禁書庫
お楽しみくだサイクロプス!!
次回更新は、9月29日(木)0時です!
「よし、完成だ」
台座に刻まれていた文章を翻訳し終え、見直しも2回済ませたソウルは、椅子に座ったまま上半身を伸ばした。
「あれ?終わっちゃった?」
丁度そこに、探索に飽きて戻ってきたティカルが、ソウルの所に戻って来た。
「ああ、さっき終わったよ」
「あー…ごめん。ソウル一人でやらせちゃったね…」
「気にするな。俺もやってて楽しかったからな」
「ソウルって昔っからこういうの得意だよね?」
「こういうの~っていうか謎を解き明かすっていう事自体が好きなんだ」
「謎を解き明かすこと自体?それって例えばどんな?」
「時効成立してしまった過去の事件を一から調べるとか、とある大国が長年隠匿してきた事を暴くとかかな~…あ、暴くと言えばアレは楽しかったな!俺がまだ小さかった頃、ばあちゃんと一緒にとある国に行ったんだが、そこの政府と麻薬カルテルが癒着していてな~どこ行ってもドッカンバッタン大騒ぎで~…あ!…これ言っちゃいけない奴だった。忘れてくれ、アッハッハッハ~」
「え?そこで止めるの!?すごく気になるんだけど!?」
わざとらしい笑いで誤魔化すソウルに、ティカルは驚きながらも話の続きを求めたが、ソウルは同じように笑うだけで話す事は無かった。
「戻りました~」
「ただいま~ってあれ?どうしたの?」
「お帰り二人共、ただ雑談してただけさ。2人は何か収穫合ったか?」
「ありました!実はアップルちゃん…織物の才能があるみたいです!」
「織物?あの~…なんだっけ?…糸をシャーっとしてパッタンカッタンさせる奴か?」
頭にイメージは出てきたが、名前が出てこなかったソウルは、擬音とジェスチャーで伝えると、マナリアが頷いた。
「そうですそうです!」
「自分でも驚きだったわ…」
「でも、どうやって才能があるって分かったんだ?」
「これです!」
マナリアは、手に持っていた本をソウルに渡した。
「魔導書でわかる…職業適性診断?」
「そうです!魔導書で絶対わかる職業適性診断!これであなたも隠れた才能を見つけて無職を卒業!です!」
「…なんというか…いろいろすげぇタイトルだな…」
渡された本のタイトルに眉を寄せつつも、ソウルは本を開いて読んでみた。
「何々…これから貴方に適した職業を診断します。次ページの質問に従って行ってください」
ソウルは次のページを捲り質問に答えた。
「貴方は人ですか?亜人種ですか?低脳サルですか?…人間なら3ページ、亜人種なら21ページ、低能サルなら今すぐ人生やり直せ!……何だこれ?喧嘩売ってんのか?…まぁいいや、3ページと…」
最初のページに載っていた文章に、怪訝な顔をしながら3ページ目を開いた。
「貴方は一つの事にうち込めるタイプ?それとも飽き性?もしくはファッ〇ン浮気〇ソ野郎?うち込めるタイプは4ページ、飽き性な人は5ページ、ファッキ〇浮気ク〇野郎は今すぐ首括って地獄の炎に焼かれ続けろ!‥‥何だろう…この本の作者は酷い裏切りでも経験したんだろうか?」
この本の作者の恨みを感じ取ったソウルは、4ページ目を開いた。
「貴方は資産を貯めたい人?運用したい人?それとも他人の資産すら食いつぶす穀潰し?貯めたい人は6ページ、運用したい人は7ページ、穀潰しは今すぐ死ぬか奴隷落ちして過労死しろ!……一体この作者はどうしたんだ!?」
ソウルは、これ以上作者の想いを感じるのが怖くなってしまい本を閉じた。
「あれ~?おかしいですね?私達がやってみた時はそんな質問なかったのですけど…」
「そうね。なかったわ」
「…まじかよ…何で俺の場合は違うんだろうか…?」
ソウルが首を傾げて不思議がっていると、酷い格好で倒れていたジンジャーがハッと目を覚ました。
「いてて…何で私倒れてたんだろう…あ、それは!」
「この本について何かご存知ですか?」
「その本は前の~…いや、前々前の彼氏が作った本ね!」
「‥‥なるほど。大体わかりました。貴女はすごく酷い奴なんですね!」
「ええぇ!?なんでぇ!?」
この本に書かれていた事が、全てジンジャーのせいだと察したソウルは、ジンジャーを指さしながら言うと、指を差された当の本人は、訳が分からず、図書館では出してはいけない声量で叫んだ。
先程のジンジャーの大声で、司書に若干キレ気味に注意された後、ソウルは翻訳した文章を皆に見せた。
