憎しみの果て
お楽しみください!
次回更新は、3月24日!1週間更新です!
「入るぞ」
ジェラルドとソウル達は、ミルコス邸に戻ると、ミルコスがいる書斎を尋ねた。
「ジェラルド殿、進捗はどうですか?」
「呪いの原因となっている物は見つけた…だが、解呪するにはあんたから話を聞く必要が出てきた。カペラについてだ」
「!?」
ジェラルドがカペラの名を口にすると、ミルコスは目を大きく開け、明らかに動揺していた。その表情を見たジェラルドは、何か知っていると考え、深く追求してみる事にした。
「カペラについて何か知っているな?詳しく話してくれ」
「‥‥その…カペラさんは…息子がその…襲った相手だ…」
「なんだと!?」
「そういえばここに来る前、貴方の息子がふざけた事やらかしたって聞きましたが、カペラさんはその被害者だったんだな…あれ?そういえば新婚って言うなら旦那さんはどうしたのです?」
「カペラさんの夫、カールさんはすでに死亡している…」
ミルコスの言葉にジェラルドが驚き、ソウルが前の酒場で聞いた話を思い出した。そして、カペラの夫に付いて尋ねてみると、すでに死んでいるという答えが返ってきたが、ソウルはその言葉を怪しんだ。
「死んでいる?死因は?」
「商人ギルドの依頼で、隣町まで荷物を運ぶ馬車の御者をしていたのだが、その帰りに盗賊に襲われたらしい。そして、襲われた時に馬車の馬が暴れ出して、そのまま崖下に…と報告を聞いたが?」
「盗賊?隣町までの道には、盗賊が出るのですか?」
「いや、私も初めて聞いたんだ。あの道に盗賊が出たなんて話を…。それにその話を聞いて、急いで軍を出したんだが、盗賊がいたという痕跡すら見つからなかったと報告が上がった…」
「怪しいですね…その話は実に怪しい…」
「調べてみよう」
ミルコスの話を聞いて、ソウルが怪しんでいると、ジェラルドが調べてみようとソウル達に言い、ソウル達もジェラルドの言葉に頷いた。
「まずはその商人ギルドから話をきいてみるか」
「そうですね」
「何かわかったら、私にも聞かせてくれ」
ミルコスの言葉に全員が頷き、ソウル達はミルコス邸から商人ギルドに移動していった。
「お邪魔しますよ」
「ようこそ商人ギルドへ。本日はどういったご用件ですか?」
ソウル達は、ミルコス邸の南にある商人ギルドへ向かい、館のような大きい建物に入って行くと、受付にいる女性に深々とお辞儀されながら声を掛けられた。
「領主の依頼でカールさんの事を調べているのですが、その話に詳しい方いますか?」
「カール先輩の事を調べているんですか!?少々お待ちください!今、支部長を呼んできます!」
ソウルの言葉に、受付の女性が慌てて二階へ駆けて行き、支部長を呼びに行くと、ソウルは受付の女性を目で追い、姿が見えなくなると辺りを見回した。その商人ギルドの中は、明かりが多く点けられていた為、真昼並みに明るかった。また、この場所を利用している人も多くおり、繁盛している酒場並みの喧騒だった。
「お待たせいたしました。こちらへどうぞ」
しばらく、商人ギルドを見回して時間を潰していると、先程の受付の女性が戻り、ソウル達を支部長室へと案内し始めた。ソウル達は、受付の女性に従い支部長室に入って行くと、その部屋の中には身なりの整った熟年の女性がいた。
「支部長、こちらがカール先輩の事を調べてくれる方々だそうです」
「やっと調べてくれる気になったの?はぁ~…ミルコス様は腰が重すぎだよ…おっと、失礼。私は、ここの商人ギルドの支部長を任されているデリアです」
「ソウルです。こっちは相棒のマギア。ジェラルドさんにアップル、マナリア、ティカルです」
「そちらにどうぞ。早速だけど何が聞きたいのかしら?」
デリアは、ソウル達をお客と対話する為のソファーに片手を広げて招くと、ソウル達はそのソファーに座り、全員が着席した事を確認したデリアは、早速話を切り出し、ソウルは聞きたい事を尋ねた。
「カールさんは、商人ギルドの依頼で隣町までの荷物を運ぶ馬車の御者をしていたと聞きましたが、間違いないですか?」
「ええ、それで間違いないわ。あの日、いつも頼んでいた御者の人ではなく、カール君を御者にするようにって言う指示が依頼書に書いてあったわ…私も何かおかしいと思いながらカール君に頼んだら、カール君…結婚して入用だからと御者でもなんでもやるって…それが…あんな事になるなんて…今でも後悔しているわ…」
