リイルフ集落 防衛戦
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次回更新は、5月19日0時です!
「あれ?そういえばグリムニルさんは?」
「ん?ああ、初心者と中堅プレイヤー達を強化する為に別のクエストに行っているぞ?」
「うちらの参謀達もそれに同行しているね~」
リイルフの集落を守る要塞が完成し、爆薬作りを終えたソウルは、屯所内で残りの時間を使って作戦を考えていたが、ヴァルハラ所属の参謀グリムニルの姿が居ない事に気が付き、ユメミルクに訊ねると、別のクエストに言っていると答えられ、ホワイトローズもそれに便乗する様に言った。
「…って~事は作戦は俺一人が考えないと行けないのか?」
「いや、参加して来たPTの中にもいるだろ?」
「いる!…といいね~」
ホワイトローズが不安になる様な事を言うと、ソウルは顔を顰めた。
「おい、そんな不安になる様な事を言うなよ‥‥きっといるよ!いてくれよ!」
「じゃあ、呼んで確かめてみるか」
「そ…そうだな!マギア、PTリーダー達と参謀役の人をここに集めて来てくれ!」
「畏まりました」
ソウルは、祈る様な心持ちでマギアに指示を出すと、マギアは球体の体を使って頷き、PTリーダー達を集めに屯所から出て行った。そしてその数分後、屯所に集まった各リーダー達に、ソウルは恐る恐る尋ねた。
「あ…あの‥‥皆さん…作戦を立てる人…参謀役の人は居ますか?」
「うーん…いないっすね!」
「うちもいないなぁ…」
「私の所もいないわねぇ…」
「俺の所はそんな奴いなくてもやって行けてるぜ!」
「嘘でしょ?…え…皆さんどうやって動いているのです?」
各PTリーダー達の声を聞いたソウルは、その答えに驚愕して再び訪ねると、全員声を揃えて答えた。
「「「「「「ノリと勢いで!」」」」」」
「ウゾダドンドコドォォォン!‥‥‥」
今回の作戦をソウル一人だけで考えるのが決定した時、ソウルの頭の中で閃きの電流が走った。
「そうだ!みんなで考えればいいんだよ!」
「「「「「すみません!そういうの苦手です!ごめんなさい!」」」」」
「ウゾダドンドコドォォォン!‥‥‥」
PTリーダー達が再び声を揃え、ソウルの提案に首を横に振って答えると、ソウルは先程と同じ言葉の絶叫をしながら、地面に突っ伏し悲しみの涙をこぼした。
「まぁまぁ、僕も一緒に考えるから頑張ろう?」
「ホントォ?ホントォ?」
いつの間にか屯所内に来ていたティカルが、ソウルの肩に手を置いて慰めると、ソウルは疑うように2回言うと、ティカルは深く頷いて答えた。
「じゃあ、ガンバる…」
「では皆さま、作戦が出来次第メールにて通達いたしますので戦闘準備をお願いいたします」
マギアがPTリーダー達に向けて言うと、集まったリーダー達は解散して行った。なお、ソウルの涙顔と子供のような答えを目にしたプレイヤー達は、見事に心を射抜かれ、ソウルの非公式ファンクラブに入る事を決意し、会員数のカウントが爆上がりした。…らしい。
「じゃあ、今までの話をまとめると~…防衛戦って言うのはWAVEっていう纏った敵が襲い掛かって来るという事で、今回は何WAVEあるから解らない。更にはWAVEを重ねる毎に敵が強くなっていくと…まぁ、これは誰もが知っている事だね」
「ああ、大体「堕ちた神獣」戦だと、20~40WAVEだなぁ…だけど、ソウルだしなぁ…」
「おい!なんだ最後のは!確かに何らかの不確定要素を引き寄せる俺だが、それには異議を申し…ってちょっと待て、ユメミルク…今なんて言った?」
「あ?ソウルだしなぁって…」
「その前だ!」
ソウル達は、基本情報の確認や初動の動き等を話し合い、ティカルがまとめに入ると、ユメミルクが冗談交じりの言葉を言い、ソウルはその言葉に反論しようとしたが、何か違和感を感じて聞き直した。
「大体「堕ちた神獣」戦は‥‥あ~…そう言う事か…ティカル?俺が言った「堕ちた神獣」ってなんて聞こえた?」
「え?ユニークモンスターだけど?」
「‥‥情報規制されているんだな…それに「堕ちた神獣」の口の動きすら変わる徹底ぶりだ…」
「「堕ちた神獣」の関連クエストやってないと皆「ユニークモンスター」って聞こえちゃうんだよね~不思議だねぇ~」
ホワイトローズの言葉を聞いて、ソウルは質問した。
「なぁ?他のクエストにもこういったものがあるのか?」
