ウェルミットの塔 6
お楽しみください!
次回更新は4月25日 0時更新です!
「お二人共お疲れ様です。どうでしたか?」
「ふぅ…はっきり言って最高ですね。重鎧装備で大型の槍や盾を持つと重すぎて使えませんでしたが、これならいけます!戦略の幅が広がりますよ!」
FJWの実験が終わり、ソウルが二人に感想を聞くと、KUNIMOは目を輝かせながら答えたが、マナリアは微妙な顔をしていた。
「何故か微妙にダメージが入ってました…」
「ん?どういうことだ?マギア何か分かるか?」
「お調べします。少々お待ちください……分かりました。FJW使用中、無呼吸のデバフが状態が付いた為に微弱なダメージが入ったと思われます」
「無呼吸?バグか何かか?」
「いえ、仕様ですね。生身状態で一定速度を超えた場合、無呼吸のデバフが付いてしまいます。なので対策として呼吸補助のマスクを身に着ければ良いと思います」
「なら俺達の出番だな!ちゃちゃっと作って来るからここで待っててくれ」
「はい」
「分かりました」
「盾に仕込んであるパイルバンカーや槍に問題はありませんでしたか?」
「パイルバンカーの位置をもう少し手元側にお願いします」
「あ、私もお願いします」
「分かりました。…自分で調節できるようにスライドパーツ付けるか」
ソウルは、二人から盾を受け取った後に製作テントに向かって行くと、ハピネスカラー隊の隊員達がKUNIMOとマナリアを取り囲み、重鎧やFJWを調べ始めた。
「あちゃ~噴射口の一部が駄目になってる…熱に耐えきれなかったのかな?」
「そこにアルミなんか使うからダメになる…もっといい金属あっただろ?」
「だって別の使うと重くなってバランスがおかしくなるじゃん?」
「…あーそうか…う~ん…じゃあ一旦全部見直した方が良いかなぁ」
「そうだねぇ。じゃあ二人共一旦脱いでくれるかな?」
二人は頷いた後、隊員達の手を借りながら、重鎧を脱いでいくと、
「着脱の方法も簡単にしないといけないな」
「ポストアポカリプスのパワードスーツみたくする?」
「背中にハンドル付けるのか?ダサくなるから却下だ!」
「いいと思うんだけどなぁ…あ!ならいっその事パージシステムつけようよ!」
「パージしたら回収が面倒臭そうだな」
「自動回収する魔法とか付ければいいんじゃね?」
「そういうのって確かソウルさんが出来たはず」
「じゃあこれ持って突撃だ!」
「「「わぁぁ!」」」
KUNIMOとマナリアの重鎧を持って、隊員達がテントの中に突撃して行くと、ソウルの驚く声が荒野まで聞こえて来た。
「ソウルさんも大変だなぁ…」
「後で差し入れでも持っていきましょう」
「そうですね」
KUNIMOとマナリアは、製作テントを見ながらそう言った。
-エインヘリャル・作戦テント横-
「あら?私が最後かしら?」
「やぁアップル。まだティカルが来てないから最後じゃないぞ?」
「そうなの?もうすぐ時間だけど大丈夫かしら?」
「時間は守る奴だから…大丈夫じゃないか?」
「そうなのね…それで~ソウルは今何をしているの?」
「一仕事終えたから…休んでる」
アップルがログインしてソウルを探すと、エインヘリャルの近くに建てられた戦略立案等に使うテントの横で、半透明で薄い青色の塊の上で大の字に寝ているソウルを見つけた。
「これスライムを改造してどこでも快適に寝れるようにした物らしい…あー…絶妙なひんやり感と心地よさですぐ寝れそうだ…」
「ソウル?本当に寝ちゃだめよ?」
「大丈夫…大丈夫…目を閉じてるだけだから…」
「それ寝ちゃう人の言い訳だから!ほら!起きて!」
アップルは、起こそうと声を掛けたが、ソウルからは返事は無く代わりに寝息が聞こえてくると、アイテム欄から中華鍋と中華お玉を取り出し、ソウルの頭がある方向に移動した。
「奥義!地獄の目覚め!」
両手に持った中華鍋と中華お玉をぶつけ合い、嫌な音を何度も出したが、ソウルの下にいるスライムベッドがソウルの耳を塞いで目覚めさせるのを防ぐと、アップルは悔しい表情をした。
「っく!このスライムベッド手強いわね…」
「うるせぇな!なんだ!?…なんだアップルの姐さんか」
アップルが悔しがっていると、テントの中からユメミルクが出て来た。
「ごめんなさいね、ソウルが寝ちゃったから起こそうとしたのだけど…」
「あーそれじゃあ駄目だ。これで寝たらちょっとやそっとの騒音じゃ防がれちまう」
「じゃあどうすれば起きるの?」
「用意するからちょっと待っててくれ」
ユメミルクは、ウィンドウを開いて誰かに連絡を取ると、その数分後にホワイトローズがミリタリー映画でよく出てくる自動車に乗って、2輪の荷車に乗った大砲をけん引して来た。
「お待たせ~」
「おう!早速だが目覚めの一発頼む!」
「まかせて~」
「え…それはやりすぎじゃない?」
