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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

俺と僕と私の勇者

作者: どこかのn番煎じ侍

勢い120%の作品

評価とやる気と根気次第で連載するかもしれない(9割方しない)

 

 俺には2人の幼馴染みがいる。

 金髪で碧眼の物語りに出てくる王子様の様な幼馴染み

 銀髪で赤眼のお姫様の様に整った顔立ちの幼馴染み

 どちらも綺麗で隣に並んでいるのが恥ずかしい位だ。

 ほら、今だって


「せ、聖剣の勇者だと!? 伝説の職業ではないか!?」

「ん、何だ農夫か」

「き、君は慈愛の勇者だってぇ!!?」

「ま、魔王に対抗出来る唯一の勇者が2人も居るのか!?」

「ぜひ! ぜひ、王都まで来てくれ!!!」


 分かるかい? コイツらに挟まれた俺の本音



 こ い つ ら 本 当 に 何 ?



 この世界では成人する時に神官から天職を授かるが、俺は成人する前から分かってた。

 5歳の頃は森に迷い込んでオークに見つかった事

 8歳で魔物の大氾濫(スタンピード)に巻き込まれた事


 例を上げればキリがない。

 この2人はまるで英雄か勇者の様に突如として強くなるが俺は凡人だ。

 急に強くはなれないし、隠してる力も無ければ、天職というシステムに突ける穴も無い。

 せめてと木剣を振っても凡人の域を出れないし、村の自警団の奴らには『才能が皆無』だと言われている。

 うるせぇよ。

 そんなの俺が1番わかってるわ。


 毎日鍬を振って畑を耕して、時々幼馴染み共に引き摺られて危険な目に会う。


 誰か変われるなら変わって欲しい。

 凡人に困難を押し付けないで欲しい。

 見て見ぬふりをするな、今目が合っただろ。

 ん? 『あきらめろ』ふざけんな。


 どうせ今回も巻き込まれるんだろ?

 わかってるよ。


「「アリマが居ないと嫌だ!!」」


 ほらな……。



 ☆


 僕には幼馴染み達がいる。

 銀髪で赤眼のお姫様の様に整った顔立ちの女の子と

 茶色の髪に茶色の瞳を持つ一見パッとしない男の子。


 でも、僕は……僕達は知っている。

 彼が勇者だと。

 目の前の人達が何か騒いでいるけど興味無い。

 アリマが勇者なんだ!


 5歳の頃に僕達は森に入った事がある。

 剣の才能があった僕は何があっても問題ないと思ってたんだ。

 村で1番強い父さんから木剣を貰ったからか僕は勇者になったつもりだったんだろう。

 そこにアイツが現れた。


 オーク


 村の大人よりも大きくて、木の幹よりも太いお腹と、僕の身体ぐらい太い腕。

 真っ赤に血走った目で涎を垂らす姿は本当に怖かった。

 思わず腰が抜けて動けなくなったんだ。


 でもアリマは違った。

 そこら辺に落ちていた細い木の棒を構えて僕達に「逃げろっ!」って怒鳴った。

「逃げて、自警団のヤツらを連れてこい!」って

 アリマはオークに殴られて鼻血を出しても腕に噛み付いたり、頭を石で殴ったり、目を狙ったり。

 何でもやってた。

 その姿が凄くカッコよくて、同時に僕は情けなくなった。

 誰よりも自信に溢れてたのに何も出来ない。

 それが悔しくて悔しくて!


 でも、神様は見てくれていたんだ!

 僕の右手の甲に剣の模様が浮かび上がって、みるみる力が湧いてきた。

 直ぐに腰に差してた木剣でオークの脛を叩いて、怯んだ所を鳩尾に突きを入れた。

 流石に痛かったのか蹲るように下がった頭を目掛けて何度も殴りつけた。

 何度も何度も。

 多分死んでても殴りつけてたんだと思う。


 僕は気が付いたら村に居て、オークの鳴き声に駆け付けた自警団がオークの死体を殴り付けている僕と血を流して倒れているアリマを助けてくれたらしい。

 アリマを全く見てなかった。

 助けてくれたのに僕はオークを殴る事で頭が一杯になっていて……。


 その事をアリマに謝ったらアリマは


「オークを1人で倒したのか!? すげー! まるでゆうしゃだな!」


 って言ってくれたんだ!

 だから今度はアリマが怪我をしない様に僕が守る。

 僕はアリマの勇者で、アリマは僕の勇者様だから!

 だから……将来はお嫁さんにして、欲しいな……なんて。



 ☆


 私には幼馴染み達がいる。

 女の子なのに王子様みたいな幼馴染みと

 眠たい顔を隠そうともしない地味な顔立ちの幼馴染み


 だけど私達は知ってる。

 彼が誰よりもカッコイイと

 目の前のナニかが喋ってるけどどうでもいいわ!

 彼が勇者なのよ!


 8歳の頃、私の住んでる村に大量の魔物が襲ってきた。

 あとから知ったけどそれは大氾濫(スタンピード)と呼ばれる災害で時には国ひとつ無くなってしまう事があるって。

 大氾濫(スタンピード)が発生する理由は2つあって

 1つは縄張りに強大な敵が入り込んだ時、そこを縄張りにしていた魔物が逃げる様に移動する時

 もう1つは大量の子供を産む魔物が縄張りに収まりきらなくなって溢れた時


 当然、危ないのは強大な敵が入り込んだ時よ!

 魔物の大群が終わっても追い出した魔物が残ってるんだもの!

 そして私は運良くと言っては何だけど、2つ目に巻き込まれたわ。



 その時の事はよく覚えてる。

 多くのウルフの鳴き声が真夜中なのに鳴り響いて、窓をカタカタと揺らしてたの!

