知恵者のカンテラ 6
今回は少し短いですがお楽しみいただけたらこれ幸いです。
次回更新は7月20日 0時更新です
-メティスダンジョン・4階層-
「ゴブリンウツベシ…ジヒハナイ…ゴブリンメッスベシ…ジヒハナイ…」
「なんかソウル…どこぞのニ〇ジャスレイヤーみたいになっちゃったわね?」
「ああなるとしばらく戻らないんだよねぇ…別のショックな出来事が起これば元に戻るかもしれないけど…」
「別の…ですか?」
ゴブリンが水路に銃を投げ落としたせいで、ソウルが狂戦士化し、3階層のゴブリンを全て殲滅した後、4階層に上がって行ったが、その階層でも目を怪しく光らせながら、ゴブリンを探し始めたソウルに対して、仲間達は、どうすれば元のソウルに戻るかティカルに聞いた。
「うん、別の。例えば突然上から女の子が降って来るとかその位のインパクトがあればいいね」
「それって宝くじの1等が当たる確率より低そうな出来事ね?」
「でもソウルさんならって思ってしまう所があります」
「あ~そうだね、前に女の子が降ってきた事があったんだけどあれって何処かの末裔とかじゃなくて暗殺者だ…あ、これ言っちゃいけない奴だった…ごめん忘れて!」
「ええ!?何それ!すごく気になる!」
「ティカルさん!それはないですよ!続きをお願いします!」
途中で話を止めたティカルに、アップルとマナリアの二人は話の続きを求めるが、ティカルは口元に人差し指をクロスさせてXを作り、首を横に振って続きを話すのを否定した。
「ゴブリンウツベシ…ア!イタァァ!」
「えっと…これはどうすればいいの?」
「笑えばいいと思いますよ?」
話を求めるアップル達やゴブリンを見つけ次第攻撃するソウルに、ジンジャーはどうするべきかとマギアに尋ねたが、マギアは一度周りを見渡した後、適当に答えた。
-メティスダンジョン・5階層-
「おや?ここは…」
グダグダな状態のソウル達でも、5階層に上がる階段を見つけて上がって行くと、目の前に謎の巨大な扉がそそり立っており、マギアはその扉にスキャンの光を当てて調べ始めた。
「これって村長が言っていたギミックかしら?」
「それっぽいですね」
「どうすれば空くのかな?なにか動かせるものは?」
「うーん近くにそういうのは無いね?」
アップル達は、扉を開く為のスイッチ等を探したが、それらしい物は何処にもなかった。
「もしかしたら別の部屋にスイッチがあるのかギミックを解いたら開くかもしれないね?」
「そうですね。ここにないとしたらその可能性が高いです」
「じゃあ、その部屋に行きましょう?ほら、ソウルもゴブリン探してないで!ほら!」
「ゴブリンウツベシ!」
未だ元に戻っていないソウルの背中を、アップルが後ろから押して左側、下側、右側にある三つの部屋の内、右側の部屋へと進んでいった。
-メティスダンジョン・5階層・右部屋-
「この部屋は理科で使うような機材が多く置いてあるね?」
「フラスコに試験管…乳鉢とか色々ありますね?」
「部屋の中心にそれぞれ赤と青と緑に縁取られた大きなタンクが3つあるけど…あれは何に使うのかしら?」
「多分だけどそのタンクに対応する液体を入れてけばいいんじゃないかな?これ見よがしに壁にレシピが張られてるし」
「実際にやってみましょうか?」
「そうね」
アップル達は、手始めに壁のレシピを見ながら、赤色の液体を作り始めた。
「えーっと…この巨大化しそうな色してるキノコを砕かないといけないのね?」
アップルは壁のレシピを見た後、近くに置いてあった原木からキノコを毟り取り、殴りつける様にして粉砕して行った。
「アップルちゃん…それは力業過ぎるよ…」
「そうかしら?」
マナリアの言葉に疑問符を浮かべながらも、キノコの粉砕を続けるアップルの姿に、ティカルは眉を寄せながら首を傾け始めた。
「(あれって生のキノコだよね?乾燥してないのになんで粉にできるんだろう?)」
ティカルは、目の前で行われている不可思議現象に困惑しながらも、煮沸する為にビーカーに水を入れ始めた。
「アップルさんこの草もお願いできる?」
「任せて!」
ジンジャーから、紫蘇に似た草を渡されたアップルは、キノコと同じ様に殴りつけて粉にした後、粉末状にしたキノコと一緒に、ティカルが用意したビーカーの中に入れた。
「後はこれを70度の温度で5分温めれば完成だね」
「簡単ね」
「そうだね、アップルちゃん」
「そうだね~」
「(果たして力業で乾燥の工程を飛ばしたのは簡単と言っていいのかな?すごく難しい事をしたと思うのだけど…)」
アップルの簡単という言葉に、ティカルは頭に疑問符を浮かべたが、それを言葉にしても意味がないと思ったので、口を閉ざして同意するように頷いた。
-5分後-
「…一応できたけど」
「全然足りなかったわね?」
