試験 2
お楽しみください!
次回更新は8月1日 0時です!
「どうぞソウルさん」
「ありがとうございます」
アイシャは、奥の部屋から持ってきた素材を、釜の近くにあるテーブルの上に置くと、ソウルがアイシャに向かって感謝の言葉を述べた。
「出来たら私に言うさね」
「分かりました」
アンジェラに頷いて答えた後、ソウルは本に書いてある暴虐の薬のレシピを読んで行った。
「(えっと何々?…まず最初に提灯赤茸とバリンの実を入れてかき混ぜた後、灰色の煙が出た時にオレンタンの血を入れて安定するまでかき混ぜる…え?中和剤とか入れないのか?まじか)
ソウルは、レシピに書かれていた通りに、釜の中に材料を入れてかき混ぜて行き、釜から灰色の煙が出て来た時、小瓶に入っていたオレンタンの血を入れ、安定するまでかき混ぜて行った。
「(で~次に~安定したらオレンタンの猿酒とアクアリの水を入れるっと…オレンタンってなんぞ?って思ったけど猿の名前だったのか…)」
小さなワインボトルの様な形の容器に入っている、オレンタンの猿酒を釜の中に入れた後、革袋の中に入っているアクアリの水を釜の中に入れてかき混ぜて行った。
「(それで最後に紫八角を入れるっと…)」
中国料理などで使うスパイスに似た紫色の八角を釜の中に入れた後、一定のスピードでかき回し続けていると、釜の中の液体が虹色に輝きだし、暴虐の薬が完成した。
「出来ました」
「…うん。問題なくちゃんとした暴虐の薬さね。じゃあ次にその薬をこのマッシュマンに使ってみるさね」
「マッシュマン?」
「これさね」
アンジェラは、隣にあるテーブルの上で人差し指を使って円を書き、その円の中心をノックする様につつくと、指で描いた円の中に魔法陣が浮かび上がる様に出現し、その魔方陣から小さな檻が出て来た。ソウルは、魔法陣から出て来た檻の中を見てみると、小さな茸が数本入っていたが、その茸の全てに小さな手足と顔がある事に気が付いた。
「これが…マッシュマン」
「昔はネズミとかを使って実験していたんだけど今はこれが主流さね。安いし反応がはっきりと出やすいし魔物だから不快にならないし…いい事尽くめの生き物さね」
「なるほど、このマッシュマンに暴虐の薬をかければいいのですか?」
「いや、適切な量を注射器で注入しな」
「分かりました。マギア必要な量を計算してくれ」
「了解しました」
「おや?あんたそんな事も出来るのかい?便利さねぇ」
「恐縮です」
マギアは、ウィンドウを開いて、檻の中のマッシュマンをスキャンして行った。
「スキャン結果出ました」
「どれどれ?…なるほど」
マギアが出した結果を見たソウルは、暴虐の薬が入った容器から必要な量を注射器で吸い出した後、檻の中にいたマッシュマンを右手で掴み出した。その時、マッシュマンは怒った表情をしながら嚙みついて来たが、ソウルの手は義手なので特にダメージを負う事は無かった為、痛がる様子を見せないソウルに対し、マッシュマンは嚙みつきが意味がない事だと知ると、今度は両手を交互に叩きつける様にして暴れ始めた。
「プスッと刺してジュ~…」
暴れるマッシュマンに、ソウルは無表情で暴虐の薬を注入した後、観察する為にテーブルの上に置くと、マッシュマンは体を激しく痙攣させた。
「…薬の量間違えたか?」
「適量です」
「ならこれが薬の効果という事か…」
ソウルは、マギアからマッシュマンに視線を戻して観察を続け、注入から1分半を超えた辺りから次第に治まって行き、2分に差し掛かった時には完全に治まった。…が、痙攣が治まったと同時にマッシュマンの手足がムキムキのマッチョの様な手足に変わって行き、顔つきもどこかの13なスナイパーを彷彿させるような厳つい顔つきに変わった。
「…キッショ」
マッシュマンの突然変異を見て、ソウルは顔に青筋を立てた。そしてマッシュマンは目をカッと見開いて目覚めた後、ゆっくりと立ち上り、強敵に挑むかの様に仁王立ちと腕組をしてソウルを見上げて来た。
「これが暴虐の薬の効果ですか?」
「そうさね。一時的に肉体を超強化する薬さね」
「超強化ですか…副作用はありますか?」
「あるさね。もう少し観察するといい」
「分かりました」
アンジェラの言葉に従い、ソウルは突然変異したマッシュマンに視線を戻すと、マッシュマンが突然高く跳躍し、ソウルに襲い掛かって来た。
「ふむ…体感で3~5歳くらいだな」
「それは強力ですね」
襲って来たマッシュマンの攻撃を、ソウルは全て右の掌で受け止めて攻撃力を確かめた後、攻撃が途切れた時に叩き落した。叩き落されたマッシュマンは、錐揉み回転しながらテーブルに叩きつけられた後、かっこいい受け身を取り、口から出た謎の液体を拭いながら「なかなかにやる…」と言いたそうな笑みを浮かべた。
「そろそろだよ、見逃すんじゃないさね」
「はい」
ソウルとマッシュマンの攻防が5分経過し、懐中時計で時間を計っていたアンジェラがソウルに言うと、ソウルは見逃さない様にマッシュマンを注視した。
「うわ!」
