に従って降り曲がった事に、目を大きくさせて驚いた。
「これ…金貨チョコレートじゃねぇか!ちくしょう!!期待させやがって!何でこんなにクオリティ高いんだよ!ふざけんな!」
ソウルは、金貨が偽物だった事に憤慨し、地面に金貨チョコレートを叩きつけた後、宝箱の中に入っている物をよく確認してみると、宝石で装飾された装身具は全て飴細工で出来ていて、豪華に装飾された短剣は、様々な材料で作られたお菓子だった。
「何だよこれ!何でこんなにクオリティ高いんだよ!逆にすげぇよ!宝箱の中もなんか微妙にひんやりしてるしさ!消費期限とか分かってたら美味しく食べたかったよ!」
ソウルは、ひとしきり文句を垂れた後に深いため息を吐き、宝箱を閉じて錠前を付け直し、元の状態に戻した。
「くそ…罠に掛かって無いのに罠に掛けられた気分だ…」
気分が落ち込んだソウルは、部屋を見回して、他に調べる所は無いと感じた後、盗賊の頭がいた部屋に向かって行った。
-ネーバーク王国・盗賊アジト・頭の部屋-
「うう…」
「ふんふふ~ん♪」
盗賊の頭の部屋にやって来たソウルは、地面に転がっている拘束された盗賊の頭を無視しながら、鼻歌を歌い部屋の中を物色した。
「なぁ?これだけしかないのか?もっとあんだろ?ジャンプしてみろよ」
「…」
「おーおー睨むのだけは一人前だな!」
盗賊の頭を揶揄う様にしながら、お宝を置いてある場所を尋ねると、盗賊の頭は両足の痛みに耐えながらソウルを睨んだ。
「ん?あ、ソウル!ここに居たんだ?生きてた盗賊は大体外に出したよ」
「じゃあこいつが最後だな」
「おっけー。持っていくよ」
「それはちょっと待ってくれ」
「ん?なんで?」
「他の部屋は粗方探したし、この部屋を調べ終えたら俺も入り口に戻るから少し手伝ってくれ」
「あいよ~」
ティカルは頷き、ソウルと一緒に部屋の中を探し始めた。
「あれ?」
「どうした?」
「なんかここ…違和感を感じる」
ティカルが、壁に飾られていた熊の毛皮を見て、訝しんだ。
「どれどれ?………お?」
ソウルが、クマの毛皮を調べてみると、頭部に何かの仕掛けがあるのを見つけ、実際に仕掛けを動かしてみると、壁が奥に開いて行った。
「隠し扉とは…恐れ入った」
「何があるかな?」
「おい!そこの入るな!」
慌てた盗賊の頭が、ソウル達が奥に行こうとするのを止めると、ソウル達はその姿を見てニヤリと笑った。
「その慌てよう…何かあるね」
「行ってみようか」
ソウルの言葉に、ティカルは頷いて奥へと入って行くと、盗賊の頭は呪いの言葉を言う様な悔しみの声を上げた。
-ネーバーク王国・盗賊アジト・隠し扉-
「お?お!おー!」
「こりゃあすげぇな!」
ソウル達が、隠し扉から奥へ進んで行くと、金銀財宝が山の様にあるのを見つけ、二人は歓喜の声を上げた。
「やったね!ソウル!活動資金が増えるよ!」
「見つけたのは嬉しいけどその言い方は止めろ」
ティカルにツッコミを入れたソウルは、何気なし近くにあった宝石箱を手に取り開けてみた。
「ん?鍵か?」
「鍵だね?」
宝石箱を開けて中を見てみると、四角形の金属棒を繋ぎ合わせた様な形の鍵が入っていた。
「何処のだ?」
「さぁ?」
「…まぁいいか。とりあえず金銀財宝は全部回収しよう」
「おっけー!」
ソウルとティカルは、山の様にある金銀財宝をアイテム欄の中に入れて行った。そして、全て回収し終えた後は、部屋の端にあった梯子の先が何処に繋がっているのかを確認し、盗賊の頭の部屋へと戻り、二人で盗賊の頭を入り口まで引きずっていた。
-ネーバーク王国・盗賊アジト・入口-
「マギア!こいつに止血だけ頼む」
「了解しました」
「お帰りソウル。これで全員かしら?」
「ああ、これで全員だ」
「お宝はありましたか?」
「あった!これなら結構いいユニオンハウスが建てられると思う」
「あら?いいわね~庭にプールとかも行けちゃうかしら?」
「行けるけど…必要か?」
「必要よ!」
「…そうか」
ソウルは、プールの必要性に疑問を感じたが、アップルがはっきりと必要だと言うと、そうなんだと思い納得した後、騎士達に視線を向けた。
「騎士の皆さん協力ありがとうございます。そろそろ戻ろうと思うのですが、どうでしょうか?」
「こちらは問題ないです」
「では、行きましょう」
「分かりました。…おら!いくぞお前ら!早く立て!ぶっ殺すぞ!」
「逃げたら斬り捨てるからな!」
「いや、ぜひ逃げてくれ!そうすれば斬り殺せるからな!フハハハ!」
「…やだもうこの騎士団…野蛮過ぎる」
3人の騎士達は、それぞれ盗賊に向かって煽る様に言い、1人だけ嘆きの言葉を呟いて移動を開始し、ソウル達も一緒に襲撃地点へと戻って行った。
-ネーバーク王国・ポポクロの森・襲撃地点-
「盗賊全て檻馬車に収容しました!」
「ご苦労」
襲撃地点に戻った後、檻馬車に盗賊を収容し、部下の一人がダミアンに報告すると、ダミアンはソウルに視線を向けた。
「ソウル殿。盗賊は全て檻馬車に入れたので、いつでも出発できますよ」
