楽園攻城戦 2
すみません!遅れました!そして、長くなったので二分割します!(まだ半分しか出来ていませんが…)次回完成後に合わせて楽園攻城戦2となります!
腹と腰にウィッチダブルショットを喰らいました。まぁお腹は只のよくあるあれなんですが。
合成完了!お楽しみください!
砦内部へと侵入したソウル達は、慎重に通路を進んで行くと、幾つ物の石柱が規則的に並んでいる大部屋にでた。その大部屋は全体的に薄暗く、壁の数か所にロウソク火が灯っているだけだった。
「マギア、ライトを頼む」
「了解しました」
「ソウル…いるわね…」
「ああ、石柱の影で待ち構えていると思うから、待ち伏せに注意だ」
ソウルの言葉に仲間達が頷き、マギアが背中の羽を光らせて周囲を明るくした。ソウルはアイテム欄から松明を出して火を灯した後、ブルーローズで松明を持ち、PTが進む方向の二歩先まで伸ばした。
「死ね!…なぁ!?」
「釣れたな」
「オラァ!」
石柱の2本目に伸ばしたブルーローズが差し掛かり、その石柱隠れていた敵が現れて、剣を振り下ろしたが、空を切っただけだった。空振りした事に驚いていた敵の頭を、アップルが全力で殴り飛ばし、何かが折れる音が微かに聞こえた。
「待ち伏せは失敗だ!全員戦闘を開始せよ!」
大部屋の後方から男の声が聞こえ、隠れていた敵が次々と姿を現し始めた。そして、敵が出てきたと同時にソウル達の後に続いて来た味方PT達も、ソウル達がいる大部屋に入って来ると、向かって来る敵と交戦し始めた。
「よ!っこいしょ!」
マナリアが、斬りかかって来た敵の剣をカイトシールドでパリィし、態勢が崩れた敵の体に向かって、パイルバンカーの引き金を引き、敵の胸に大穴を開けた。
「敵の防具も問題なく貫通できたなっと!」
「この盾は…いい物です!」
ソウルが、βブレードを装着したΣウェポンで、敵を斬り伏せながら感想を言うと、マナリアは盾とパイルバンカーの性能が気に入ったようで、次々と敵を倒していった。
「これ以上我らは下がれん!絶対に死守しろ!」
再び大部屋の後方から男の声が聞こえ、敵の一人がソウルに向かって、上段から振り下ろす斬撃をすると、ソウルはΣウェポンを横にしてその攻撃を防いだ。その攻撃を防いだ時、ヘルムの隙間から見えた表情には、不安と焦りが混じった様な表情をしていた。
「(もしかしてこいつらの士気は最低か?押せば倒れるか?)」
ソウルは、剣を押し返し敵の腹を蹴って数歩下がった後、叫んだ。
「押せば倒れるぞ!全員押し込め!」
ソウルの声に、その場にいた味方全員が反応し、盾持ちのプレイヤーが先頭になって歩みを進めると、ソウルが睨んだ通り押し始めた。そして、徐々に敵の数も減って行き、先頭のプレイヤー達が進む歩幅も大きくなっていった。
「あの男は…」
大部屋の攻略も終盤へと差し掛かり、ソウル達が出口までもう少しでたどり着くという所で、敵に指示を出していた男の顔が見えた。ソウルは、その男の顔に見覚えがあり記憶を辿って行くと、男の名前を思い出した。
「ブリス・ドニア…財務大臣をしていた男だな」
「マスター!あの男はリストに載っている標的です。逃がしてはいけません!」
「勿論だ!ブリス・ドニアァァ!」
ソウルが大声でブリスの名前を叫ぶと、名前を呼ばれたブリスは、恐る恐るソウルがいる方向に目を向けた。
「お前はここで終わりだ!」
「う…うるさい!私はここで死ぬはずがない!こんな所で終わってたまるかぁ!」
「じゃあ、ここからどうやって戦況を覆すつもりだ?もう後ろに下がれないんだろ?」
「そ…それは…」
