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Wonderful Planet ~弱体化されまくった銃使いで頑張ります!~ Ver1.0  作者: ハーメルンホイッスル
冒険への準備編
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さぁ!冒険だ!でもその前に…

「こいつはすげぇ…まるでリアルだ…」


 目の前に広がっている光景は、石畳が敷かれた大通りの先に、中世ヨーロッパのような白くところどころクリスタルで出来た大きな城があり、街にいたっては木造の建築物が区画ごとに綺麗に並んでいた。


「触感もリアルと変わらない…街の匂いもする…人もまるで生きてるようだ…最新のFDVR機器ってすごい…」


 田舎者が上京したような気持ちで、あちこち見ながら大通りを進んでいくと円形に広がった噴水広場があった。


「とりあえず機能を確認してみるか」


 ソウルはベンチに腰掛け半透明のウィンドウを出した。


「マップに始まり、アイテム欄、メール、チャット設定に~称号設定…ん?NEWがあるなんだろう?」


 称号の欄を人差し指で押し、スクロールしていくと一つの称号が追加されていた。


「銃神のお気に入り…【銃神マテリアルに気に入られた者に贈られる称号 HP+100 STR、DEX+5 】か」


 何気にその称号を押してみると別のウィンドウが開いた。


【強くなって銃使いの良さをアピールするのじゃ!そうすれば我も成長して新たな力を授けることができるのじゃ!頑張るのじゃ!頑張るのじゃ!(必死】


「重要の事だから二回書いてあるのかな?」


 ウィンドウを閉じ他の欄をいじってみるが、大体が???になっていたりマップにいたっては自分が通った場所以外は全部真っ黒になっていた。


「唯一できる事はクエスト欄にあった【初めてのクエスト】か、やってみるか」


 クエスト欄に乗っていた【初めてのクエスト】をアクティブにすると説明書きが別ウィンドウに出てきた。


 【このクエストは自由に不慣れな人向けです。まずは何をしたらいいのかわからない人は光が指し示すガイドに従って目的地まで移動しましょう】


「FDは初めてだしこのまま指示に従ってみるか…まずは冒険者ギルドか」


 ソウルは、自分の足元から光っている青い線をたどっていくと、道半ばで小さな脇道に目が付いた。


「ふーむ脇道か…よし! 寄り道こそRPGの醍醐味よ!いざ無限の寄り道へさぁいくぞ!」


 ソウルは脇道に一歩足を踏み入れた瞬間女性の悲鳴が聞こえてきた。


「うお!イベントか!」


 女性の声がした方へ向かってみると少女が4~5人の男に囲まれていた。


「へっへっへ…嬢ちゃん! いい(もの)持ってんじゃねえぇか! 俺らがたっぷり可愛がってやるよ!」


「いやぁ…近寄らないで…誰か助けてぇ…」


「誰もこんなところに来やしねぇよ!だから存分に泣いて叫びな!」


 泣きじゃくる少女の、結構大きいモノに手を伸ばそうとしている光景に、ソウルはフリントロックピストルを抜こうとしたが…


「街では武器は抜けませんだと!」


 腰にある銃が、まるで縫い留められたように動かなくなったことに驚き、急いで何か別の方法はないか探すと足元にいい大きさの石があった。


「なるほどこれを投げればいいんだな!」


 石を拾い全力で投げると、見事に手を伸ばしている男の頭に当たり、男は動かなくなった。


「なんだてめぇは!」


 倒れた男の仲間の一人が、ソウルに気が付くと腰のナイフを抜き、ソウルにナイフを向けた。


「ただの通りすがりです!悪漢を見つけたのでとりあえず石を投げてみました!」


「んだと!このやろぉ!ふざけやがってぇ!」


 ナイフ男が逆上し、ソウルを刺し殺そうと走り出すが、すでにソウルは二投目の準備を終え石を投げた。


「あ!」


「ご…ふぉ…」


 だが投げた石は、見事にナイフ男の股間に当たってしまい、股間を押さえながら倒れた。


「まぁいいか!…警告する!この男みたいになりたく無いのならこの場から消えろ!」


 ソウルは残りの男達に警告すると、男達はどうしていいかわからない様子になり、仲間たちをきょろきょろと見渡すだけで動こうとはせずにいたが、ソウルが威嚇するようにそこら辺にあったものを、投げるような仕草をすると顔を庇うような動きをした後逃げ去っていった。


