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2話 封入


PCが立ち上がった。バージョンアップする度に変化するログイン画面がうかがえる。今はクローバーの花が映っている。地味だと思う。別に馬鹿にしてない。にしても、何故クローバーの花をチョイスしたのか。クローバーと言えば幸運の四葉とかがある。にも関わらず、こんな…いいと思う。意外性を求めることは良いこと。それはさておき自分は、いつも通りIDパスワードを入力する。そして見慣れたごちゃごちゃで落ち着いたファイルの多いホーム画面を見る。そしていつも通りゲームを研究する。はずだった…

(おかしい)

パスワードを入力したはずの画面に日常はなく、ログイン画面がまだ映し出されていた。誤入力したのかと思ったけれど、IDに「Yugudorashiru」と表記されていた。もしかしたら青菜が勝手に作った垢かもしれないと思った。全く身に覚えがなかったから。このPCは毎日使っている相棒だ。犯人は自分じゃない。

(ハッキングか…わかんね)

「ひぃ兄?どしたの」

「別に。なんでもある。」

「じゃあ何ー?」

考えても仕方ない。要は動けばいいんだ。大切なデータはUSB(こっち)にあるし。自分はパスワードの欄に「ShikkokuPiece」と適当に入力した。これでどうにかなれば良きだけど。

(Enter…ん、通った?)

運がよかったな。やっとゲームができる。

「ねー、壊してないよねー?」

うん。壊れてない。ご覧の通り、むしろ元気になったと言ってもいい。んぁ、バージョンアップした?なんか新機能が。いや今日は本当、退屈しないかも。そう思った。だって、PCには吸引力が無いはずだからな。

「ねー!壊れてないよねー?!」

「…知らね」


▲▼


「おい、お…………!ひ…、…せい!…おきてー!」

むくり。

緋晴がベットから身体を起こす。窓から射す光が眩しい。

「おはよ」

背中から声が聞こえた。青菜も今起きたのかな。割と大声出してたけど、なんか用事あったっけ。

「おは、何時。」

いや、寝てた?それとは違って感覚は、「寝ていた」ではなく、「集中して周りが見えていなかった」に近いような。急に八ッとした時のような感覚。妙に頭が冴える。

「3時間ぐらいじゃない?」

「…何時」

「勘だけどね!」

3時間寝ていたと…育成…ストーリー回収…ゲリラ…はぁ。とりあえずPC…。自分はPCがあるべき場所のイスに座った。そこで気づく。肝心のPCが、無い。自分の命の前に大事なオーパーツがない。自分はこの時初めて周囲を見回した。うん、見慣れた部屋。違うそうだけど違う、PC…それでもそれは見当たらなかった。じゃあスマホでいいや。ポケットには…入ってないか。

「あお、すまほ」

「ネット使えないって…聞く?」

「へー。」

スマホもPCも無い?つまり、何も出来ない…。詰み。紙も筆も置いておけば良かったかな。本当に…何も。あぁ…お腹空いた。

「昼飯」

「行ってら」

自分は真っ直ぐ廊下に繋がる扉へと向かった。いや、記憶を頼りに確かに扉へと1歩、また1歩と足を運んだ。自分は確かな足取りでリビングへと歩みだした。

「…」

そこに扉は無かった。壁を前に棒立ちする緋晴に青菜は挑発的にこう言った。

「行けるもんならなぁ!」

緋晴は、青菜へと振り返った。続けて青菜はこう言った。

「ザ・エンドだ」

あぁ、厨二病は今日も元気だ。自然にやっているようにしか見えない挑発、素の青菜である気がする。情緒不安定さ加減が大胆なおかげで、テンションの変わりすぎで疲れそうだ。あと、

「ジ・エンド」

間違ってる。


▲▼


あれやこれや思いつく限りを試した。でも無理っぽかった。それはきっと、ここが家じゃ無いから。パッと見はいつもの家だった。でも、あるはずのものが無い。時計を始めとする機械、カレンダーや電球、ドア。生活感のない部屋だ。そんなことはどうでもいい。1番驚いたのは窓越しに見る景色だ。一体ここはどこだろう。この小さな窓から見る景色は、白かった。明るいからか、真っ白だからなのか。とにかく外の様子が分からない。つまり、安静にしておけばことの主催者が来るだろうと(諦め)。どうにもならんし(諦め)、来てもらわないと困ると(諦め)。青菜にもそう伝えた。「解」って返された。分かったならいい。

コンコンとドアをノックしているような壁をノックする音が聞こえた。

「入ってます」

自分がそう言うと、以後、外からの音はなくなった。てか、本当に人かえったか。

「もう少しお待ちくださーい!」

慌てて青菜が、客人?を引き止めた。

青菜…客人を引き止めるのは関心しない。大好きなお家に真っ直ぐ帰ろうとしてるだろう。わざわざ無理に呼び止めるなんて、これじゃ野外で客人を放置するハメになる。でもナイス。

しかしながら、青菜も緋晴もこの家の出入りが出来ない。そして分からない。

「えっとー…お待たせしましたー!入ってくださーい」

青菜、それは無茶というものだ。この家には、自分たちの出入りできる程の大きさの穴がない。ついでに、開閉式の窓もない。いわゆる牢屋だ。脱獄できるようなヤワな部屋じゃない。

そうも思いつつ、緋晴は窓の方をちらりと見やった。

みゅーん

音にするとそんな感じ。窓をすっとすり抜け、真っ白な子供が部屋にお邪魔してきた。すると、彼は自分にとって聞きなれた喋りをして見せた。

「どうもー、箱庭運送神使でーす。こちらは、えー、【ShikkokuPiece】さんでよろしいでしょうか?」

「へい」

「ひぃ兄なに頼んだのー?」

自分はよくネットショッピングをご利用する。半引きこもりだからね、仕方ない。

「なるほど~。では、こちらを確認してください。間違い等なければ、はい。」

そう言うと、細い棒を渡された。

「こちらのペンでですね、あなたの真名(まな)をこちらにサインして頂けたら手続き完了です!」

真名?んーどうしよう。適当にこう…ちょちょいのセイヤっと。これでいい。ん、なんかこのペンに葉が。よくよく見たら枝っぽい。よくこんな素材探したな。

緋晴は確認・サインを済ませると、丁度青菜も終わったようだった。

「ふふふ…私の名は漆黒の片翼。漆黒の片翼、シアト」

青菜が自分の世界に、入るには条件が2つ。1つは厨二病全開であること。もう1つは、それっぽさMAXだということだ。本当に楽しそうな青菜だ。触れないでそっとしておこう。ほら、邪魔しちゃ悪い。

青菜を暖かく見守る緋晴であった。


▲▼


「確かにサイン、確認しました!では、行ってらっしゃい!」

突然、緋晴と青菜の体が光を出した。光は粒となって部屋の外へと流れ出ていく。

ユグドラシル…あまり手強いと嫌だな…。絶対楽ではないだろうけど。あー、神の庭はさぞ広いんだろうな。想像すればするほど…ファンタジー。

「 」

何?よく聞こえない。もう1回言って…く…。

自分は、そこで意識が飛んだ。

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