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Wonderful Planet ~弱体化されまくった銃使いで頑張ります!~ Ver1.0  作者: ハーメルンホイッスル
カドゥケウス
200/329

溶け始めた少女の心

お楽しみくだゼァ!


次回更新は、5月4日 0時更新です!

「「ナナミ!」」


 デリー・バートンとオニオンチョップとの戦闘を終え、助けに来た冒険者達と共に町へと帰り、ソウル達が冒険者ギルドの中に入って行くと、一組の夫婦がナナミの名を叫び、ソウル達と一緒に入ってきたナナミに近づいてきた。


「怪我はない!?」


「何処も痛くないか?」


「大丈夫だよ…叔母さん叔父さん。ガダノスさん達が守ってくれたから」


 ナナミの言葉を聞いて、一組の夫婦は胸を撫で下ろすと、ソウル達に頭を下げた。


「うちの娘とガダノス達を助けてくれてありがとうございます!」


「先程は大変失礼しました!あんな酷い事を言ったのにうちの娘を助けてくれて…本当に申し訳ございません!」


「いえ、俺達も其方の都合も考えずに急に来てナナミちゃんと会わせてくれ、だなんて失礼したと思うのでお気になさらないでください」


 頭を下げながらお礼を伝えてくる夫婦に、ソウルが少し慌てた様子で言葉を帰すと、三人の言葉を聞いていたナナミが首を傾げた。


「ソウルさん私に何か用があったの?」


「あー…実はな…」


 ソウルは最初、言いづらそうに言葉を詰まらせたが、慎重に言葉を選びながら、ここに来た目的をナナミに伝えた。


「お父さんが作ってた賢者の杖が必要なんだね?」


「ああ」


「わかった!じゃあちょっと待ってて!持ってくるから!」


 ソウルにそう言った後ナナミは、ギルドから勢いよく飛び出し、自宅の道具屋へ向かって行った。


「持ってくるってあの子…ナリル義兄さんが残した最後の杖なのに…大丈夫かしら…」


 自宅に戻るナナミを目で追いながら、ナナミの叔母が呟くと、その呟きはソウルの耳にも届いた。





 -ビトーレ・冒険者ギルド-





「お待たせしました!」


 数十分後、ソウル達がテーブルで飲み物を飲みながら待っていると、ナナミが一本の杖を胸に抱えるようにしながら戻ってきた。


「これどうぞ!」


「…いいのかい?」


「はい!」


 ナナミが元気よく答えると、ソウルは手渡された杖を受け取り、その後ゆっくりとテーブルの上に置いた。


「マギア、スキャンだ。完全に同じ物を()()()位徹底的に調べてくれ」


「了解しました。スキャンを開始します」


 マギアはソウルの指示に頷いた後、両手からスキャン装置を展開し、杖に向かって光を照射し始めた。


「え?作れ…る?」


 ナナミは、ソウルの言葉や行動が理解できず、目を大きくさせていると、その姿に対してソウルは、ナナミと同じ目線になる様に膝を折り、真っ直ぐに目を見つめた。


「これは君のお父さんが残した大切な杖だろう?そんな大切な物を泣いている女の子から取れないよ」


「そ!そんな事ないです!村のお店は無くなっちゃったけど、売れ残っていたこの杖だけ無事だったから、何かの役に立つかな?と思ってこっちに持ってきただけですから!それに私は泣いてなんかないですよ!」


「…そんな大泣きした後のみたいな目をしているのに?」


 ソウルの言葉を聞いて、ナナミは手を目にやると、少し腫れているのが分かった。


「こ…これはさっき目にゴミが入ったからで…本当に…そんな大したものじゃ無くて…売れ残っていた物で…」


「君はそう言うけど、俺は違うと思うな…。この杖を素人目で見ても、作り手の思いが感じられるし、雑な所は一切ない。きっと君のお父さんは半端な事などはせず、丹精込めて作ったんだろう。だから大した物じゃないからと言って簡単に渡すような事はせずに、大切な宝物として扱った方がいいと思うぞ?」


「でも…必要なんですよね?…私が渡したくないって言ったらどうするんですか?」


「その時は別な方法を探すだけさ」


「でも…でも…助けてくれたお礼も…」


 ナナミが言葉を詰まらせながら、目に涙を溜め始めると、ソウルは左手でその涙をぬぐった。


「…ナナミちゃん?君は我慢しすぎているんじゃないのかい?一人ぼっちになっちゃったからちゃんとしなきゃて思い込んではいないかい?」


「……なんで…なんでそんな事をいうんですか!!さっき会ったばかりの人にそんな事を言われる筋合いはないです!!我慢するのもしっかりするのも!そんなの当り前じゃないですか!ある日突然お父さんもお母さんも死んじゃって叔父さん達の所に来たけど、私は叔父さん達の本当の子供じゃないから甘えちゃいけないんですよ!迷惑かけちゃいけないんですよ!だから!だから…」


