ウェルミットの塔 11
前回ウェルミットの塔は次回で最終回ですと言ったな?
…あれは嘘だ。
次回更新は5月30日 0時更新です!
「よくやったなジンジャー…少し休んでいろ」
両親の姿が完全に消え、ソウルはジンジャーに視線を向けて優しく言ったが、ジンジャーはただ泣き続けていた。
「ジンジャーさん…大丈夫でしょうか?」
「大丈夫…きっと自分で立ち上がって来るはずだ。それはそう信じている」
「…そうですね。信じましょう」
ソウルとマナリアは、ジンジャーを見ながら言った後、視線を変異体デリーバートンに向けた。
「行くぞ」
「了解です。マスター!」
「はい!」
ソウル、マギア、マナリアは変異体デリーバートンに向かって言った。
-ウェルミットの塔・陽月の間・変異体デリーバートン-
「【ムーンスラッシュ】」
右手にある異形の頭から大剣を出し、飛び上がって変異体デリーバートンの背中を斬りつけたティカルは、急いでその場を離脱すると、ティカルが先程まで居た場所に巨大な拳が振り下ろされると、地面がクレーターの様に陥没した。
「盾持ちはしっかり踏ん張らねぇと吹き飛ばされるから気を付けろよ!」
ユメミルクが、地面に出来たクレーターを見ながら、この場で戦っている盾持ちに注意を促した。
「次来るよ~!」
ユメミルクの言葉の後に、変異体デリーバートンが目の前にいるプレイヤーの数人を纏めて殴ろうと拳を振り被ると、ホワイトローズの言葉に反応した3人の盾持ちが、盾を構えながら前に出て、変異体デリーバートンの拳を受け止めた。
「これで2回目よ!【水鉤爪】【スパイラルストレート】」
変異体デリーバートンの後ろにいたアップルは、跳躍して2連続でスキルを使うと、最初のスキルで両腕に纏った水が、全て右手に集まった後に螺旋を描くように回転し始めた。そして、アップルはそのまま右ストレートを出すと、集めた水が変異体デリーバートンの背中の肉を螺旋状に抉って行き、腹まで貫通して大きな穴を開けた。
「グガァァぁぁぁ・・・・」
アップルに、背中から大きな穴を開けられた変異体デリーバートンは、断末魔を上げながら膝から倒れて行った。
「こんな状態からでも復活してくるなんて厄介ね」
「そうだね~…ねぇ?あいつ最初の頃より強くなってなかった~?」
「そうかしら?」
「最初の時に地面が陥没する程の威力がある攻撃をしてきた事あった~?」
ホワイトローズの言葉を聞いて、アップルは思い返してみるが、思い当たる記憶は無い為、首を横に振って答えた。
「あ?つまりなんだ?復活する度に強くなってるって事か?こいつは〇イヤ人か何かかよ?」
「スーパーにはならないと思うけど生き返る度に倍には強くなっていのかもね~?」
ホワイトローズの言葉に、ユメミルク達は倒れている変異体デリーバートンに視線を向けた。
「生き返る度に強くなるとしてもやる事は変わらない」
「ソウル!」
ソウル達三人が、ホワイトローズ達に合流し、いつもより低い声で言った。
「皆!復活する間に各自回復を済ませておいてくれ!」
ソウルが大声で言うと、プレイヤー達はポーションやヒーラーの回復魔法でHPMPを回復し、次の戦いに備え始めた。
「皆、そのままの状態でいいから聞いてくれ!俺達は次の戦いから参加するが、デリーバートンはかなり俺を憎んでいる!それ故に攻撃も激しく、苛烈になって来るだろう!」
プレイヤー達は、回復行動を続けながらソウルの言葉に耳を傾けた。
「だから盾持ちは必ず3~4人で攻撃を受け止める様に動き、アタッカーは盾持ちの邪魔にならない様にしながら、隙があったら攻撃を入れてその場を離脱!後衛はバフデバフを絶やさずに盾持ちを死なせない様に注意してくれ」
「ヒット&アウェイって事ね?」
アップルに頷き、ソウルは話を続けた。
「そうだ。こいつは復活してくるから必然的に長期戦になる。下手に動いてHPMPを減らさない様に注意してくれ」
「全員聞いたな!?新人は仕方ないがベテランが下手こいたら1か月くらい笑われるぞ?気張れよ!!」
「「「「「「はい!!」」」」」」
ユメミルクに、プレイヤー達は気合を込めて答えると、マギアとヒフミが何かを察知して報告して来た。
「マスター!変異体デリーバートンから生命反応を感知しました」
「8秒後に復活すると予想します!」
「来るよ~!」
ホワイトローズの言葉に反応して、プレイヤー達は力強く身構えた。