「ガハハ!空砲だから問題ない!あ、耳は塞いどいた方が良いぞ?」
ホワイトローズが、隊員達と共に大砲の準備を手早く進めていき、ほんの数秒で用意が整った。
「発射よーい!!撃て!」
ホワイトローズが、赤い旗を片手で上に揚げて、振り下ろしたと同時に大砲から轟音が鳴り響いた。
「うお!!うおお!」
大砲の音に驚いて目覚めたソウルは、スライムベッドから転げ落ちた後、何事かと周りを見回した。
「「「おはようソウル」」」
「お前らは普通に起こせんのか…」
「普通の方法で起こしてもダメだったから特殊な方法で起こすしかねぇよな!」
「特殊すぎんだろ…」
「起床確認!全員撤収準備!」
「「「「了解!」」」」
特殊な方法で起こしたユメミルク達に、ソウルは呆れていると、ホワイトローズが部下に命令し、手早く撤収を終わらせて、自分達の飛行船に帰って行った。
「マスター、KUNIMOさんとマナリアさんの武装、重鎧、FJWの全ての調整が完了したのでいつでも実践投入が可能という事を報告いたし…おや?どうしました?」
「いや、何でもない…報告ありがとう」
ホワイトローズ達と入れ替わる様にして、マギアがソウルの元に来て報告を始めた。だがソウルが四つん這いだったので何かあったのかと尋ねたが、ソウルは問題ないと言いながら頭を振った後に立ち上がり、横にあるテントの中に入って行った。
-エインヘリャル・作戦テント中-
「お邪魔します」
「いらっしゃいソウルさん」
「あ、どうもシヴァ子さん居たんですね」
「…最初からいたわよ?」
「…ごめんなさい」
テントの中に入ると、ヴァルハラの副リーダーシヴァ子が挨拶してきたが、プロテウスで姿を見かけなかったので、今日はログインしていないと思っていたソウルは素直に謝罪した。
「はいこれ、ジャングルの報告書」
「確認します」
シヴァ子がデータが送り、ソウルはウィンドウを開いて、送られて来たデータの中身を確認したが、読むにつれて眉間に皺が寄っていった。
「「白いマンゴーみたいな果実がバナナの味がして美味しかったです。」「ブルーベリーみたいに纏まって実っている黒い実が色々な果物の味がして美味しかった。」「竹林で取った竹の子と松茸を米に入れて炊いたらめっちゃ旨味があって箸が止まらなかった。」他にも同じような事が書かれてますが…何ですこれ?食レポに似せた感想文ですか?」
「きっとすごく美味しかったからそう書かざるを得なかったのよ…多分…」
「そんな遠い目されながら言われても…」
「こんなの出されたら遠い目をするしかないわ…」
視線を明後日の方向に向けているシヴァ子を見て、ソウルは頭を軽く掻きながら話を続けた。
「とりあえずジャングルには危険な魔物や生き物は居なかったんですね?」
「そうみたいね」
「じゃあ拠点を塔の入り口付近に移動させますか」
「分かったわ。各方面には私が連絡しておくからソウルさん達は先行してもらえるかしら?」
「了解です」
ソウルはシヴァ子に頷き、テントから出た後、ウィンドウを開いて今ログインしている仲間達に、荒野の揺らぎの前まで来るように伝えた。
-ウェルミットの塔・叡智の門前-
「ソウル?何か問題はあったか?」
「ズゾゾ…何も起こってないな…ズゾゾゾ…」
「随分おいしそうなモノ食べてるね?」
ユメミルク達は、移動の準備を済ませて、揺らぎの中のジャングルに足を踏み入れた後、塔の門前に広がっている場所に到着すると、先行していたソウル達が適当な場所に腰掛けながら、大きな緑色の実の中身を美味しそうに啜っている光景が見えた。
「ヤシの実みたいな奴を割ってみたら冷やしラーメンが出て来た」
「私のは醤油ラーメンです!」
「私のは塩だわ」
「ヤシの実ラーメンの成分を調べてみたのですがちゃんとしたラーメンでした」
「マジか!一体どうなってんだ?」
「不思議だねぇ~…おっと!テント急いで張らないと」
ホワイトローズが、後ろにいる人達に指示を出すと、指示された人達は要領良くテントを設置していった。
「ここが最後だな…」
「そうね」
「山場ですね!」
「マスター?カドゥケウスは本当にあるのでしょうか?」
「あるはずだ」
「どんな効果なのか楽しみね」
「きっといい効果を持つものですよ!」
「楽しみだな」
「…ラーメン啜ってなきゃ良い雰囲気出たと思うぞ?それと言葉が短いのはラーメンのせいか?」
「よきにしも非ず」
ユメミルクの言葉に答えたソウルは、緑色の器を傾けてスープを飲み干した。
作者は自衛隊の近くに住んでいるので、たまに放たれる大砲(多分戦車砲)の音で起こされます。あ、私が日中に寝ているので自衛隊さん達に非は無いですよ?
ちょっとした食べ物回。
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