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人外達のハロウィンパーティー!!(参加者: 吸血姫、ケルピー、デュラハン、ミイラ男、狼男、レイス、吸血鬼、魔女)


その夜、山奥のとある廃城ではモンスター達によるハロウィンパーティーが開かれていた。


「ハロウィンといえばパーティー。パーティーといえばゲーム!ということでスゴロク大会を開催します!」


背の高い筋肉質な男性に変化した主催者のケルピーが、高らかにそう宣言した。


「おー、楽しそうじゃん」


二十代くらいの顔の綺麗な吸血鬼が興味を示した。


「賞品が出るなら、いいわよ」


綺麗に整えられた爪を弄りながら、おっぱいの大きな露出度高めの魔女が言う。


「とりあえず暇つぶしくらいにはなんだろ」


そこそこ乗り気なミイラ男。


「スゴロクなら任せてください!」


十代半ばの狼男が、楽しそうに尻尾を振りながら笑った。


「しょうがない。妾そんなに興味はないんじゃがのう。どーしてもって言うなら、付き合ってやろうかのう」


ゴスロリドレスに身を包んだ美少女姿の吸血姫は、言葉とは裏腹にワクワクした顔をしている。


「このスゴロクは、止まったマスのミッションをクリアしながら先へ進みます。そして賞品はなんと、『人をダメにする座布団・キングサイズ』っ!」


「えぇ…今さらそれ?」


呆れたような顔をする魔女。


「あー、ちょっとテンション下がりましたー」


ぶんぶんと振られていた狼男の尻尾が動きを止めた。


「割とがっかりじゃの」


ストレートな感想を漏らす吸血姫。

しかし、ケルピーは不敵に笑った。


「ふっ。キングサイズですよ!この意味がわからないんですか?」


「…どういうことじゃ?」


ほんの少し興味をひかれて尋ねる吸血姫。


「つまり、キングサイズのベッドと同じ大きさなんです!」


ドヤ顔でケルピーは言い放った。


「なに!?」


ざわめくパーティー参加者。


「それは……ちょっと欲しいな」


ガチャガチャと鎧を鳴らしながら、老齢のデュラハンが呟いた。


「あたしは参加するわよ」


魔女が参加を表明した。


「しかも補充用ビーズ付きっ!」


「あ、僕も参加します」


オプションに狼男がつられた。


「ま、妾も参加しようかの。空き部屋がたくさんあるから、置き場所には困らんしの」


吸血姫の城は無駄に広い。

他の参加者もつられて、結局全員が参加することになった。

各自の駒が、スタートマスに置かれる。


「では、始めますっ!」


ケルピーの仕切りでスゴロクが始まった。


「じゃあ、妾からな」


吸血姫がダイスを手に取った。


コロッ


「6か。一番大きな数字とは、幸先がいいのう。1、2、3、4、5、6、と」


ほっそりとした指で駒を進める。


「なになに?『ガーリックトーストを食べる』………なんじゃこれ」


「はい!では吸血姫さんには、ここにあるガーリックトーストを食べていただきたいとーー」


「待て待て待ていっ!どうしてこんな、ピンポイントで吸血鬼用のミッションがあるのじゃ!」


バンバンとスゴロクのボードが置かれたテーブルを叩いて抗議する吸血姫。


「どうしてって、これ俺が作ったオリジナルですから」


にっこりと笑う、司会進行役であり本日のパーティー主催者のケルピー。


「貴様……っ!こんな物に付き合ってられるか!妾は降りーー」


「おやおやぁ?吸血鬼の姫ともあろうお方が、一度始めたゲームを気に食わないという理由で降りるんですかぁー?」


見事に腹の立つ煽り顔だった。


「くっ……」


「姫!大丈夫っすよ。死にはしませんって」


同族の姫に、陽気にサムズアップする吸血鬼。


「おまえ酔ってるな?はぁ、まあいいだろう。付き合うと言ったのは妾だ。寄越せ」


サクッ、サクッ、サクッ


吸血姫は顔色も変えずにガーリックトーストを食べきった。程よい塩気がきいていた。

姫ともなると、ちょっとのニンニクくらい多少不快ではあるがどうということもないのだ。


「姫、こちらをどうぞ」


「ん、消臭ガムか。気がきくな」


はむっ。

吸血鬼の差し出したガムを口に含む吸血姫。


「さあ、続けるぞ。次はおまえやれ。ケルピー」


「仰せの通りに。んっ」


コロッ


「あ、俺も6ですね」


もぐもぐもぐ


「次、誰やります?」


当然ながら、ガーリックトーストはケルピーには何の影響も与えなかった。


「なんじゃこれ。釈然とせんのう」


憮然として腕を組む吸血姫。


「じゃあ次は僕がやります。よいしょっと」


