終章 それぞれのレゾンデートル その1
終章 それぞれのレゾンデートル その1
国防軍、関東支部。
「ありがとうございました!」
軍服姿の屈強な男たち全員が、大きな声で礼を述べ深々とお辞儀する。
その中心には、一人の老人がいた。
「うむ、御苦労じゃったの!」
そう労いの言葉をかけ、老人、相楽宗有は、支部の出入り口へと帰ろうとすると、これまたガッチリとした体型の男が一人、目の前に現れた。
「相楽さん、今日もありがとうございました!」
「ん? おー、久しぶりじゃな! 鈴原隊長!」
鈴原隊長と呼ばれたこの男は、鈴原文輝、国防軍関東支部の隊長だった。
「相楽さんに鍛えて貰って、我が隊も一層逞しくなったと思います。武術指南だけでなく、真天一刀流もご教授頂ければ、更に嬉しいのですがな」
「流派は教えるのではなく、覚えるものじゃからの、すまんの」
「ハハハ! またまたご謙遜を!」
(ふむ、ほんとは教えるのが苦手なだけなんじゃが、まぁよいか)
「しかし、まさかこの支部にこれが配置されるとはの。本当にこんな大きなものが動くのか?」
相楽宗有は、横にある巨大な物体を見上げながら尋ねる。
「なにやらロボット工学の権威とやらが開発した新兵器らしく、上から勝手に送られてきましてね。実際にここに運ばれてきた時に、少し動いているのを見ましたが、それはもう、すごかったですよ!」
鈴原隊長も、見上げながら答える。
「まぁ、こんなのが稼働する非常事態が起きないのが一番ですな!」
「ふむ、確かにの。して、なんて言ったかの、これは?」
巨大な物体を指差しながら相楽宗有は尋ねる。
「超超大型自律型決戦兵器ですよ、相楽さん」
鈴原隊長は、横の巨大な物体、高さ15メートル程の巨大な人型ロボットを、そう説明した。
夏休みが終わり、今日から9月。
夏休み前と違った雰囲気の友人に驚くことも多いかとは思うが、俺たちは、いや、俺以外の人たちは、俺の予想通り、彼女の登場に驚いていた。
もちろん、彼女というのは、夏休み明けの急な転入生、相楽明凛朱のことだ。
夏休み明けに転入ということで只でさえ珍しい出来事にプラスして、
「第三から転入してきました、相楽明凛朱です。みんな、よろしくね♪」
という自己紹介を、ウインクしながら言ったものだから、クラスの男子はほぼ全員虜。
女子は女子で、明凛朱がまだ年齢的には幼いということもあり、『可愛い』という声が溢れ、
明凛朱は一気にクラスの人気者になった。
しかし、明凛朱の人気はクラスだけでは留まらない。
勉強も超優秀、端末機器も器用に使いこなすという話が、気づけば学校中に広まり、明凛朱という名前はあっという間に学校中に広まっていった。
俺はというと、明凛朱が同じクラスになったそのことだけに驚いていた。
「改めてよろしくね、お兄ちゃん♪」
明凛朱のこの一言で、大変なことになったのは言うまでもない。
放課後。
「明凛朱ちゃんが銀の幼馴染みってほんとか?」
「いや、幼馴染みというか、ただの剣の稽古仲間みたいなものだから」
「いいなぁ、わたしも明凛朱ちゃんみたいな妹欲しいな〜」
晃と朋までこんな調子だ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんの友達はみんないい人ね♪ 明凛朱、気に入ったわ♪」
「うわ、明凛朱! いつの間に!? みんなと一緒に学校見学行ってたはずだろ?」
晃と朋と話していたら明凛朱が急に現れた。
「う〜ん、退屈で抜け出してきちゃった♪」
なんとわがままな娘さんだろうか。
「お兄ちゃんに紹介して欲しいな〜」
「いやいや、退屈っていう今の発言は? というか俺は無理だぞ、これから生徒会だからな」
俺はそう言ってから、しまったと思ったが、もう手遅れだった。
「生徒会? わぁ、面白そう! 明凛朱も行くわ!」
もう、こうなっては何を言っても無駄だ。
それに、
「銀! 明凛朱ちゃんを紹介しようぜ!」
「宇佐見くん、わたしも明凛朱ちゃんと仲良くなりたいから、連れてこうよ!」
晃と朋も明凛朱の味方になっていた。
俺は仕方なく、明凛朱を生徒会へと案内することにしたのだが、しかし、まさかこの後あんな出来事が待ってるとは、この時は思いもしなかった。
終章、いよいよ始まりました。
果たしてどんな結末を迎えるのか。
銀たちの行く末を見守り下さい。




