蟲惑魔
お外は猛吹雪ですが、お楽しみください!
次回更新は2月2日 0時更新です!
「この町だな?」
「はい、間違いありません」
「町の入り口に降りる?」
「いや、俺達は秘密裏に行かなくちゃいけないからこのまま町の中に入って人気のない所で降りよう」
ソウル達は、インペリアルホテルから西に向かって飛翔し続け、ロルドルの町の上空に辿り着いた。ソウルは町を見下ろしながら、この町で間違いないか?とマギアに尋ね、マギアは間違いないと答えた。マギアの言葉を聞いた後、ティカルが町の入り口から入って行くがと聞いて来たが、ソウルはその言葉に首を横に振って否定し、その理由を伝えた後、町の片隅にある半ば朽ちている廃墟を見つけて、そこに降りて行った。
「誰にも見つからない様にここから装備を付けて行こう」
「何処の誰が繋がっているか分かんないからね。了解したよ」
ソウルとティカルは、アイテム欄から潜入装備を取り出し、しっかりと身に付けた。
「確か~この町の一番大きい娼館の「蟲惑魔」って言う店にいるって話だったな?」
「うん、でも上から見た時は大きい建物が3つあるのが見えたけど…どうするの?」
ソウル達が、上空から見下ろした時に見えた大きい建物は3棟あり、1棟目は町の北側にある、尖った屋根とその下に大きな鐘が吊るされている建物、2棟目は中心部から離れた南東で、工場にある様な背の高い煙突から白い煙を出している建物、そして3棟目は町のほぼ中心で、派手に装飾されていて、異様に存在感を出している建物がこの町にあった。
「町の中心にある奴だと思う」
「異様に存在感出してたアレ?」
「ああ、あの建物がある通りには人も多かったし、あれだけ派手にしてるんだ。違うと言うのがおかしいと思う」
「そうだね。じゃあ、早速そこに向かおう」
ソウル達がティカルに頷いた後、路地裏や明かりの無い暗い道を駆使して人目を避けながら、町の中心にある建物へと向かって行った。
ー 蟲惑魔に近い路地裏 ー
「うぅ・・・あぁぁ・・・」
「ん?」
ソウル達が、蟲惑魔まであと数十メートルという所の路地裏を歩いていると、その道脇で呻く様な声を上げている男が力なく座っていた。
「・・・薬物依存者か?」
「ソウル?何か気になることでも?」
「いや、何が原因でこうなったのかと思ってな・・・」
「マスター?調べてみますか?」
「ああ、頼む。なんでかは分からないけど調べた方がいい気がするからな・・・」
「了解しました。少々お待ちください」
「呻いている男を調べた方がいい」とソウルの勘が告げてくると、ソウルはマギアの言葉に頷き、調べる様に頼んだ。ソウルの頷きを確認したマギアは、両手から様々な道具を出しながら、呻いている男に近づいて行った。
「(近づいて行く姿がB級ホラーだ・・・)」
「はい、アーンしてくださいね〜」
楽しそうに男を調べているマギアを見て、ソウルが口を真一文字にしながらそう思っていた。
「はい、では次にお尻をだし…」
「ちょ!待て!マギア!そこまで調べなくていい!」
「え!?なぜですか!?ここは徹底的に調べておかないといけませんよ!?…あ~大丈夫です!」
「おい…一応聞いておくが何が大丈夫なんだ?」
マギアが、調べる必要のない所を調べようとして、ソウルが慌ててマギアを止めると、マギアは最初不満を言うように反論していたが、その途中で何かを察し、意味深長に大丈夫だと言った。
「これは医療行為なので何も恥ずかしい事ではないですよ?マスターはそこを御心配なされているのでしょう?」
「アレだから恥ずかしくないもん!みたいに言うんじゃない!そこは調べる必要が無いから止めたんだ!」
「ソウル、声、声大きい」
「あ…すまん…」
マギアの見当違いな発言に、ソウルは思わず声を荒げて否定してしまい、人差し指を口に当てたティカルに声の大きさを注意されてしまった。
「マギア…調べるのはそこまででいいから今解っている事を教えてくれ…」
「ではウィンドウに表示しますね」
マギアが、自身の前にウィンドウを開いて何かを入力し始めると、その数十秒後にソウルとティカルの目の前に、呻いている男の検査結果が記載されたウィンドウ開いた。
「うわ!デバフ山盛り…」
「疲労に病気、意識混濁、ダウン、虚無、魅了、幻惑…他にもたくさんあるな。なぜこんな事になった原因は分かるか?」
「はい。この薬瓶の中に入っていた薬を過剰摂取した為だと思われます」
マギアは、桃色の液体がほんの少しだけ残っている小瓶を、ソウルに渡した。
「これは何処で?」