と狼男がダイスを転がした。


コロッ


「5です。1、2、3、4、5。えーっと?『十字架を持ってお祈り』……って。あ、木製かぁ。なら楽勝です!」


「え、あんた何祈んの?」


魔女がびっくりした顔を向けた。


「そりゃあもちろん、「肉食べたい、肉食べたい、肉食べたい!」」


狼男は堂々と神に要求した。


「次、誰です?」


「あ、じゃああたし。えいっ」


魔女がダイスを投げた。


コロッ


「3かぁー、シケてるわね。『頭の上に置いた皿から水を抜く』……は?何これ」


間の抜けた顔をする魔女に、ケルピーが何かを手渡した。


「さあ、こちらをどうぞ」


ケルピーから渡された、水が入った皿を頭の上に乗せ、体を傾けて水をこぼす魔女。


「え?本当に何これ」


皿を頭に乗せたままきょとんとする魔女を、吸血姫が指を差して笑う。


「あっはっは!間抜けな姿じゃのう!」


魔女は顔を赤くして、皿をテーブルの上に叩きつけた。


「次っ!誰っ!?」


手を上げたのは、デュラハンだった。


「では、儂がやろう」


コロッ


「2か。…『10分間日光浴』今、夜なのにどうするんかの?」


「大丈夫です!魔女さん、お願いしますっ!昼間の地域に飛ばしちゃってくださいっ!」


「はぁ、しょうがないわね。別にいいけど」


魔女が軽く指を振ると、デュラハンの姿がその場から消えた。


「じゃあ、デュラハンさんが帰ってくるまで休憩でーす!」


朗らかにゲームを仕切るケルピーを、吸血姫が睨みつけた。


「のう、ケルピー。先ほどから吸血鬼にキツいマスが多くないかのう?」


ケルピーは飄々と返す。


「やだなー。気のせいですって!」


その答えに吸血姫は、ただの遊びだと自分に言い聞かせて一旦引き下がった。




デュラハンが戻ってきた。

彼の鎧は、陽光に炙られ熱くなっていた。


「あんな日差しの強い所に送らなくても、ええんじゃないかの?」


魔女に文句を言うデュラハン。


「あら、気に入らなかった?」


婉然と、揶揄うように微笑む魔女だったが


「いや。ココナッツジュースが美味かったぞ」


何気に常夏の地を楽しんできたデュラハンであった。

ちょっと白けた顔の魔女を置いてスゴロクは進む。


「さて、次は誰かの?」


「じゃあ俺がやるわ」


ミイラ男が進み出た。


「あらよっ」


コロッ


「1かよ。どれ…………………………………『アイスバケツチャレンジ(聖水)』ってアホかぁあああああああ!!!」


「さあ、どうぞっ!」


ささっと銀色のバケツを差し出すケルピー。何気にバケツは銀製だった。

ミイラ男から距離を取る他のメンバー。


「くっ!やってやろうじゃねぇか!うぉらっ!!!」


ミイラ男は勢いよく頭の上でバケツをひっくり返した。


「痛い!痛い!痛い!!!」


バケツを放り投げて床を転がるミイラ男。彼の体から、白い煙が上がった。


「次、誰がやります?」


しんと静まり返った場に、ケルピーの声が響く。


「えっと、じゃあ、私が…」


おずおずと名乗り出たのは、レイスだった。


「えいっ」


コロッ


目をつぶって投げたダイスは、5だった。


「えっと、狼男さんと同じですね」


レイスは、十字架を手に取った。


「何祈るんじゃ?」


興味深そうに聞くデュラハン。


「世界が平和になりますように」


レイスは真摯に祈った。

透き通る儚げな体で真剣に祈るその姿には、まるで聖女のような神聖さがあった。


「…じゃあ最後は俺っすね」


コロッ


吸血鬼のダイスの目は4だった。


「あれ?何も書いてないっすよ?」


首を傾げる吸血鬼。


「あ、そういうマスもあるんですよ。じゃあ最初に戻ってまた吸血姫さんですね」


こっそり肩を落とす吸血鬼をよそに、ゲームは進む。


「ふむ、では」


コロッ


「また6か。日頃の行いかの?」


上機嫌で駒を進める吸血姫。しかしーーー


「『銀の弾丸でロシアンルーレット』………ケルピー、貴様ぁあああああ!!!」


凄い形相でケルピーを睨みつける吸血姫だったが、ケルピーはにこやかに笑った。


「大丈夫ですよ!弾は一発しか入っていませんから!」


「当たり前じゃあ!それ以上入っててたまるかっ!」


「さ、どうぞ」


吸血姫に拳銃が手渡された。


「姫、大丈夫っす!せいぜい一年間眠りにつく程度っす!」


姫を応援?する吸血鬼。


「うるさい!黙れっ!」


吸血姫は弾倉を回して自分の頭に銃口を押し当てると、迷いなく引き金を引いた。


ガチン!