「その話から察するに~…盗賊が出てきたのは、完全に予想外だったと?」
「ええ、いつも使っている道で盗賊が出たなんて事…これまで無かったもの…」
「なるほど。その道以外で盗賊に襲われた話はありますか?」
「ないわ」
「ない、ですか…つまり、カールさんが御者をやった日に偶然、盗賊に襲われ、それに驚いた馬が暴走して崖下にと…更にはその日以外に盗賊に襲われた話はない…」
「ええ、そうよ。でもおかしいのよね…」
「おかしい?」
ソウルは、詳しく話を聞いていたが、その途中でデリアは首を傾げた。
「その時の馬車を引いていた馬って結構場数を踏んだ馬だから、盗賊に襲われた位で暴走する馬じゃないのよね…」
デリアのその言葉を聞いたソウルは、頭の中で何かがつながった感覚を感じ、ソウルはそれを確信にする為、2つの質問をデリアにした。
「カールさんの奥さん、カペラさんが領主の息子に襲われた日はカールさんが亡くなった日の何日前ですか?」
「え?確か、2週間前ね。よく覚えているわ!ああ、糞忌々しい!」
「最後にもう一つ質問です。領主の息子がしでかした事がこの国の王様にばれて問題になったのは何時ですか?」
「カール君が亡くなって1週間後よ」
「おい、ソウル…これは…」
「多分ですが…それで間違いないですよ?ジェラルドさん…」
ソウルの質問でジェラルドもわかったらしく、ソウルはアイテム欄から手紙を取り出し、書かれている文章を確認し始めた。
「ソウル?その手紙って…」
「ああ、次女の箱に入っていた手紙だ」
手紙には次女の名前を愛称で呼んでいる文や、カールとの恋愛報告等が書かれており、文末にはこの手紙を書いたカペラの名前があった。
「この手紙の文を見るに、領主の次女とカペラさんに友好があったと分かりますね」
「え?友達同士だったけど、実は…っていう事?」
「う~ん…その線も無いとは言い切れないけど、何か違う気がするな…アップルが言った通りなら、人狼化だけでは済まないと思うし…」
アップルの言葉に、ソウルは一度だけ首を傾げ表情を曇らせると、ジェラルドがデリラに視線を向けて口を開いた。
「カールの遺体は崖下から回収されたのか?」
「いえ、崖下が深すぎて出来なかったわ…」
「なら、カールの遺体を回収してベールと一緒に埋葬してやれば何とか出来るかもな…」
「やってくれるの!?じゃあ、必要になる物は言って頂戴!直ぐ用意するから!」
「じゃあまず、棺桶と清潔な布…それと…」
ジェラルドが埋葬に必要な物をデリアに伝えると、デリアはふんふんと頷きながら必要な物をメモに書いて行った。
「…それ位だな…」
「分かったわ!至急用意するからお願いするわね!それと、カール君の遺体がある場所の案内が必要よね?当時別の馬車に乗っていたベーンに案内させるから、受付で待っていてくれるかしら?」
「分かりました」
ソウル達はデリアに頷き、支部長室から受付に戻って行った。
「えっと…ジェラルドさんとソウルさん達ですか?」
ソウル達が受付で待っていると、一人の少年が怯えた表情で話しかけて来た。
「ああ、そうだ。君がベーンだな?」
「は…はい!僕が、皆さんをカールさんが落ちた崖に案内するベーンです!」
ジェラルドが、話しかけて来た少年に訊ねると、ベーンは数回頷きながら答えた。
「あの…これ…カールさんの遺体を包む布です…」
「それは俺が預かる」
ベーンが、ジェラルドに綺麗に折りたたまれた布を渡そうとしたが、ソウルがベーンに声を掛けて布を自分のアイテム欄に入れた。
「暗い道だけどちゃんと案内できるな?」
「は!はい!慣れている道なので任せてください!」
「じゃあ、俺の馬に乗ってくれ」
「分かりました」
ジェラルドが、ベーンを連れて商業ギルドを出て行くと、ソウルはその二人の後ろ姿を見ながら表情を曇らせていた。
「どうしたの?」
ソウルの顔を見たアップルが、小首を傾げながら訪ねて来ると、ソウルは少し間をおいて口を開いた。
「あの少年…何か隠しているな…」
「え?そうなの?ただ緊張していただけじゃないの?」
「確証は無いが…あの少年から違和感みたいなものを感じた…」
「違和感?」
