ウェルミットの塔 12
完成しました!お楽しみください!
次回更新は6月6日 0時更新です!
「【スパイラルスティンガー】」
KUNIMOが、赤い変異体が振り下ろして来た斧を、タイミングよくパリィした後、槍スキルで攻撃し、変異体デリーバートンにダメージを与えた。
「隊長!準備できました!」
「こっちもです!」
「よし!私の合図で撃て!………今!」
攻城で使う様な大型バリスタを設置していた隊員達が、ハピネスカラーに準備が出来たと伝え、ハピネスカラーは変異体デリーバートンをよく観察し、タイミングを計って合図を出すと、矢筈側にワイヤーが付けられた大型の矢が数本まとめて発射され、変異体デリーバートンの体に深々と突き刺さり、その場に拘束した。
「20秒位しか持たないから急いで!」
ハピネスカラーが大声で言うと、ユメミルク達がその言葉に反応して、攻撃スキルを赤い変異体に叩き入れて行った。
「後衛も紫の方にじゃんじゃん撃ちこんでいって~!」
ホワイトローズの言葉に答えるかのように、後衛達が変異体デリーバートンに向かって属性魔法を放ち、HPを減らしていくと、変異体デリーバートンと赤い変異体が同時に咆哮し、体に刺さっていたバリスタの矢を自身の肉ごと引き抜いて拘束を解いた。
「ゲぇ!自分の肉ごと抜いた!?」
「全員離れろ!大技が来るぞ!」
矢を抜いた赤い変異体が、斧を大きく振りかぶる動作をして来たので、大技が来ると察知したユメミルクが警告を促し、仲間達はその警告に従って距離を取ると、赤い変異体は体全体を使って回転斬りをした後、高く跳躍して斧を頭上に振り上げ、着地すると同時に振り下ろして地面を大きく割ると、強烈な衝撃波と割れた地面の石畳が石礫となって四方に飛来して行き、斧の先に居たプレイヤー達や周囲にいたプレイヤー達に大ダメージを与えた。
「ヒーラー急いで回復頼む!盾持ちは負傷した奴をカバー頼む!」
ユメミルクの指示に従い、プレイヤー達は負傷した仲間達の所に向かおうとしたが、赤い変異体がそれを狙っていたかのように、再び大技の構えを取り始めた。
「クソが!!ホワイトローズ!」
「おいさ~!」
ユメミルクとホワイトローズは、大技を止める為に赤い変異体の前に立つと、攻撃スキルの予備動作を取った。
「【バスタークラッシュ】」
「【ブレイブバード】」
ユメミルクが、一刀両断する様に斧を振り下ろし、ホワイトローズは剣を前に突き出しながら体から火を出して火の鳥となって突撃すると、赤い変異体が振り回した斧と二人のスキル技が衝突し、ほんの少しの間拮抗し合っていたが、ユメミルク達のスキルが勝り、赤い変異体の斧を弾き返した。
「【メテオブレイカー】」
ユメミルク達が、赤い変異体の斧を大きく弾き返した事で大きな隙が生まれ、その隙にソウルがβブレードの専用スキル【メテオブレイカー】を発動し、12回の連続攻撃の後、βブレードから伸びた巨大な光の剣を振り下ろした。
「「グバァァァァ!」」
巨大な光の剣に斬られた変異体デリーバートンと赤い変異体は、同時に断末魔を上げた後、体が左右に別れて地面に倒れた。
「…もういい加減くたばれ」
左右に別れた変異体デリーバートンを見ながらソウルが呟くと、仲間達が近づいて来た。
「これで4回目ね」
「ああ、でもこれで終わって欲しいな」
「そうだね」
「強くもなく弱くもない…かといって油断して言いとも思えない微妙なボスだな~流石に怠くなってきたぜ…」
「新人達にはいい経験になると思うけど熟練者には退屈な敵だね~復活して強くなっても背中にもう一体生えて武器も斧も一本だけだったしね~」