「倒れてる奴らも回収していけ!馬鹿もん!」


 逃げ去っていく男達に向かって投げると、今度は尻に当たり男達は、倒れている男二人を回収してどこかに消えていった。


「さて…大丈夫です? お嬢さん?」


「え…あ…はい…大丈夫です」


 涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭い、少女は立ち上がろうとするが、腰が抜けたのか立ち上がれなくなっていた。


「あーとりあえず俺の背中におぶさってください、ここはちょっと危ないっぽいので…」


「え…あ…でも…その…」


 どうやらおぶさるのが恥ずかしいのか、顔を赤くしながら戸惑っている少女に、背中を見せながら待っているがいつまでたっても来ないので少し強引に少女を背負った。


「ごめんね!恥ずかしいと思うけどここは危ないから急いで移動しますよ!」


「ひゃ!ひゃい~」


 顔が真っ赤になった少女が、ソウルに背負われたまま元の冒険者ギルドへ向かう道まで戻ってくると、クエストが更新された。


【腰が抜けた少女を父親の元に送り届けよう!】


「ふむ…なるほど…」


「あの…? どうしました?」


「いや、何でもないですよ ちなみにあなたのお父さんはどこにいるか分かりますか?」


「え?父様ですか?父様は冒険者ギルドにいると思いますが…」


「じゃあそこに向かいますね!私も冒険者ギルドに用があるので」


「あ…はい‥」


 二人はその後特に会話しないまま、冒険者ギルドへたどり着きギルドの中へ入っていった。


「うぇい?! ど…! どうしたのです!? ローラ様!?」


 受付の女性が、入ってきた二人に驚き慌てて近寄ってきた。


「どうやら悪漢に襲われたようです、一応手が出される前に撃退したので問題ないと思いますが恐怖やなんやらで腰が抜けたみたいだったので、こちらに親がいると聞き運んできました」


