変装、潜入
完成しました。お楽しみください!
次回更新は10月20日 0時です!
「どこいった!?」
「探せ!まだ奴は近くに居るぞ!」
「(ええい!しつこいな!)」
ソウルとマギアは、襲撃してくるチンピラ達が多くすぎて対処しきれなくなり、逃走していたが、荷物が大量に載せてある馬車を見つけると、その中に入り、紛れ込む様に隠れてやり過ごそうとしていた。
「[やけに追手が多いですね?マスター?]」
喋れない状態である為、マギアがチャット文で会話して来た。
「[ただの末端の悪徳高利貸し共と思ったら大組織だったみたいだな…]」
「[思わぬ誤算と言う奴ですね?]」
「[予想していたより、だな。まぁそうと分かれば動き方を変えるだけだが…]」
「[どう動きますか?]」
「[相手に偽の情報を与えて遠くに行って貰う]」
「[できますでしょうか?]」
マギアのチャット文に、ソウルはニヤリと笑った。
「[うまく行けば時間が稼げる]」
「[具体的にはどうするのでしょうか?]」
「[まず…]」
ソウル悪戯な笑みを浮かべながらは、チャットを使ってマギアに説明し始めた。
「ちょっと!私を何処に連れて行くきよ!」
「うるせぇ!追われているんだから大声立てんな!」
街門でジンジャーが大声を立てると、ソウルはそれ以上の大声でジンジャーを怒鳴りつけた。
「目的地ぐらい教えてくれてもいいじゃない!」
「この先にある街を経由して港町に行く」
「えぇ!?そんな!?嫌よ!この街を離れるなんて!」
「じゃかしい!予想よりヤバイ組織だったんだからもう逃げるしかないんだよ!諦めろ!」
「そんなぁ!」
「行くぞ!」
嫌がるジンジャーを引き摺る様にして街を出たソウルは、ジャバワークを呼び出して騎乗した後、浮かび上がった。そして、ジャバワークの足でジンジャーの両腕を掴むと、そのまま道なりに沿って飛行していった。
「ねぇ?この乗り方おかしくない?もう少しどうにかならない?」
「ならん!」
「即答しないで!もう少し考えてみよ?おかしいよ?」
「…う~ん…何処もおかしくはないな?」
「おかしい事だらけでしょう!?見てよ!私の姿!こんな飛行の仕方ある!?」
「…考えてみたんだけど~何処もおかしい所はないな!」
「あんたの目ぇどうなってんのよぉ!」
ジンジャーが、空中で喚きながら飛んで行くのを、屋根に上ったソウルが細目で見送っていた。
「どうだ?マギア?」
「複数人の敵対者が目撃しているのを確認しました。後を追っていった者達も数名確認しています」
「他の街門は?」
「同様です」
「よし、いいぞ!帝国に潜入する時に作った小型ドローンが役に立ったな!」
「はい。あの時はドローンの羽の音がうるさすぎて潜入には向いておらず、少し遊んだだけでお蔵入りになっていた物が出せて私も嬉しいです。ホログラム照射装置も絶好調で稼働していますよ!」
マギアの言葉にソウルは満足げに頷いた。
「あとは変装して俺だとバレなきゃ大丈夫だな」
「変装…女装ですか?」
「…何で最初に女装が出て来るんだ?」
「実にお似合…いえ、特に理由はありません」
「‥‥‥‥」
マギアの言いかけた言葉に、ソウルは眉を寄せてマギアを見つめた後、ため息を一つ吐いた。
「女装はしない。別の変装をする」
「どんな変装をするのですか?」
「俺の爺様に変装する」
「マスターのお爺様ですか?」
「ああ、始めてやるから出来るか分からないが見てろ」
ソウルは、自分の顔に右手を持ってくると、ブルーローズが顔を覆い出し、人の顔を形作っていった。
「どうだ?」
「…どうだと言われましても銀色の肌をしている人の顔ですね…」
「あ~そうか…肌色か…」
ソウルが、頭の中で祖父の肌色を思い浮かべると、次第にソウルの顔を覆っているブルーローズが、次第に変色していき、小麦色の肌になって行った。
「これでどうだ?」
「こ…これがマスターのお爺様ですか!?すごく渋いお方ですね!」
「だろ?本当は髭も生えてるからもっと渋くて格好良いんだけど…ブルーローズの残量なくて髭まで再現できない…」
ソウルの顔を、まじまじと見つめたマギアは、何かを納得して球体の体を使って頷いた。
「マスターからお聞きする御祖母様もすごいの方だと思いますが、御祖父様もなかなかの方なのですね!」
