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Fランク能力者の存在理由‐レゾンデートル‐  作者: トウミ
第2章 反能力者主義
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第2章 反能力者主義 その1

第2章 反能力者主義 その1


5月1日土曜日。世間はいわゆるゴールデンウィーク初日。

俺と晃と朋の3人は今日も生徒会棟へと来ていた。


あの試験に無事合格した俺たちは、次の日から警備部隊の一員として活動が始まった。

ただし、警備部隊と言っても、生徒会の中の組織。普段は他の生徒会役員同様、生徒会の通常業務を行い、それらしいことと言えば空いた時間に行う訓練ぐらいのものだった。


連休初日の今日、生徒会棟へ来たのは、連休中の警備任務に関する会議があるから、のはずなのだが、


「如月会長、今回集まってるのが俺たち3人だけというのはなぜですか?」


会議というので、てっきり全員集まるのかと思いきや、来ていたのは、俺たち3人と、如月会長、それに鈴原先輩に楽々浦先輩だけだった。


「他の方には既に任務を与えているの。3人は大規模な任務は初めてだから、今日は3人だけ集まってもらったのよ。それではさっそく会議を始めましょうか。では、鈴原くん、資料を」


如月会長の挨拶から会議がはじまり、鈴原先輩が資料を配り始める。


「では、まずは資料を全員読んでほしい」


<連休中における警備任務内容、及び特記事項>

生徒会に寄せられた情報をもとに、以下の場所の調査・警備を行うこと


1.学区内商店街にて夜間、不思議な鳴き声が聞こえる

2.学区内市立図書館の長期未返却本の回収

3.学区内繁華街の夜間警備


特記事項:警察に寄せられた情報によると、近頃、反社会的組織が、当学校の生徒に嫌がらせを働いているとのこと。被害者の情報を集めること。並びに、遭遇時を想定し、連休時は随時武装許可。各自対処に当たること。


「読んだか? そこに書かれていることが3人に行ってもらいたい連休中の任務だ。何か質問はあるか?」


「鈴原先輩、この1ってなんですか? 不思議な鳴き声って」


さっそく尋ねたのは朋だった。不思議な鳴き声、確かにずいぶん曖昧だ。


「商店街から寄せられた情報によると、最近、夜になると地下の方から不思議な音、うめき声のようなものが聞こえるらしい。学区内ということもあり、生徒に危害が出ないよう調査するということだ」


うめき声、地下か。夜だけというのがなんともオカルト的だ。直接商店街の人に尋ねた方がわかりやすいだろう。


「あのー、先輩、2ってこれ生徒会と関係あります?」


図書館の本の回収。確かに晃の疑問はもっともだ。


「大いに関係ある。生徒会はもちろん、警備任務は学区内の民間人の協力も不可欠だ。信頼関係を構築するためにも、こういった、社会に貢献できる任務も必要となる」


民間人との信頼関係か。確かに警備部隊は警察や国防軍とも繋がりを持つ以上、ある程度の信頼は作っておく必要があるだろう。


3はいたってシンプルだ。学区内の警備で、生徒の安全、並びに民間人との信頼関係の構築に繋がるということだろう。残るは…


「鈴原先輩、この特記事項ですが、反社会的組織の調査ですが、これはどのような方法でも?」


「方法は問わないが、あまり無茶はするなよ? まずは警察、それから2ページ目に被害にあったという生徒の情報を載せてあるから、詳しくは被害者に聞いてみてくれ。大丈夫かとは思うが、個人情報に当たるので、情報は漏らさないよう注意するように」


「怪我したらすぐ連絡してね? パパッと治しちゃうからね!」


「あ、楽々浦先輩。いたんですね。小さくて気づきませんでした」


「こ、こら! また宇佐見くんはわたしをバカにして!」


いつだか見たように、楽々浦先輩はぷくーっと頬を膨らませる。


これは、試験の日以来、楽々浦先輩に会ったときのお約束というやつだ。

しかし何度見てもやはり小さい。今でも先輩ということが嘘のようだ。


「はは、すみません。あとでお菓子あげますから機嫌直してください」


そう言うと、楽々浦先輩はパァーッと明るくなった。

この反応はやはり小さな子供か、小動物のようだった。


「宇佐見くんダメじゃない、楽々浦先輩をバカにして」


そういう朋もまた、小動物を目にした時のように微笑んでいる。


「全く、宇佐見はいつもそうだな。まぁいい。他に質問は……なさそうだな。よし、では3人の健闘を祈る! 解散!」


こうして、俺たちの初めての校外任務が始まった。




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