魔物ハンタージェラルド
お楽しみくだざい!
「あの人達の演奏もなかなかだったわね」
「私ああいうの初めて聞きました。バンドって言う奴ですよね?」
「ああ、そうだな。…ってどうしたティカル?さっきから難しい顔して?」
「ん?ああ、あの子の声何処かで聞いた事ある様な気がして…でもそれが何処で聞いたのか思い出せないんだよ…」
ソウル達は、ゴスロリ服PTの演奏を聞いた後、ダンジョンの外に出て感想を述べていた。アップルとマナリアが好意的な感想を述べていたが、ティカル一人だけ難しい顔をしながら悩んでいた。
「度忘れって奴か…思い出せないとなんかモヤモヤするよな」
「THE・度忘れですね」
「なんかシンプル2000にありそうね」
「地球防衛するのは楽しかった…じゃなくて、あー思い出せない…」
「そんなに気になるのなら、落ちた後調べればいいさ。とりあえず今日はレビアの街に入った所で解散しようと思ってたし」
「そうする~」
ソウルは、現実の時間を確認しながら言うと、ティカルはその言葉に頷いた。現在の現実時間は22時の時間帯からもうずぐ23時になろうとしていた所だった。
「じゃあ、皆獲得したばかりのマウントを呼び出して、レビアの街に向かおう」
「ワクワクするわね」
「ちゃんと乗れるでしょうか…」
「酔わないといいなぁ…」
「ジャバワーク展開します」
ソウルがマギアの展開したジャバワークに乗ると、アップル達は契約と同時に手に入れていた、それぞれの幻獣の頭をモチーフにしたホイッスルを吹いて呼び出した。ホイッスルを鳴らした後、遠くから幻獣達の鳴き声が聞こえてくると、アップル達のすぐ近くで空間が歪みだし、その歪みの中から契約幻獣が現れた。
「この鞍に跨ればいいのね…よっと」
「前から思っていたんだが…アップルって乗馬の経験あるのか?」
「あるわよ。私の母が馬好きだから、その影響で~って所かしら?」
「なるほど、それで軽々と鞍に跨れるんだな」
アップルの言葉に納得して頷いた後、視線をマナリアに向けると、鐙に足を掛けながらワタワタしているマナリアがいた。
「マナリア、その革の紐…両手綱を持った後、左手は出っ張ってる所…そうそう。右手は背もたれ部分を掴んで一気に上がるんだ」
「ほっと!」
マナリアは、ソウルに言われた通り一気に上がると、鞍に跨ることが出来た。
「乗れた!乗れました!」
「マナリアさん、姿勢を伸ばした状態でリラックスしてください。そうすれば補正が働いて上手く乗れるようになりますから」
ジャバワーク内にいるマギアが、マナリアにアドバイスすると、マナリアはアドバイスに従い蒼天を動かし始めた。
「おお?おお!これは!楽しい!」
「ティカルは…問題ないな」
「大丈夫~いつでも行けるよ~」
マナリアが上機嫌で蒼天を乗りこなし始めた後、ソウルはティカルに視線を移すと、ティカルは問題なく乗れていた。だが、羊の背に乗っているティカルを見たソウルは、自然と笑みがこぼれた。
「なんか、乗っているって言うより、置いてあると言った方がしっくりくるな」
「ちょ!誰が置物だ!ちゃんと!僕は!跨って!乗っている!」
「ハッハッハ!そんな御冗談を!」
「冗談じゃない!」
必死に置物発言を否定したティカルだったが、ソウルはさらにわざとらしく冗談を言い、ティカルを怒らせた。
「さて、ティカルをいじるのはこれ位で捨て置いてレビアの街に行くか」
「貴様ッ…」
「あれ?そういえば、ティカルの羊やマナリアの馬って飛べるの?私の麒麟は大丈夫だと思うけど…」
「あーそれ、やっちゃいます?やっちゃいます?」
「え?なんで二回も言ったの?」
アップルの言葉にマギアが反応して、同じ言葉を2回言うと、アップルはそれに対して首を傾げた。
「飛行に関しては問題ないですよ。お二人共、そのままジャンプすれば飛行状態になります。では、失礼して…「羊と馬が飛べる訳ねーだろ!」」
ティカルとマナリアは、マギアの言葉を察して幻獣達を跳躍させると、蒼天に金属的な翼が現れ、モコは空気で出来た地面を踏みしめるかのように宙に浮き始めた。
「とん…「とんだぁぁぁぁぁ!」」
マギアがワザとらしく言おうとしたが、ソウルがその言葉に被せるかのように叫んだ。
「マスターに取られてしまいました…嘆き…」
「グダグダし始めてたから取った。反省はしてない。ほら!いくぞ!」
ソウルが、急かす様に言うとジャバワークが離陸して行き、その後にアップル達が続いて行った。ある程度まで上昇し、ソウル達はレビアの街に飛行して行った。
