不信感が招いた悲劇
完成しました!
今回はシリアス多めです!
起床した総一郎は朝支度を済ませた後、朝食を食べながらある事を考え呟いた。
「あの事を聞いておかないと行けないよなぁ‥‥泣くかな?…泣くよな~…」
「ん?総兄ィ?あのこって?また誰か振って泣かせるの?」
「…失礼な!俺がいつも女の子を振って泣かせてるいみたいじゃないか!」
総一郎の呟きを、断片的に聞いた有栖がニヤケながら言うと、そこの母親が介入して来た。
「総一郎?あんたはいい加減恋人作りなさい。夏だって言うのに毎日部屋でゲーム三昧…母さん心配だわ~」
「‥‥‥‥‥」
総一郎は理解していた。この時に反論を言えば3倍になって苦言が返って来るという事を。そして話が、どんどんおかしな方向に行くという事も理解していた。だから総一郎は、ただ何も言わず困り顔をし続けた。
「私は思うの…このまま総一郎が、恋愛童貞を背負い続けるんだったらお見合いさせて、相手の方にいろいろ下ろして貰った方がいいかもしれないって…」
「‥‥‥‥(ここは耐える時!)」
総一郎の顔を、何度もチラ見しながらおかしな事を言う母親に対し総一郎は、ただ耐え続けた。総一郎の隣では有栖が童貞って何?と答えづらい質問もしてきたが、それも無視して黙り続けた。だがそこに新たな勢力、姉の美咲が台所に現れ話に入って来た。
「おはよ~…ん~?何の話しているの~」
「総一郎にお見合いさせようか?って話しているのよ」
「お!?お見合い!?ダメダメ!総ちゃんは私のお婿さんになるんだから!」
「あらーそうなのぉ!総一郎は姉萌えだったのねぇ!」
母親が妙にかん高い声を上げながら総一郎を見ると、総一郎は全力で首を横に振っていた。
「じゃあ、妹萌え?」
「…(フルフル)」
「えぇ!?もしかしてどっちもなのぉ!お母さんこまっちゃ~う!」
「えぇ!?そうだったの!?じゃあ今夜は一緒に寝よっか?」
「よくわかんないけど、美咲姉ぇと総兄ィが一緒に寝るなら私も一緒に寝る!」
「あらあらまぁまぁ!」
総一郎は、母親の言葉を全力で否定したが、話がおかしくなっていった。さらにその場にいた女性三人が当人を差し置き、話が盛り上がって行くと、総一郎は静かに席を立ち食器を流し台に置いた後、自分の部屋に戻って行った。
「ちくしょう!あれをどうしろって言うんだ!黙ってても話は変な方向に行くし、反論を言ったら言ったで苦言が飛んでくるしよぉ…三人で俺を弄びやがってぇしまいにゃ泣くぞ!」
床に両手と両膝を付いて大粒の涙を浮かべた総一郎は、悲しみに包まれた。
「マスター?どうしました?」
「‥‥グスン…何でもない。マギア、坂田と右近寺にメール…確認したい事があるから、俺がログインしたら俺の所に来てくれって送っておいて…」
「了解しました。ログイン座標も添付しておきます」
「私は今日一日、ここでお勉強しているわよう!」
「分かった」
総一郎は頭にFDVR機器を装着し、ログインを開始した。
「おいすー」
「きたぞ!確認したい事ってなんだ?」
「ボドワンが転送装置を持っていた事は話したっけ?」
「私は初めて聞いた~」
「俺はチラリとしか見えてなかったな…」
「じゃあ、改めて言うか。取引の時、ボドワンが煙幕を使った事は覚えているか?」
2人は、ソウルの言葉に頷いた。
「その時、ボドワンが楽園の鍵を手にした後、これとよく似た物を使って楽園の扉がある場所に配下の者を連れて転送していった」
ソウルは、アイテム欄から転送装置を取り出し、二人に見せた。
「これって確かソウルが大社から借りた物だよね?」
「これとよく似た物か…見間違えとか、よく似た別の物とかじゃないんだな?」
「ああ、そうだ。だから今から大社に行って事情を聞きに行こうと思うんだが、二人とも時間はあるか?」
「問題ないよ~」
「こっちも問題ないぜ」
「じゃあ、大社に向かうか。ホワイトローズ、飛行船を出してくれ」
「了解~」
三人はホワイトローズ隊の所有する飛行船「薔薇の女王」に乗り込み、転職の大社へと向かって行った。
