2つの約束
先週、更新が止まった事を深くお詫びいたします!PCが無事退院しました!新しい体になって…
思わぬ出費で破産しそうですが頑張っていきたいと思います!
お楽しみください!
次回更新は、3月16日 0時更新です!
「あ゛~…やっと終わった~…」
三つ巴の話し合いから数日が経ち、その間自室で原本の翻訳作業を続け、先ほどようやく終わると、総一郎は椅子の背もたれを傾けさせて、体を伸ばした。
「お疲れ様です、マスター」
「長かった…」
携帯の画面にいるマギアが、総一郎に労いの言葉をかけると、総一郎は片手で目元を抑えながら返答した。
「流石に根を詰めすぎたな…」
「目に疲労感を感じるならまばたきを意識的にしたり、遠くを見たり、蒸しタオルやホットアイマスクが有効ですね」
「ホットアイマスクか…あれ?そういえば姉さんがそういうの持っていたような…」
ホットアイマスクと聞いて、姉の美咲がそういうのを持っていたような?と思い出すと、総一郎は椅子から立ち上がり、姉の部屋に向かっていった。
「姉さん?ちょっとホットアイマスクとかあったら貸して…うわぁ…」
総一郎は、姉の部屋の扉をノックして、中から声がしたのを確認した後、扉を開けながら要件を伝えようとしたが、その部屋が悲惨な状況になっていて、言葉の途中で不快感を呟いてしまった。
「ん?何?総ちゃん?」
「姉さん…この汚部屋は何?どうしたらここまで酷くなるの?」
「んー?別に普通じゃない?」
「これで普通はありえないよ…」
総一郎は、姉の言い分を否定した後、もう一度部屋の中を見回してみた。その部屋の中は、脱いだ服がいくつも散乱しており、中身がなくなった食品用包装のごみや酒瓶、酒の缶等が炬燵台の上に積まれていた。
「母さんが見たらガチギレ必須案件だよこれ…」
「大丈夫!大丈夫!ばれやしな…あ!…」
美咲が調子に乗った言い方で笑っていると、丁度そこに母の早織が通りかかり、美咲と目が合った。
「…何この部屋?」
「えっと~…新感覚の部屋もよぅ…痛だだだだだ…!」
ふざけた事を抜かして来た美咲に対し、早織はアイアンクローでのお仕置きを執行した後、首だけ動かして総一郎に顔を向けてきた。
「総一郎?この馬鹿姉に任せていたら何時までも終わらないから手伝ってやりなさい」
「え!?なんで俺!?俺もちょっと忙し…ア、ハイ」
総一郎は、理由を付けてやりたくないと言ったが、早織の睨みが鬼の般若に似ていた為に素直に従った。
「夕飯までに片付けなさいね?あと、ちゃんと分別もするのよ?」
「えーめんどくさ…あだだだだだ!わかりました!ちゃんとやりますぅー」
再びふざけた事を抜かし始めた美咲に、早織はさらに力を込めた。
「ちゃっちゃとやる!ゴミ袋は台所にあるから!」
「へーい」
早織は、美咲を適当に放り投げた後、総一郎に指示を出した。指示を受けた総一郎も渋々従い、ごみ袋を取りに向かった。
「ううぅ…なんでこんな目に…」
総一郎が廊下に出た時、適当に放り投げられた美咲からそんな言葉が聞こえると、総一郎は心の中で「それは姉さんがちゃんとしていないからだよ…」と思いながら、一階へと降りて行った。
-自宅・総一郎の部屋-
「ふ~…」
「マスター、これからログインなさいますか?」
「あー…今日は翻訳完了した事を皆に伝えるだけにしておこう。明日から土曜日だし丁度いいと思うしさ」
「了解しました。…それでマスター?ホットアイマスクを借りる事は出来たのでしょうか?」
「あ!」
マギアの言葉を聞いて、総一郎はハッと思い出した。姉にホットアイマスクを借りに行ったが、そのまま姉の部屋を片付ける事になり、数時間の清掃で奇麗にした後、すぐに夕食が出来たと母に言われて、食事を済ませてきていた。この「数時間の清掃の時」にはもう、ホットアイマスクの事は忘れてしまっていて、ただ奇麗にする事にしか頭になかったのであった。
「借りに…いや、もういいか…」
総一郎は、もう一度姉の部屋に行って借りてくるというのが億劫に感じ、もういいかと考えた後、ログインする為に椅子に座り、FDVR機器を頭に取り付けた。
「ちゃちゃっと連絡して寝よう」
「ログインしていない方には私からメールを送っておきますね」
「ん?それって…あーまぁいいか…何でもない」
マギアの言葉に、思い当たる事があったが、総一郎は疲れていた為に考える事を止めて、ログインを開始した。
-翌日・インペリアルホテル-
翌日の朝、ソウルや仲間達はジンジャーがいる部屋に集合した後、原本の事について話し合っていた。
「ソウル出来たのね?」
「ああ、今から翻訳した物を皆に渡す」
ソウルはウィンドウを開き、翻訳した原本のデータを全員に配った。
「おー!これが…」
「80ページ近くありますよ!?この量をソウルさん一人でやったのですか!?すごいです!」