「この男性が手に持っていました」
「中身は何か分かるか?」
「媚薬です」
「…媚薬?」
「はい。スキャンして調べて見たのですが媚薬だと結果が出ました。…ですが、他にも色々混ざっている為、純粋な媚薬ではなく麻薬の類だと言って良いでしょう」
「えっと~つまりこれは媚薬だけど色々ヤバい奴が混ぜてあるって事?例えるなら普通の風邪薬に覚せい剤が混ぜてあるみたいな~…」
「そうです」
「ヒェ…」
マギアの頷きに、ティカルは戦慄した。
「…」
ソウルは、眉間に皺を寄せながら口をつぐみ、ピンク色の液体を見つめていると、マギアが話しかけて来た。
「マスター…私、このスキャン結果を見て思い当たる節があるのですが…」
「ああ、そうだな…それは俺にもあるが~…今は止めておこう。ジンジャーさんを助けるのが先だしな」
「分かりました。私の方でもっと詳しく調べてみる事にします。それでこの男性はどうしますか?」
「…ほっとけば死ぬよな?」
「はい、後1時間ほどで絶命します」
「マジか…と言ってもヒーラーもいないし…マギア?どうにかなるか?」
「一応できますが…賭けになると思います」
「勝率は?」
「この男性次第ですね」
「そうか…じゃあ、やってくれ」
「分かりました。彼にナノマシンを投与します。後は彼自身の生命力に期待しましょう」
マギアは、左手の3本ある指先の1つから、注射針を出現させた後、男の首に刺してナノマシンを注入していった。
「賭けって言ってたけど…ナノマシンでしょ?100%じゃないの?」
「いえ、これは治療用ではなく戦闘補助をするナノマシンなのです」
ティカルがマギアに質問したが、余計に分からない事が帰ってきて首を傾げた。
「戦闘補助?」
「より早く走れる様になったり、重い物を軽々と持ち運べるようになったり、負傷した際の出血量を抑えたり、遠くを見れる様になったりとかですね。一応治療機能もありますが性能は低いという事です」
「なるほど」
「ま…マギア?それってプレイヤーには…」
ナノマシンの効果を聞いて、ソウルが期待した目で見たが、マギアは球体を横に振った。
「プレイヤーの体には何の効果もありません」
「そうか…」
マキアの言葉を聞いて、ソウルはしょんぼりとした。
「注入完了しました。おや?マスターどうしました?」
「なんでもない。先を急ごう」
ソウルのしょんぼりした態度に、体を傾けて疑問符を浮かべたマギアだった。
-蟲惑魔・裏口-
「よし、入るぞ」
「接敵した場合は?」
「眠らせてどこかに隠そう」
「分かった」
ソウル達は、呻いている男が居た路地裏から1時間かけて、蟲惑魔の裏口に辿り着いた。何故1時間も掛かったかと言うと、蟲惑魔の周囲には人が多く居て、思うように進めなかったり、街灯に照らされた道が多く暗い道が殆ど無い為、余計に時間が掛かってしまっていた。そして、やっとの思いで裏口に辿り着いたソウル達は、裏口に掛かっている鍵をブルーローズで開錠し、音も無く蟲惑魔の中に入って行った。
「[ジンジャーさんは何処にいるのかな?]」
「[こういう場合は地下かデリー・バートンの部屋が怪しいと思う…]」
「[手分けして探す?]」
「[行けるか?]」
「[かくれんぼは得意だよ]」
「[じゃあティカルは地下を探してくれ。俺はデリー・バートンの部屋を探してくる]」
「[オッケー!任せて]」
裏口から入った3人は、近くに置いてあった木箱や柱の陰に隠れた後、チャットで会話し、2手に別れてジンジャーを探す事にした。
「(さて…気合入れて上に向かうか…)」
ソウルは、深呼吸をして心を落ち着かせた後、上を見上げながらそう考えていると、マギアがチャットで質問して来た。
「[マスター?デリー・バートンがいる部屋の目星はあるのですか?]」
「[昔からよく言われてるだろ?ナントカと煙は高い所が好きだって]」
「[あ~なるほど、納得です]」
ソウルのチャット文を見て、マギアも上を見上げて納得した。
媚薬と聞いてピンときた方は、そうですと言っておきます。でも、違う所がピンとしたなら打ちます。昔から出る杭は打たれると言われているので。
お薬の用法用量は正しく守りましょう!ドラッグダメ!絶対!
しょんぼりしているソウルを見て、ティカルは内心でNDKしています。
モチベ維持に評価お願いします! ありがとうございます!
「ブックマークに追加する」ボタン登録もよろしくね! 登録ありがとうございます!
いいね登録!よろしくお願いいたします! 登録感謝です!
誤字脱字報告 ありがと~




