残された想い、超える意志
ちわー!ハーメルンでーす!ご注文のチャーシュ麺と最新話お持ちしました~!
それではお楽しみください!
飛龍の背に乗り上空から見たバルームは、確かに街というには小さく4基の風車がゆっくりと羽を回転させ小麦畑が広がる、のどかそうな雰囲気だった。
「飛龍運送をご利用いただき、ありがとうございました~」
町の入り口近くにある乗降場で飛龍から降り、木の柵と拒馬で囲われた町の入り口に行くと自警団と思われる青年に止められた。
「こんにちは!こんな田舎の町に来るなんて珍しいですね!なにか御用が?」
「ええ、この町に住まわれていた方の遺品を届けに来ました」
「それは、ご苦労様です。亡くなった人の名前は…」
「ハドリーラジェットさんです。 別の方の遺品もありますが、名前がわからずエメラさんが知っているそうなので今からお訪ねしたいと思いますがエメラさんが住まわれているお家はご存知ですか?」
「ああ…ハドリーさんが…やっぱり…すみません、町長にこの事を伝えなきゃいけないので失礼します!エメラさんの家はそこにいる子供が知っています!」
青年は指を指し示すと、その先に石垣に座りながら町の入り口を見ている幼女がいた。
「あの子はもしかして…」
「はい、そうです…マリンちゃんです…では、後で町長と一緒にエメラさんの家に伺いますね…」
青年が涙目で走り去ると、ソウルは意を決して幼女に話しかけることにした。
「こんにちは、お嬢さん、ちょっとお尋ねしていいかな?」
「んーなぁにお兄ちゃん?」
「エメラさんのお家を探してるのだけどどこか知ってるかい?」
「お母さん知ってるの?そこ僕の家だよ!案内してあげる!」
「(まさかの僕っ娘)ああ、頼むよ」
石垣から飛び降り、駆ける様な速さでソウルの先を行くとある程度進んだところでマリンが振り返った。
「お兄ちゃーん! こっちだよー! はやくはやく―」
ソウルも駆け足でマリンを追うと、酒場の裏にある家の前でマリンが立ち止まった。
「ここだよー お母さーん! ただいま~ お客さん連れて来たよ~」
「(さて…どう伝えるべきか…)」
家族の不幸を伝えなければいけない事に、どう伝えればいいか悩んだが答えが出ぬままエメラと対面してしまった。
「おかえり、マリン。 お客さん?」
「うん、このお兄ちゃん」
「こんにちは、銃士ギルドから来たソウルです」
「銃士ギルド…まさか…」
エメラが銃士ギルドという言葉を聞いた時、何かを察し衝撃を露わにした。
「はい、こちらが遺品になります」
修復した銃と丁寧に畳まれたコートをエメラに渡した。
「ねぇ…お兄ちゃん…それお父さんのだよね…どういう事?」
「マリン…お父さんは…」
「嘘だ! だってお父さんちゃんと帰ってくるって言ったもん! 約束したもん! 依頼が終わればみんなの借金が無くなって…それで…お土産もかっ‥‥だから…ずっとあそこで待って…お兄ちゃんは噓つきだ!僕達を騙そうとしてるんだ!…そうじゃなきゃ…いやだ…いやだよぉ‥‥」
「ああ…あなた…」
エメラは遺品を胸に抱き泣き崩れ、マリンが大声で泣き出す姿に、ソウルは黙って立ち尽くすことしかできなかった。
「じゃあ、残りの遺品を渡してくれるかね…」
その数分後、町長と入り口にいた青年、関係者と思われる人たちがエメラの家へ訪ねてくると、場所を酒場へ移すことになった。 酒場のテーブルや椅子の配置を変えた後、町長に言われ残りの遺品を丁重に取り出しテーブルの上に置いた。
「バカ息子が…親より先に逝くなんて…」
町長が一つの弓を前にして短い言葉を発した後、大粒の涙を流していた。
「兄貴…すまない…すまない・・・」
その他の遺品を前にした人達も同じく涙を流していた。
「すみません、ソウルさん…はしたない姿をお見せしてしまい…」
「いえ、そんなことはありませんよ。 大切な方が亡くなったのです、当然のことですよ」
「夫は、どのように亡くなったのですか?」
「すみません、実はご遺体を見たわけではないのです。とある鉱山にナーガがいまして、それを討伐し巣を探索した所、損傷した状態で見つけたのです。 銃士ギルドマスターに遺品についてお聞きしたら、こちらの事が解り綺麗にして届けてやってくれと言われ参った次第なのです」
「そうでしたか…前見た時より状態が良くなっていたのは、ソウルさんが綺麗にしてくれたおかげなのですね、ありがとうございます」