「ああ、多分あの少年は商人を目指して、他の商人達からいろいろ教わりながら頑張っているのだと思うのだが…そんな少年が、ああいう緊張した態度を客に見せるのかな?と思ってさ…」
「誰だって最初は緊張する物よ?それにまだ、少年なんだし…考え過ぎよ」
「そうだといいんだがな……」
ソウルが呟くように言うと、商人ギルドの外から、準備が出来たというジェラルドの声が聞こえて来た。
「すまない。皆、先に行っていてくれ。少し確認してくる!」
「ちょ!マスター!私を置いて行かないでください!」
「え?ちょっと!二人共!」
ソウルとマギアが、アップルの制止も聞かずに受付に向かって行ってしまうと、アップルはため息を一つ吐き、仕方がないわね~と口にしながら商人ギルドを出て、他の皆と一緒にカールの遺体がある場所に向かって行った。
「すまない、遅れた」
「遅いぞ?何をしていた?」
「少し、確認していました。…ここがそうですか?」
「ああ、早速始めよう」
ジェラルドとアップル達が、ベーンの案内でカールが落ちた崖に到着すると、その30分後にジャバワークが空から着陸し、ソウルが遅れた事を全員に詫びた。
「かなり深いな…」
「私にお任せください!私の操縦なら問題なく降りられますよ!」
「じゃあ、マギア頼む。ジェラルドさんは俺の後ろに乗ってくれ。他の皆は死体になれてないから」
「分かった」
ソウルが、視線をほんの一瞬だけティカルに向けて頷くと、ティカルは驚きながらも頷いた。
「(ティカルさん?ソウルさんと何を?)」
「(ソウルがああした時は、何かするから身構えてろって合図だよ)」
「(なるほど、さすがリアルフレンド…安心と信頼がそれを可能にするんですね…)」
「(まぁ…僕も具体的に何をするかは分からないけどね…)」
ソウルが行ったアイコンタクトについて、マナリアが小声でティカルに訊ねると、ティカルも小声でアイコンタクトの意味をマナリアに話した。
「じゃあ、行ってくる!」
ジェラルドを乗せたジャバワークが、少し浮き上がって、ゆっくりと崖下に向かって行くと、その途中でソウルが視線を下に向けながら、ジェラルドに話しかけた。
「ジェラルドさん、この依頼…かなりヤバいですよ…」
「ああ、そうだな…」
「下手をしたら領主から命が狙われる可能性も有ります…」
「そうだな…」
「それでも依頼を果しますか?」
「果たす。この依頼がどのような結果になってもだ。それが、俺がジェラルドと言う名前を背負った時の誓いだからな」
「魔物ハンター「ジェラルド」と言うのは、襲名だったんですね」
「ああ、そうだ。だから昔の書物にもジェラルドと言う名がある。お前達が聞いたジェラルドは、先代か先々代のジェラルドの事だろうな」
「ええ、リイルフの長老から聞いてきました。最初に聞いた時、長命種の人かなと?と思っていましたが、襲名だとは思っていませんでした」
「長命種?エルフやリイルフの事か?まぁ、歴史ある名だからそう思われても仕方はないが、俺は普通の人種だ。ただ、特殊な薬で肉体を強化されてはいるがな…」
「なるほど。あれ?そうなると、次のジェラルドは娘さんですか?」
ソウルの質問に、ジェラルドは表情を曇らせた。
「‥‥何故、娘の事を知っている?」
「…あれ?言ってませんでしたか?娘さんが、ジェラルドさんがここに居ると教えてくれたんですよ?いやぁ!実に賢いお子さんですね!ははは‥‥」
突然、後ろから殺気を浴びせかけられたソウルは、慌ててジェラルドの娘シリアの事を褒めると、ジェラルドの殺気が無くなり、ソウルは胸をなでおろした。
「そうなんだ!俺の娘は賢い!それに可愛い!まさに天使だ!いいや、大天使と言ってもいいくらいだ!どう大天使かと言うと…」
「え?あ、…そうですね…」
「(マスター、踏んじゃいましたね?自分の子供が大好きな親と言う罠を…親バカの罠を…私は巻き込まれたくないので操縦に専念している風を装いましょう…)」
ジェラルドが娘自慢を続け、ソウルが適当に相槌をうちながら、ジャバワークの装甲を指先で軽く叩いてSOSのモールス信号を送ったが、その要請は底に到着するまで無視された。
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