「邪魔するぞ」
「はい、こちらにどうぞ」
「おお、ソウル殿。おひさしぶりですな」
転職の大社に着いたソウル達は、社務所で長のソラに面会を求めると、一人の巫女がソウル達を大社の奥に案内した。案内された部屋の前で、巫女が正座をした後、部屋の中にいるソラにソウル達が来た事を伝えると、部屋の中から「お通ししてください」と言う声が聞こえ、巫女はその言葉に従い、部屋の襖を開いて頭を下げた。ソウル達は部屋の中に入ると、部屋の中にいたのナガトとソラで、ナガトがソウルに声をかけて来た。
「ナガトさんも体調が戻られたようでなによりです」
ソウルが座布団に座ると、友人二人もソウルの後ろに座った。
「それで、今回はどのような要件でしょうか?」
「要件は2つ、まずは一つ目だが…帝国との戦争が終わった事を伝えに来た。ナガトさん貴方はこれ以上帝国に追われる事はない。安心してくれ。後日、皇帝が直々に謝罪しに来ると思うから、皇帝の配下の者が来たらよく話し合って日取りと準備を進めてほしい」
「おお!…約束を守ってくれたのですな!これはありがたい!感謝するソウル殿!誰か!酒を持ってきてくれ!祝いじゃ!」
「お待ちください。話はまだ終わっていません」
ナガトが、大声で部屋の外にいる者に用事を伝えようとしたが、ソウルはそれを止めて2つ目の要件を話し始めた。
「2つ目の要件は、これの事です」
ソウルが、アイテム欄から転送装置を取り出し、目の前にある座卓の上に置くと、ナガトの表情筋が微かに動いたのがソウルに分かった。
「実はですね、今回の元凶ボドワン・ベルナーがこれと似た物を持っていたのです。そしてそれを使って配下の者と共に楽園へと向かいました。何故、あの男がこれと似た物を持っていたのしょうか?ご意見をお聞かせください」
ソウルは、指先で座卓を2回叩き転送装置を示した後、目の前にいる2人に尋ねた。答えを待っているソウルの目は鋭く、その目の奥からは殺意を放っていた。ナガトとソラの二人は、ソウルの殺意に呑まれ口を開いたのは数分立ってからの事だった。
「すまぬ!ソウル殿!お主達を完全に信用できなかったじゃ!じゃから、何処まで伝えていいかもわからなかったのじゃ!それが許せないと言うなら儂の首を差し出す!じゃが、孫だけは許してやってほしい!頼む!」
「ナガトさん…俺達は貴方の首を貰っても何の役にも立たないのでいりませんよ…それにそれは失礼だとは思いませんか?俺達はそんなもの求めていないのに、命を差し出して許してくれと言う…それではまるで俺達が殺人鬼みたいじゃないですか?」
「!‥‥すまぬ…じゃが儂には命しか差し出せるものは…」
「だから!俺達は詫び品が欲しいんじゃない!どういうことかと説明してほしいんだ!」
ナガトの言葉に怒りを表したソウルは、怒りを込めた右拳で座卓を叩いた。
「はぁ…幾つ取られたんだ?」
「え?」
「転送装置は幾つ取られたんだ!?」
「2つです!」
「2つか‥‥一つはボドワンが持っているから残りは一つ…困った事になったぞ…」
「そのもう一つは宰相派の軍が使ってたのなら、かなりの人数があそこに居るはずだね~」
「おかしいと思ってたんだ…取引の時、妙に兵士が少ないなって…加えて星の子らと思われる奴が一人しか見かけなかった。そうか…すでに飛んでいたからボドワンは簡単に捨てる事が出来たんだな。取引のあいつらは捨て駒だったという訳か…」
「ソウル…あそこに飛んだ奴らは総勢何人だか分かるか?」
「分からない…だが少なくない数がいるのは確かだ」
「異世界の武具を装備した強力な軍隊…ソウル?私達勝てるかな?」
「‥‥負ける可能性が高いな…」
ソウルは、ホワイトローズの言葉を聞いて考え始めた。あの場所に置いてある物は有限だが、それらに似た物を作れる生産者が居た場合、敵側の脅威度は跳ね上がり、こちら側が負けてしまう可能性があると考えた。
「マギア!」
「はいはい!どうしました?マスター?」
ストレージに入っていたマギアを呼び出し、ソウルは要件を伝えた。