拳を振り上げて、ソウルに殴りかかろうとしていたマッシュマンが、突然風船のように膨らみだし、限界を超えた時には割れる音と共に破裂して、黒い霧に変わって行った。
「これが副作用さね。薬の効果が無くなると同時に体が膨張して破裂する。そうならない為に他の薬と一緒に使うんだけど、ソウルも錬金術を扱う者ならそれらは自分で見つけるさね」
「分かりました」
「ではソウル、その本に書かれている物は細心の注意が必要なのと探求する意味を理解したね?」
「はい」
「理解したなら試験は合格として終えるよ。これからも精進していきな」
「ありがとうございました」
ソウルは、装備していた帽子を右手で取り、胸の位置に移動させた後、頭を下げて感謝の言葉を言った。
「よっこいしょっと…さてソウル?試験は終わったけどこの後に何か予定あるさね?」
ソウルの試験が終わり、アンジェラが椅子に腰掛けた後、質問して来た。
「俺の仲間達が今ユニオンハウスの土地を見に行っているのでそれに合流するって感じですかね」
「そう言えば家を作るとか前に言っていたさね?よくあの悪小娘共からふんだくれたものさね」
「悪小娘?」
「ああ、悪い悪い今はもう婆だったさね」
「え?もしかしてクレインさんの事を言っていますか?お知り合いだったのですか?」
「そうそう。サリー…いや今はクレインだったね?昔、あたしが学術都市に行った時、露骨に悪い事してたからボコボコにしてやって説教したらいつの間にかあたしの舎弟になっていたさね」
「そうだったのですか…(あの人を小娘と言ったけど一体アンジェラさんは何歳な…いや、止めておこう…)」
ソウルは、他にも聞きたい事があったが、それを言ったら地雷を踏む事になると知っている為、頭で考えた事を急いで消し去った。
「…ん?あれ?師匠って今何歳なんだ?前に厳つい人連れて挨拶に来た事あったけど…容姿から見て結構なお年だったし…ならあの人を小娘って言うのならえっと~…」
窯の中をひたすらかき混ぜていたスクフォイが、そう呟いた後に頭の中で計算し始めると、その言葉が聞こえた人達は、目を大きくさせてスクフォイを凝視した。
「(地雷を踏み抜きやがった!スクフォイさんそれは勇気じゃなくて蛮行だよ!バーバリアンステップだよ!)」
「…スクフォイ?あんたは相変わらずデリカシーっていう物がないさね?そんなんだからチラチラとアリーの尻に目が行くんだよ!もっと集中しな!アリーももっと姿勢を正して調合しな!」
「す!すみません!」
「ふぇ~ごめんなさい~」
スクフォイの隣で調合していたアリーにも、アンジェラの叱咤が飛び火し、二人は焦りながら謝罪する言葉を述べた。
「まったくもう少しソウルを見習えないのさね?聞きたいけど引っ込めるという簡単な事も出来ないなんて…」
「(バレてる!)あーっと…あ!そろそろお暇いたしますね」
「ちょっと待つさね」
内心で考えた事がバレたソウルは、居たたまれなくなって逃げ出そうとしたが、アンジェラが止めた。
「この前話して貰った冒険譚に気がかりがあったんだけどそれが分かったから話すさね」
「気がかりですか?」
「これを見るさね」
アンジェラは、一枚の色あせたスクラップ紙をソウルに渡した。
「それに貼ってある記事を読んでみるさね」
「えーっと…「メティスダンジョンで魔物の氾濫!ランバル村全滅」…は?」
「右上に書いてある日付を見てみるさね」
「星月暦673年鳳凰の月水の日と書いてありますが…」
「マスター?今は星月暦703年なのでちょうど30年前の事になりますね」
「はぁ!?30年前だと!?」
ソウルは、衝撃の事実に驚愕して後ずさりをし、すぐ後ろにあった椅子に足が引っ掛かって、そのまま座った後、両手で顔を覆った。
「(おかしい所があったのはそのせいか…ああそうだ…雑貨屋と宿屋のはそう言う事だったのか…それに村を出た時に村人全員が不気味に見つめて来たのは生者に対する羨み…」
ソウルは、あの時の村人達から真顔で見つめてくる姿を思い出し、血の気が引いて行った。
「あれ?マスター?マスター!?…駄目ですね。気絶しています」
ソウルの頭上に、強制ログアウトまでの時間が表示されると、アンジェラは目を見開いて驚いた。
「え!?苦手だと聞いていたけどこの程度もダメなのさね!?」
「もー!お祖母ちゃん何してるのよ!」
「いや、この程度で気絶するとは思わなくて…悪い事したね」
アンジェラは、気絶したソウルに謝まった後に反省した。そして、ソウルは、強制ログアウト手前で目を覚ました。
今回 マッシュマン死す デュエルスタンバイ!
スクフォイの目に薬品が掛かった理由は、スクフォイが隣で作業しているアリーのヒラヒラなスカートの中が見えそうで見えないのでチラチラ見てたら、ソラがキレ(病んで)てスクフォイに薬品をかけたからだったのさ!
アンジェラは異常種の情報を得る為、新聞などの情報誌(紙)をスクラップしていましたが、今では趣味になっています。
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