ソウルは、会話する事で指揮の邪魔をする事と、指揮官の動揺が敵に伝わるように話を続けた。ブリスは、残り少ない部下達を見て言葉を詰まらせると、プレイヤー達を相手しているに部下達に動揺が走ってしまった。
「貴様らに一度だけ言ってやる!武器と防具を捨てて投降しろ!」
「うるせぇ!どうせ投降したって死刑になるに決まっている!」
「さぁ?どうだろうな?だが、これだけは言える。こんな見知らぬ土地で躯を晒すか、生まれ故郷の帝国に埋葬されるかどっちがいい?」
ソウルの言葉を聞いて、その場にいた敵がどちらがいいか迷い始めた。だが、一人だけ迷わずに声を荒げる男がいた。
「どっちもごめんだ!クソ野郎!」
ブリスは、部下達を見捨てて出口へ走り去ると、それを見た部下達は、信じられない物を見たように目を見開き、その場で茫然とし立ち尽くした。
「待て!」
ソウル達は、敵が立ち尽くしている内に、その場を通り抜けてブリスを追うと、ブリスは階段を使って下に降りていく姿が見えた。ソウル達も階段を使って下に降りていくと、右曲がりで緩やかな下り坂になっている場所に出た。その階の入り口でアップル達を停止させたソウルは、逃げている男の名前を叫んだ。
「ブリス・ドニアァァ!」
「くっ!…[ガコン]…グベェェ!」
名前を呼ばれた事で焦ったブリスは、地面と同化している何かの装置を踏むと、鉄格子に無数の鉄刺が付いた物が勢いよく動き出し、ブリスを巻き込んで絶命させた。
「…韋駄天みたいな死に様だったな…」
「韋駄天?…よくわからないけど、ここからトラップがある訳ね…」
「マスター。罠を解除できるプレイヤーの方をお呼びしますね」
「頼む…」
アップルの言葉に寂しさを感じながらも、ソウルはマギアの言葉に頷いた。そしてマギアが、罠を見破れるプレイヤーを連れてきた。
「確かヴァルハラのミヅナさんでしたね。お久しぶりです。あの時はありがとうごさいました」
「はい。ソウルさんお久しぶりです。いえいえ、いつもお世話になっているのでお気になさらず」
「ん?いつも?」
「…ジャア、サッソクワナヲカイジョシテイキマスネ…」
ソウルがミヅナに聞き返すと、ミヅナは体をビクッとさせて片言になり、罠を解除し始めた。ソウルは、その事に深く追求する事せず、ミヅナの指示に従って付いて行った。
「止まってください。ここから先一面に魔法のトラップが設置されてます。どれか一つでも踏むと連鎖的に作動して即死級のダメージを喰らう羽目になります」
「解除できますか?」
「難しいですね…解除しても数分で自動的に再設置されてしまう類のトラップです」
「再設置までの時間は?」
「別の種類の罠も混じっているみたいなので、これと言った時間は分かりません…30秒の物や5分で再設置される物もあります」
「そうですか…」
ミヅナの言葉にソウルは、どうしようかと考えて上に視線を向けると、天井に溝のような物と鉄製の輪がある事に気が付いた。
「マギア、あの天井に着いている輪っかはどれ位の強度だ?」
「あれですか?少々お待ちください。調べてみます」
マギアが天井にある輪に向かって浮遊して行き、強度を調べ始めると80kgまでなら耐えられるという結果をソウルに伝えた。
「80キロか…いまいち不安な数字だな…」
「ちなみにですがあの輪っかは、この先にも一定の間隔で設置されていますね」
「ジップラインを作って行くか?」
「ジップラインって確かワイヤーを滑車で滑って行く奴だっけ?」
「そうだ。マギア、あの溝に返し見たいのはあったか?」
「はい、あります」
「よし!マギア、今からブルーローズでH型の滑車を作るからそれを溝に嵌めて来てくれ」
「了解しました」
