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Fランク能力者の存在理由‐レゾンデートル‐  作者: トウミ
第2章 反能力者主義
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第2章 反能力者主義 その2

第2章 反能力者主義 その2


「なぁ銀、そういえば、なんでまだFランクのままなんだ? 先輩との戦闘で実力を見せて、如月会長にも認めてもらってただろ?」


任務の一つである図書館へ向かう中、晃が質問してきた。

ちなみに、最初に図書館の任務を選んだのは、他の2つが夜のため、それと、未返却本がどのくらいあるのかわからないからだ。それと、どうせやるなら全て回収したいと言う朋の意見もある。


「それなら、その如月会長に頼まれたからだよ。Fランクのままでいて欲しいってな」


「頼まれた?」


「あぁ、いざという時のためにも、有名にならないよう隠しておきたいってことらしい」


如月会長の言っていたことをそのまま伝えた。


「それにしても、宇佐見くんの能力って便利だよね~。『メノス』だっけ? なんでも元に戻せるんだよね?」


「元に戻すのは能力の一部だけど、まぁ、なんでも戻せるな」


「いいなぁ、それなら食べたものも元に戻せるでしょ? たくさん食べるのに」


「お前、そんなに食べたら太っ、ぐふっ!」


素早い拳が、晃のみぞおちにクリーンヒット! 晃はその場に膝をついた。

幼馴染み同士のいつもの? を見せられつつも、最初の目的地の図書館に着いた。




「みなさんが国立第一能力者学校の生徒会の方々ですね。お話は伺ってます。では、さっそくですがよろしいですか?」


「はい、お願いします」


市立図書館。1000万点以上の蔵書数を誇るこの図書館も、今の時代ではそのほとんどが電子データ化されていた。つまり、貸し出しもデータで行うのがほとんどで、決められた期間が経過すると、自動的に図書館へと戻る仕組みなのだが……。


「今回の長期未返却本はデータではなく、原本、つまりは紙媒体のため、回収が必要ってことですね?」


館長から詳細を聞き、尋ねる。館長はそうなんですと頷く。


「これが、回収してほしい本のタイトルと、借りている方の名前、それから登録されている住所データです」


そう言うと、館長は揮発性記憶媒体を差し出してきた。それを受け取り、俺のスマホに移す。

データを確認すると、3つのデータが現れた。


「回収するのは3冊ですね。わかりました。これなら今日中に終わりそうだ。行こう、二人とも」


こうして俺たちは館長に挨拶し、図書館を後にした。




図書館から外に出て、改めてデータを確認した俺たちは驚いた。

偶然にも、3冊のうち、2冊が、商店街と繁華街だったからだ。

指定された夜ではなかったが、昼間に下見だけでもできるのは好都合だ。


3冊を1か所ずつ3人で周るのは非効率だろうと話し、一人1冊ずつ担当し、再度図書館前に集合することとなった。


俺は商店街の担当となった。

この商店街では食料品から衣料、生活用品まで、多くのものが一か所に揃った便利な場所だ。

そんな商店街の片隅、ロボット製品を販売しているお店が最初の本の場所だった。


店内にいた店員に声をかけると、本を借りていた本人だったらしく、慌てて店の奥へと行き、本を持ってきてくれた。


「えっと、“最新ロボット工学”っと。確かにデータと一致します。ありがとうございます」


「いや、こちらこそすまない。店が忙しくて返しに行くのをすっかり忘れていたよ。ちなみに、その制服、第一能力者学校の制服かい?」


無精髭で眼鏡をかけた中年男性店員が本を渡した後そう尋ねてきた。


「えぇ、そうですけど、何か?」


「いや、なに、うちの店にも同じ制服の子がたまに来るもんでね。5年前に学校ができたばかりだから珍しい制服で覚えていたよ。今度はぜひお客さんとして来て欲しいと思ったんだ」


「そうだったんですね。わかりました。今度、みんなでおじゃまします。」


そう言って、俺は図書館前へと戻っていった。




「“最新ロボット工学”、“気まぐれ魔女の事件簿”、“はじめてでも大丈夫!初心者さんの料理”。よし、3冊集まったな。そういえば、晃の行った繁華街はどうだった?」


気づけば夕方。俺たちはそれぞれ本を回収し、図書館前に集まり、それぞれ向かった先の報告を行っていた。


「いや、特に何もなかったぜ? 本の持ち主はゲーセンの店員でよ、休憩時間中に読んでたみたいだ。ただ単純に忘れてたんだとよ」


「そうか。朋は……ははっ、いや、いいか。」


今でも借りていた人の名前を思い出し笑ってしまいそうになる。

朋の向かった先は俺たちの学校。そして借りていた人は俺たちのクラス担任、三栖鏡子先生だった。


「ほんとわたしも驚いたって! 借りていたのが先生で、しかも初心者用の料理本なんだから。なんでも、載ってる料理を全てマスターしたら返却するつもりだったみたい。私たち3人が誰かに言ったら成績を下げるって言われたわ」


朋も半分笑いながら報告してくれた。


「なぁ、銀、もう夕方だけど、今日行くのか? 商店街と繁華街」


「いや、今日はやめよう。もし仮に例の反社会的組織が関わってるとすると、情報不足だ。明日、警察署と、それから被害にあったという生徒に会って、少しでも情報を集めてからの方がいいだろう。商店街と繁華街は明日の夜にしよう」


俺は二人にそう提案すると、二人とも了解してくれた。


「それじゃあ、この本を図書館に返したら、寮に戻ろう!」


こうして、俺たちの初日の任務は終了した。




商店街、ロボット製品店の奥にて。

暗がりで一人、スマホで話をする男がいた。


「あぁ、今日、例の学校の生徒がうちに。なに? そっちにも? 仕方ない、予定より早いが明日の夜、本番としよう」




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