弾は出てこなかった。


「とっとと次やらんかい!」


吸血姫の口調が荒れていた。


「では、失礼して」


コロッ


ケルピーがダイスを転がした。


「5ですね。えっと『火あぶり』」


「くくくっ。苦しむがよいのじゃ!」


直後、吸血姫の手からケルピーに向かって炎が放たれた。

用意されていた磔台は無視された。

ジュワッと音がして水蒸気が立ち込め、何も見えなくなる。

視界が戻るとそこには、無傷のケルピーがいた。

水棲馬であるケルピーに炎は効かなかった。


「つまらんのう」


鼻白む吸血姫。

それを見ていた魔女の顔は、真っ青だった。


「火あぶり怖い火あぶり怖い火あぶり怖い」


魔女のトラウマが、刺激されてしまったようだった。


「じゃあ、僕ですね」


コロッ


狼男がダイスを振った。


「3。えー、またお祈りかー」


つまらなそうに十字架を握る狼男。


「鹿食べたい、鹿食べたい、鹿食べたい」


「じゃあ、あたしね」


コロッ


「5かあ。……………………は?」


マスに書かれた内容を見て魔女は固まった。


「何が書かれてるんです?」


狼男が身を乗り出した。


「『「まんじゅう怖い」と言いながらまんじゅうを食べる』???」


読み上げた狼男も、きょとんとしている。


魔女の前に、艶々とした皮を持つ美味しそうな温泉まんじゅうが差し出された。

デュラハンはそれを羨ましそうに見ている。


「さあ、魔女さんどうぞっ!」


ケルピーの目が笑っていた。


「くっ!やればいいんでしょやればっ!」


皿からまんじゅうをひったくって口に放り込む魔女。


「まんじゅう怖い!まんじゅう怖い!まんじゅう怖いいいーっ!!」


魔女はヤケクソ気味に叫びながら、まんじゅうを咀嚼した。

腹を抱えて笑う吸血姫。


「ひぃーっwwwぶ、無様じゃのう?wwwww」


顔を真っ赤にして吸血姫を睨む魔女。


「次っ!!」


「儂か」


デュラハンはダイスを取った。


(まんじゅう出んもんかのう?)


コロッ


「6…」


デュラハンが脇に抱えた首の唇が弧を描いた。


「まんじゅう怖い。まんじゅう怖い。ああ、美味いのう…」


デュラハンは上機嫌で温泉まんじゅうを頬張り、渋茶をすすった。

苦々しげにそれを睨みつける魔女。


「次は俺だな!いいの出ろよっ!」


コロッ


6の目が出た。


「ほう、結構進んだじゃねぇか。どれ…」


マスを覗き込んだミイラ男が固まった。


「どうしたよ?」


ひょいっと吸血鬼が身を乗り出した。


「『アイスバケツチャレンジ(聖水)』」


「ぐ、ぐふっ……wwwwwww」


「ミ、ミイラおまえ……www」


「すごいの持ってる、すごいのww」


「ひぃーっwwwwひぃーっwwひぃーっwwwwwwww」


「クソがぁっ!!!!!!!!」


ミイラ男は涙目になりながらバケツの水を被った。

跳ね飛んだ雫を避けきれずに、何人かが笑いながらも悲鳴をあげる。

ミイラ男の包帯が、所々千切れた。


「え、えっと、じゃあ。私、ですね…」


レイスが遠慮がちにダイスを振った。


「えっと、2、です」


「よっしゃああ!!」


道連れができたミイラ男がガッツポーズをした。


バシャン!