「文章を翻訳してみたらこう書いてあった。「空遠き霜の月、この地に御旗を掲げ宣言す、この地に知識が集まり昇華させ、我ら学術の徒を更なる高みへと至るだろう、故に今皆に我誓う、我とこの杖が、汝らを星の輝きの如く、導き輝かせるだろう、誓い立て導く杖の名は「カドゥケウス」、聖呪を持つ杖成り、知識求め探究する者には聖なる加護を与え、鉄火を振り上げ虚無へと望む者には災呪が下るであろう、故に恐れる事なかれ、汝が求める道は光照らされた明るき道ぞ」と書いてあった」
「何と言うか…伝記から抜粋したような感じの文章ね?」
翻訳された文章を見たアップルが、文章から感じ取った雰囲気を言葉にして言うと、ソウルがその言葉に頷いた。
「そう、俺も翻訳していてそう思った。仮にこの文章が伝記からの抜粋だとしたら、その元となった物…つまり原本があるはずなんだ。そして、その原本にカドゥケウスの情報が記されている…と思うんだ」
「思う?ですか?いるではなく?」
「ああ、まだ可能性の話だ。実際に調べた訳じゃないからな」
「なるほど、納得です」
「じゃあ、次はその原本を探しだね?いいね~それらしくなって来たね!」
次の目標が決まった事に、ティカルは心躍りだした。
「でもその原本って何処にあるのかしら?」
「う~ん…俺の予想だとここにあると思う」
「え?」
ソウルの言葉に、アップルは周りを見渡し始めた。
「ああ、そういう意味じゃなくてこの図書館にある禁書庫みたいな所で厳重に管理されているんじゃないかっていう意味だ」
「ああ、そういう事ね」
「だとしたらどうやって入りますか?すんなりと入れて貰える場所じゃないと思うのですが…」
「だろうなぁ…」
ソウルがどうしようかと考えていると、視界の隅で鼻息を荒くしながら期待した目でこちらを見てくるジンジャーの姿が見え、ソウルは仕方なくジンジャーに話しかけた。
「ジンジャーさん?何かあるのですか?」
「ある!あるわよ!禁書庫に入る方法!」
「それは?」
「忍び込むのよ!道順も知っているわ!」
「声がでかいですよ。もっと静かに話してください」
「あっ!と…そうだったわね…」
ジンジャーの大声で近くに居た司書に睨まれると、ソウルは声を抑える様にジンジャーに伝えると、ジンジャーは慌てて口元を押さえながら話し始めた。
「禁書庫の場所はここの地下4階にあるわ…でも警備が厳重でまだ誰もたどり着けた人がいないのよ…」
「なるほど…それは~…挑み買いがありそうですね…」
「でも、それってリスク高くないですか?正規の手順で入れませんか?」
「無理よ…正規の手順で入ろうとするなら上位議員3名から推薦状が必要になるし、例え推薦状を揃えたとしても評議会で許可を出されないと入れないの…」
「それは確かに大変ですね…」
「では、皆?忍び込む方でいいか?」
ソウルが、仲間達の顔を見回しながら尋ねると、仲間達全員が頷いた。
「では、始めよう。最初は調べる事からだ」
「どうすればいいの?」
「情報だな。禁書庫を警備する警備員の数、設置されているトラップ、図書館の構造等なんでもだ。役に立ちそうな情報なら何でも集めないといけない」
「あのチンピラ達を警戒しながら街で情報収集しないといけないんだね。楽しくなって来た!」
「ああ、それと何か問題が起きたら連絡してくれ」
「分かったわ」
「分かりましたー」
「えっと私はどうすればいいのかしら?」
「ジンジャーさんは安全な場所を見つけてそこに居て貰います。あーそれと最初に言っておきますが、そこでのんべんだらりとしていた場合、すぐさまあいつ等に引き渡しますのでそこの所お忘れなく」
「Aye,Aye,Sir!」
ソウルが、視線で殺す様な鋭い睨みで言うと、ジンジャーは恐怖で震えあがり、敬礼しながら返事を返した。
「じゃあ、皆よろしくたの…」
ソウルが、そこまで言いかけた時、図書館の入り口の方から大きな音が聞こえ、その数秒後に女性の悲鳴が聞こえて来た。
「ジンジャー!!ジンジャー・エドワード!!どこだぁぁぁ!?」
「…ジンジャーさん?お知合いですか?」
「私の知り合いに図書館で叫ぶ人はいないわ!…私が叫ぶ人だから」
「あ~…じゃあ敵だな。皆、情報収集の前にゴミ掃除だ!…とは言ったが、殺すなよ?後々面倒になるから…」
アップル達がソウルに頷いた後、全員で図書館の入り口に向かって行った。
その時の総一郎の祖母は、ゴーストと呼ばれて…いるかもしれない。
織物の才能があったアップルさん。
ジンジャーは、恋愛に関して浮気はしませんが、物に対してはめっちゃします。それ故に浪費が激しい人です。
ジンジャーは酷い奴だって本にも書かれている。
潜入するなら前段階の情報収集は大事、古事記にも書かれていたらいいなぁ…
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