ソウルは右腕の銃口から、ブルーローズをひも状に伸ばし、その先端を小さなH型にした。そのH型はダンベルの様に両端が円形になっており、その中心にブルーローズの紐が付いていた。H型の滑車をマギアに渡すと、マギアは溝に向かって浮遊していった。
「嵌めた後、適切な大きさになったらストップと言ってくれ」
「解りました」
マギアがH型の滑車を溝に入れ、ソウルに合図を送ると、ソウルはH型の滑車をゆっくりと大きくさせていった。
「ストップ!」
「はいよっと…じゃあ、まず俺が使ってみるから成功したらこれをつかって来てくれ」
「ソウルさんお気をつけて」
「気をつけてね。ソウル」
「私は飛べるから付いて行くわよう!」
「滑車をここまで戻してもらう為にマギアも付いて来てくれ」
「了解です」
「よし、じゃあ~無限の彼方へ行くぞぉぉ!」
H型の中心付いているブルーローズの紐を、丁度いい長さにした後、緩やかな坂を下って行った。下るスピードは、速すぎず遅すぎずの丁度いいスピードで、二回の右回りの後、出口へとたどり着いた。
「よっと!大丈夫だったな」
「はい、溝に入れたブルーローズも損耗や歪みなどありませんでした。これなら皆さんも滑り降りる事が出来ます」
「そうだな。じゃあマギア、大変だと思うけど、この滑車を皆がいる場所に戻して行ってくれ」
「お任せください」
「そういう事なら私も手伝うわよう!」
「ティーも頼む」
「任せなさいよう!」
ティーとマギアが、H型の滑車を引っ張りながら坂を上がって行くと、その数分後、アップルが楽しそうな声を上げて下って来た。
「これ楽しいわねソウル!」
「お気に召した様で何より」
「また乗りたいわ!」
「後でな~」
再びティーとマギアが、H型の滑車を引っ張って行くと、次にマナリアが来たが、ティーとマギアも、一緒にロープを掴んで滑って来ていた。
「よいしょっと…あー楽しかった」
「マスター?後に続いて来るプレイヤーの人達の為に、ロープを付けてH型の滑車を元の位置に戻せる様にした方がいいのではないのでしょうか?」
「あーそうだな。そうするか。どの位の長さが必要だ?」
「100mあれば十分です」
「分かった」
ソウルは再びブルーローズをひも状に伸ばして行き、100m分をマギアに渡した。
「では、行って来ます」
マギアがロープを持って上がって行き、ティーがH型の滑車を引っ張って行った。
「アップル、マナリア俺達は、マギア達が返って来るまで少しこの先を偵察してみよう」
「ええ、分かったわ」
「了解です」
ソウル達は、この先ににある部屋を偵察しに向かった。
「ここは…」
「ここって確か、あの倉庫みたいな場所よね?あそこにロボットが立っているから間違いないわ」
「でも…それ以外全部変わってますよ?なんていうか…そう!邪教の祭壇みたいな雰囲気になってます」
「劇的にビフォーアフターしすぎだろ…それも最悪な形でだ…」
ソウル達が見ている部屋は、かつて様々な異世界の武具や道具が置かれていた場所で、今はもう謎のマークや血痕が付いた祭壇、その祭壇の近くには、人だったと辛うじて解かる物が磔にされていた。
「あのマークは確か…」
アップルが、至る所にあるマークに見覚えがあり、目を細くしてマークを見つめていると、思い出したのか急に目を見開いた。
「そうよ!あのマークはあのふざけた教団のマークじゃない!」
「え?ちょ!アップル待て!」
「アップルちゃん!?」
アップルが、ソウル達の制止を無視して部屋の中に入って行くと、すぐ信者達に見つかり、騒がれてしまった。ソウル達はアップルを一人にさせる訳にもいかず、慌ててアップルの後を追って部屋に入って行った。
