製作の日
お楽しみください! 新章です!
次回更新は7月11日 0時更新です!
「よいしょっと…」
「お疲れ様です、マスター。この後すぐにログインなさいますか?」
「いや、少し情報見てから入る」
「了解しました」
カドゥケウスを手に入れた日から数日が立ち、リアルでは夏休みが終わって大学が始まると、総一郎は自分が選択した講義を真面目に受けた後、遊びに誘って来る友人達の誘いを丁重に断り、自宅へ真っ直ぐ帰った。そして、自室に入るとすぐにPCを起動してから部屋着に着替え、椅子に座って一息ついた後、携帯の中にいるマギアの質問に答えた。
「何か新しい情報は無いかな~?」
「おや?マスター?どうやら先程アップデートが入ったみたいですよ?」
「アプデ?どれどれ?」
アップデートが入ったと聞いて、その情報が気になった総一郎は、Wonderful Planetの公式サイトを開き、アップデート内容を読んで行くと、驚愕する項目を見つけた。
「…え?「銃に魔法等を付与して弾倉交換をせずに発砲出来ていたのを修正し、弾倉交換が必須になる様に変更しました。」…ってウッソだろ?マジかよ!?」
「またナーフされましたね…」
「はぁー!?運営は何考えてんだ!?新しく作ろうとしてた銃全部無駄になったじゃねぇか!チクショウめ!」
ソウルは、机のペン立てに入っていた火青鉛筆を手に取り、机に叩きつけた後、部屋の中で右往左往し始めた。
「掲示板には「修正対象が彼だけで草」とか「いつもの銃士いじめですね」とか「公式は銃士に親殺されたんか?」等のコメントで盛り上がっていますね」
「俺が何したってんだ…」
総一郎は、再び椅子に座って落胆していると、机の上に置いていた携帯から着信音が鳴った。
「坂田様と右近寺様からメッセージが届いておりますが…お読みいたしましょうか?」
「…絶対碌でも無い事だろう?」
「…そうですね。「またナーフされてるけど、ねぇねぇ?今どんな気持ち?今どんな気持ち?」や「またナーフされちまったな!ガハハ!所詮銃士は敗北者じゃけェ…」というメッセージですね」
「うるせぇ!バーカバーカ!と返信しといてくれ…」
「了解しました。うるせぇ!バーカバーカ!禿げろ!もげてしまえ!と返信しておきます」
「え?あー…うん」
マギアの追加文で、落ち着きを取り戻した総一郎は、FDVR機器を頭に装着し、ログインを開始した。
-アクアクリスタリア・銃士ギルド・製作室-
「さて…どうするか…」
ソウルは、アイテム欄から作ろうとしていた銃の設計図を取り出して、目の前のテーブルに広げた後、設計図を見つめながら悩み始めた。
「リロードしないといけなくなったからこれは破棄だな…あーでも何作ったらいいんだ?」
「では、武器破壊されるのを前提にした銃を作るのはどうでしょうか?」
「え?」
「これまでの冒険でほぼ全ての武器が壊されていますので凝った物を作っても次の冒険で破壊される可能性が高いです」
「だからそれを前提に作れと?…う~ん何か嫌だな~せっかく銃を手に入れたのにすぐに無くす主人公みたいで…」
「マスター?先ほども言いましたが毎回武器破壊されているので、ほぼ成り掛けていると言っていい位ですよ?」
「ウゾダドンドコドーン!!」
マギアの言葉を信じたくなかったソウルは、滑舌をわざと悪くしながら否定した。
「…っとまぁ嘆いても仕方ないからやるしかねぇな」
気持ちを切り替えたソウルは、製図台に向かった後、新しい紙をセットして書き始めた。
「何を作りますか?」
「ダブルアクションリボルバーを6丁作る」
「6丁ですか?それは武器破壊前提という事でしょうか?」
「いや、それぞれの銃に基本属性のルーンを刻印する」
「単一のですか?」
「ああ、銃に魔力を込めなければ普通の弾が発射されるが込めれば属性弾が撃てる」
「なるほど」
マギアは、ソウルの説明を聞いて理解し、ソウルが設計図を書き終えるのを待った。
-40分後-
「出来た!」
(※)(※2)
「バレルが下についている形のリボルバーなんですね?」
「こうすればアクセサリーとか付けてもホルスターに収まりやすいだろう」
「そうですね。では材料もありますし早速製作しますか?」
「ああ」
マギアの言葉に頷いたソウルは、製図台に書かれた銃を作り始めた。
-30分後-