「ですが試しに別の色のタンクにも赤色の液体を入れたらそのままどこかに流れて行ってしまったので、赤いタンクに赤色の液体を入れるという行為自体は間違ってはいないはずですよ?赤いタンクには残っていますし」
「量が必要って訳だね?どんどん作ろう!」
ジンジャーの言葉に頷き、アップル達は次々と赤色の液体を量産していったが、採取した瞬間から再生するように生えてきていた素材が、徐々に力を失っていくかのように、成長していく速さが遅くなっている事にアップル達は気づき、頭を悩ませ始めた。
「まだ半分も出来てないけど素材の再生スピードが明らかに遅くなったわね?」
「このまま続けたら素材が生えてこなくなっちゃうかもね?」
「どうします?」
「う~ん…割増する?」
「え?割増?出来るの?それらしいレシピは無いけど?」
「多分そこの壁にあるレシピだけではクリアできない仕組みじゃないかな?そこからどうするか?とアドリブ的な物が要求されている…っぽい?」
「アドリブ的な?…まいったわね…知識が無いわ…」
ジンジャーの言葉に、アップル達は困惑の表情を浮かべたが、ジンジャーがここぞとばかりに表情を明るくさせて手を上げた。
「はいはーい!私そういうの得意!それにさっきも言ったけど割増出来る液体も作れるよ!」
「じゃあお願いしてもいいかしら?」
「まっかせてー!」
ジンジャーは元気よく答えた後、素材が置いてある場所から、青色の斑点があるヤツデの様な大きい葉とセンブリの花に似た黒い花を摘んだ後、それらを一緒に薬研の中に入れてすり潰し始めた。
「アッツアツのお湯の準備してもらえる?それも大量に!」
「そこにある寸胴鍋くらいでいいかしら?」
「あーうん。それを二つくらいかな」
「OK、それは僕が準備するよ」
ティカルはジンジャーに言われた通り、30ℓ入りそうな寸胴に水を入れた後、煉瓦でつくられた竈に置き、薪に火をつけて温め始めた。そして、2つの寸胴に入った水が沸騰すると、薬研ですり潰した物を2つの寸動に入れてしばらく待っていると、蒸気と共に薬品の様な臭いが部屋中に広がって行った。
「かなり薬品臭って来たけど大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、この臭いには害はないから」
「「「(は?)」」」
ジンジャーの意味深な言葉で、アップル達に戦慄が走り、寸胴から後ずさりをして距離を取ったが、ジンジャーだけは鼻歌を歌いながら、2つの寸胴の中をかき混ぜ続けた。
「よし!後はこれを冷やせば完成!」
「冷やせば…あ!そういう事なら銀牙ちゃんがいいかもしれないわね?氷の息出せるし」
「あーでも…今のソウルさんは…」
マナリアの言葉を聞いた後、アップル達はソウルに視線を向けてみると、体中を鉄の鎖で拘束され、革の猿轡をされたソウルが、今にも暴れ出そうと必死にもがいている姿が目に映った。
「ゴブリ゛ン゛ン゛ン゛!!フォ゛ロ゛ブベジ!!」
「マスター!ここにゴブリンはいません!ステイ&クールダウンですよ!」
「ゴブリ゛ン゛ン゛!」
「相当プッチン状態だから無理そうね…」
「人ってああなってでも目的を果たそうとするんですね…怖いです…」
「私はあの人に向かってふざけてたの?…改めよう…」
「銃くらいであんなになるかなとは思ったけど…多分相当ストレスが溜まってたからそれが一気に噴き出しちゃってああなっちゃったんだろうね…ストレスって怖いなぁ…」
マギアに鎖を追加され、唸り声を上げるソウルの姿に、アップル達はそれぞれ感想や反省を述べた。
ソウルがバーサーカーになってしまいました!所謂バーサーカーソウルです!虫野郎のHPが無くなっても追加攻撃しちゃうアレでは多分ないです!
何故最初から大量に作らないのかと問われれば、壁にあるレシピが本当に作れるのか分からないからそして、赤いタンクに赤色の液体で本当にいいのか?と疑ったからです。一癖や二癖もあるゲームなので警戒したという訳もあります。
割増する液体はジンジャーが最初から知っていましたが、それを知らないプレイヤーにもその部屋に置いてある本を読むことで答えが未知未来ことが出来ます。ただ先ほども言ったように癖があるゲームですので、一冊の本からでは半分の情報しか乗っておらず、別の本を読んでその情報を足す必要があります。それらに気が付けるか試されているという事です。
忘れているかもしれませんが、ジンジャーは研究者です。なので色々薬品の作り方とか知っています。
知恵者のカンテラ編は長くなったら後でまとめるかもしれないです。
モチベ維持に評価お願いします! ありがとうございます!
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