「おいおい?魔法無効や物理無効があっただろ?」
「そんなの知っちゃえばどうとでもなるよ~」
「…確かにそうだな」
ホワイトローズの言葉に納得して頷くと、その場にミラ・ストーカーがオニオンチョップを後ろに連れて、ソウルに話しかけて来た。
「終わったわよ?約束を果たして貰おうかしら?」
「ん?何の事だ?」
「はぁ!?」
首を傾げて聞き返して来たソウルに、ミラ・ストーカーは憤慨した。
「あんた!さっき約束したじゃない!?もう忘れたの!?鳥頭なの!?」
「いやいや、約束したのは覚えているぞ?でもまだ終わってないぞ?」
「はぁ!?あんな真っ二つにされて生きてる訳ないじゃない!」
「そうだな…俺としてもあのまま終わって欲しかったけど…」
ソウルが、再び変異体デリーバートンに視線を向けて言うと、左右に別れた体が溶ける様にして液体状になり、一か所に集まった後に球体へと変わって行った。
「あれでまだ生きているなんて随分としぶといわね…」
「おいおい?お前らあいつの仲間だったんだろ?そんな言い方しなくてもいいじゃねぇか?」
ユメミルクが、挑発する様な言い方で言うと、ミラ・ストーカーは深い溜息を吐いた。
「ただの契約者よ」
「おいおい?旦那にはすごく世話になったじゃな…ごほぉ!」
「世話になってたのはあんただけでしょ!?ふざけた事言ってると殴るわよ!?」
「もう殴ってる…」
オニオンチョップにキレたミラストーカーは、鎧の上から鳩尾がある部分に全力の拳を入れ、オニオンチョップの体をくの字に曲げた。
「反応確認!来ます!」
そんなやり取りをしている中でマギアが報告してくると、一つに集まっていた球体が、突然重力を失って落下し、卵を高い所から落としたように液体が広がると、その液体から全身がドロドロに溶けた様な人型が無数に這い出てきた。
「今度はマッドマンかよ…」
「しかも無数に出て来てるし~」
「個では勝てないから今度は数を出して来たって事?」
「…私、直接触れたくないから変身するわ」
「僕もあれ食べたくない…」
「キッショ…」
「うわぁ…流石に俺でもあれにはちかづきたくねぇわ…」
「この場の不快度が80%を超えた事を報告します」
余りの気持ち悪さに、ユメミルク達やプレイヤー達から不快の言葉が上がったが、ソウルがそれを正す様に2回拍手して口を開いた。
「はいはい!気持ち悪いのは分かるが文句言ってもしょうがないぞ!あまり近づきたくないなら遠距離技で駆逐していけばいいだろう!」
ソウルの言葉をきいて、ユメミルクが溜息を吐いた。
「はぁ~…それもそうだな。全員ソウルの声が聞こえたな!?じゃあ行動開始だ!」
ユメミルクが号令をかけると、プレイヤー達は遠距離攻撃スキルを使って、這い出てきた変異体を攻撃していった。
「なぁマギア?思ったんだが…」
「はい?何でしょうか?」
ソウルは、銃を撃ちながらマギアに尋ねた。
「他のゲームでこういうの敵が出てきた時、コアみたいなのがあってそれを破壊すれば倒せるんだけど、アレにもあるのか?」
「調べてみます。少々お待ちください」
マギアの言葉に従って、ソウルは答えを待った。
「中心点にそれらしい反応があります」
「中心…中心か…」
マギアの報告を聞いて、ソウルはどうすればいいか考えていると、技の反動で下がって来たKUNIMOが、話しかけてきた。
「ソウルさん?どうしましたか?」
「アレの中心にコアがあるらしくどうやって壊そうかなと考えていました」
「また突撃したらいいと思いますよ?」
「…いけますか?」
ソウルは、KUNIMOが装備している半ば壊れかけの重鎧を見ながら言うと、KUNIMOは険しい表情をしながらも頷いた。