「グゥオオオオオオオ!!!」
「おはよう!デリーバートン!」
体に開いた穴が急速に塞がり、勢いよく立ち上がった変異体デリーバートンに、ソウルは∑ウェポンの銃口を頭に向けて、引き金を引くと、放たれた弾丸が額に当たり、頭だけ勢いよく傾いた。
「(即死ポイントに入れたが大したダメージは入ってないか…)」
「…ゾ…ウ…ル?…ゾウル…ゾウルゾウルゾウルゥゥゥゥ!!」
ソウルを視認した変異体デリーバートンは、思い出したかの様に何度もソウルの名前を叫んだ後、拳を振り上げながら、ソウルに向かって走り出して来た。
「盾持ち!」
「「「「【フォートレス】」」」」
ユメミルクが指示を出すと、4人の盾持ちがソウルの前に出て、盾スキルを使い、変異体デリーバートンが突き出してきた拳を受け止めたが、余りの衝撃に数十cm滑り下がってしまった。
「反撃する!」
ソウルは、デスブリンガーで攻撃をしたが、放たれた弾丸が当たっても変異体デリーバートンは、痛がる様子も見せず、一心不乱に目の前の盾持ち達を殴り続けた。
「【十字閃】」
「【ダブルスイング】」
「【細剣脚・三連】」
「【スパイラルスティンガー】」
「【ダブルファング】」
後ろからユメミルク達が、スキルを使って攻撃するが、変異体デリーバートンはHPを多く削られてもひたすら殴り続けた。
「【アイスニードル】」
「【フレイムキャノン】」
「【アースブロック】」
「【ウィンドスラッシュ】」
「【アクアジェット】」
「【サンダーボルト】」
アタッカーの攻撃の後、後衛から属性魔法が、変異体デリーバートンに目掛けて飛んできたが、皮膚が爛れ落ちようが切り裂かれようが、動きを止める事は無かった。
「ぐぅ……うわぁぁ!」
4人の盾持ちが、変異体デリーバートンの攻撃に耐えられず、後ろに吹き飛ばされてしまい、残されたソウルは少しずつ下がりながらも攻撃を続けていると、突然変異体デリーバートンは、口から緑色の煙を吹き出し、ソウルに浴びせた。
「何だこ…ぐっ!」
緑色の煙を浴びた瞬間、ソウルの持って行った武器が急速に腐食していき、その事に驚いたソウルだったが、変異体デリーバートンが拳を出そうとしている姿が見えたので、慌ててデスブリンガーを盾にして突き出されて来た拳を防いだ。だが、衝撃までは防ぐ事が出来ず、後ろに大きく吹き飛ばされてしまった。
「マナリアさん!」
「はい!」
ソウルが吹き飛ばされると、KUNIMOとマナリアがFJWを使って、変異体デリーバートンの前に立ち、それ以上進ませない様に立ちはだかった。
「マスター大丈夫ですか!?」
「ギリギリ大丈夫だ…だがデスブリンガーとγガンはもう駄目だ」
デスブリンガーは、腐食と変異体デリーバートンの一撃で完全にひしゃげてしまい、γガンも腐食で半ば崩れ落ちていた。
「持ち手のαトリガーが無事なのは幸いだな…」
ソウルは、アイテム欄から回復ポーションを取り出して自身のHPを回復した後、γガンからβブレードに換装しようとしてαトリガーから取り外すと、γガンは淡い光の粒子となって消え去ってしまった。
「はぁ…苦労して作ったのに何も残らないというのは悲しいな」
βブレードに換装した後、ため息交じりに言いながらデスブリンガーを地面に降ろすと、重い衝突音と共に淡い光の粒子となって消え去った。
「スキャンの結果、他に腐食している所はなさそうです」
「武器だけ腐らせるのか…」
「いえ、対瘴腐コーティング剤のおかげで防具類は無事だっただけなので、武器だけ腐らせると言うような事は無いみたいです」
「まじか…気を付けて戦わないとな」
ソウルは、腰のホルスターからCLC 12を左手で抜き、右手に∑ウェポンを持って変異体デリーバートンを睨んだ。
「いい加減あいつの顔も見飽きたな」
「そうですね」
「全力で仕留めるぞ」
「了解しました」
KUNIMOとマナリアに進むのを邪魔され、怒り狂う変異体デリーバートンに向かって、ソウル達は走り出した。
「ソウルさん!?」
「そのまま!」
変異体デリーバートンに衝突する勢いで走るソウルに、マナリアは驚いて声を掛けるが、ソウルは短く返事を返した後、スライディングをして変異体デリーバートンの股を潜り抜け、右足のアキレス腱をβブレードで斬り付けた。
「変異したって言っても人型なんだからそこ斬られたら歩けねぇだろ!」