「マスター?質問していいですか?」
「どうした?」
黙々と銃を作っていたマギアが、ソウルに質問して来た。
「このグリップの下に付いてる金属製の棘は何ですか?」
「かち割る為の物に決まってんだろ!」
「何を…あ、いいです。大体分かりました」
ソウルが、主に何をかち割るのかを察したマギアは、銃の製作に戻った。
-4時間後-
【アナウンス:製作した武器に名前を付けてください。】
「名前…名前か…」
「どうしますか?」
「う~ん…」
ソウルは、テーブルの上に置かれた6丁の銃を見詰めながら。頭を傾けた。
「6つに由来する物何かないか?」
「神話にスキュラと言う生物がありますね」
「スキュラ?…確かギリシャ神話の怪物の名前だったか?」
「はい」
「う~ん…それだけだと今一だな…他は?」
「キリスト教の聖書におけるイメージでは「不完全な数」とされていますね」
「他は?」
「悪魔的シンボルの「666」や超感覚的な「第六感」、6月の花嫁を意味する「ジェーンブライド」等がありますね。あ、そう言えば基本的なサイコロも6面ですね」
「ん?サイコロか…あ!」
サイコロと言う言葉を聞いて、何かを閃いたソウルは、目の前のウィンドウに入力して行った。
【アナウンス: Dice of Fate が完成しました。カテゴリー 『オリジナル武器』 等級 『ゴッズ』 武器レベル 『263』 ゴッズ専用スキル 『エレメンタルバースト』 各種パラメーターは装備欄からご確認ください。】
「完成だ!」
「完成おめでとうございます。お疲れさまでした」
「マギアもお疲れ。早速試し撃ちに行こう」
「了解しました」
ソウルは、テーブルの上に置かれた6丁の銃を、アイテム欄に仕舞ってから製作室から出た時、丁度通路を歩いていたゼフティと出くわした。
「ハッハー!何か作っていたようだけど完成したのかい?」
「ああ、完成した。今から試し撃ちに行く所だ」
「俺っちも付いてっていいかい?」
「いいが…ここはいいのか?」
「ハッハー!安定してきたから問題ない!…というか今は何もするなって言われちまった…」
「ハリーベルに?」
「ライトちゃんに…」
「え?あれ?ライトさんって確か新人さんじゃ?」
「すごく優秀だったから昇進させたんだ…そのおかげでこのギルドは安定したけど…俺っち達の肩身が狭くなっちまった…」
「あーうん…そうなんだ…でもよかったじゃないか!このまま安定すれば黒字化するんだろ?」
「うん、そうだけど…ハッハー!」
ゼフティは、涙目になりながら笑った。
「とりあえず街の外行くか」
「…うん」
ゼフティは、目に溜まった涙を拭いながら、ソウルの言葉に頷き、ソウル達と一緒に街の外へと向かって行った。
-アクアクリスタリア・平原-
「周囲に人影無し…これより訓練を始めます」
3人が平原にやって来ると、マギアは周囲をスキャンして人がいない事を確認し、訓練モードを起動すると、特殊フィールドが展開して行った。
「まずはターゲットペーパーみたいなのでちゃんと当たるか確認しよう」
「了解しました。20m先にターゲットを表示します」
20m先に人の上半身を模した白いターゲットが表示された後、ソウルはアイテム欄から簡易テーブルを取り出して自分の横に置き、その上に6丁の銃を置いた。
「手伝おうか?」
「ああ、頼む」
簡易テーブルの上に置かれた銃を見て、胸を高鳴らせたゼフティが手伝いを申し出ると、ソウルはその言葉に頷いた。ソウルの頷きを見たゼフティは、腰の位置にあるカバンから防音イヤーマフを取り出して装着した後、簡易テーブルから緑色の銃を手に取り、様々な角度から眺め始めた。
「弾は何を使うんだ?」
「357マグナム弾だ。だから反動には気を付けてくれ」
「あいよ」
ゼフティは、足を肩幅かやや大きめに開き、両腕を前へ押し出して銃を構えた後、的の中心を狙って引き金を引いた。
「これはこれは…」
そう一言呟いた後、残りの5発を連続で発砲した。
「いいねぇ…こう…ズン!くる感じがたまらない!」
「射撃結果をご覧になりますか?」
「ここからでもほぼ中心に当たったのが分かるから大丈夫!次の銃に行くよ!」
「了解しました。ターゲットを新しくします」