「ん~…私が知っている限りだと「堕ちた神獣」だけだねぇ…今までそういう物かって思ってスルーしていたけど、改めて聞かれると…これはなんかあるね」
「俺も今初めて気が付いたぞ!ウカツ!」
ユメミルクが、軽く額を叩きかわいい仕草をすると、ソウルはその仕草に怒りが湧き出したが、それらを無視して考え始めた。
「(何故、「堕ちた神獣」関連だけ情報規制が?この世界には勇者や魔王と言ったメインクエストの様な物は無いはずだ……いや、無いと思い違いをしていた?あり得るのか?この世界には何万人もプレイヤーがいるのに、メインクエストを見つけられていないなんて事が?…そう思考を誘導されていた?…まさかな…)」
ソウルはそう考えたが、何の確証も無い為、頭を横に振って否定し、気持ちを切り替えた。
「話を脱線させて済まないが、今は防衛戦に話を戻そう。「堕ちた神獣」の事は頭の片隅に置いてくれ」
「分かった」
「まぁ、今考える事じゃないよね~」
「そうだね。…コホン!…えっと~第1WAVEから第10WAVEまでは遠距離攻撃を主体に攻撃して、それを突破して来た敵を近接職が倒す。それで、第10WAVE終了時に1番外側の防壁「第1防壁」の耐久力値が50%以下だった場合は、中間にある防壁「第2防壁」まで後退。以上だったら近接職を前に出して遠距離職の補給と負傷者の回収をする為の時間を稼ぐ。それらの行動を第13WAVE以内に完了させ、機工兵装持ちのプレイヤー達を投入し大型モンスターに備える。だね、今決まっているのは」
決まっていた事を確認する様に言ったティカルは、喉が渇いたのか飲み物を音を立てて飲み始めた。
「空から来る敵はどうする~?」
「それは、遠距離持ちを2つに分ければいいだろう。1班と2班は基本地上の敵を攻撃して、飛行型の敵が視認出来たら、2班が飛行型の敵に対処させる」
ソウルの言葉にホワイトローズは頷き、ユメミルクが別の質問をして来た。
「第1WAVEから10WAVEまでに大型が出てきた場合はどうする?」
「その場合は機工兵装を出さずに飛行船からの艦砲射撃で撃退してもらう。何故逆じゃないのか説明すると、艦砲射撃は確かに強力だが連発して発射できる物では無いし、再装填にも時間が掛かるだろう?後半WAVEになって来ると敵の侵攻スピードも上がると思うし、やっていられなくなるからな…飛行船が使えるのは10WAVEまでだろう」
「あ、ナルほど!」
「‥‥今しょうもない下ネタ言ったか?…言ったよな?…罰として壁に向いてろ」
怒りを含んだ声でソウルが言うと、ユメミルクもしょうもない事言ったなと自覚し、大人しく体を壁に向けた。
「13WAVE以降はどうする?」
「遠距離職を2班に分けたままの状態で10WAVEまでの行動を繰り返してもらう。だが、5WAVE毎に補給と負傷者の回収を入れよう。その時「第2防壁」にまで下がっていた場合は、耐久度20%以下で最後の防壁「第3防壁」に移動しよう。その場合もう後がないから最後の一兵まで戦う総力戦になってしまうから、できれば「第2防壁」のあたりで決着を付けたいな…」
「じゃあ、第2の辺りでラノベやゲームによくある少数精鋭で敵拠点に突撃、のちに大将首を上げるか?」
「そうだな…その場合俺のユニオンとジェラルドさんで突撃だな。俺らが抜けた分、防衛がするのが厳しくなるとおもうが…行けるか?」
「マカセロー…あ、突入時には呪い持ちのプレイヤーも連れて行ってくれ。ソウルと同じ部位欠損で悩んでいるからな~」
「分かった」
壁に体を向けているユメミルクが、アイテム欄から謎の板菓子を取り出し、バリバリと音を立てながら食べ始めた。
「何かしらの予期せぬ事態が起きた場合は~?」
「俺のユニオンがそれにあたる。だが、俺達で対処不能な事が起きた場合二人にメールを送るから、一番の火力持ちと一番の盾持ちを一人づつ貸してくれ」
「おっけー!うちからKUNIMOを出すよ」
「じゃあ、俺の所からはザソースを出すわ」
「サゾースさん?初めて聞く名前だな?」
「ああ、帝国との時はこのゲーム止めていたんだが、また始めたらしいぞ?復帰勢と言う奴だな!それで~何故復帰したのか聞いてみたら「動画で一番目立っていた人にすごく興味が出た。ぜひ体に風穴を開けてさしあげたい」だってさ!人気者は辛いな?ソウル?」
「‥‥そういう人気は遠慮したい!そう!心の底から遠慮したい!」
「じゃあ、ソウル達が頑張るしかないね~」