「儂からも感謝する、息子の遺品を持ち帰って来てくれたばかりか綺麗に直してくれて…」
「だから俺は反対したんだ!あんな胡散臭いジジイの依頼なんかやめとけって!確かにあのジジイが薬を出してくれなかったらこの町は全滅してたさ!でも、そのせいでジジイに借金することになって借金の代わりに依頼を成功させれば借金はなくなるって話…おかしいと思ったんだ!」
「これ、やめんか!」
村の入り口にいた青年が叫ぶような声を上げ町長が窘めようとするが、ソウルは引っ掛かりを感じた。
「すみません、その話詳しくお聞きしてもいいですか?」
町長に話を聞いてみると、数年前この町に疫病がはやり危機的状況に陥り、その時どこからともなく顔を半分隠した老人が現れ、疫病に聞く薬を買ったそうだった。だが、薬の値段が高く老人に借金する形になり返済が困難だと老人に伝えた所、一つの依頼を成功させれば借金は無くしてやるという条件をだし、ハドリーたちはその条件のんだらしい。
「なるほど、確かに怪しいですね…疫病に苦しんでいる町にその疫病に効く薬を持って現れる…それも大量に…」
「あの時は必死で疑いもしなかった…どんな事をしても助けたかった…悪魔と取引しても…」
「疫病の発生源は判明してますか?」
「たしか、水源から来てるって聞いたぞ」
農夫姿の中年男性が声を上げた。
「私は、水が蒸発して悪さしてるって聞いたわ!」
次々と聞こえてくる声にソウルは確かめてみることにした。
「その水源の場所に行ってみてもいいですか?ちょっと調べたいと思います」
「いいですよ、あの時から忌諱して誰も水源には行かなかったのですが、そろそろ水路の確認もしなくてはいけませんから…」
ソウルと町長、他の男性たちも連れて町の水源へと向かった。
「町長、こっちは問題ないですぜ」
「そうか、ご苦労」
「町長!こっちは崩れ始めてる!直さないと水の流れが止まっちまうよ!」
「ふむ、こっちは問題ありっと…」
地図に印をつけ復旧箇所を確認していく町長は、水源に近い所で立ち止まりソウルに顔を向けた。
「この先が町の水源となっています、そこから街に水路を引いて生活に役立てています」
「なるほど…ん?」
ソウルの先から必死な姿の男性がこちらに走ってきているのが見えた。
「た…たいへんだぁ!‥‥この先で子供たちがモンスターに襲われている!」
「な!なんで!子供がこんなところに?!…ソウルs…あれ?あ!ちょっと待ってください!」
男性の言葉を聞いたソウルはすでに走り出していた。
「うわぁぁぁぁくるなぁぁぁぁ‥‥」
ソウルの耳に子供の悲鳴が聞こえ、その方向へと走り続けると鷲のような翼と上半身、ライオンの下半身を持つグリフォンと呼ばれるモンスターが今まさに、鉤爪をマリンに振り下ろそうとしていた。
「させるかぁ!」
銃を抜きグリフォンの頭に連続して発砲し、マリンや子供たちから遠ざけた。
「大丈夫か!?怪我してないか?」
グリフォンと子供達の間に入り、目線をグリフォンから離さず子供達に無事かどうか聞いた所、涙声で大丈夫、と言った。
「危ないから少し下がってな…」
「う…うん…」
素直に子供たちが離れていくと、翼を大きく広げ威嚇してくるグリフォンに銃口を向けた。
「まともに喰らえば終わり…負ければ子供達が死ぬ…逃げれば町人達に被害が出る…か…やれるか?…嫌、やるんだ!」
銃を発砲し、子供たちに攻撃の余波が行かない様場所を移動した後、グリフォンの近接攻撃を避けながら攻撃していった。
「ここだぁ!」
パイルバンカーのトリガーを握り、グリフォンの脇腹へ杭を叩きつけ引き金を引いた。
「ギュェェェェェ!」
「よし!だいぶHPが減ったぞ! !?」
パイルバンカーの発砲音が轟き、大きく仰け反った後グリフォンが空へ飛び立った。
「うぉ!」
グリフォンが、高い上空から急降下し鉤爪で切り裂く攻撃をしてきたが、ソウルは回避に成功するも後から来る強風に吹き飛ばされ木に体を打ち付けた。
「マジか…HPが残り2…」
回復薬を取り出し体に振りかけ回復するが、グリフォンがまた上空へと飛び立った。
「一か八か…」
パイルバンカーを構え、グリフォンが急降下からソウルの真正面に来た時、振りぬく勢いで引き金を引いた。
「ギャァァァ!」
「くっ!」