ゼフティは、エジェクターロッドを押して排莢した後、そのまま簡易テーブルの上に置き、次の銃を手に取ろうとした時、ソウルも次の銃を手に取ろうとしていた。
「あれ?もしかしてこの銃って2丁持ちでやるのかい?」
「そのつもりだが?」
「…リロード大変じゃないか?シリンダーが全部左側に出るみたいだし」
「あ!…しまった!設計ミスった!」
ゼフティの指摘を聞いたソウルは、次の銃を手に取ろうとしていた手を、目の位置に移動させて目を覆った。
「ハッハー!うっかりさんめ!」
「やっちまったな…あと給弾方法も考えないと…」
「2丁持ちするなら色々工夫しないとな!俺っちも頭貸すぜ!」
「製作室に戻るか…」
「了解しました。訓練モードを終了します」
特殊フィールドが消失すると、ソウル達は出した簡易テーブルや銃をアイテム欄にしまい、製作室に戻って行った。
--アクアクリスタリア・銃士ギルド・製作室-
「で?どうするん?」
「とりあえずシリンダーの向きを変更しよう」
「了解しました。どの銃を変更しますか?」
「それは…どうするか…組み合わせ次第で合体魔法みたいに出来るからな…」
「ハッハー!ならいっその事どちら側にでも倒れる様にした方が良いんじゃないか?」
「出来るか?」
ゼフティの意見を聞いたソウルは、可能かどうかマギアに尋ねてみると、球体の体に懐かしさを感じるデジタルな砂時計が表示された。
「耐久性やバランス等を考慮しないといけませんが…不可能では無いですね」
「すまんが頼んでいいか?俺は給弾できる物を作るから」
「お?何かアイデアがあるのかい?」
「ああ、とある映画でかっこいいリロードしてたからそれを真似した装置を作る事にする」
「映画?」
「マスター?映画はフィクションですよ!?」
「んなこたぁ分かってる!それをするのに何をどうしたらいいのか自分なりに考えた物を作るんだ!」
「そうでしたか…失敗しても笑わずにしておきますね?」
「なぁ?映画ってなんだ?」
「…なんで失敗する事が決まったかのように言うんだ?」
「いえいえ、きっとマスターなら成功するはずですよ!」
「含みのある言い方しやがって…今に見てろ!必ず成功させるからな!」
「なぁなぁ?映画ってなんだ?」
「あーもう!作りながら教えてやる!」
ソウルは、プンスカと怒りながら製図台に向かった。
-1時間後-
「一筆入魂!完成ダー!」
(※)
「バックルがあるという事はこれはベルトかい?」
「ああ、少し大きい腰ベルトだな。オモテとウラと言う文字の下に箱があるだろ?そこからレールの乗った弾が出てくるんだ」
「この弾の下にある凹凸みたいのは何だい?」
「銃のシリンダーに同じ様な凹凸があっただろ?そこと腰ベルトの凹凸を合わせて歯車の様にかみ合わせて回転させるんだ」
「なるほどなるほど~それでカバン?の所に着いている黒い部分は?」
「ちょっとした文字が表示できる。これなら俺が相手と喋っている時とかに後ろにいる仲間に文字で合図や注意を促す事が出来る」
「ハッハー!へぇ!いいじゃないか!俺っちの分も作ってくれよ!」
「ならしばらく使ってテスターしてくれ」
「OK!」
喜ぶゼフティをしり目に、ソウルはアイテム欄からロール状に巻かれた革を取り出し、定規で測りながら必要な分を切り取って行った。
-3時間後-
「良し!出来た!」
「ハッハー…しばらく数字は見たくない…頭がオーバーヒートした…」
「それは仕方ない。歯車一つ間違えただけでちゃんと動作しなくなるからな」
「こちらも完了しました」
マギアの報告を聞いたソウルは、銃を手に取り、グリップの上に付いているレバーを押してシリンダーを出してみると、ちゃんと左右に倒れる様になっていた。
「パーフェクトだ。マギア」
「感謝の極み」
「よし!早速平原に行こうぜ!」
ソウル達は、ゼフティの言葉に頷き、平原に向かって行った。
※ イメージは予告なく変更される場合があります。
※2 イラストの銃は赤色ですが、刻印されたルーンによって色が変化します。
ソウルが言ったとある映画と言う言葉にピンと来た人は、知らない人に向かってニヤニヤしましょう。
(なお、人間関係が悪くなっても当人に責任を負う事は一切無く全て自己責任となりますのでご注意ください)
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