「それは…どうもありがとうございます!あーっとそこのあなた急いでギルドマスター呼んできて!」


 受付の女性が近くにいた同僚の男性に声をかけると男性は慌てて呼びに行った。


「とりあえずこちらにローラ様を…」


 受付の女性が近くにあった椅子をソウルに向けるとそこにローラを降ろした。


「ロォォォォォラァァァァァァァァァァ!」


 ギルドの二階の方から、重い物が連続して落ちてくるような衝撃音と、獣のような大声が聞こえてくるとその場にいた全員が驚き二階の方に顔を向けた。


「ロォォォォォラァァァァァァァァァァ! だいじょぉぉぉぶかぁぁぁ? なにがあったぁぁぁぁ?」


 その声の主が二階から飛び上がり、空中三回転を決め、座っているローラの目の前に着地すると、大剣を背負った髭面の大男がローラと目線を合わせた。


「どうやら悪漢達に襲われていた所を助けられてこちらへ運ばれてきたようです」


「なぁぁぁぁにぃぃぃ? ちょっとそのくそゴミ共を微塵切りにしてくらぁ!」


「!? おまちください! ギルドマスターが暴れると街が半壊しますのでそれはほかの者たちにお任せください!」


 受付の女性が慌ててギルドマスターを止めると、大男は何か葛藤していたがため息を吐き諦めたようだった。


「おうてめぇら! 俺からの特別クエストだ! 俺の娘に手ぇ出そうとした馬鹿を始末してこい!」


 【アナウンス:冒険者ギルドにて特別クエストが発行されました。これより現実時間24時間まで受注できます。詳細は冒険者ギルドの受付まで】


 突然、最初のキャラクター作成の時に話したコレットの声が、どこからともなく聞こえてくるとその場にいたプレイヤーらしき人たちが受付に群がった。


「ああ、大変! 受付に戻らなくちゃ!ギルドマスター、この方がローラ様をお助けしてくださった方です!後の対応はお任せします」


「おう!任せとけ!」


 受付の女性を見送りソウルの向きあった大男が急に抱き着いてきた。


「うぉぉぉ!俺の宝をよく守ってくれた!感謝するぅ!」


「え? うわ! ちょっと! 折れる! ちょ! 何かでそう!」


 両腕ごと抱きしめられ右左に揺らされたソウルは命の危険を感じた。


「父様! 放してあげて! 彼が死にそうです!」


「おお! すまん! うれしすぎてつい…」


 解放されたソウルは、口から魂が半分出ていた。


(おかしいな…痛覚は遮断しているのに痛いぞ…あれ?)


「ん?お前来訪者か?それもこちらに来て日が浅いと思える」


 ギルドマスターの言葉に、ソウルは立ち上がり頷いた。


「はい、そうです さっきこっちに着いたばかりですよ」


「おお!そうか!じゃあうちで登録してけ!俺の宝を助けてくれたことに免じて登録料と紹介状は免除してやる!」


 ギルドマスターが豪快に笑いながら一枚の羊皮紙を差し出した。


「そこに必要項目を書いて受付に渡せば身分証がもらえるから大事にしてくれ! それとこれをやろう! これはこの街の地図だ!」


「ありがとうございます!」


「がっはっは!いいってことよぉ!」


【アナウンス:【ギルドマスターの娘を救え】をクリアしました!報酬として身分証作成書類 地図(アークライト城下町) マジカルストーン1個 カルマ+10 4000オカーネン 300SP を獲得しました】


「やったぜ!」


「今は受付が混んでるから書類は後でいい」


 ギルドマスターが、そういうとローラと会話し始め、このクエストが終わったような雰囲気をだしていたが、ソウルは一つ疑問があった。


「…でもなんであんなところにこの少女はいたのだろうか?」


 ソウルはつぶやくように言うとローラがソウルを見て少し困ったような顔をした。


「実はある物を探していて…街の人に聞いて回っていたら男の人がそれを持ってる人がいる場所に案内すると言われてそれで…」


「それでホイホイついて行ってしまったと…」


「はい…」


 ローラの言葉に、ギルドマスターが目に手を当て、言葉に出来ないような仕草をすると、悲しい声でローラを叱った。


「探し物しててもやばそうな男にひっかかっちゃだめだよ…俺の宝よ…」


「ごめんなさい…父様…でもどうしても諦めたくなくて…どこを探してもなくて…」


「その探し物ってどんな物です?」


「慈愛の女神フィーメル様と戦闘の男神ウォーリャ様が彫られたブローチです…」


「おいそれって…」


 ギルドマスターが驚きローラがますます落ち込んでいった。


【アナウンス:【連続クエスト2/少女の落とし物探し】を発見しました。アクティブにしますか?】


 ドアベルが鳴るような音と共に、ソウルのチャット欄にアナウンスが表示され、はい、いいえのウィンドウが出てきた。


「やって損はないか…」


 ソウルは はい を選択しクエストをアクティブにした。


【アナウンス:【連続クエスト2:少女の落とし物探し】が有効になりました。対象NPC求めている物を探し渡してあげよう!】


 チャット欄に表示されソウルはローラに顔を向けた。


「俺が探してきてあげますよ!」


「え?!本当ですか?お願いします!亡くなった母の形見なのです!とても大事な物なので本当に助かります!」


「で~どこで落としたかわかりますか?」


「大通りにある彫金屋さんの所にブローチのピンを直してもらおうとして、お店に向かっていたのですが、噴水広場で人とぶつかってしまい…多分その時に落としたのだと思います…」