レイスが水を被る。

水はレイスを通り抜けて床に落ちた。


「なんでだよぉおおおおおお!!!!」


床を叩いて悔しがるミイラ男。


「なんか、すいません」


眉を下げて小さくなるレイス

それを見て、再び笑い転げる外野。


「はぁ、マジあんた最高だわwww」


心底楽しそうに爆笑する魔女に、ミイラ男は包帯の下でこっそり顔を赤くした。

実は彼、密かに魔女に惚れているのだ。


「じゃあ次は俺っすね!」


吸血鬼がダイスを転がす。


コロッ


「6。お、なんでしょうね?」


吸血鬼が駒を進める。


「………」


「あ、また空白ですね。じゃあ吸血姫さんどうぞ」


二回連続で何もなく、いじける吸血鬼。

しかしそんな彼に構わず、ケルピーはゲームを進行した。




そうして何巡かしたあと。


「1、2、3。『ケルベロスのサインをもらってくる』……あいつ文字書けんじゃろ」


「じゃあ肉球スタンプでいいです」


しまった、という顔をしながら答えるケルピー。


「仕方ないのう。魔女頼む。5分後に召還で」


「はぁい」


魔女の指の一振りで吸血姫は消えた。


5分後に戻ってきた吸血姫のドレスには、真っ赤な肉球がいくつもプリントされていた。


「ほれ、お主の番じゃ」


吸血姫に促され、ダイスを振るケルピー。


「2ですね。…『アイスバケツチャレンジ(聖水)』」


「くくくっ。よい目が出たではないか」


嬉しそうに笑う吸血姫を横目で見ながら、ケルピーはバケツの水を被った。


後には、平然と立つ水も滴るいい男。


「な!?ノーダメじゃとっ!?貴様まさか中身をすり替えーー」


「そんなことするわけないでしょう。体の表面に水の膜を張って、聖水が触れるのを防いだだけです」


「ずるいぞっ!」


「能力ですから」


ぐぬぬと悔しがる吸血姫に、にっこり笑うケルピー。


「じゃあ僕ですね!」


狼男の止まったマスは『まんじゅう怖い』


「わあい、食べ物!」


嬉しそうにまんじゅうを口に運んだ狼男だったが、一口目でその耳と尾が垂れ下がった。

その後は、無言で口に運ぶ狼男。


「ど、どうしたのじゃ?」


いきなりテンションを下げた狼男に、おろおろとする吸血姫。


「これ、甘いです……」


涙目で返す狼男。

彼は甘いものが苦手だった。


「「まんじゅう怖い」って言わなかったのでもう一個ですね!」


ケルピーは、そんな狼男にも容赦がなかった


「貴様鬼かぁああああっ!」


キレる吸血姫を、狼男が宥める。


「いいんです。ルールですから……」


「まんじゅう怖いまんじゅう怖いまんじゅう怖い」


耳をぺたりと伏せて、辛そうにもそもそとまんじゅうを食べるその姿は庇護欲を誘った。


「あ、えっと。次はあたしよね」


気をとりなおした魔女が、ダイスを転がす。


「……………」


「何が出たんだ?」


黙り込んだ魔女にさりげなく近寄り、盤上を覗き込むミイラ男。


(ああ、干した薬草と薬を作る時の苦味のある匂い。魔女の匂いだ…)


間近に感じる魔女の匂いに気をとられつつも、マスに書かれた文字を読み上げる。


「『「鯖食った」って大声で触れ回る』………?」


意味がわからなかった。


「なんなのよ!あたしばっかりなんなのようっ!!」


涙目で地団駄を踏む魔女。


(ああ、やっぱり魔女は可愛いなあ)


そんな魔女を優しい目で見るミイラ男。


「やってやるわよっ!やればいいんでしょうっ!?」


魔女は大きく息を吸い込んだ。


「あー、あたし鯖食ったわ!ちょー鯖食ったわ!昨日も今日も鯖食ったわっ!!!!!!!」


「っ!…っ!ww…っ!!!!wwwwwwwwwwwwww」


最早声も出せずに床に崩れ落ち、笑い転げる吸血姫。

やつあたり気味にデュラハンを睨みつける魔女。


「早くやんなさいよ!」


そんなデュラハンに、羨ましそうな視線を送るミイラ男。

飄々とダイスを振るデュラハン。


「『10分間日光浴』」


魔女が、無言でブンっと腕を振った。




10分後、デュラハンが戻ってきた。


「香辛料のきいた煮込みをぶっかけた飯が美味かったぞ!」


ということらしい。

魔女のデュラハンへの苛立ちは、そのまま次のミイラ男に向けられた。

ぶるりと(歓喜に)身を震わせて、ミイラ男はダイスを振った。


「『火あぶり』」


シンと、その場が静まり返った。


流石にこの組み合わせはまずいんじゃないだろうか?


