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第6話:従魔誕生

「真奈、昨日手に入れたタウンの中で手頃なところってある?」

「もちろんあるよ、すごいの見つけてきたんだから。リセットタイムに関係なく個体数を増やせる魔物がいたの。」

 

 言い忘れていたが、魔物は死ぬと消えて、たまにドロップアイテムを落とす。そして、一週間に一度の“リセットタイム”で再配置される。このことを知ったとき、少しでも昨日のうちに魔物を倒しておけば良かったと、一瞬思った。


 しかし、真っ暗な夜に、ろくに知識もないうちからレベル1のまま挑むことは危険を伴う。二人なら出来たかもしれない。でも、そんな風に適当に命を危険にさらす必要はない。俺たちはこれからいくらでも強くなれるのだ。だから後悔する必要はないだろう。



 「それはすごいな。さすが真奈。」

「うん、でもね、魔物自体はすごく弱いよ。レベルが高くなったら、たくさん倒しても全然レベルが上がらなくて効率が悪くなると思う。」


 レベルが上がるほど、次のレベルに到達するまでに必要な経験値は多くなる。真奈が言っているのはそのことである。


 「問題ないよ。まさに俺たちのためにあるようなタウンだね。これから従魔を育てるんだから。」

 「やっぱり亮も気付いてたか。そうだよね、最初のうちはそのタウンで育てるべきだよね。」



 こんな会話をしながら、真奈はステータス画面から“ワープ”を選択する。ワープでは、黒い部屋の中にいる生き物で、連れて行きたい者だけを選択出来る。体が浮くような感覚がして、一瞬で違うタウンにやってきた。一見同じ黒い部屋の中だが、壁にはめられた水晶が1つしかなく、それが真奈の“疑似水晶”であることから、違うタウンにいるとわかる。


 60メートルほど先に、小さな魔物がいるのがわかった。【探知】でとらえたのである。そして【観察】を同時使用。魔物の名前はハムステア。ネズミのような体型で、体毛に覆われ、少しかわいらしい。そして、ステータスは・・・低すぎて少し笑ってしまった。逆によくこんなに弱いモンスターがいたものだと感心するほどに。



 ここで忘れてはならない重要なことがある。“パーティー結成”である。人間または従魔と、最大5人のパーティーを組むことが出来る。パーティーを組んだ誰かが魔物を倒すと、経験値がパーティー全員にそれぞれ行き渡るというものである。これは魔力やスキルというわけではなく、誰でも使用可能な項目の内の一つである。経験値が人数分で割ったりされないところがとても良心的だと思う。



 それらの設定と確認が終わると、いよいよ二人でハムステアのほうに歩いて行く。

こっそり近づき、そして・・・キックした。


すると、ポンッという音を立ててハムステアは消滅してしまった。

弱すぎないか?


初めての狩りがなんともあっけなく終わってしまい、二人で顔を見合わせて笑った。


するとそのとき、体に力がわいてきたように感じた。

これがレベルの上がった感覚なのだとすぐにわかった。

一度黒い部屋に戻ってステータス画面を見てみる。

すると、全体的にステータスが上昇していた。


 そして、魔力とスキルポイントがそれぞれ436,118となっていた。

推測するに、レベルが1つ上がるごとに魔力とスキルポイントが100ポイントずつもらえるのだろう。そして、ハムステアを倒したことでスキルポイントが2ポイント手に入っていた。


ちなみに真奈のほうは、魔力、スキルポイントがそれぞれ、501,153となっている。まだ二人の分を合わせてもスキルポイントが300に届かない。もうすこしレベルを上げる必要がある。



 それからさっきと同じようにして、6匹のハムステアをたおした。レベルが上がった感覚が2回あった。部屋に戻りステータス画面を見ると、案の定レベルが4になっていた。現在、魔力が636,スキルポイントが320である。これで、従魔が作れる。


 俺たちにはやってみたいことがあった。それは、従魔を二人で作るというものだ。ライブラリーの情報には、“疑似水晶”が2つ以上6つ以下、という条件しか書いていなかった。二種類の“疑似水晶”を混ぜることは、とくに条件に反していないのだ。



 早速、二人は疑似水晶を取り出す。数は3つずつ。先ほども言ったが、最強の従魔をつくるので当然、疑似水晶は最大数の6つを使用するのである。緊張した手つきで6つの疑似結晶をくっつけて並べる。すると、二人のステータス画面に“従魔作成”が表示される。同時にそれをタップする。そして、魔力300,スキルポイント300を注ぎ込む。

(ふたりとも150ずつ魔力とスキルポイントを注いだ)



 画面が次の段階に進む。生まれる魔物のカスタマイズが出来るのである。



〔体力、攻撃、防御、筋力、素早さ、精神力、魔分、支配力、運、頭脳〕



 これらの項目に、好きなようにポイントを割り振ることが出来る。

ポイントの量は、最初に注ぎ込んだ魔力やスキルポイントの量に依存する。


 また、このカスタマイズは最初の一度しか出来ず、これによって、どんな魔物が生まれるのか、また今後どのように成長していくのかが決まる。


 バランス良く振り分けるのもいいが、俺と真奈はちょっと極端な一面がある。

そして、ある狙いもあり、とても偏った割り振り方をした。


 “頭脳”に約4割、精神力に約4割をふり、支配力に約2割をふった。

全てのポイントを、頭脳、精神力、支配力だけに使ったことになる。



 ライブラリーで調べたことで、“頭脳”は最初のカスタマイズ以降、ほとんど成長しないと知った。


 人間が地球において、食物連鎖のヒエラルキーのトップにたち、好き勝手にやってこれたのは、紛れもなく‘頭脳’のおかげである。ゆえに、頭がいいことは重要である。だから半分近くもポイントを使った。



