終章 それぞれのレゾンデートル その17
終章 それぞれのレゾンデートル その17
国防軍関東支部近くの住宅街。
「せいやぁー!!」
熊のような大男、犬山さんが、人型の戦闘用ロボットを背負い投げで地面へと叩きつける。
派手な音を立てて、ロボットは破壊された。
「ふぅー。流石に数が多いな」
額に浮かんだ汗を拭いながら、空に浮かんだ黒い球体を見上げる。
(先程、少し揺らいだと思ったら、大きくなったようだな。一体、中で何が起こっているんだ?)
「犬山警部! また新手です!」
「あぁ、分かった! お前たち、なんとしてもここを守り抜くぞ!」
犬山さんが周りの警官に指示を出す。
再び現れた敵勢力に向かって、戦闘を再開した。
第一能力者学校、正門前。
「いいか! なにがあっても校内には入れさせるな!」
鈴原文輝は、国防軍関東支部からここまで移動し、軍の指揮を執っていた。
(急に幻獣たちがいなくなったから、恐らくは黒の球体の中で何かがあったのだろう。だが、まだ息子達は帰ってこない。ならば……)
「隊長! 前方より敵影!」
「総員、構え! 撃てー!!」
(ならば、戻るまで、ここを守るのみ!)
裏門前。
「はぁー! 絶影剣!」
前方に現れた小型自動小銃を搭載したドローン数体を、斬撃を飛ばし破壊する相楽宗有。
「はっはっは! 次々に現れおって。わしがいる限り、ここから先に通れると思うな!」
相楽宗有は、上空に浮かぶ黒い球体を見上げる。
(銀、おそらく明凛朱が迷惑をかけていると思うが、頼むぞ。それから、世界を頼む。わしはせめて……)
「む、新手か?」
(せめて、お前たちの学び舎くらいは守って、待っておるからの!)
「ふっ、刀も、それから俺の想いも、ポッキリと折られてしまったな」
「父さん!」
みんなで俺の勝利に喜んでいると、父さんが声をかけてきた。
「大丈夫ですか? 回復しますね」
麗先輩が能力で父さんを回復した。
「ありがとう。君は回復の能力者か。なるほど、銀の大事な人かな?」
「ふ、ふぇ!?」
父さんの予想外な言葉に、麗先輩はたじろぐ。
「と、父さん!」
「なんだ、当たりか。分かりやすい反応だな?」
父さんの言葉に、みんなが笑い始めた。
「ほんとに。宇佐見くんたちは分かりやすくて
、見てて楽しいわよね♪」
「確かに、戦闘時とは全く異なるな。初というか」
如月会長と鈴原先輩がからかい始めた。
そんな様子を見て、父さんは笑い始めた。
「銀はいい仲間に出会えたようだな?」
「ははっ、確かにそうかもしれない。こうやってからかわれるのも最近は悪くないと思うしね」
俺が答えると、父さんは急に真面目な表情になった。
「銀、もうこの先に行くんだろ?」
「あぁ、俺たちは進むよ」
俺も真面目な表情で答えた。
「そうか。なるほど、迷いのないいい表情だ。覚悟は決まってるんだな」
「あぁ!」
父さんは俺たち一人一人の表情を確認し、無言で深く頷いた。
「全員が覚悟は済んでいるか。俺もやられた今、君たちを止める者はいない。進むといい、君たちの未来を掴むために!」
「はいっ!!」
俺たちは父さんに背中を押された。
如月会長が俺に目配せしてくる。
俺は軽く頷き、如月会長に無言で答えた。
「これより先は、恐らく今まで以上の死地だろう。だけど、ここまで来れた俺たちなら乗り越えることができるはずだ! 行こう、今回の事件を解決するために! そして、未来を掴んで、待っている人たちの所に全員で戻るぞ!」
「「おぉー!!」」
俺たちは建造物の扉を開け、その先へと進んでいった。
「頼りがいのある背中になったな、銀。見てるか、母さん。俺たちの息子はあんなに立派に成長したぞ」
銀を見送るその瞳には、悲しみはなく、希望に溢れていた。
最奥部。
「ゼロにエンチャント、明凛朱さんに、最強の剣士“剣帝”までも倒して、ここまで来ましたか。ようこそ、生徒会のみなさん」
建造物の中を進み、ついに辿り着いた最奥部。
そこにいた一人の人物に、俺たちは声をかけられた。
「えっ!?」
「なんで、あなたが?」
「三栖鏡子先生!」
そこにいたのは、第一能力者学校の教員、三栖鏡子先生だった。
「いい反応ね。驚く顔を見れて楽しいですよ。ただ、二人は気づいていたみたいね?」
三栖先生は、俺と如月会長の方を見てくる。
「俺は、なんとなくですけどね。夏休みに会った時に、南の島に行ってたのを知ってたのがきっかけですけど」
「わたしは、ゼロが端末室にいたからかしら。三栖先生とは分かってなかったけど、学校の関係者だとは思ってました」
俺と如月会長は、そう答えた。
「流石の二人ですね。洞察力があるわね」
三栖先生は、ニコッと微笑んだ。
「ねぇ、あれは何?」
ここで、朋が三栖先生の後ろにある物を指さしながら声を上げた。
そこには、大きさは人の顔よりも少し大きいくらいだろうか、虹色に光る球体が、理屈は分からないが、宙に浮いていた。
「早瀬さん、いいところに気づきましたね。これは、ここ、つまり、黒い球体を制御しているものよ。綺麗でしょ?」
三栖先生はそれに触れながら朋に答えた。
「なるほど、それじゃあそれを壊したら、解決ってことだな!」
そう言うと、晃はいきなり大剣を構えた。
その様子を見て、しかし、慌てることなく、三栖先生は首を横に振る。
「やめておきなさい。これを壊すなど不可能。これは超古代文明の遺物、オーパーツみたいなものなのだから。現代文明の武器では全くキズがつかないわよ」
「そんな、それじゃあどうすればいいのよ?」
「早瀬さん、とりあえず今は壊すことは考えなくていいわ。それよりも……」
如月会長は戦闘態勢をとる。
「えぇ、如月会長。それを三栖先生が持っているということは、三栖先生が今までの犯人で間違いないということですね。つまりは……」
鈴原先輩もナイフを構える。
「三栖先生を捕まえれば、解決ってことですね!」
俺も刀を抜き、三栖先生の動向を見据える。
みんなも、そんな俺たちの様子を見て、同じように戦闘態勢に移行した。
「アハハハ! 急に戦闘態勢になっちゃって、血の気の多い生徒たちね? わたしを捕まえる? あなた達にできると思う? いいわ、相手をしてあげる!」
三栖先生はそう言うと、先端に赤黒い大きな宝石のような物がついた杖を取り出し、俺たちとの戦いに備える。
こうして、俺たちの最後の戦いが始まった。