 ソウルの言葉で、ナナミの心の奥底で(わだかま)っていた想いが爆発し、ソウルは叫ぶように声を荒げるナナミ対して、目を逸らずに真っ直ぐナナミの目を見つめ続けた。


「確かに我慢やしっかりしなきゃいけないっていう思う事も大事だ…だけどな?それは今じゃなくていいんじゃない…いや、君は賢い子だからはっきり言った方がいいな…」


 ソウルは、ナナミに問いかける様に言おうとしたが、その途中で言葉を改めた。


「君はまだ子供だ!だから甘えていいんだ!我慢するのもしっかりするのも今はしなくていい!」


「なんで!なんでそんな酷い事言うんですか!…今までずっと頑張ってきたのに…もう…もうできないじゃないですか…」


 声を上げて泣き出したナナミに、ソウルは言葉を続けた。


「そうだな…確かに酷い事だと思う…だけど俺は言う。ナナミちゃん?君はもっと甘えていいんだ。お父さんやお母さんが亡くなったから泣いていいんだ。寂しいと声を出していいんだ。大切な物を渡したくないと駄々をこねてもいいんだ。それらを許してくれる人達がいるんだから」


「うぅ…そんな人…ヒック…私には…」


「…なぁ?ナナミちゃん?君の叔父さんが俺に言った最初の言葉を覚えているかい?」


「…え?ありがとうって」


「その前だ。君の叔父さん達は()()()()を助けてくれて、と言ったんだ」


「!」


「君はさっき叔父さん達の本当の子じゃないからと言ったね?だけど叔父さん達は違うようだぞ?」


 ナナミは、近くにいた叔父と叔母に視線を向けると、二人とも今にも泣きだしそうな顔でナナミを見つめていた。


「君はもう、すでに二人の子供だったんだよ。本物とか偽物とか関係なくね」


 ソウルが、叔父と叔母がいる方にナナミを向けて、背を優しく押してやると、二人はナナミに抱き着いてきた。


「そうよ!ナナミ!あなたは私の娘…私達の娘なのよ!もう何も我慢しなくていいの!」


「ごめん…ごめんな…ナナミが苦しんでいるのが分かっていても…どうしたらいいのか分からなくて…何もしてやれない親父で…ごめんな…ごめんな…」


「わだじ…私こそごめんなざい!優じくしてぐれる二人にどう返せばいいわがらなぐで…私の為にオガーネンもいっばい必要になるじ!」


「いいんだ!そんな事は考えなくていいんだ!お前はもう俺達の娘なんだから…」


「うぅ…うわぁぁぁぁぁぁぁん…」


 今まで凍っていたナナミの心が、少しずつ溶け出していくような感覚をソウルは感じていた。ただの勘違いかもしれないとも思ったが、ソウルはそう信じたいと思った。





 -ビトーレ・冒険者ギルド-





 それからしばらくした後、泣き合っていたナナミ達も落ち着きを取り戻して、ギルド内が和やかな雰囲気に満たされていると、杖をスキャンしていたマギアが、ソウルに報告してきた。


「マスター、スキャン完了しました」


「お疲れ。必要な素材はわかったか?」


「はい、必要アイテムも制作過程も分かりましたので杖をお返ししても問題ありません」


「よし、じゃあほらナナミちゃん。この杖を帰すよ」


 ソウルは、テーブルに置かれた杖を手に取りナナミに返すと、ナナミは受け取った後、大事そうに胸に抱えた。


「ありがとう…ソウルさん。でもなんだろう…すごく恥ずかしい…」


「まぁ…あれだけ大泣きしたから仕方ないかもな?」


「あーソウルさん酷い!」


 ナナミは頬を膨らませながらプンスカ怒り出すと、ソウル達はその顔を見て笑った。


「でも泣かせたのはソウルだよね?」


「ひどいわねぇ…女の子の心を弄ぶなんて…」


「鬼!悪魔!ソウルさんですね!」


「謝罪を要求するのよう!このメニューに書いてあるデザートでいいのよう!ついでに私の分も注文するのよう!」


「あ、じゃあ私はこれお願いします」


「ちょ!お前らぁ!」


 ティカル、アップル、マナリアの三人が口元を緩くしながら冗談交じりに言い、ティーがメニュー表を開きながら注文し始めると、ジンジャーが便乗してきた。


「えっと…ソウルさんいいのですか?」


「あーもう仕方ない!()()()好きなの頼め!」


「ありがとうソウルさん!ダイスキー」


「感謝する!」


「ゴチです!」


「へへ!破産させてやるぜ!」


「すみませーん!この「ステーキ!ハンバーグ!唐揚げ!ス・ハ・カ定食ていうの3つお願いしまーす!」


「おい!?なんだお前ら!お前らに奢る訳ないだろ!店員さん!さっきのキャンセルで!おい!注文するな!あー!まじで破産するから!やめて!注文しないで!」


 ナナミが申し訳なさそうに聞いてくると、ソウルは少し困った表情をしながら許可を出したが、なぜだかギルド内に居た冒険者達がソウルの言葉に便乗し始め、注文を取り始めた。ソウルは、慌ててキャンセルと言ったが、この勢いは止める事は出来なかった。