「噴水広場ですね 早速行ってみます」


「お願いします」


「おう!俺からも頼む!どうか見つけてやってくれ…」


 二人に頭を下げられソウルは頷くと噴水広場に向かって行った。


「おおっと?ブザーが鳴った!」


 その道半ばで機器の体調管理が警告を発しログアウトを促した。


「ログアウト~ログアウト~」


 その場に立ち止まり、ログアウトボタンを押すと、意識が現実世界に引き戻されると尿意が襲ってきた。


「う~トイレ トイレっと~」


 急いでトイレに駆け込み、用を済ませた後出ると、総一郎の腰辺りを超えた身長の女の子と出くわした。


「あ、総兄ぃ 新しいゲームはどう?」


「有栖か、おう! すごいぞ! いろいろすごすぎて語彙力が無くなるほどすごいぞ!」


「へ~よかったね! バイト頑張ったもんね! 総兄ぃめっちゃ美人だから雇ってもらっても一週間で店長が土下座して総兄ぃに解雇を言い渡しても、あきらめずにほかのバイトを見つけて~を繰り返して買った最新の機器だもんね!」


「悲しみを刻んでくる説明ありがとうよ…」


 総一郎は崩れ落ち床に手をつくが、有栖は両手に一つづつ持っていた市販の大きなプリンを、一つ差し出した。


「これ食べて元気出しなよ」


「ありがと…ってこれ俺の分じゃねぇか!俺の分まで食おうとしやがったな!」


「…えへ」


 有栖は逃げるように自分の部屋に向かって行った。


「しょうがねぇな…」


 台所に向かいプラスチックのスプーンを取り出すと、プリンのふたを開け味わうように食べ始めた。


「旨し、甘し」


 プリンを楽しんでいる途中で、玄関が開く音が聞こえビニール袋を床に置く音が聞こえた後、台所に女性が入ってきた。


「あれ?総一郎一人?」


「ああ、母さん お帰り」


「ただいま、有栖と美咲は?」


「姉さんは愛単車(バイク)で友達と日帰りツーリングしに行ったよ、有栖は自分の部屋だよ」


「そう…でもね…総一郎、お母さん心配だわ…有栖はまだ小学生だからいいとして上と下はいい歳なのに恋人を作らず趣味に没頭するなんて…誰かいい娘いないの?」


「いないよ…でも母さん…その話姉さんにしちゃだめだよ?先日まで好きな男性に告白しようとしてたらしいのだけど、どこぞのポッと出の女性にとられちゃったらしいんだ…」


「あら…そうなの!? …今日の晩御飯は豪華にしてあげなきゃね…総一郎はそういうのいないの?」


「だからいないってば!」


「何なら母さん…総一郎がハーレム築いても応援するわよ?!」


「ええ!?なんでそうなるのさ!?」


「総一郎はめちゃくちゃ美人だしそういうことになってもいいとおもうの?」


「それ関係あるかな?!…母さんは俺をいったいどうしたいの…」


「えっと~ハーレム王?」


「母ぁ…」


 母親が口元は笑ってるが目が本気(マジ)な事に引いていた。


「それが嫌ならちゃんと見つけなさいね!」


「あ~ハイハイ いつかね~」


 母親の言葉を適当にあしらい、自分の部屋に戻ると、スマホにメールの着信があることに気が付いた。


 件名:どういう塩梅?


 [いよう!坂田だぜ!3週間ぶり!最新のFDVR機器どうよ?さっそくやってみたんだろう?

 感想を教えてくれ!]


 件名Re:どういう塩梅?


 [おひさー! すごすぎるぜ!何がすごいかっていうと語彙力が低下してすげぇしか言えなくなるくらいすごいぜ!]


 件名 Re:Re:どんな塩梅?


 [まぁじかよ!俺も買い替えようかなぁ…

 で!最初から入ってるWonderful Planetでキャラ作ったんだろう?一緒にやらないか?OK?

 ]


 件名 Re:Re:Re:どういう塩梅?


 [OK!(ズドン)]


 件名 Re:Re:Re:Re:どういう塩梅?


 [じゃあ噴水広場で待ち合わせナー]


 件名 Re:Re:Re:Re:Re:どういう塩梅?


[ういうい~]


 総一郎はスマホを机に置きヘルメットをかぶるとさっそくログインした。



総一郎がハーレム王になって昼ドラ展開を目撃するのが秘かな母親の秘密。


21/02/26 修正しました


21/03/24 誤字報告大感謝です!修正しました!

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