第9話:イブに説明する
イブに説明する。
まず、真奈が【観察】をレベル5にした理由についてだ。レベルを5にしたことで、その魔物を倒したときに得られる経験値の値まではっきりみえるようになった。これにより、どのくらいの経験値でレベルが上がるのかを詳しく調べることが出来る。
そして、俺たちにはそれに最も適した魔物、ハムステアがいる。ハムステアは、倒した時にもらえる経験値が1だった。経験値の最小単位だったのである。
そして、リセットタイムでなくとも勝手に数が増えるという特性まで持っている。殺してもすぐ増えてくれるのはありがたいことこの上ない。ちなみに、増えすぎると勝手に仲間内でけんかを始めて数を減らしてしまう。
ハムステアを一匹ずつ倒して調べた結果、つぎのようなことがわかった。
レベル1から2へ必要な経験値:1
レベル2から3へ必要な経験値:2
レベル3から4へ必要な経験値:4
レベル4から5へ必要な経験値:8
レベル5から6へ必要な経験値:16
レベル6から7へ必要な経験値:32
レベル1~4までについては、さっきまでのことを思い出せばわかる。一匹倒したらレベルが1あがって、その後6匹たおしたらレベル4になっていたのだから、計算は合っている。
どんどん倍になっていっている。これにより、次は64だと予想したのである。ただ、これがもし50まで続くとなると・・・・・・大変な数字になる。真奈の言う、何百年かかるかわからないというのも頷ける。
考えていても仕方がないので次の場所に向かおうと思う。
まずはさっきのゴブリンのタウンに戻ってきた。真奈が【観察】する。
「ハムステアと違って、一体一体、得られる経験値が違うよ。だいたい250から300くらいかな。ちょっと実験には向いてないね。」
「なるほどな、たしかに計算してみたらそのくらいになるな。」
俺が計算と言ったのは、もし仮説通りなら、真奈がレベル13になるために必要な経験値が約4000ほどであり、それをさっきイブが倒したゴブリンの数15でわってみたら、だいたいあっていたということである。
「よし、じゃあ、俺たちの所有していないタウンの魔物を使おう。」
「それが良さそうだね。」
ということで、ゴブリンのタウンから出ることにする。神の言っていた通りなら、ヴィラには結界が張られているが、内側からなら出られるはずだ。
案の定、うっすらとした光の壁を普通に通り抜けることが出来た。試しに、外側からは本当に入れないのかをやってみようと思う。
内側から見たらほんのりと薄かった光だが、外側から見てみると、もはやそれは、強烈な存在感と力強い青い光を発する壁だった。ある程度遠くからでもわかるくらいの、立派な光の結界である。これが“特殊結界”というやつらしい。
“特殊結界”は、タウンの境界線通りに4辺を取り囲み、超巨大な長方形の柱のように、世界の一番上まで続いていた。
結界に向かって、石を投げてみた。すると、音もなくはじかれ、地面に落ちた。今度は、イブに石を投げさせてみる。
「イブ、本気で投げてみて。」
「はい、わかりました。危ないので少し離れてくださいね。」
そう言って石を拾い、振りかぶって、投げた。
それは目にもとまらない速さで飛んで、結界に音もなくはじかれた。実際には、目にとまっていないので見えてはいないが、その石が地面に落ちた音でやっと気付いたのである。
「さすがイブだな。目にも見えなかった。それを、運動エネルギーまで殺してはじく結界もすごいけど。」
「まさかこんなにあっさりはじかれるとは思いませんでした・・・。」イブがすこし残念そうな顔をしてそういった。
いずれにせよ、外からは一切のものを受け付けないというのは正しそうだ。これなら、思い描いた計画が上手くいきそうだと、ひそかにほほえんだ。だが、それをやるのはまだ先だ。今はレベルと経験値の関係を明らかにし、はやくイブを強化することが先決である。