そんな空気が辺りに漂い、主催者のケルピーも冷や汗を流す。

一方、ミイラ男の頭にあるのはたった一つだった。


(もっと魔女の笑顔が見たい)


周囲が止める間も無く、ミイラ男は油が撒かれた磔台に火をつけ、そこに登った。

ミイラ男の包帯に火が燃え移り、あっという間にミイラ男が炎に包まれる。


「ななな、何をやっておるのじゃ!」


慌てて磔台を真空の刃で粉々にする吸血姫。

水の魔法でミイラ男を包むケルピー。

吸血姫の真似をして台を壊そうとして制御を誤ってミイラ男を切る吸血鬼。

デュラハンは叩いて火を消そうと突っ込んで行ったが、ミイラ男に触れる前にケルピーの水で火は消えた。しかし勢いは止められず彼にぶつかって、ぐしゃりと重い鎧の下敷きにしてしまった。

おろおろして、とりあえず遠吠えをする狼男。

同じくおろおろして、姿が薄くなったり濃くなったりしているレイス。

出遅れて、口を開けたままただ成り行きを見守る魔女。


(魔女、笑ってくれたかな…)


ミイラ男の意識は闇に落ちた。




「あ、気がついた」


ミイラ男が目を覚ますと、皆が周りを取り囲んでいた。


「大丈夫か!?」


「大丈夫ですかっ!?」


珍しく心配そうな顔をしている吸血姫とケルピー。


「すまんの。腕潰してしもうた」


「へっ、これくらい何ともねぇや!」


謝るデュラハン。強がるミイラ男。


「悪い。足の指何本か切り飛ばしちまった」


バツが悪そうな顔をする吸血鬼。


「てめえはもうちっとコントロールつけろ」


ムスッとするミイラ男。


(足の指がないと歩きにくいじゃねぇか)


「しょうがないから、今日は帰り送ってあげるわよ」


魔女とミイラ男は、割と近所に住んでいる。


(よくやった吸血鬼!)


ミイラ男は心の中でガッツポーズをした。


「すみません、僕、何もできなくって…」


「私も…」


「気にすんな!」


しょげる狼男とレイスに、包帯の下で豪快な笑顔を向けるミイラ男。

今日は魔女と一緒に帰れるとなった時点で、他のことはどうでもよくなっていた。


「えっと、じゃあ続けますね?」


変に図太いレイスがダイスを振った。


コロッ


『GOAL!』


「あ……」


勝者はレイスだった。


(どうしよう。私、体無いから使えないよぅ……)


地味に賞品に困るレイス。


「おまえん家行った時、使わせてくれよ!」


そんなレイスに狼男が笑顔を向けた。


「うん!」


その笑顔に、元々透けている頬を薄っすらと染めて笑みを返すレイス。

実はこの二人、付き合っている。


その様子を面白くなさそうに見る吸血姫とケルピー。

微笑ましそうに眺めるデュラハン。

興味なさそうな魔女と吸血鬼。

すでに帰りのことで頭がいっぱいのミイラ男。




「さて、じゃあ次のゲームに移りましょうか」


ケルピーが仕切り直した。


「二位以下は決めんのか?」


吸血姫の疑問に


「現時点でゴールに近い人から順に、順位をつけます」


「そうか」


少しつまらなそうな顔をする吸血姫。


「それでですね。最下位の方には次のショーでアシスタントを務めていただきます」


「ほう?何するんじゃ?」


吸血姫が興味を持った。


(どうせこのケルピーのやることじゃ。ロクなことではあるまい。しかし妾はビリではないのじゃ!)


誰が犠牲者になるのかとワクワクする吸血姫。


「次は、マジックサーカスショーですっ!」


バッと腕を広げて叫ぶケルピー。


「ふむ?」


盤面を見ると、最下位は吸血鬼だった。

ニヤリと吸血姫の口元が歪んだ。


「もちろんダーツ、などもあるのじゃろうな?」


スゴロクではぬるいマスにばかり止まっていた同族に対する苛立ちをぶつける場ができたと、吸血姫は昏く笑った。


「もちろんですよ!定番ですから!」


吸血姫の心の内を察して笑うケルピー。


「い、嫌っすよ!旦那!離してくださいっす!」


「はっはっはっ!ちょっとチクリとする程度であろう!」


ジタバタと暴れる吸血鬼を、デュラハンは軽々と人型のダーツ台に引っ張っていく。



吸血姫は、とてもいい笑顔を浮かべてダーツの矢を構えた。





この後、デュラハンもちゃっかりダーツ投げに参加したり、他のゲームで新たな犠牲者がでたり、レイスと狼男がほのぼのいちゃついたり、魔女が胸の大きさで吸血姫を煽ったり、ミイラ男が転移魔法であっさり家に送られて凹んだり、など色々あったのですが入りきりませんでした。

まんじゅう怖いやカッパの皿の水などは、ケルピーが昔聞きかじった東洋の伝承を適当にぶち込んだせいでああなりました。

「鯖食った」は天狗に効くらしいです。

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