「じゃあ、また明日。17時か18時にインできると思うわ」
「同じく私もその位にインできると思います」
「了解。お疲れ様~またな」
「またね~」
「お二人共お疲れ様でした」
レビアの街に到着したソウル達は、衛兵にギルドカードを渡して街の中に入った。アップル達は、門の入り口でログアウトボタンを押しPTを解散した。
「ティカルはこれからどうする?」
「ちょっと街の周りに居る弱い敵と戦って鍛えておくよ。このままだと足手まといになるし」
「分かった。俺は冒険者ギルドに行ってから落ちるよ」
「あいあい、じゃあお疲れ~」
「お疲れ」
軽い挨拶を交わしてティカルと別れた後、ソウルはマギアの案内冒険者ギルドへ向かった。しばらく街の雰囲気を楽しみながら、冒険者ギルドにたどり着いたソウルは、早速ギルド内に入ると誰かの怒号が耳に響いて来た。
「マスター、これはもしかしてあれかも知れません!あの異世界転生者や転移者が冒険者ギルドに登録しに言ったら噛ませ犬に絡まれるという伝説のあれです」
「マジかよ!ついに俺もその現場を目撃するモブになれるのか!?」
「きっとそうですよ!近くで見て見ましょう!」
野次馬根性丸出しで、人だかりの出来ている場所に向かったソウル達は、その人だかりの後ろでつま先立ちをしながら中心を見ると、一人の女性と筋肉質な大男が言い争っていた。
「邪魔だと言ったの!分かる?邪!魔!こんな所で受付嬢口説いてないで冒険者なら冒険者らしく冒険しに行きなさい!」
「いつ俺が冒険に行こうが俺の勝手だろうが!」
「あんた何分も受付独占してるじゃない!後ろに並んでいた人達見えなかったの?それにあんたの話退屈過ぎて受付嬢げんなりしてるじゃない!なんで訳が分からないワイヤーの話しているの?もっと他の話無かったの?自分だけペラペラ喋って悦に浸ってる様な人は脈無しだって気づいて無いの?」
「え…脈無し?」
大男が、恐る恐る後ろを振り向いて受付嬢の顔を見ると、受付嬢は真顔で頷いた。そして、その頷きを見た大男は、目に大粒の涙を浮かべながら、トボトボと歩いてギルドから出て行った。
「ありがとうございます!ネファーさん!あの人凄くしつこくて…」
「いいのよ。それよりも急いで依頼完了の手続きしてくださる?」
「はい!大至急手続きいたしますね!」
カウンターにいた受付嬢が手早く事務処理を始めると、周りで見ていた人だかりは解散し、受付に用がある人達は、女性の後ろに並び始めた。
「…全然違ったな…」
「はい…残念です」
期待していた事が別の事だったので、少しがっかりしたソウル達は、列の最後尾に並んで自分の番になるのを待った。それから数十分後、ソウル達が受付にたどり着くと、ソウルはギルドカードを提出してこの街の登録と地図を貰った後、ジェラルドに付いて受付嬢に尋ねた。
「ジェラルドさんですか?はい、知っています…が、申し訳ございません。お客様、ジェラルドさんとはどのようなご関係でしょうか?」
「俺は…いえ、私、銃士ギルドからジェラルドさんに渡す手紙を預かっておりまして、その手紙を本人に渡さないといけないのです」
「ああ、なるほど。銃士ギルドの方でしたか。ジェラルドさんの御宅は、この街の東門付近にありますので迷われた場合、東門を警備している衛兵に尋ねてみてください。詳しい場所を教えてくれるはずです」
「ありがとうございます。今日はもう晩いので、明日伺おうと思います。それでは」
軽い会釈をして受付から離れたソウル達は、そのまま冒険者ギルドを出て行った。
「マスター?何故一人称を言い直したのですか?」
「あの受付嬢がこちらを怪しんでいたからだ。あの受付嬢、東門付近にありますって言って詳しい場所言わなかっただろ?更に言えば、迷ったら衛兵に聞けとも…つまりそれは、問題があったらすぐに衛兵が来るぞと警告して来た訳だ。だから俺は、一人称を変えて礼節や礼儀が出来る人だぞ、問題ない人だぞっていう所を見せたんだ」
「そういう事でしたか…あの受付嬢なかなかのやり手ですね」
「そうだな…きっとあの場でちゃんと出来ないと「お答えいたしかねます」とか「規則ですのでお答えできません」とか言って来るに違いない…」
「冒険者根性丸出しで行くと痛い目を見るという事ですか…人間ってめんどくさいですね…」
「それが出来るから人間であるともいえるな…‥‥さて、今日はもう落ちて寝よう」
