第1章 能力者学校 その2
第1章 能力者学校 その2
カラーン、カラーン、カラーン。
鐘の音が辺りに響く。
「はい、では今日はここまで。早瀬さん号令を」
「起立! 礼! ありがとうございました!」
こうして一日目が終了した。
「銀! この後何か用事あるか? 良かったら学校見学しようぜ?」
「いや、特に予定はないな。学校見学か、あぁ、行こう」
放課後になったと同時に話しかけてきたのは、休み時間中に話しかけてきて気づいたら仲良くなっていた、中森晃。いかにもスポーツが得意というような身体つきに、短く切りそろえた茶髪の男子だ。
「あー! 晃、ずるいわよ! 学校見学、わたしも連れて行きなさいよ!」
「え? おまえも来るのか?」
「なに? わたしも一緒じゃ悪いわけ?」
「いや、そうじゃねーけどさ」
「じゃーわたしも行く♪」
この晃と仲良く?話しているのは早瀬朋、このクラスの委員長を務めることになった、赤髪のボブカットの女子だ。晃とはどうも小学生の頃からの腐れ縁らしい。
「話はまとまったみたいだな。それじゃあ行くか」
俺は二人を微笑ましく眺めながら、声をかけた。
こうして3人で校内見学をすることになった。
「それにしても、銀って頭良いよな~」
「確かに! 今日やった小テスト、満点だったでしょ! しかも一人だけ! 委員長も宇佐見くんがやればよかったのに」
「いや、満点取れたのは偶々さ。それに、委員長は早瀬さんが適任だと思う」
こんな感じで3人でお喋りしながら、校内見学を始めて約2時間が経過しようとしていた。
この学校はかなり広い。それもそうだ。生徒数は700人を超えるのだから。日本最大は決して嘘ではないだろう。
この学校は、大きく分けて6つの建物で構成されている。
一般科目を行う、1~3年で各学年6クラスずつあるA棟。
特殊能力を使った実戦科目や、専用の器具を扱う特殊科目を行う教室がいくつか用意されているB棟。
各部活動を行うためだけのC棟。
それから、かなりメニューが充実し、シェフも何人かいる食堂と、食堂と渡り廊下でつながっている体育館。
最後に、生徒の自主性を重んじて建てられたという、生徒会棟だ。
設備で言えば、これに更に、男子学生寮、女子学生寮、運動場が2つ存在する。
一つの学校の敷地と考えるとかなり広い。
そして俺たちは丁度、生徒会棟の前に来ていた。
「生徒会の人いるかな?」
朋が晃に尋ねる。
「いや、いるだろ。今日の入学式に生徒会長も登壇してたじゃねーか。なぁ、銀?」
「あぁ、そうだな」
晃にそう答えつつも、違和感を感じていた。
(妙だな、人の気配が何も感じない。もう寮に戻ったのか?)
そんな風に思っていたその時だった。
「あら? 新入生の方ね♪ 生徒会棟の見学かしら?」
急に後ろから透き通るような声が聞こえた。
驚いて振り向くと、そこには長い黒髪の女性が一人立っていた。
「び、びっくりしたー! あれ? この人どこかで見たような?」
「朋、入学式を思い出せよ。今日一度見てるぞ、なぁ銀?」
「あぁ、この人はこの学校の生徒会長、名前は……」
俺が目の前の人物の名前を言おうとすると、その人物は軽くお辞儀をし、
「わたしは如月蓮花。3人とも学校見学かしら? よろしくね、中森さん、早瀬さん、それから宇佐見さん♪」
長い黒髪の女性、如月会長はそう答えた。そして、
「立ち話もなんですので、よかったら中にどうぞ♪」
俺たちを生徒会棟へと招き入れたのだった。