 次に精神力だが、これが最も重要である。その理由は後に説明する。一番重要なら、もっと割り振ればいいのでは、という意見が出そうだ。だが心配は無用。“精神力”に割り振ることの出来る最大値をふった結果が、全体のポイントの4割程度だったのである。

 


 最後に“支配”だが、これに多くのポイントを割り振った理由は俺が確保したタウンに関係している。もう少し言うなら、“支配”を上げておかないと、俺が求めているスキルを従魔が習得出来ないからである。

 まあ逆にいえば、これだけ大量に上げておけば確実に習得してくれるだろう。とにかくそれが計画の要になることは間違いない。


 

 カスタマイズが終了し、次の画面に移る。ここでは、誓約の内容を決めることになる。


 例えばとても軽いものだと、‘毎日スキルポイントを1ポイント失う’とか、‘自分の攻撃力が1下がる’とかである。誓約は別にしなくても良いのだが、どんなに軽いものであろうと、するとしないとでは後々従魔の性能に差が出てくる。だから無理矢理でもした方がいいだろう。


 ただし俺たちの場合には、特大に厳しい誓約を立てる。とても厳しいが、それでもおれたちなら問題ないものである。その誓約とは、



“二人のうちどちらかが死んだ場合、二人とも死ぬ、どちらかが消滅した場合、二人とも消滅する、また、精神状態に関して、この従魔、亮、真奈の3人を接続し、従魔が受けた精神ダメージは他の二人も受ける。さらに、永久に亮と真奈の攻撃力を0にする”



 これがどれだけ重い呪いなのか考えてみてほしい。まず、単純に自分の死の危険性が2倍になる。普通なら絶対にするべきでない誓約といえる。同じ部屋に水晶を置く、信頼し合った二人だからこそできる誓約であった。そしてもともと、俺は真奈がいなくなった世界で生きていくつもりは毛頭ない。だからある意味、ちょうどいい、ともいえるのである。



 そして次の、精神の部分だが、ここに魔物の精神力を強化した理由がある。従魔と精神を接続することは普通は危険である。その従魔が精神に異常をきたせば、それは二人もそうなってしまうからだ。また、人間同士の接続も、性格や考え方が離れているほど精神への負荷が大きくなってしまう。


 だが、それらを逆に有効に利用するために、“精神力”にポイントを最大までわりふったのである。


これから先、完璧に従魔を強化していけば、文字通り世界最強の精神力をもった従魔となるはずだ。

そして、その従魔と精神を接続している限り、二人とも精神異常をきたすタイプの攻撃を一切受けないことになる。もし二人が精神攻撃を受けても、従魔がそれを防いでくれるからだ。


この二人にとっては、この“誓約”はメリットにさえなっているのだ。




 精神にこんなにもこだわる理由は、二人の考え方にある。


どんなに最強でも、どんなに信用している人でも、精神を支配されて操られたらどうしようもない。

ほかの何よりそれを警戒していた。


 地球にいたころ、二人で強かに生きてこられた理由は、ひとえに‘絶対的な信頼’のおかげといっていい。それが崩された瞬間、あっけなくぼろぼろにされるだろう。

逆に言えば、そこさえ防げば他は何とでもなると考えている。

だからこその、この極端すぎるカスタマイズである。



 攻撃力を永遠に0にする呪いの重さはいうまでもないだろう。神が言うには、この世界では人間はとても強くなれるらしい。5つ以上の疑似水晶を使用して作られたレベル50の従魔と渡り合えるほどに。


 つまり、重要な戦力を、戦力でなくしているのである。

攻撃力0というのは言葉通り、どんなに強力な武器を使おうとも、どんなに威力の高い魔法を放とうとも、だれにもダメージを与えることができないということである。


 

 思った通り、誓約の重さはS判定を受けた。これは、誓約の重さを判定して、その重さに応じて魔物を強化するシステムであり、Sは最大階級だ。二人は、狙い通りだと言わんばかりに、ハイタッチをする。


ついに最終画面だ。今までの条件から、選ぶことが可能な種族が表示される。その中に、まさに俺たちが思い描いていた理想の種族がいた。迷わずその種族を選択する。これで“決定”をタップすれば、もう一切の変更が出来ない。



 二人は同時に“決定”をタップする。疑似水晶が強い光を放ち始める。思わず目を細めてしまうほどの光、それでいて不快ではないカラフルな光の渦。そしてその光はだんだんはっきりとした形へと収束していき、やがて色づき、固定されていく。

 

 生まれたのは、黒く大きな羽を背中から生やし、それとは対照的に純白のしっぽを持ち、それ以外の部分は人間と変わらない、そんな外見の従魔であった。その従魔はゆっくりと顔を上げた。


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