右足のアキレス腱を斬られて、上手く立てなくなった変異体デリーバートンは、片膝立ちになると、左足だけで立とうとしたが、ソウルはそれを許すはずもなく、左足のアキレス腱を斬って巨体を地面に倒した。
「グアァァァァァァ!!」
地面に仰向けで倒れた変異体デリーバートンは、駄々っ子の様に暴れたが、ソウルが少し離れた場所からCLC 12の引き金を引くと、変異体デリーバートン動かなくなった。
「レーザーなら行けるようだな」
「お疲れ様ですマスター。行けましたね?」
「ああ、あのまま踏みつぶされるかもと思ったが…何とか行けたな」
ソウルは、深呼吸して心を落ち着かせた後、変異体デリーバートンを見つめた。
「お疲れ様ソウル。3回目ね」
「アップルもお疲れ」
「まさか腐食攻撃してくるなんて思いもしなかったわね?」
「そうだな…あの攻撃のせいでγガンとデスブリンガーがお釈迦になっちまったよ」
ソウルが銃を失った事に、ガックリと項垂れていると、ユメミルクとホワイトローズがソウルに近づいて来た。
「武器にコーティングをしなかったのか?」
「ん?あれって防具だけじゃないのか?」
「そんな事無いよ~ちゃんと武器にも出来るよ~」
「え?…そんな…だってあの時に防具に付けるのを忘れるなよって言ったじゃないか!だから俺は防具だけなんだなと思って…」
「…あ~すまん!俺らの武器にはデフォで付いてるからその感覚で話しちまった!ガハハ!」
「そんな!?」
良く調べていれば防げたという事に、ソウルは目を覆って落胆すると、突然マギアが大声を発した。
「生命反応を確認しました!」
マギアの報告を聞いて、ソウル達は倒れている変異体デリーバートンに視線を向けて身構えると、変異体デリーバートンの体内で何かが蠢き、背中から何かが飛び出してくると、赤い肌をした変異体デリーバートンを形作って行った。
「うわ…きっしょ…」
余りのグロテクスに、ホワイトローズは自分のロールを忘れて呟いた。
「なんか別のゲームにああいうボスがいた様な気がするな」
「…あ~そう言えばそうだな…同じ体をした奴が中腰になって背中合わせでくっついてる~…あれな?」
「確か名前は~両め…」
「来ます!」
ソウルが、名前を言う前に変異体デリーバートンが動き出し、血肉で来た巨大な斧を振り回してきた。
「食らえ!」
振り回して来た斧を避けたソウルは、反撃としてCLC 12を発砲し、銃口から出たレーザーは真っ直ぐに赤い変異体に向かって行った。だが、レーザーは体表面に当たった所から霧散して行き、傷すらつける事無く何の効果も無かった。
「なんだと!?」
「私に任せて!」
レーザーが効かない事にソウルは驚いていると、アップルが高く跳躍して、体を駒の様に回転させた。
「【六道螺旋脚】」
回転したアップルは、真っ直ぐ赤い変異体に向かって行ったが、赤い変異体はアップルを叩き落そうと斧を振り上げた。
「させません!」
そこにマナリアがFJWを使って飛び出すと、振り下ろされて来た巨大な斧を弾き、アップルが叩き落されるのを防いだ。
「グギャァァァァ!」
斧を弾かれた赤い変異体は、アップルの攻撃が直撃し、悲鳴に似た声を出した。
「どういう事だ?アップルの攻撃が通って俺のレーザーは効かないって…」
「予想するにマスターのレーザー攻撃は魔法攻撃判定だったからだと思います」
「確かにルーン文字を使ってはいるが…あ、まさか魔法で作り出した物理現象も全て魔法になるのか?」
「はい、例外はありますが基本的には魔法で行った事は全て魔法として判断されます。例え結果が魔法でなくてもです」
「マジか…」
マギアの説明を聞いたソウルは、レーザーから実弾に変更して、薬室に弾を装填すると、変異体デリーバートンを警戒しながらユメミルクが近づいて来た。
「話が聞こえて来たのだが…さっきのレーザーは魔法だったのか?」
「ああ、そうだったみたいだ?」
「…あー…つまりあれか?赤い方は魔法無効という事か?」
「そういう事になるな」
「なるほど分かった!」
ユメミルクはソウルの頷きを見た後、大声を出した。
「おい!皆!赤い方が魔法無効だという事は反対側の奴はそうじゃない可能性が高い!魔法攻撃が使えるアタッカーや後衛は紫色の方を攻撃してみてくれ!逆に赤い方には物理攻撃だ!」
ユメミルクの指示を受け、プレイヤー達は自分が攻撃出来る側に移動し始めた。
「よっしゃ!俺達も行くぜ!」
