第1章 能力者学校 その3
第1章 能力者学校 その3
「あら? どうしたの? さぁみなさん、立ったままでいないでこちらにどうぞ♪」
如月会長に生徒会棟に招き入れられた俺たちは、呆気にとられていた。
数多くの書物に、大きなテーブル、大きなモニターまである。奥にも部屋があるのか、扉が見えた。
「なんていうか、生徒会一つの組織のために建物が用意されてるのもすごいですが、内装もかなり立派ですね」
如月会長に案内された大きなテーブルの椅子に座りながら、俺はそう尋ねた。
「確かに。そこのモニターなんて結構いいやつだよな」
「書物もたくさんありますね! ジャンルもいろいろありそう!」
晃と朋も各々の感想を述べている。
「ふふ、ありがとうございます。これらの設備は全て生徒会の仕事で必要なものなんです。生徒会の仕事は多岐にわたりますので」
「生徒会の仕事、そういえばどういったことをされてるんですか?」
「あ、それわたしも知りたい!」
俺と朋がそう尋ねると、如月会長はちょっと待ってくださいねと言って、奥の部屋に入っていった。
扉が開いた時、少し中が見え、そこにはベッドが見えた。まさか寝泊りしてるのだろうか? まさかな。
しばらくして如月会長が戻ってきた。
「すみません、お待たせしました。ではこのモニターで説明しますね」
そう言うと、如月会長はモニターにプレゼンデータを映しながら、生徒会の仕事を教えてくれた。
「生徒会は主に、3つの役割を果たしています。1つ目は生徒間の架け橋。各種学校行事、部活動、各委員会活動などですね。2つ目は生徒と学校側との架け橋。校則の設定、各種活動資金の調達、学校設備の維持などですね。そして、3つ目ですが……」
(ここまでは普通の生徒会活動と相違ないか。)
「そして3つ目ですが、学校と校外組織との架け橋です。」
「校外組織?」
「はい。主な活動内容は警備。つまりは警察や消防、また、国防軍と協力体制をとっています。」
正直、驚いた。いくら能力者の集まる学校とはいえ、学校の、それも生徒会が警察や国防軍と協力体制をとっているなど思いもしないだろう。
「以上が生徒会の主な仕事です。何か質問はありますか?」
気づくとモニターのプレゼンデータも消えていた。如月会長が俺たちに質問を投げかけてきた。
「会長、一つだけいいですか?」
「はい、宇佐見さんどうぞ♪」
「最後の警備任務ですが、校外組織との連携以外に何か活動内容はありますか?」
俺の質問に、少し考え、そして真剣な眼差しで答えてくれた。
「生徒の安全を最優先として活動していますので、時と場合によっては実戦もあります」
実戦と聞いて、晃と朋に緊張感が漂っていた。もちろん俺も緊張してはいたが、それ以上に高揚感を感じていた。
警備だけなら警察との連携だけで問題ない。ただし、国防軍との連携というところが引っかかっていたが、実戦と聞いて納得した。そして、俺に、この学校でやりたいことができた。
「会長、その警備任務、新入生でも入れますか?」
「え?」
「宇佐見くん?」
如月会長以外の二人は驚いていたが、如月会長は嬉しそうな表情だった。
「もちろん新入生でも大丈夫ですよ♪ 寧ろありがたい申し出です。警備任務は今、人手不足でしたので。ただ、」
「ただ?」
「警備任務は危険を伴いますので、試験があります。今日はもう遅いので、また明日、もしその考えが変わっていなければ、放課後にここに来てください」
ふと窓から外を見ると、いつの間にか夕方になっていた。
「わかりました。では明日。今日は失礼します。あと、生徒会の仕事を教えてくれてありがとうございました。」
俺は如月会長に軽くお辞儀をし、生徒会棟の外へと出た。二人も慌てて俺の後を追ってきた。
「会長、お疲れ様です」
3人が去ったあと、奥の部屋から一人の眼鏡をかけた男が現れ、如月会長に声をかけてきた。
「あら、鈴原くん、いたのね?」
「ふぅ、わかりやすい嘘ですね。途中からこの部屋にいたのを気づいてましたよね? それにしても、警備の件、本当に新入生を? それも宇佐見という生徒はFランクですよね?」
鈴原と呼ばれた男子生徒は、怪訝な表情で如月会長に尋ねた。
「鈴原くん、彼がなんでFランクか知ってますか?」
「実戦テストの結果が悪かったからでは?」
「そうですね、テストの結果だけ見ると最低でした」
ではなぜ? そう尋ねようとした鈴原の前に、1枚の紙が置かれた。
「これは、宇佐見銀の実戦テスト結果? 知能判定A、体力判定A、能力判定……測定不能!? これはどうして?」
「面白いですよね♪ わたしも最初は目を疑いました。宇佐見くんは、実戦テスト用のロボットを全て、能力を一切使わず、自分の本来の実力だけで倒してしまったんです。能力は一切使用しなかった。つまりは測定不能。だから彼はFランクなんです」
驚きの表情を隠せない鈴原に、
「鈴原くん、明日の本気でお願いしますね♪ わたし、宇佐見くんの本当の実力を見てみたいのよ♪」
如月課長は、笑顔でこうお願いした。