「今帝国に魔導研究所に所属している住民はいるか?」
「検索してみます。しばらくお待ちください」
マギアの検索結果次第でソウル達が取る行動が決まる為、ソウルは祈るような気持ちでマギアがウィンドウを操作する姿を見つめた。
「出ました!1人います。研究所所長の…(いや、わかった。もういい…)」
「ソウル、帝都に居ないってだけで…」
ユメミルクは希望があるような声で言ったが、ソウルは首を横に振った。
「俺は帝国にと言ったんだ。国境は今でも封鎖されてある…」
「じゃあ、時間を掛けちまうと滅茶苦茶やべぇってことだな?」
「ああ、そうだ」
ソウルがユメミルクの言葉に頷いた時、突然大音量の爆発音が聞こえ、そのすぐ後に地響き音が聞こえると、ソウル達は驚いて部屋から出た後、木製のガラス戸を開き外を見た。
「なんじゃ!?いまの音は!?誰か!至急確認せよ!」
ナガトが近くに居た者に指示を出すと、指示された者達はその言葉に従い慌ただしく動き始めた。
「ソウル…私の飛行船にいる隊員から連絡が来たよ…突然前方から極太のレーザーが飛んで来て、山一つとそれに近い村を吹き飛ばしたって…」
「飛行船に乗っていた隊員達は無事か?」
「回避に成功したから無事みたいだね。あ、画像が添付されてる」
ホワイトローズは飛行船にいた隊員から連絡を貰うと、その内容をソウルに伝え、添付された画像も見せた。
「荒すぎて何だか分からないな…マギア、鮮明にできるか?」
「お任せください」
マギアがウィンドウを操作すると、画像に一筋の光が横に走り、その光が下に移動すると、徐々に鮮明になって行き画像に写った物が解ってきた。
「…飛行船か?」
「こんな形の見た事‥‥あれ?なんだろう…この形…何処かで見た様な気がする…」
「奇遇だね…私もあるよ?でもどこで見たか思い出せない…」
何度も一筋の光が上から下に移動し、画像に映った物がはっきりすると、ソウルは目を見開いて驚いた。
「これは…あの基地みたいな所にあった戦艦だ!」
「あ!あ~」
「あ~思い出した!確かにあの時見た戦艦だな!もしかしてあれが撃って来たのか?」
「だとしたら…まずい!ホワイトローズ!飛行船に回避行動を続けさせろ!」
ソウルが慌ててホワイトローズに言った時、極太のレーザーがソウル達の上空を通過し、一度目の爆発音がすぐ近くで聞こえ、時間差で爆発音と地響きが聞こえて来た。
「最初の爆発音は飛行船に被弾した時のか!?大丈夫か!?」
「‥‥一応皆無事みたいだけど、躱し切れなくて翼にある推進器が壊されたみたい。不時着するみたいだから私その場所に向かうね?」
「分かった。俺達も後から行く…」
ホワイトローズは飛行型のマウントを呼び出し、それに乗って不時着現場へと向かって行った。
「‥‥ナガト殿、ソラ殿…俺らに転送装置の事を伝えなかったのは、不信感だったからと言いましたね?ですが、もう少しだけでも俺らの事を信じて話してくれていたら、先程の攻撃で吹き飛んだ村も無事だったはずなんです。そして、こうなった以上楽園の事は秘密になんかできません」
「「‥‥」」
「残念です」
ソウルは、マギアにジャバワークを展開する様に言うと、その言葉に従い展開した。展開されたジャバワークに跨ったソウルは、ユメミルクを後ろに乗せた後、離陸して行き、吹き飛ばされた村に向かって行った。その場所に行き残った者がいる事を信じて…
あの事を→あのことを→あの子とを あの子と言う部分が有栖に届いたわけです。
実際総一郎は、たくさんの女の子を泣かせています。非道行為ででは無くしっかりと相手を思いながら告白を断っています。
女性三人がよれば姦しいともうしまして、総一郎の家庭でもそれは起きているようです。まぁ大体母親が息子を弄って遊んでいるだけですが。
私も総一郎と同じことが起きたら、ただ黙るしかないですね。
薔薇の女王堕つ!
モチベ維持に評価お願いします! ありがとうございます!
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