「や、やってやるゃぁ!」
遠慮したい気持ちが溢れ出てしまい、呂律がおかしくなったソウルは、命一杯虚勢を張りながら言った。
「へへ…燃え尽きたぜ…」
「もう…真っ白よ…」
屯所内で作戦作りが終り、ソウルはマギアに作戦の内容をPTリーダー達に伝えるよう指示を出すと、マギアはメールを打ち始めた。そして、ソウルは一息入れようと屯所から出ると、真っ白に燃え尽きているウイとケンザオの二人を見かけた。その姿は、まさに有名ボクシング漫画の主人公が取っていた姿だった。
「お二人共…お疲れ様です」
「あ、ソウルさん…やり切ったわ…」
「今の俺の限界を遥かに超えた…気分だぜ…」
「ありがとうございます。お二人が頑張ってくれたおかげで行けそうです。後は俺達に任せてください」
「「頼んだよ(わ)…」」
そして二人は、真っ白な灰の塊が風になびかれる様に消え去って行った。(イメージ)
「【シャウト失礼いたします。襲撃まで1時間を切りました。戦闘職の皆さんは北西の「第3防壁」にお集まりください。また、兵器類を起動してすぐ撃てるように準備をお願いいたします。繰り返します!襲撃まで…」
ウイとケンザオが灰となって消えて行った時、マギアのシャウトが集落全体に響き渡り、襲撃まで1時間を切った事を知らせて来ると、リイルフの集落が一層騒がしくなり、緊張が最高潮に高まった様なピリピリとした感覚をアバター越しに感じた。
「さて、行くか」
「やってやりましょう!」
ソウルは、ジェラルドから貰った長物の箱をアイテム欄から取り出し、肩に担いだ後、マギアと一緒に北西の「第3防壁」に向かって行った。
「お~い!ソウル~班分けどうする~?」
ソウルは、遠距離職がいる防壁の上に到着すると、ホワイトローズに班分けの事を聞かれ、ソウルはその場にいた全員に向かって大声を出した。
「皆さん!ここから二列になって並んでください!そして1、2と数を数えて行ってください!1と言った人が1班で2と言った人が2班です!」
その場にいたリイルフの戦士達やプレイヤー達は、ソウルの言葉に従い、2列になって並んだ後1、2、1、2と声を出して数えて行った。
「お~!いいね~私達も班分けの時、これやってみようっと…じゃあ、私は下に行くよ~トウッ!」
「ああ、ありがとう。またな」
ホワイトローズは、ソウルに手を振った後、そのまま防壁の上から飛び降り、近接職のプレイヤー達が集まっている所に消えて行った。
「ソウル殿?攻撃開始の合図はどうしますか?」
「あ、それは俺がやります。それとですが、ここからどの位の距離まで届くか実際に見せて貰っていいですか?」
「分かりました。おい、バルバ!」
「了解」
戦士長のドルクが、ソウルのすぐ横にいた戦士の一人に指示を出すと、バルバは頷き、矢に赤い紐を付けて矢を射った。そして、その矢は山なりに飛んで行き、400m近い距離で地面に刺さった。
「かなり飛びましたね…皆さんあの位の飛ばせると考えても?」
「ええ、ですが、的を狙わずにという条件が付きますね。弓も特殊な素材を使っているのであの距離が出せるのです」
「的を狙った場合は?」
「あの半分の距離で必中とするとお考え下さい」
「分かりました」
ソウルは、どのタイミングで合図を出せばいいのかを考えながら、Scarlettにスコープや折り畳みの式の2脚など、取り付けて行った。
「【開始10分前になりました!】」
マギアがシャウトで伝えると、ソウルはハッと何かを思い出し、取り付け途中のScarlettをその場に置いて立ちあがり、シャウトのボタンを押した。
「【遠距離魔法の発動は矢の着弾後すぐでお願いします!繰り返します!遠距離魔法の発動は矢の着弾後すぐです!】」
「「「「了解!」」」」
「(…忙しすぎて遠距離攻撃にもいろいろあるのを忘れていた…危なかったな…)」
冷や汗を拭うような仕草をした後、再びScarlettに取り掛かり、開始3分前にはすぐ撃てるように準備が整った。
「マギア、観測手を頼む」
「お任せください」
ソウルはマギアの頷きを確認した後、両眼を開いたままの状態でスコープを覗き、モンスター達を待ち受けた。
そして…
「来たぞぉぉ!」
襲撃までのカウントが0になり、上空に「第1WAVE」と表示が現れると、森の奥から大量のモンスター達がこちらに向かって来るのが見えた。その数はとても多く、万単位の数がこちらに向かって来ているとすぐ分かるほどだった。