「うんまぁ…よく祖母ちゃんの暴走を止めてる苦労人なんだけどね…あーアー…本日は~お日柄も…あー…よし、これでいいだろう」
ソウルは、自身の祖父の事を話した後、祖父の声質に近づけていった。
「それじゃあ、情報収集を再開しよう」
「了解しました」
ソウルとマギアは、誰にも見られないようにしながら屋根から降りて行った。
「う~ん…騒ぎを起こしたせいか人が明らかに減ってしまったな…禁書庫の見取り図の情報が欲しかったんだが…」
「困りましたね…」
ソウルが、変装して情報収集を再開したが、あちこちで争いを繰り返してしまった為に、人が明らかに減ってしまっていた。その事に困ったソウルは、光学迷彩で隠れているマギアと、どうしようかと悩んでいると一つ思い付いた事があり、口にだしてみた。
「見取り図とか持ってそうなのはその場で一番偉い人が持ってそうだよな?」
「そうですね。その可能性はあると思います」
「…一度忍び込んで調べてみるか?」
「では、図書館に?」
「ああ、行ってみよう」
そう思い立ったソウル達は、図書館へと向かって行った。その道中、何度かチンピラ達に絡まれる事があったが、紳士のような振る舞いをして乗り切り、ソウルとバレることなく図書館へと辿り着いた。
「よし、いこうか」
「サイレントモードで付いて行きます」
マギアの言葉に頷いたソウルは、図書館の中に入って行った。
「(もうすっかり元通りだな…)」
数時間前にチンピラ達が、ジンジャーを捕まえる為に襲撃して来て、手当たり次第に物を壊したはずだったが、今では最初に訪れた時と変わらないと言って良いほど、元通りになっていた。
「あ、すみませんお客様。もうすぐ閉館するお時間ですので、ご利用はお早めにお願いします(わ~…すっごい渋い人…惚れちゃいそう…)」
ソウルが、不自然にならない様に周りを確認していると、受付にいたフラヴィが話しかけて来た。
「ああ、すみません。知り合いの為に誕生日ケーキを作りたいのですが、ケーキ関連のレシピは何処にありますか?」
「ケーキのレシピですか?こちらです(この人料理も出来るんだ…女子力も高い人なのね!素敵!)」
フラヴィの後に付いて行き、料理関連の本が置いてある棚へと案内されると、ソウルはお礼を言ってフラヴィと別れた。
「…おいマギア?さっきのは何だ?何故心の声みたいなアテレコをした?」
「フラヴィさんがマスターを見た時、心拍数が上昇したのを検知したのでつい…」
「…それは聞かなかった事にするが…もう二度とするなよ?」
「え!?何故です!?あの女確実に発情していましたよ!」
「やめーや!」
全力の小声でマギアの言葉を否定した。
「まったくなに言ってんだ…お?あの人か?」
ソウルがマギアに呆れて首を横に振ると、視界の隅に年配の女性の司書の姿が見え、ソウルはその年配の司書が、この図書館の一番偉い人だと当たりを付けた。
「何か話しているな?…少し近づくか」
年配の女性の司書と若い男性の司書が会話し始めると、ソウルは話ている内容を聞く為、スニーキングを駆使しながら近づいて行った。
「司書長?今後あのような事が無いように警備を入り口に立たせるべきではないですか?」
「そうしたいのは山々なのですが、そこまで予算を割けないのが現状ですね…いや~困った物です」
「どうにもならないのですか?」
「あの暴漢達が物を壊さなければ何とか出来たかもしれませんが…壊されてしまったので…」
「修繕する費用で出来なくなったという事ですね?」
「そうです。今から上と掛け合って予算を出して貰いに行きますが…望みは薄いでしょう…ああ、また小言言われるのか…お腹が痛い…」
「そう…じゃあ今日は、お腹に優しい晩御飯にするわね?」
「…ありがとう母さん。でもね?ここでは俺の方が立場が上だからそこはしっかりしてくれ…」
「あ、ごめんね?え~コホン‥では、失礼します。司書長」
「お疲れ様です。リティアさん」
「(まさかの親子だった…それに若い男性の方が司書長だったとは…)」
ソウルは、内心驚きつつも司書長の後ろを追って行くと、司書長は部屋の中に入っていた。
「(司書長室…ここか?)」