「星の子らぁぁぁ!」
「お…お前は!あの時の狂犬みたいな女来訪者!」
アップルが教団の名前を叫び、アップルの事を覚えていた信者の一人が、指を差しながら狂犬と言い放った。
「誰が狂犬よ!ぶん殴るわよ?!」
「やっぱり狂犬じゃないか!?」
男が再びアップルの事を狂犬と言うと、アップルは男に近づいて顔を殴り飛ばした。
「おやおや?なんかうるさい事が起きていると聞いて来たら、あの取引の時に居た来訪者がいるじゃないか?」
突然、ロボットの方から男の声が聞こえ、ソウル達は声がした方向に視線を向けると、スキンヘッドで顔全体に教団のマークが描かれている男が、ロボットの肩に乗っていた。
「星の子らの代表、バンプキン・ボールドだな?」
「いかにも!私がこの星の救世主!バンプキン・ボールドである!…して、我が教団に何様かな?」
「貴様らは見つけ次第、速やかに撃滅せよと皇帝から依頼されている。だからそうさせてもらう」
「はっ!何を馬鹿な事を言っている!たった3人でこの数を相手するとでもいうのか?」
バンプキンが、二回手を叩いて合図を出すと、新たに拡張された通路から、教団のマークが描かれた白い服を着た信者達が、異世界の武器を持って現れた。
「…ざっと見で300か?」
「それでもまだ増えて来てますよ?」
「‥‥」
ソウルは、βブレードからαトリガーに換装しながら、アップルに話しかけた。
「アップル…俺達が援護するから、好きに暴れてもいいぞ?」
「いいの?」
「ああ、問題ない。それにな…所詮他人である俺には、アップルが迷い悩んでいる事を解消してやる事は出来ないだろう…だけど…だけどな、答えに向かって進んで行く仲間の背中なら守る事が出来る!」
「そうだよアップルちゃん!私も一緒に戦うから、背中は任せて!」
「…ありがとう。二人共…大好き」
アップルは、敵が無数に現れた時、内心後悔していた。マークを見て星の子らの事を思い出した時、頭の中が怒りで満たされてしまい、何も考えず突入してしまった。そのせいで二人もこの場所に入る事になってしまい、その結果300対3と言う圧倒的に不利な状況になってしまっていた。
「アップルだけなら切り抜ける事が出来るかも知れない…だけど、ここには二人がいる…マナリアは、スキルを使って何とか出来るかも知れない…だけど、ソウルは?ソウルはどうするんだろう?」と頭の中で答えが出ない事を悩み続けたが、ソウルの最初の言葉がアップルを救った。
ソウルの言葉は、アップルを責める様な言葉ではなく「好きに暴れていい」「悩みと迷いを晴らす為に前に進め」「その背中は俺達が守る」と言われ、マナリアからは「私も一緒に戦うから」と言ってくれた。二人の言葉で、アップルの心を覆っていた後悔と自責の念で出来た霧が晴れ、温かさが心に満ちた。
「迷わず進め!アップル!」
ソウルが、言葉を発した後すぐに、銃口を信者に向けて発砲した。その銃砲で戦闘が開始され、アップルはソウルの言葉通り、バンプキンに向かって進み始めた。
「変身!」
アップルは変身した後、篭手を装備した。その篭手の名は左が白月、右が無月。両手を使う攻撃は、まさに月の満ち欠けの様に美しく移り変わって行く物だった。
~の2~
「【水鉤爪】」
アップルが、両腕に水を纏わせ巨大な水の鉤爪を出すと、目の前にいる信者に鉤爪で攻撃した。信者は、手にしていた武器でアップルの攻撃を防ごうとしたが、鉤爪は水で出来ている為、防ぐ事が出来ずそのまま胴体を切り裂かれて絶命した。
「チッ…皆さん!複数人で同時に攻撃すればあの悪魔達を殺せます!恐れずに戦うのです!今こそ勇気を示す時!」
「やらせんよ!」