「分かりました。それでは行きましょう」
「了解した」
ソウルの了解を得たダミアンは、全体に向かって大声を発した。
「これより王都に向かって出発する!全員最後まで気を抜くなよ!では行動開始!」
ダミアンが言った行動開始という言葉を、部下達も復唱した後、全体が王都に向かって動き出して行った。
「《こっちは何も無かったワン》」
「暇すぎて鳥の巣にいた雛たちを観察してたわよう!」
「2た…2匹ともおつかれさん」
騎士団が王都に向かって進み始めると、ソウル達はマウントに乗り、最後尾について行った。その移動中、ソウルの前に座らせた銀牙とティーから、ソウル達がアジトに行っている間の事を報告してくると、ソウルは労いの言葉を掛けながら頭を撫でた。
「《それで?この女の人は誰だワン?》」
銀河は、ソウルの体を器用に登り、鞍の後ろに積載固定された、担架で眠っている女性を見ながら聞いて来た。
「被害者だ。かなり酷い事されたと思うから優しくな」
「《分かったわん》」
「やさしーんするのよう!」
「…やさしーんで思い出したけど…」
ティーの言葉を聞いて、ティカルが何かを思い出して話しかけて来た。そして、暫くその話をしながら進んでいると、前からダミアンを先頭にした数人の騎士達が、こちらに向かって駆けてきた。
「ソウル殿!」
「どうしました?何かありましたか?」
「いえ、問題は起きておりませんが、王都から応援が来るそうなのでこの場から離脱して貰っても構いませんと伝えに来ました」
突然そんな事を言って来たダミアンが理解できず、ソウルは眉を寄せながら表情を観察してみると、ダミアンの表情が申し訳ないと言いたそうな表情をしていた事に気が付き、内心で予想したあと口にしてみた。
「…もしかして突然ヘリで乗り付けた事に怒った面倒くさい上の人がこっちに向かって来ていますか?」
「な!ダミアン様の表情だけで全部言い当てるとは!?」
「予言者か!?」
「いや、見た目的に東方の方っぽいから星詠みと言う奴じゃないか?」
「星詠みのソウル…さん…ゴクリンコ…」
ソウルが言い当てた事に、ダミアン以外の騎士達が驚愕した声を上げた。
「おい!黙れ!…えーっとまぁそう言う事です…申し訳ない…」
「分かりました。そういう事なら離れますね。ではこちらの女性をお任せしてもいいですか?」
「もちろんです。おい」
「は!…こちらに」
ソウルは、担架に乗せていた女性を、ダミアンに指示された騎士に渡した。
「では、ソウル殿こちらをお持ちください」
引き渡しが終わった後、ダミアンが一枚の木札をソウルに渡してきた。
「これは?」
「王城への入場許可証です。4日か5日後に来ていただけたら今回の報酬の全てを払いますので忘れずに来てください」
「分かりました」
「では、失礼する。この度は本当に助かりました」
「はい、失礼します」
ダミアン達とソウル達は、軽い会釈をして別れた後、互いにマウントの頭を別方向に向けた。
「さて、俺達はユニオンハウスを立てに行きますか」
「お?いよいよだね!」
「あの~…ソウルさん?」
ティカルの期待した言葉にソウルは頷いたが、マナリアが戦々恐々とした声で話しかけてきた。
「アイテム欄に入った首は…もしかしてこのままですか?」
「…ウォンデットギルドに事情を話して先に渡しておくか?」
「ぜひ!そうしましょう!」
「私もそれでいいと思うわ」
「ん~僕はそのま…いや行こう!すぐ行こう!」
マナリアの、必死な視線が痛く強く感じたティカルは、王都に行く事に賛同した。
「じゃあ王都に行って首を渡した後建設場所に向かおうか」
「行きましょう!行きましょう!すぐ行きましょう!」
ソウルの言葉に頷いたマナリアは、誰よりも早く動き、王都へと飛翔した。ソウル達も、その後を追う様に王都へ向かって行った。
金銀財宝だと思った?残念!お菓子宝箱でした!
お菓子箱の中がひんやりしていたのは、保冷の魔法が掛かっている為です。ですが、一度箱を開けてしまうと効果が弱くなってしまいますので、開封後はお早めにお召し上がりください。
Q、担架は何処から出てきたの?
A、ソウルが女性を抱えて襲撃地点まで戻る→マウントを召喚時、マギアが気を利かせて積載場所に担架を固定した状態でジャバワークを展開→担架に女性を乗せて出発した。という事です。最初ソウルの背中に括り付けようと思いましたが、酷い事された女性にそれは酷じゃないかと思い変更しました。
捕まえた盗賊や殺してアイテム欄に入った「賞金首の討伐証」(首)は、ウォンデットギルドで換金できます。
ウォンデットギルドは、PKをしたプレイヤーや各地で悪さをした住民が賞金首として手配や賞金の支払い等をする組織です。行方不明者の人探しも一応扱っています。
簡単に言えば冒険者ギルドは魔物関係、ウォンデットギルドは人関係ですね。
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