司書長が入って行った部屋の扉には、司書長室と書かれたプレートが着けられてあった。ソウルは、周りを見て、誰もこちらを見ていない事を確認した後、部屋に聞き耳を立ててみると、部屋の中から大きなため息と何かを探している物音が聞こえて来た。
「なんか…申し訳ない感が湧き出て来るな…ここを壊したのはチンピラ共だけどその原因は俺達だし…」
「それに私達はここの禁書庫に侵入しようとしてますからね…もし私達の侵入がバレたらその責任は彼に行く事になるでしょう」
「…今回はノーキルノーアラートで行こう」
「同意します」
マギアがソウルの言葉に同意すると、部屋の中から聞こえる物音が扉の方に近づいて来た為、ソウル達は一旦その場を離れると、部屋から司書長が出てきた。
「必要な物は持ったし…行くか…あ~行きたくねぇ…はぁ…」
顔を青くしながら呟く様に言った司書長は、ため息を吐いた後図書館から出て行った。
「…行くか」
「了解です」
司書長を目で見送ったソウル達は、周りを警戒しながら司書長室の中へと入り、見取り図がないか探し始めた。
「マスター、この本棚の奥に金属反応があります」
「隠し金庫か何かか?」
細心の注意を払いながら、部屋の中を物色していると、一つの本棚の先に金属反応がある事を検知し、ソウルに報告して来た。ソウルは、マギアが報告して来た本棚の前に立つと、妙に違和感がある赤い本があるのを見つけて、人差し指で触れて見た。
「これは…押す奴だなっと」
ソウルがその赤い本を奥に押し込んでみると、何かが外れる様な音が聞こえた後、本棚が動き出した。
「よし!ビンゴ!」
「随分と大きな金属扉が出てき…あれ?」
「どうした?」
「マスター?この鍵穴にはピッキングされた痕跡があります。それも数時間前に出来た傷です」
「…俺達が来る前に誰かが開けたという事か?」
「はい」
マギアの言葉を聞いて、ソウルは怪訝な表情をした。
「俺達の他にも禁書庫に入ろうとしている者達がいる?」
「もしくは別クエストでこの金庫の中にある何かしらに用があったとかですかね?」
「あ~その可能性が高いかもしれないな…まぁ、とりあえず今は保留にしてこの金庫を開けて中に見取り図が無いか確認しよう」
「了解しました。では、私が開錠しますね」
「ああ、頼む」
目の前の金属扉にある鍵穴に、マギアは自身の指先を向けると、その指先から折りたたまれた細い棒が展開されていき、完全に展開された後にその細い棒を鍵穴に入れると、物の数秒で指先を右に捻り開錠した。
「随分早いな?」
「スキャンしながらピコマシンを注入して捻るだけなので簡単ですよ?痕跡も残りませんし」
「…どんなに施錠された物でもそのマスターキーがあれば開けられるという事か?」
「はい、巧妙にロックされて隠された物でもこれがあれば一発です。そして隠していた物が自分の机に置かれるが如くです!」
「怖いわぁ…」
マギアの言葉に恐怖しながら、ソウルは金属扉を開いて行き、中に入っている物を物色し始めた。
「…あ!あった」
「ありましたね」
ソウルが物色していると、やけに古い羊皮紙が丸まった状態であり、それを手に取って中を見て見るとこの図書館の見取り図が書かれていた。
「ちゃんと禁書庫っぽい所も書かれているな。マギア、写真を頼む」
「了解しました。数枚取るのでそのままでお願いします」
マギアが数回シャッター音を鳴らして、図書館の見取り図を写真に収めた後、ソウルは羊皮紙を丸めて元の位置に戻した。
「目的は達した。触った物を元に戻して一旦ホテルに戻ろう」
「了解です」
触った物を出来るだけ元の位置に戻し、金属扉を閉じて施錠した後、本棚も元に戻したソウル達は、静かに司書長室から出ると、何食わぬ顔で図書館からホテルに向かって行った。
照射されたホログラムは、数分でマギアが作りました。
なのでジンジャーの扱いが酷いのはマギアのせいです。
総一郎の祖父初登場!かなり渋くてかっこいい人です!
ブルーローズの可能性に気が付き始めたソウル…でも、まだ触りくらい
マギアのアテレコはソウルにしか聞こえていません!所謂指向性スピーカーみたいなものです!
本棚のギミックは、妙に違和感がある赤い本が基本
モチベ維持に評価お願いします! ありがとうございます!
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