信者達が、言われた通りに同時に攻撃して来たが、ソウルが銃を連射し、信者達の体に当てて負傷させた。ソウルは、殺さずに負傷させる事で、次に向かって来る信者達に、二の足を踏ませようとしたのだった。
「撃たれたら二度と立ち上がれない位痛いぞ!それでも来るなら今度は右の肺に風穴を開けてやる!」
「じゃあ、私は下半身にある一部を貫いてやります!」
ソウルは、ランダムに選んだ信者に銃口を向けた後、右肺を狙って発砲した。撃たれた信者は、仰向けに倒れた後、血を流しながら胸を抑えて苦しみ出し始めた。マナリアは、槍とカイトシールドを装備し、槍を信者達の股間に向けると、信者達は股間を抑え始めた。
「まだ、来ようとしている奴がいるな!?量産してやるよ!」
ソウルが銃を乱射し、負傷者を量産させていくと、信者達は恐怖に慄き逃げ出し始めた。その事で、信者達は同時攻撃を止め、こちらに向かって来るのを止めてしまった。
「二人共!今だ!範囲攻撃で一掃しよう!」
「分かったわ!」
「任せてください!」
2人がスキルの予備動作に入り、ソウルは邪魔させまいと信者達に銃口を向けて発砲し続けた。
「アマヅキ流が奥義!【武神蒼気勁】」
アップルが跳躍して空中に留まり、両手に気を集めて球体を作った後、敵が固まっている所に向かって、勢いよく右掌を突き出して気の球体を放った。放たれた気の球体は、敵に向かって真っ直ぐ飛んで行くと、固まっていた敵の中の1人に当たり、そこを中心として青い爆発が起きた。そして次にアップルは、左の球体を放つと別の場所にいた信者に当たり、先程と同じようにその信者を中心として青い爆発が起こった。アップルは、球体を生成して交互に放つ行為を計12回行い、最後に両手を合わせて数倍の大きさになった気の球体を信者に向けて放った。
「【ファランクスストライク】」
マナリアは、盾を前に出し槍を後ろに引くと、無数の半透明な槍が現れ、180°に展開していったた。そしてマナリアが、自分の槍を突き出すと、展開された無数の半透明な槍も突き出され、信者達を貫いた。どうやら半透明な槍は、マナリアの槍の動きに連動している様で、再びマナリアが槍を後ろに引くと、半透明な槍も後ろに動いた。
「星の為にぃぃぃ!」
信者の一人が、喚きながら異世界製の斧を振り上げ、ソウルに斬りかかって来た。その信者にソウルは銃を向けて発砲するが、弾が体に当たっても、まるで痛みを感じていないかの様に向かって来た。
「薬物でもやってんのか!?この狂信者め!」
ソウルは、斧の攻撃を横に避けた後、すぐに狂信者の頭に狙いを付けて発砲し狂信者を絶命させた。
「星の為に!」
「救世主の為に!」
一人狂信者が、薬物を使いソウルに迫ったのを見て、他の信者達も注射器を取り出し、首に針を刺して薬物を使い始めた。
「狂信者どもめ…不愉快過ぎる」
「ソウルさん!あれなんですか?!」
マナリアが、攻撃しても痛がらない事に驚き、ソウルに尋ねた。
「薬物で痛みを感じなくなっている!確実に急所を突いて殺すしか手はない!」
「私…前見た映画で、あんな風になった人がいた事を思い出しました…」
「急所を突いて倒しても、近づくなよ!まだ生きてる可能性があるからな!」
ソウルが二人に声をかけると、声を掛けられた二人は頷いた。そしてほとんどの信者が、薬を使い狂信者になると、ソウル達はその数を捌き切れず、ダメージを蓄積させていった。
「そうです!皆さん!あの悪魔共を殺すのです!」
劣勢になったソウル達を見て、バンプキンが愉快そうな声色で教信者達に指示を出した。
「ほざいてんじゃねぇよ!」