「一度だけならいけます」
「一度だけですか…」
ソウルは、そう呟いた後にニヤリと笑った。
「やってみましょう!」
「了解しました。隊長に連絡します」
「マスター、私は他のメンバーに連絡をいれますね」
「頼む」
マギアに頷いた後、ソウルはアイテム欄からデスブリンガーの弾とγガンで使っていた弾を取り出し、乱雑にまとめてテープで固定し始めた。
「ソウル?何を作っているの?」
その数十秒後、突撃の為にソウルの所に来たアップルが、ソウルがしている事が気になって話しかけると、ソウルはそのまま作業をしながら質問に答えた。
「外した時の為に使わなくなった弾を一つにまとめた爆弾を作ってる。これなら弾や薬莢が広域に拡散して確実に壊せる」
「…ねぇそれって自分も危ないんじゃないの?」
「大丈夫大丈夫!…多分」
「最後の一言ですごく不安になったわ…」
ソウルが、小さく多分と言った事にアップルは、突撃の時はソウルの後ろに居ようと心の中で固く決心した。
「ソウル~こっちは準備できたよ~」
「俺も出来た。行こう!」
ホワイトローズの報告を聞いて、ソウルはその言葉に頷いた後、右手に先程作った爆弾を持ち、集まった仲間達と共に走り出した。
「邪魔ですよ!どきなさい!」
「どいてくださーい!」
アンデットモンスターの時と同じように、先頭のKUNIMOとマナリアが、人型の変異体達を蹴散らし、外側に盾持ち、内側にアタッカーを入れて走り続けて行き、中心に近い距離に到着すると、ソウルは高く跳躍して、丸く隆起していた部分に向かってCLC 12を発砲した。
「ちぃ!やっぱ…な!?」
放たれた弾丸は、真っ直ぐ丸く隆起した場所に当たると、衝撃で液体を吹き飛ばして、コアと思られる紫色の玉を露出させて罅を入れたが、破壊とまではいかなかった為に右手に持った爆弾を投げようとしたが、突然周りの液体が無数の鋭い針となって突出し、爆弾ごと右腕の義手を貫いた。
「くそ!」
右腕の義手が壊され、落下していくソウルの顔には悔しさが現れたが、ある人物のおかげで悔しさが希望へと変わった。
「【爆炎剛打】」
ソウルより少し高く飛んでいたアップルが、スキルを使って目の前に散らばったソウルの弾丸を殴り、薬莢から弾頭を発射させて、紫色の玉を砕いた。
「グオォォォ!!…ゾ…ウルゥゥ!」
コアを破壊された液体は、苦しみの声を上げながら、巨大な頭と腕を形成していき、落下中のソウル掴んで握りつぶそうとした。
「本当にしつこい奴だな!」
徐々にHPが減る中、ソウルは止めを刺そうと必死に左腕を動かずが、わずかな隙間すらない為、身動き一つ出来なかった。
「クソがぁぁ!」
残り数秒でHPが無くなる事に焦ったソウルは、全力で抜け出そうとするが動けず、もう駄目だと思ったその時、頭上で何かが炸裂し、温かい水が雨のように降って来た。
「グギャァァァァァァ・・・・」
温かい水を浴びて、変異体デリーバートンが断末魔を上げながら黒い霧へと変わって行くと、ソウルを握っていた腕も崩れていき、拘束されていたソウルは地面に着地した。
「上出来だ。ジンジャー」
ソウルは、近づいてくる人物に向っていうと、言われた本人は目を赤く腫らしながらも、はにかんだ笑顔を見せた。
そして、この場にいるプレイヤー達のチャット欄に、リザルトが流れた。
ようやく!ようやく終わらせる事が出来ました!
残り数話でカドゥケウス編終了です!お楽しみに!
モチベ維持に評価お願いします!
「ブックマークに追加する」ボタン登録もよろしくね!
いいね登録!よろしくお願いいたします!
誤字脱字報告 アザマスザウルス!