 分かる!? 声よ!? 鳴き声! 鳴き声が木窓を揺らすのよ!?

 本当に怖かったわ……。

 アリマとエナも討伐に行っちゃったし、家にはお腹の大きなお母さんと顔も性別も分からない私の妹弟(きょうだい)と何の役にも立たない私。

 もしも、ここでウルフが来たら……。

 そんな事をずっと考えてたわ。


 神様は意地悪だったの。

 来ないで、来ないで! って祈ってたのによりにもよって私の家に来ちゃった!

 何でよ! 二つ隣のジムおじさんの息子のターレス!

 あいつは大人なのに働かないからお肉がたっぷりなのよ!

 あっちいって! しっ! しっ!


 そんな事を考えてたせいかしら、ウルフって以外と賢いのか木窓に体当たりをして来たわ!

 ちょっと! そこそこボロなんだから丁寧に当たりなさいよ!


 私は少しの抵抗になればと木の椅子を両手で持って、木窓に注意を払ってたの。

 ドカン! ドカン! ドカン! って。

 最初の合わせて4回ぐらいかしら?

 ウルフが体当たりをして来たと思ったら急に静かになったの。

 諦めてターレスの所に行ったのかな? って思ってたら急に


 バギャァ!!!


 って音と一緒にウルフが入って来ちゃった!

 少し離れて走って来たのね! 狡賢い! 貴方の名前はターレス2号よ!

 私は怖いのを我慢して精一杯イスを振り回してたわ。

 でも2号に噛み付かれてイスを奪われてしまったの。


 あぁ! 2号が気に入らなかったのね! だったらいい考えがあるわ! 1号を食べれば貴方が1号よ!


 そんな馬鹿な事を考えてたわ……。

 いや、この時にターレスはもう食べられた後だったらしいけど……。


 私は腰が抜けちゃってお尻を擦るように下がっていたわ。

 怖かったんだもの! 仕方ないわよ!

 ウルフが大きな牙が生えた口を開けて噛み付こうとして来たのを見て私は目を瞑ったわ。

 そしたら、遠くから近付いてくるように聴こえたの!


「リリーーーーーン!!!!!」


 その声でバッチり目を開いたわ。

 そしたらアリマがウルフの口の奥に左腕を入れてたの!

 馬鹿じゃないの!? 貴方、腕、パクンってされちゃうわ!

 って心の中で怒ったわよ!

 実際は驚きすぎて口がパクパクと動いてただけなんだけど……。

 私が驚いているとアリマが私の方を見てニカッ! って笑ったの。


「知ってるか? 狼って喉まで腕を入れられると口が閉じれないんだってよ!」

「ガブッ!!」

「ギャーーー!!!」

「馬鹿なの!?」


 この時は本当に困ったわ。

 私の幼馴染みってここまで馬鹿だったのかしらって思ったわ。

 でもアリマは痛い痛いって言っても噛み付いた口を離さないようにウルフの顎を押さえ付けて自分の腕にめり込ませてたの。

 あまりにも痛々しすぎて血の気が引いたわ。

 そしたらアリマは


「おばさんを連れて逃げろ! お姉ちゃんだろ!」って


 生意気だわ。 本当に生意気。

 でも私はまだ腰が抜けていたお母さんの腕を引っ張って外に逃げたの。

 木製の門から大人達がワイワイと話しながら帰って来て、血塗れになりながら木槍や鉈を掲げて誇らしげに歩いて来たわ。

 思わず殴りたくなったけど許されるわよね。


「リリーン! もうウルフは倒し終わ「まだよ!!」た……は?」

「村の中に何匹か入って来てるの! 今は私の家にアリマが1人でウルフと戦ってるの!!」


 大人達は直ぐに駆け出して私の家に入って行ったわ。

 少ししてウルフの短い悲鳴と、アリマを心配する声が聴こえてすごく怖くなったわ。

 もしかしたら私のせいで死んじゃうんじゃないかって。

 怖くて怖くて、エナも同じ気持ちだったのか真っ青になって大切な木剣を地面に落としていたわ。

 私達はアリマの下に走って行ったけど、あまりの光景に言葉が出なかったわ。


 腕は血塗れで、肉の間からは僅かに骨が見えていて、肘もちぎれかかってた。


 何も言えなかった。

 馬鹿なの!? と吠えた私が馬鹿だった。

 直ぐに大人を呼べばこんなに酷くならなかったかも知れないのに……。

 私はアリマの頭を抱えて何度も呟いたわ。


「神様、お願いします。 私の大切な幼馴染みなんです。 家族なんです。 助けて下さい。 助けて下さい。 助けて下さい。 助けて下さい。 助けて下さい。 助けて下さい。 助けて下さい」


 って。

 何度も何度も呟いていたら、何時の間にか私の右手の甲に斜めにした細長の四角に天使の輪っかが浮いているようなそんな模様が浮かび上がっていたの。

 エナが驚いたように目を開いていたから、似たようなモノを知っていんじゃないかしら?


 私は一生懸命右手でアリマの無事な方の手を強く握ったら、不思議な模様がほのかに光ったと思ったらみるみるアリマの身体が治っていったの。

 奇跡だわ! 奇跡よ!

 私は嬉しくなって気を失ったままのアリマにキスをしていたわ。

 エナが「あーーーーっ!!!!」って叫んでたけど貴方も好きだったのね。

 ごめんなさい? でもこういうのって早い者勝ちでしょ?

 ねぇアリマ? 私達をウルフから助けてくれた貴方は勇者なのよ?


「初めての責任は……取って貰うわよ?」


 私は小さく呟いたの。

 さて、エナとお話ししなくちゃ!

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