バンプキンの声にイラついたソウルが、銃口をバンプキンに向けて発砲すると、射出された弾丸はバンプキンの頬を掠め、後ろの壁に当たった。
「…何だ?…血?…血!?なんだこれは!」
頬から流れ出ている血を見て、バンプキンは驚愕した。
「貴様!よくもやりやがったなぁ!」
「おや?救世主の仮面が外れているぞ?お前の仮面脆過ぎじゃないか?」
「ざけんなてめぇ!殺してやる!」
ソウルの煽りにキレたバンプキンは、ロボットのコクピットハッチを開いて搭乗した。そして、ロボットの胴体から起動する音が聞こえ始めると、ロボットの頭部だけが動き出し、ソウル達の方を向いた。
「死ねぇ!」
ロボットの頭部にバルカン砲が展開され、連続した発砲音が響き渡ると、周りに居た狂信者を巻き込むような形でソウル達を攻撃した。
「死んだかぁ?」
「まだ生きてるよ!」
ソウルは、ブルーローズを体が隠れるほどの大きさにし、半球体の形にしてバルカンの弾を凌いでいた。アップルは、マナリアの後ろにスキルの【ブリッツ】を使って移動し、マナリアはスキル【フォートレス】を使用して、自分とアップルを守った。バンプキンの言葉にソウルが、軽口を叩くと再びバルカン砲から弾が発射された。
「マスター!大丈夫ですか!?」
「強そうな助っ人連れて来たわよう!」
マギアとティーが、三人が入って来た入り口から来ると、その後ろにはプレイヤー達の姿があった。そしてマギア達は狂信者達を倒しながら、ソウル達がいるこちらに向かって来ると、バルカン砲の攻撃が突然止み、空撃ちする音が聞こえた。
「チッ…弾切れか…ならば!完全起動したこの人型で叩き潰してやる!」
人型が胸の位置にあった可動橋を破壊し、格闘家のような構えを取り始めた。
「ソウル、どうする?」
「まずは足の関節を狙って移動できなくする!」
「分かったわ!」
アップルがソウルの言葉を聞いて、飛び出して行き、人型ロボットの膝に蹴りを入れたが、ダメージは微弱だった。
「堅い!っく!」
アップルが攻撃し終わった時、人型ロボットの手が払うように振られ、その手に当たったアップルが壁に衝突した。
「無駄だ!貴様らにこの人型は破壊できない!大人しく踏みつぶされろ!」
人型ロボットが、ソウル達に向かってストンプ攻撃を繰り出し、ソウル達は回避に徹し始めた。
「ふははは!死ね!死ねぇ!」
パンブキンが、笑いながらストンプ攻撃を続けるが、立ち上がる土煙の中、瞬間的に光る物が見え始めた。
「なんだ?あの光は…それにこの煙…」
バンプキンがモニターを見ながら首をかしげた。土煙にしては妙に白く、煙の中で瞬間的に光ると同時に、右膝に赤いダメージ報告が表示されていた。だがバンプキンは、異世界の文字が読めない為、その表示に首を傾げるだけだった。
「マスターご無事ですか?」
「ああ、大丈夫だ。アップルは?」
「無事です。今、マナリアが盾となりアップルは、ヒーラーの方に回復されています」
煙の中にいるソウルに合流したマギアは、ソウルの質問に答えた。
「この煙幕いつ晴れるか分からない。出来るだけ付着させておかないと…」
「付着?…ああ、ブルーローズの事ですね。残量は足りますか?」
「…厳しいな…」
「では、他のプレイヤーさん達にも手伝って貰いましょう」
マギアの言葉にソウルは頷いて答えた。ソウルは、人型ロボットがストンプ攻撃をしてきた際、煙幕を使いソウル達がいる場所を見えない様にした後、Σウェポンのマガジン内にある弾の弾頭に、ブルーローズを纏わせて発砲していた。
「【カースドスラッシュ】」
ソウル達がいる場所より後ろの方から、女性の声のスキルを使う声が聞こえ、赤黒い斬撃が人型ロボットの右目のカメラに飛んで行き破壊した。