「【遠距離構え!】」
ソウルがスコープを覗いたままの姿勢で大声で言うと、弓持ちの戦士達やプレイヤーは弓に矢を番え、弦を引き絞り、弩持ちや魔法職も詠唱等の準備を始めた。
「…(まだ遠い……まだ遠い…)…………(今!)【放て!!】」
モンスター達を十分に引き寄せ、絶好のタイミングでソウルは腹から声を出して合図を出した。ソウルの合図で放たれた無数の矢は、山なりに飛んで行き、多くのモンスターを黒い霧に変えていった。
「抜けて来たぞ!「ウォークライ」を使う!全員腹から声だせ!!」
無数の矢がモンスター達に降り注いでも、その中を掻い潜って来たモンスターが数十匹おり、近接職プレイヤー達がいる場所に向かって来たが、先頭に立つユメミルクがバフ効果のあるスキルを使い、近接職のプレイヤー達の能力を底上げした。
「牛型のモンスターが負傷しながらも突っ込んできます!」
「任せて~!タンク!前へ!」
誰かが叫ぶように報告すると、ホワイトローズが号令をかけて、盾持ちのタンクを近接職プレイヤー達の前に整列させた。
「【Sレンジシールド】用意!……今!」
整列したタンクが、ホワイトローズの掛け声に合わせてスキルを使うと、今いる場所から6m先に半透明のシールドが現れ、突進して来た牛を止めた。
「今の内に攻げ…」
ホワイトローズが後ろにいる近接職に指示を出そうとしたその時、上から一発の銃声が響き渡ると、半透明の盾に止められた牛型のモンスターが黒い霧に変わって行った。
「ありゃ?取られちった…こりゃあ負けていられないね~!」
「流石ソウルさんすっね…正確に頭を撃ち抜きましたよ…」
「KUNIMOちゃん!感心してる場合じゃないよ!私達も頑張んないとソウルに皆食われちゃうよ!」
「おっと!そうですね!」
「俺達も活躍しないとな!皆!行くぞ!」
「「「「「「「おおぉぉーーー!」」」」」」」
ユメミルクが近接職プレイヤー達に向かって大声で言うと、プレイヤー達は気合の入った声で答え武器を掲げた。
「マスター?下はすごく気合が入っているようですよ?」
「二人がなんかしたんだろ?それより次の標的は?」
近接職に気合が入った原因が自分だという事も知らずに、ソウルはただ作業をするような心持で引き金を引いていた。
「地雷の効果がたいして効いていないトカゲ種を見つけました。見えますか?」
「ああ、あいつだな?」
「目を射抜いてやりましょう」
「了解」
ソウルは、マギアが言った牛程の大きさの赤いトカゲに狙いを付け、息を止めた後、その数秒後に引き金を引いた。Scarlettから発射された弾頭は、見事にトカゲの目に当たり、黒い霧に変えた。
「ナイスショットです!」
「次」
「あ、はい。次は純キメラ行きましょう!(あれ?なんでしょうか…マスターから感じる冷たい物は…すごく良いと思えますね!…あ、なるほど!これが「濡れる!!」と言う奴ですね!理解しました!)」
「純キメラ?ああ、ライオンの頭とヤギの胴体に蛇の尻尾の奴か?」
「そうです!」
「了解」
ソウルは言われた通りに狙撃し続け、敵モンスター達を黒い霧に変えていった。ただ、その傍らで興奮をしている球体がいるとは、その時のソウルは思いもしなかった。
おいぃ!前回すべての準備が整ったんじゃねぇのかよぉ!とおもったそこのあなた!そんな貴方に私は「ちょっと何言っているのか分かりませんね…」というぅ!…
すみません…まだ準備がありました!すっかり忘れていたんです!すみません!
完成後に気付いて慌てて修正しました。…許してニャン!
どうやら頼りにしていた参謀役の人がいないようです。なので、一番重要な作戦を一人で考えなきゃいけない事にソウルは涙したのです。失敗すれば大惨事ですからね。
完璧な情報規制…これは何かありますね…(作者も未だ知らず)
作戦はこういう流れで行きます。
指揮は任せろー バリバリ
ザソース 女性プレイヤー 穿剣術士 名前の由来は彼女の前の彼氏が浮気してその腹いせに一番辛いホットソースを飲ませて病院送りにした。そして、その商品の名前がThe Sourceだったことからつけた名前。
いよいよ戦闘開始です!はたしてソウル達は、リイルフの集落を守り切り尚且つ呪いを解く事ができるのだろうか?こうご期待!
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