「ああ!…あ、先に行っててくれ」
「おい!なんだよ!いかな…おい?」
「ちょっとお話してくる」
「マジかよ…それで失敗したら目も当てられないぞ?」
「大丈夫上手くやるから」
「か~…分かった!ちゃんと上手くやれよ?」
「ああ、もちろんだ」
ユメミルクが、変異体デリーバートンに向かって走り出した後、ソウルは壁際にいる二人に近づいて行った。
「おい、オニオンチョップとミラストーカー」
「こいつと一緒に呼ばないでくれるかしら?私の名前が玉ねぎ臭くなってしまうわ」
「ひでぇな…おい…これでも頑張って考えた名前なんだぞ?」
「あんたの足りない脳みそで考えた名前なんて生ごみと一緒よ!」
「ひでぇ…グスン…」
ミラ・ストーカーの言葉で傷ついたオニオンチョップは、目尻に涙を浮かべたが、ソウルは何事も無かったように話を続けた。
「二人はこのまま見てるだけじゃつまらないだろう?どうだ?一緒にやらないか?」
「はぁ?何であなた達と一緒にやらなきゃいけないの?お断りよ!それにさっきまで~…っていうか今でも敵なのよ?それを誘うってどういう神経してるの?まったく呆れちゃうわ!」
「俺は別にどっちでもいいんだけどなぁ…だってあの魔装使いに勝てる自信がないし…契約がなけ」
「あんたは黙ってなさい!」
ミラ・ストーカーは、オニオンチョップの腹を踵で蹴って黙らせた後、ソウルを睨んだ。
「そういう事だからやらないわ!いや、今ならやってもいいわね?あの猪のせいで武器が壊れたんでしょ?」
そう言ったミラ・ストーカーは、怪しく笑いながらソウルに日傘を向けるが、ソウルは何事も起きなかったという様な態度で普通に話を続けた。
「その場合俺だけとじゃなく他のプレイヤー達とも戦う事になるが~…それでもいいのか?そんなのただの無謀なだけだと思うが?」
「…」
「そんな無謀よりもっとビジネス的な話をしないか?さっき契約がどうたらと言ってたが、その契約のせいで自由がないんだろ?俺達ならその契約どうにかできると思うぞ?」
「え!まじで!?やるまゴフッ!」
「あんたは黙ってなさい!…で?具体的にどうしてくれるのかしら?」
「それはやると言ってくれた時に話す。まぁ少し考えたら説明しなくても分かる物だけどな」
「はぁ?それじゃあ話にならないわよ!」
「ではどうする?ミラ・ストーカー?全部貴女次第だぞ?」
ミラ・ストーカーの目に映る目の前は男は、映画やアニメなどに出てくる魅力的な契約や甘い言葉で誘惑してくる悪魔の様に見え、差し出された手は酷く黒いものに感じた。
「(ふん!上等じゃない!いいわ!何を企んでいるのか分からないけど乗ってやるわ!その企みごと食い破ってやるんだから!)」
ミラストーカーは内心でそう思った後、ソウルの手を取らずに前に一歩踏み出した。
「いいわ、その話乗ってあげる!ちゃんと守りなさいよ?」
「ええ、もちろんだ」
「あんたは何時まで倒れているのよ!ほら!さっさと行くわよ!」
「わ…わかった!分かったから蹴るなって!」
ミラ・ストーカーは、オニオンチョップの尻を蹴りながら、変異体デリーバートンへと向かって行った。
「マスター?さっきのお話ですが…実際はどうするのですか?」
マギアの質問を聞いて、ソウルは話しても二人には聞こえない距離にいると確認した後、一拍の間を置いて口を開いた。
「…ノープランだ!」
「…ああ、やっぱり…私知りませんよ?変な事になって出来ませんでしたなんて結果になっても?」
「大丈夫だ!俺は出来るではなくと思うぞ?といったからな」
「詐欺ですね…」
「失礼な!ちゃんと口約束でも守るぞ?ただ…それが達成できるかは分からないってだけだ」
「(もしその時が来たら控え空間に入ってましょう)」
「今はなんな事よりもデリーバートンの討伐だ!行くぞ!」
「了解です」
マギアは、面倒な事が起きたらティーや銀牙達がいる空間に逃げようと固い決意をして、ソウルの後を追って行った。
あのーそのー…すみません!7380文字 18ページ分書いたのですが時間的に間に合いませんでした!
ゆるしてにゃん!……止めて!エビフライ投げないで!
まぁでも次回!次回はきっと必ず!…多分…きっと…そう思う…
モチベ維持に評価お願いします!
「ブックマークに追加する」ボタン登録もよろしくね!
いいね登録!よろしくお願いいたします!
誤字脱字報告 アザマス!




