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第4話:亮と真奈の関係

 拠点に戻ってきた俺たちは、魔力を10消費して、携帯食料を購入した。魔力にはこのような使い方もあるのだ。

 だが、もったいないとは思う。よくあるRPGとは違って、この世界では魔力が時間とともに勝手に回復したりはしないのだ。しかし今は食べ物を出す方法がこれしかない。背に腹はかえられないので仕方がなかった。


 その携帯食料は、本当に最低限のもので、栄養さえ有れば生きられるでしょ、とでもいうようなものだった。味もほとんどせず、毎日これを食べるのかと思うと少しテンションが下がった。はやくまともな食料を手に入れたいものだ。

 

 少し早いが、とりあえず今日は明日に備えて眠ることにしようと思う。堅くて黒い床に、真奈と寄り添って寝ころんだ。今更だが、地球で真奈とは同棲していた。真奈との関係については後で述べようと思う。



 明日の予定を話した後、いよいよ眠りにつこうとした深夜0時、コロコロ、という音がした。少し驚いて音がした方を見ると、9つの“疑似水晶”が転がっていた。俺のものが4つと真奈のものが5つである。


 今日の0時が、リセットタイムの最初の一回だったのだろう。最初の一回は早めに来ると予想していた。それもあって急いでタウンを確保したのだが、さすがにこんなに早く来るとは思っていなかった。


 この9つは非常に大きい。このおかげで、出来ることの選択肢が山のように増える。

 それらの使い道について様々なことを思い浮かべながら、こんな状況でも俺と真奈はふたりで笑った。

基本的にどんな状況であれ、どんな世界であれ、二人で一緒にいられれば俺は満足なのだ。真奈もそれは同じで、そのことはこの笑顔が証明していた。



 

 朝7時になった。二人とも普段は寝起きが悪く、たくさん寝たい派の人間なのだが、この世界に対してワクワクしており、楽しみで起きてしまった。


 


 地球では、二人で稼いだバイト代で家賃や電気代などを払い、学費は奨学金で払っていた。

二人の両親はすでに他界していて、世話をしてくれる人もいなかった。もっとも、遠くに住む祖父にはたまに仕送りをもらっていたが、一人暮らしをしたいという理由で、高校の近くのアパートに住んでいた。一人暮らし、というか二人暮らしなのだが、普通の人が聞けば心配するので、真奈と同棲していることは話していない。祖父も去年、亡くなってしまった。



 そういうわけでほぼ自立している二人だが、実は遊び心がとても豊富だったりする。言わなくてもわかると思うが、当然二人はギリギリの生活であり、遊びに使えるお金はごくわずかだ。だからこそ、小さな喜びを分かち合い、様々な状況を楽しむという能力をもっているのである。


 二人とも基本的に人に優しく、人から嫌われることは滅多にない。だがそれは、そうなるようにコントロールしているというだけの話である。学力もスポーツも、もっと上を狙えた。というか通っていた学校の中で一位をとることなど造作も無かった。いや、真奈が本気を出したら俺が一位を取るのは難しいだろうが。


 まあとにかく、二人にとって名誉というものはどうでもよく、むしろ面倒なものだったのである。尊敬はされるが嫉妬はされない、そんなバランスのよい立ち位置に、ふたりは常にいた。常にいるようにした。


 優しくみえるその仮面の下には、とても理性的で冷たい考え方が隠れている。神が人間の殺し合いのために作った世界であるのにも関わらず、楽しいなどという感情を持っていることも、そのひとつである。ふたりにはとても暗い過去があり、そのせいで重度の人間不信である。奇跡的に出会ったふたりは、すぐにわかった。この人は、自分と‘同類’であると。価値観や思想、性格、頭脳などが著しく似通っており、一瞬で仲良くなった。そして、しだいにお互いにだけは心を許すようになり、ずっと一緒に過ごしてきた。そして今に至るのである。


 何というか、あんまり自分たち以外のことに興味がないのである。この世でたった一人にしか心を開けないなんて寂しい生き方だ、と思う人も多いだろうが、そういう生き方しか出来ない人だっているのだ。

 つまり俺と真奈の関係は何かといえば、恋人であり親友であり家族であり、自分にとっての全てなのである。だからこそ、自分の命と同じくらい大切、なのだ。



 話を元にもどそう。七時という、二人にとってはとても早起きといえる時間から行動を開始した。

昨日の話し合いの結果、“疑似水晶”を使って、従魔を作ろうと決めた。


“疑似水晶”を使って出来ることの1つに、従魔作成がある。その名前の通り、主人に従う魔物を生み出すことである。普通の魔物は、知能のあるなしに関わらず、人間を攻撃してくる。だが従魔は基本的に、ある程度の知能を持っており、一定以上になれば会話もできる。そして、裏切ることは絶対になく、主人の命令に忠実に従う。



 神の説明にあった“試合”というのは、基本的に従魔たちを使った戦争のようなものである。だから、今のうちから強力な従魔を生み出し、育てておくことは重要である。こちらから“試合”を仕掛けるつもりは一切ないが、相手がそうとは限らない。守り抜くための戦力が必要だ。


 まずは、従魔作成についての情報を可能な限り調べた。ステータス画面の右上にある項目の1つに、“ライブラリー”というものがある。“ライブラリー”では、従魔や野生の魔物についての知識や、スキルなどについての詳細が解説されている。


 普通の人ならこれだけの大量の情報を読み取るのに膨大な時間がかかるのだが、二人の処理速度の速さと、効率のよい分担と情報の共有により、1時間程度でほしい情報の内容を把握出来てしまった。とくに真奈の記憶能力と速読には感服だ。それについては勝てる気がしない。だが、演算能力などの理系分野には俺に分があると思っている。

 二人で足りないところを上手く補い合う、最高のソウルメイトであると、俺たちは自負している。


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