「当時使われていたスラング的な物もあって大変だったんじゃない?」
「ああ、もう翻訳というより解読に近かったけど何とか出来たよ。そういうのは纏めて※の欄にあるから参考にしてくれ」
「わかったわ」
ソウルの言葉にアップル達は頷き、渡されたデータを読み進めていった。そしてその数十分後、全員が読み終えるのを確認したソウルが口を開いた。
「皆、43ページを見てほしい」
「43ページ?…えっと確か何かの遺跡について書かれていたわね?」
「そうだ。その遺跡の名前は「ウェルミットの塔」というらしい」
「ウェルミットの塔…ソウルさん?もしかしてそこに?」
「確かめた訳ではないから100%とは言えないが、そこにカドゥケウスがある確率が高いと思う」
「じゃあそこに行けばいいのね?」
アップルはやる気に満ちた目をしながら言ったが、ソウルはその言葉に首を横に振って否定した。
「いや、その前に集めなきゃいけないアイテムがある」
「えっと~ここに書かれている「知恵者のカンテラ」と「隠者の杖」それと「賢老のローブ」っていうやつですか?」
マナリアが、渡されたデータを見ながら答えると、ソウルはその言葉に頷いた。
「その三つを集めないと「ウェルミットの塔」には入れないらしい」
「おーいいわね!ちゃんとそれらしくなってきたじゃない!テンション上がってきたわ!」
「で?どれから始めるの?」
アップルのテンションが上がり、今後の展開に期待すると、ティカルが最初にどのアイテムを集めるのか聞いてきた。
「「隠者の杖」から行こうと思うのだがどうだろうか?ここからそう遠くない所にあるっぽいし」
「いいんじゃないかな?」
「私もいいわよ」
「問題ないです」
「じゃあ、最初に集めるのは「隠者の杖」から始めよう。で~場所なんだが~…」
仲間達の頷きを確認したソウルは、マップが表示されているウィンドウを、全員が見れる程の大きさに拡大して表示させた。
「原本に書いてあった文章を見るに、その「隠者の杖」があるのはこの学術都市から真南に行った所の「ムムプ村」という所にあるらしい」
「きっとその村で起こっている厄介事を片付けたら「隠者の杖」が手に入るって訳ね!」
アップルが、よくあるRPGの展開を予想して言ったが、ソウルはその言葉に表情を曇らせた。
「このゲームって予想の斜め上を行くイベントが多いし…そんなすんなり行くか?」
「あ~確かに…」
「多分大丈夫じゃない?制作者もそこまで異常な物用意してないわよきっと」
「そうだといいなぁ…でも、一応念入りに準備をしておこう」
「そうですね。何が来てもいいように準備しておきましょう」
マナリアの言葉に、その場にいた全員が頷くと、今まで静かにしていたジンジャーが、申し訳なさそうに手を上げて来た。
「どうしました?」
「あのー…その冒険に連れてって貰えませんか?」
ジンジャーの言葉に、ソウルは「(まじかよこいつ…)」と思いながら、ついてきたい理由を尋ねた。
「なぜです?」
「その「ウェルミットの塔」に両親の遺体があるかもしれないからです…」
「親御さんの?」
「はい。私の両親は学者の他に冒険者を兼業してたのですが、ある日突然帰ってこなくなって…それで調べてみたら「ウェルミットの塔」に行った事は分かったのですが…」
ソウルは、表情を曇らせたままジンジャーの話を聞いていたが、一度だけため息をついた後、ジンジャーの目を見つめた。
「今の状況を理解していますか?それでもついて来たいと言っているのですか?」
「はい…」
「…いいでしょう。ただし!」
ジンジャーはソウルの許可に喜んだが、その後に続く言葉に緊張した。
「ついてくるというなら護衛対象じゃなく一人の仲間として扱う。そして、俺達と行動を共にする間は自分に対する甘さを一切捨てる事。この二つ…出来るか?ジンジャー?」
「はい!お願いします!」
「と、言う事だ皆…勝手に決めて済まないとは思うがよろしく頼む」
「問題ないわ!」
「頑張りましょう!ジンジャーさん!」
「よろしくねー」
「よし、再集合は今から2時間後ホテルのロビーだ」
「「「「了解!」」」」
仲間達は威勢よく言った後、準備に取り掛かった。
最初の目的を忘れてしまうなんて事、皆さんは経験がありますか?そして後で思い出して、もういいかと思う事はありますか?
姉は汚部屋の主、そして母親に怒られる…
掃除はちゃんとしておきましょう。
とある場所に入るには○○が必要…RPGだとよくあるものだと思います。
ジンジャーがPTに加入しました。
ジンジャーさんの性能は次週公開!(予定)
モチベ維持に評価お願いします! ありがとうございます!
「ブックマークに追加する」ボタン登録もよろしくね! 登録ありがとうございます!
いいね登録!よろしくお願いいたします! 登録感謝です!
誤字脱字報告 ありがとうござりす~