「お!遠呂智様すごい威力ですね!」
「ハヤメです!もう!あと何回言えば、ちゃんと私の名前覚えてくれるんですか?」
「いや~ネタが尽きたらですかね~」
「ネタって何ですか!もう!」
ハヤメは、食い気味にソウルに向かってツッコミを入れた後、身の丈以上ある大剣を軽々と振り回し、斬撃を飛ばした。それを機にして他のプレイヤー達も攻撃を始め、人型ロボットにダメージを与えていった。
「くそ!半分見えなくなった!くそがぁ!」
パンプキンが乗った人型ロボットは、何の規則性もなく暴れ始め、モニターに映ったプレイヤー達を攻撃し始めた。その間もソウルは、右膝に向けて発砲し続け、ブルーローズの付着率を高めていくと、アップルから「もう大丈夫よ!」というメッセージが届いた。
「カウント30で爆発させる!」
アップルのメッセージを見た後、ソウルは大声で叫び、人型ロボットに向かって走り出した。Σウェポンをホルスターにしまった後、右手の銃口からブルーローズをパイルバンカーの形にし、暴れる人型ロボットの攻撃を掻い潜り、膝の位置まで跳躍した。
「オラァ!」
ソウルは右手の銃口から、ブルーローズで出来たパイルバンカーを、人型ロボットの右膝に叩き入れると、パイルバンカーは右膝に付着し、杭を射出した後爆発した。
「【ファイナリティキック】」
ソウルのブルーローズで、人型ロボットの右膝を、完全に破壊する事は出来なかったが、アップルのスキルの一撃で破壊することが出来た。その攻撃で右膝から下が無くなった人型ロボットは、バランスを崩すと、地面に転倒した。人型ロボットの倒れた音がその場に轟いた後、背中から四角い箱が射出された。
「ゴホッ…ゲホッ…」
射出された四角い箱は、大きな音を立てながら転がり、壁に衝突して止まると、その四角い箱からパンプキンが、咳き込みながら這い出て来た。
「クソ…何だってんだ…ゲボォ!」
悪態を吐き、立ち上がろうとした瞬間、アップルがパンプキンの顔を殴り飛ばした。
「ねぇ?少し聞きたいのだけど…」
「ゴホッ…な…何を?」
殴られた事で脳震盪を起こしたパンプキンは、手足を震えさせながら、四つん這いの姿になってアップルに聞き返した。
「なんで子供が…自ら生贄になって死のうとしたの?あんたらはなんでそんな事を平気でさせるの?」
「あぁ?…そんなもんに意味なんてねぇよ…まぁしいて言うなら~嫌がらせの為だけにさせた。信者共は信仰している対象の名前を使えば、男はいくらでも貢ぐし女は簡単に股を開く、子供に至っては暗殺者に仕立て上げられるしな!いやぁ滑稽だったぜ!信仰という物を使えば、人は考える事を止めるんだからな!騙しやすかった…ゲボァ!」
アップルが、パンプキンの腹を蹴り黙らせた。
「そう…もういい…よく分かったわ…それはそれとしてあんた気づいてる?戦闘音が無い事に?」
アップルの言葉に、パンプキンはハッとして周りを見ると、その場に信者の姿は無く、ただプレイヤー達がこちらを見ていただけだった。味方が居ない事に焦ったパンプキンは、祈る様な姿になり、命乞いを始めた。
「い…今のは、冗談…そう冗談なんです!私は、一切そんな事はしていません!そ…そうだ!全部ボトワンが仕組んだことなんです!俺は悪くない!俺達は騙されたんだ!ここには楽園があると奴は言っていた!だが、実際に来てみれば只の兵器置き場だったんだ!楽園って言うからには、多くの食物があり自然も‥‥」
アップルに命乞いをするパンプキンは、口ではそう言っていたが目だけは定まっておらず、いたる所に視線を向けていた。その姿を見てアップルは、飛行船でソウルに言われた言葉を思い出した。