グリフォンが地面に落ち、のた打ち回るとソウルも吹き飛ばされたが、すぐに立ち上がった後銃を発砲しながら近づき、パイルバンカーに持ち替えて何度も叩きつけるように引き金を引いた。
「ギィヤァァァァァァァ‥‥」
二回目のリロードし最初の一発目が当たると、グリフォンが断末魔を上げ白い光を上げながら消えていった。
「…はぁーたおせたぁ…」
心から出た声にソウルは地面に座った。
「おーい!ソウルさーん!大丈夫かー!」
子供達と一緒に隠れていた町長たちがソウルに駆け寄ると、ソウルは立ち上がり片手を上げる形で返事を返した。
「それにしても…なぜここに?」
ソウルがマリンを見るとビクッと体を震わせた。
「ご…ごめんなさい…お兄ちゃんもあのお爺さんみたいな悪い奴だと思って…またお水に悪い事するんじゃないかと思って…それで…」
「ん?また?」
ソウルはマリンの言葉を聞き、首を傾げた。
「うん…前、ここで遊んでた時にあのお爺さんがお水に何か入れてて…その後、病気が蔓延して…きっとあのお爺さんがお水に入れてた物が原因だと思って…それで…それで…」
「なるほど、今度は水を守ろうと先回りして俺が悪いことしている所を目撃しようとしたって所かな?」
「うん…」
「そんな話、初めて聞いたぞ・・・」
「僕、皆に言ったんだけど…信じてもらえなくて…」
「だから、今度は複数人で見張れば信じてもらえると思った、と…」
町長はマリンの話に驚愕し、子供たちは下を向いて涙を浮かべ、男たちはそういえば、とした顔になっていた。
「いい正義感だ、だけどね…」
ソウルは片膝を突き、マリンの目線と合わせた。
「だけど、それは無謀だよ。さっきみたいな怖いモンスターに出くわす危険性もあるし、もし俺がとても悪い奴で銃を撃ってきたらどうする? そんなことが起きてマリンちゃんが怪我したり死んじゃったりしたら、残されたエメラさんはどうなるかな?」
「お母さんが悲しむ…」
「そうだね、自ら命を絶つくらいの悲しみがエメラさんを襲うね…」
「そんなの嫌だぁ…」
「じゃあ、どうすればいいかわかるかい?」
「うん…」
「いい子だ」
マリンの頭をなでるとソウルは立ち上がり、グリフォンがいた場所に何か落ちていないか探すと、微かに光る羽を見つけた。
「これも証拠になるかな…?」
「証拠?どういうことです?」
町長の言葉にソウルは、ガメルフを断罪する為に証拠集めをしている経緯を話した。
「そのガメルフという奴があの怪しい爺さんだったと?」
「可能性はあります…ですがこれだ!という証拠がない状態です…せめてあいつがこの水源に入れた物の容器なんかがあればよかったんですが…さすがにもう何も残されてはいないでしょう…」
「容器?容器って入れ物?それなら僕持ってるよ!」
「ほんとうか?!」
「うん、すごく怪しかったからあのお爺さんがいなくなった後、地面に捨てた入れ物持って帰ったんだ、すごく臭くて蓋した後、箱の中に入れて埋めたけど…」
「よくやったよマリンちゃん!その容器、貰ってもいいかい?」
「うん!」
ソウル達は町へと戻り、それぞれ別れた後ソウルとマリンはエメラの家へ戻り、庭に埋めてあった箱を掘り起こした。
「ほんの少しだけど液体が残っているな…」
「これ役に立つ?」
「ああ、これの出所を調べれば何かしらわかるだろう…」
箱から取り出した瓶の底に極少量ではあるが紫色の液体が残っていた。
「ソウルさんこちらにいましたか…今町長から今夜、町の広場で弔いの火を灯そうという話があるのですが…」
「申し訳ない、さっそくこれを調べないといけなくなったのでこれで失礼します…」
「そう、残念です」
「何かしら解りましたら、報告に来ますので…では失礼します」
ソウルは、足早に町の入り口付近にある乗降場へ向かった。
「ねぇ…お母さん…」
「どうしたのマリン?」
「僕、将来銃士になるよ!それで、天国にいるお父さんに私の名前が届く位…いやお父さんを超える位いっぱい活躍して、元気だよって伝えたい…」
「マリン…そう…厳しいわよ…」
「うん、でもいつかあの人と…」
ソウルを見送るマリンの目には決意の炎が宿っていた。
グリフォンと激闘しましたが強さ的には負ける要素が少ない中ボスです。
他の職業だと下手うたなければ必ず勝てるレベル…まぁしょせん○〇○ですからねぇ…
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