「了解です。お疲れ様でした」
「ティーの様子を見ておいてくれ」
「はい、畏まりました」
ソウルは、その場でログアウトボタンを押し、現実世界に帰って行った。
「ここがそうか…」
翌日の9時過ぎにログインしたソウルとマギアは、東門へと向かいそこにいる衛兵から、ジェラルドの家が何処にあるのか尋ねた。東門の衛兵は、気前よくジェラルドの家をソウル達に教えると、ソウルは衛兵にお礼を言った後、教えて貰った場所に向かった。到着した場所には、三角屋根で4階建ての中規模な建物が立っており、1階部分は何かのお店だった。
「マスター、とりあえずこのお店に入って見ましょう」
「そうだな」
ソウル達が中に入って行くと人の気配はなく、薬草や謎の器具類が棚の上に置かれているのを最初に目にした。だが、今は見ている時ではないので、店のカウンターがある場所に向かい、奥に向かって声を掛けた。
「すみませーん、どなたかいらっしゃいませんか?」
「はーい、少々お待ちください」
「(ん?この声は…)」
ソウルは、カウンターの奥から聞こえて来た声に聞き覚えがあったが、何処で聞いたのかすぐには思い出せず、首を傾げた。
「すみません。まだ開店していなくて…」
「あ、あなたは…」
「はい?」
ソウルは、奥から出てきた人物に驚いた。昨日、冒険者ギルドで大男相手に口喧嘩をしていた女性だったからだ。
「昨日、冒険者ギルドで大男と口喧嘩していた方ですね」
「えぇ!あれを見ていたのですか!お恥ずかしい…お忘れください…で~要件は何でしょうか?」
「おっと、失礼しました。俺は銃士ギルドのギルドマスターからジェラルドさんに手紙を渡す様に言われてこちらを伺って来たのですが、ここにジェラルドさんはご在宅でいらっしゃいますか?」
「そういう事でしたか。ええ、ジェラルドは私の旦那なので、ここで一緒に住んでますよ。ただ、昨日から魔物討伐の依頼を受けて出ているので今は居ません」
「‥‥魔物討伐の依頼…ですか…困りましたね…」
ソウルは、女性の言葉を聞いて困った表情をした。
「もしかして、手紙以外にジェラルドに緊急な用事があるのですか?」
「はい…あ、すみません。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?俺の名前はソウル、こっちがマギアです」
「初めましてマギアです」
「私はネファーと言います。それで、ソウルさん?お話を伺ってもいいかしら?」
「はい、実は…」
ソウルは、リイルフの集落で起きた事やディスペアーストーカーの事も全て伝えた。ソウルの話を聞いていたネファーの表情や雰囲気が、徐々に深刻になって行くのをソウルは肌で感じた。
「それは大変!急いでジェラルドを呼び戻さないと!」
「(呼び戻す?)えっと、旦那さんは何処に向かって行ったのですか?」
「ここから南に行った所にあるグラードという街よ」
「聞いた事のない街ですね…」
「マスター…グラードの街はこの場所から直線距離で3000km以上離れた場所にあります。空を飛んで行けば数時間で到着しますが、それは空を飛んで襲って来るモンスターや天候等を計算に入れないでです」
「実際行くとすれば1~2日は見た方が良いって事か…」
「はい」
「大丈夫よ、そんな事しなくても私に任せて貰えればすぐ着くわ!」
「すぐに着く?そんな方法があるのですか?」
「ええ、ただちょっと準備があるから夜にまた尋ねて貰えるかしら?」
「夜…ですか?」
「ええ、18時位なら準備が整っていると思うから」
「分かりました。その時にまた来ます。あ、その時俺の仲間達も一緒にいいですか?」
「ええ、大丈夫よ」
ソウルはネファーの言葉に頷いた後、店から出るとウィンドウを開き、ティカルと連絡を取った。
シンプル2000は地球防衛軍が初めてですね。
幻獣は契約完了後自動的に鞍が付きます。また、幻獣の性能を上げることが出来る鞍に交換が出来ます。所謂初期の鞍ですね。
馬が飛ぶわけねぇだろ!→飛んだーのネタをやった。後悔はしていない。
自分が好きな話をする人がいますが、それが相手にとって好きな話ではない事もあります。注意しましょう。
礼節、礼儀が出来ないと社会人人生ベリーハードになります。
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異世界の大魔王様、乙女ゲーの悪役令嬢に転生す ゆっくり更新中です。