「…目を見ればわかる…ね。‥‥すぅ~…はぁぁぁぁ…こんな事で悩んでいたなんてね…馬鹿じゃない私…」
アップルは深呼吸した後、自分自身に呆れて顔を振った。この男がすべての元凶だったからだ。この男が、信仰心を利用して人を騙し、子供に間違った事を吹き込んで洗脳したのだった。今、命乞いをしている時でも、どうにか逃げようと何かを探しているこいつを、ここで逃がしてしまえば、また苦しむ者が出て来るとアップルは理解した。
「…だから俺は騙されたんだ!俺は悪くないんだ!だから命ばかりは助けてください!」
「結局自分の事だけじゃない!いい加減にその口を閉じろ!」
アップルは拳を握り、腕を後ろに引いた後、勢いよく拳を突き出してパンプキンの頭に全力の一撃を入れた。その一撃で、パンプキンの頭は吹き飛び、首元から噴水の様に血が噴き出した。
「迷いは晴れたか?」
「ええ、あんな事を悩んでいた事が恥ずかしい位に迷いは晴れたわ」
「それは何より」
アップルは、少し恥ずかしそうに言うと、ソウルは頷きながら言った。それからソウルは、プレイヤー達に視線を向け、口を開いた。
「皆さん!いったんここで休憩しましょう!死体の山が出来ていますが、時機に消えると思いますので……消えるよね?」
「消えます」
ソウルは、マギアに確認してみると、マギアは頷いて答えた。
「では、休憩します!」
ソウルの声で、全員が休憩し始めたが、プレイヤー達は死体が消えるまでの間、血に濡れてない場所を探すのに苦労した。
そんな仕掛けに釣られ…うわぁぁぁ…
松明の明かりが近づいて来たから俺は、剣を振ったんだ…だけど、そこに人は居なくて謎の歪な銀色が松明を持っていた…何を言っているのか分からねーと思うが、安心してくれ…俺もわかってない…
~黄泉の道で、死んだ仲間に話しかける男~
マナリアさんは、新しい盾にご満悦の様です。
見捨てられたブリスの部下達は投降しました。
スカイ〇ムの有名な韋駄天…スカイリムをやった人は、必ずあっている人です。ほら、金の爪を取り返すクエストに出て来た奴ですよ!
ミヅナさんは、主に娘さんの世話でお世話になっています。(〇語)
80kg耐えられる輪っかを利用しなかったのは、種族的に100kを超えている人も多く、武装で重くなっている人もいる為、利用しませんでした。
昔、アスレチックにある短いジップラインで、よく遊んでいました。
100mじゃ短いかな?
劇的悲惨ビフォーアフター
あの格納庫にある~ロボットのコクピットに乗る為の橋の名前ってなんでしょうか?
アップルの心の表現の文が一か所でまとめると見づらくなるので、4行ずつに分けました。見づらいですか?
~の2~
実際に仲間が苦しむ姿は、恐怖となって伝染します。それをソウルは利用したのです。
武神蒼気勁「ぶしんそうきけい」は、ゼノ〇アスのフェ〇の技「超武技風勁」に似たような技です。
マナリアのファランクスストライクは、エフェクトで盾の表示がありますが、効果があるのは槍だけで、盾は飾りです。
前に映画で、薬物を投与し痛みが鈍くなった兵士がいた事を思い出しました。どんな映画だったか忘れてしまいましたが…
人型ロボット戦のBGMは「紅蓮の騎士」で頼む!
ブルーローズでの攻撃は、DD〇Nの錬金術師の攻撃…今はもうサービスが終了してプレイできませんが、たまにやると楽しかった思い出です。
アップルの悩みは、前々からこうしたいと思っていました。つまり、もう何も怖くないならぬ、もう何も悩まない状態にしたかったのです。
モチベ維持に評価お願いします! ありがとうございます!
ブックマーク登録もよろしくね! ありがとうございます!