「うぅ…くそ!どうすれば…このままだと破産する…」


「これはしょうがないですな。ツケにしておきますよ」


「え!?誰!?」


「このギルドの支部長を任されているバズ・レフトという者です。よろしく!あ、ミレーヌさん!私は金剛酒と何かつまみをお願いします」


「えぇ!?支部長!?あんたもか!?…って!金剛酒ってこの中で一番高いやつじゃねぇか!やめてぇ!」


「ほっほっほ!もう止まりませんな!こんだけ騒がれてしまえば業務を続ける事は困難ですし、もう今日はこの宴会に参加するしかないですな!」


 ソウルが困惑している中、勤務時間内の支部長ですら参加し始め、ソウルは頭を抱えながら必死に考え始めた。


「(どうする!?どうする!?確実に払えないぞ!?ツケにしてやるって言ってたけど所謂(いわゆる)借金だろ!?駄目だ駄目だ!借金なんかしたら払い切るまでここに拘束される!やべぇよ…やべぇよ…どうすれ…あ!そうだ!)」


 ソウルが、必死に考えていると一つの救いになる事を思い出し、その救いを実行する為、息を大きく吸った。


「すみませぇぇん!請求はユニオン「ヴァルハラ」のユメミルクっていうユニオンマスターにお願いしまぁぁす!」


「はぁーい、分かりました~」


「ふぅ…これで良し!」


 友人の財布で支払う事にして、独特なポーズをした後に席に座った後に一息ついていると、右後ろから圧迫感を感じた。


「おい!お前!」


「今度は何だ!?」


 ソウルは、圧迫感を感じた方向に視線を向けてみると、一人の少年がソウルを睨みながら話しかけてきた。


「お前…ナナミちゃんを泣かせたな!」


 少年は、睨み殺してやると訴えてくる目でソウルを見てくると、ソウルは少年の言葉に少し考えた後に頷いた。


「まぁ、確かに泣かせたな?」


「謝れ!ナナミちゃんにあやま…れへぁ!」


 少年が叫ぶように言ったが、その途中でナナミの叔母が少年の後ろに現れ、頭を引っぱたいた。


「あんた何してんのよ!すみませんソウルさん!うちのバカ息子が…」


「なんだよ!かーちゃん!こいつはナナミちゃんを泣かせたんだぞ!謝らせるべきだろ!」


「いいのよ!っていうかあんた今までどこにいたの!?ナナミが大変な事になっていたのよ?探したのに見つからないし…何処ほっつき歩いていたの!?」


「え!えーっと…ジョージと剣の修業を…」


「何が剣の修業よ!あんなへっぴり腰の剣術なんか何の役にも立たないわ!っていうかあんたまた修練場に行ってたのね!?あそこは13歳以上じゃないと入っちゃいけない場所だって何度も言ったわよね!?」


「いいだろ!?別に!何の問題もないんだしさ…」


「おバカ!問題が起こってからじゃ遅いのよ!年齢制限があるのはちゃんとした理由があるからなのよ!?ちょっとこっちに来なさい!今日はとことんその身に教え込んでやるから!あ…おほほ失礼しますねソウルさん」


 叔母は、愛想笑いをしながら少年の襟首を掴んだ後、そのままギルドの外へ引きずっていった。


「…なんだろう…少し…少し疲れた…疲れた時は甘いものだな…すみませーん注文お願いします」


 もうすでに宴会となったこの場所の支払いは、すべて友人(ユメミルク)の支払いになったで、ソウルは気兼ねなくお高いスイーツを注文した。

ソウルは、ナナミと最初に出会った時から違和感を感じていました。無理して笑顔を作っていると感じた訳です。


私達を助けてくれたお礼をしなきゃいけない→ソウルさん達はお父さんが作った杖を欲している→渡したくないけど渡さないと叔母さん達に迷惑がかかる→でも私が我慢すれば何の問題もないよね…とナナミは考えていました。

そしてソウルは、この子は感情を爆発させないと本音を言わない子だろう察し、目を見て向き合ったのです。このまま何もしなければナナミの心が壊れると気づいたから、問いかけを止めてはっきりと言ったのです。


読者の皆さんは素直に本音を言えますか?心が悲鳴を上げる程我慢していませんか?もし誰も聞いてくれる人がいなかったら、一人カラオケ行きましょう!そこで叫ぶように歌えば少しくらいはスッとするはずです。


冒険者達に便乗されてしまう。みんなと言ってしまったからシカタナイネ!


支払いが友人である為、高い物を頼むソウル。ちゃっかりさんメ!







モチベ維持に評価お願いします! ありがとうございます!


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誤字脱字報告 ありがと↑ー

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