表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

第13話:パートナー契約

「待たせてごめんな、イブ。やっとおまえのレベルを上げられる。」


「いえ、謝らないでください。お二人の頑張りは私が一番よく知っています。一切の妥協を許さず、諦めずに魔石を探し続けた寮様と真奈様を心から尊敬しています。私を強化することは、お二人のためなのでしょうけど、それでも私はうれしいです。尊敬するご主人様たちの役に立てるのですから。」

そういって、イブはほほえんだ。


真奈は、その瞬間、イブに抱きついていた。「ありがとう、イブ。」

俺も感動していた。いい仲間が出来たものだ。


 俺は真奈に視線を送る。そして真奈も、こちらをみてうなずく。



そして、真奈が操作し、ホームにワープした。

「なあイブ、これからもずっと一緒にいて俺たちに尽くしてくれるか?」

突然のワープと、急な質問にすこし驚いたような顔をしていたが、すぐにイブは答えた。

「亮様と真奈様と精神がつながっているからよくわかります。ふたりの信頼が紛れもなく本物であると。天界の記憶を探っても、これほど強い結びつきをしている人間は見たことがありません。そんなお二人は、私にも優しく接してくださいました。さらに、頭脳明晰で尊敬できるお二人です。全身全霊をもってあなた方に尽くすことを誓います。」



 従魔は、たとえ主人のことが気に入らなくとも、命令に絶対遵守であるし、危害を加えたりすることが出来ない。だが、本心から仕えたいと思っている従魔と、そうでない従魔で、働きに差が生じるのは当然のことである。


 だから、それを確認できるまでしなかった。それももういいだろう。イブはもう、立派な俺たちの仲間であり、本人も心から慕ってくれている。常に頭を使い、俺と真奈の安全を考えてくれていた。ときには魔物狩りの戦略を一緒に考え、時には一緒におしゃべりをして楽しそうに笑っていた。これをパートナーと呼ばずしてなんと呼ぶ。


 今から行うことは、おそらく俺たちくらいしか出来ないことであるし、普通はやらないことだ。でも、上手くいく自信があった。

 


 それは、二人同時のパートナー契約である。俺はイブとパートナー契約を結ぶ。同時に真奈も、イブとパートナー契約を結ぶ。パートナー契約を結ぶ条件に、自分の“疑似水晶”を3つ以上使用した従魔、とある。二人とも3つずつ出し合ったので、条件は満たしている。


 同時に行う理由は、もうすでに人と契約を結びおえた従魔が、他の人とも契約を結べるのかがわからないからだ。わからないなら、同時にやってしまえばいい。


 俺は右手でイブと手をつないだ。真奈は反対側にいき、左手でイブと手をつないだ。




 突然のことに、イブは驚いている。

「俺たちは、おまえとパートナー契約を結ぶことに決めた。おまえの覚悟はさっき聞かせてもらった。これからもよろしくな。」

俺がそういうと、イブは喜びの涙を浮かべながら、「はい!」と返事をした。


 俺と真奈の二人のステータス画面に同時に文字が表示される。


“パートナー契約”



これを同時にタップする。

その瞬間、すさまじい熱気をもつ何かが、体の中を駆け巡る。それは、壁にはめ込まれた水晶から放たれた、ぼうっと光る火の玉のようなものである。こちらに飛んで来て、右手から溶け込むように体の中に一気に押し寄せ、左手を通じてイブの方に移ったかと思うと、またこちらに戻ってきた。それが何回も速いペースで行われた。心をわしづかみにされるような感覚を味わいながらも、イブと魂からつながっていくのを感じる。激しい頭痛とめまいを感じた。そのときかすかに、真奈の水晶から送り出された何かもこちらに流れてきたのがわかった。同時に契約を行っているからだろうか。


横を見ると苦しそうに悲鳴を上げながらも必死に耐えているイブの姿と、ふらつきながらも倒れないように懸命に踏ん張る真奈の姿があった。俺も負けてはいられない。

 どのくらいそれが続いたのだろうか、何時間にも感じられたそれが、ついに終わった。時刻を確認すると実際には5分程度しか経っていないと知って驚いた。


 

 これまで以上に強いつながりを感じる。もともと精神を接続してあったが、それが何倍にも深くつながったような感覚。しかも、心の中で会話をすることさえ出来るようになった。頭で考えて念じると、それが相手に伝わり、逆に相手からもこちらに話しかけることが出来るのだ。イメージ的には、脳の中に直接声が響くといった感じか。

ステータス画面の獲得スキル一覧に、【念話】が追加されていた。詳細をみてみると、


スキル取得条件:パートナー契約を行う。

スキルの効果:契約したもの同士が心の中で意思疎通が可能になる。


驚いたことに、真奈とも念話で話せるようになっていた。同時に契約したことが原因か、精神が接続されていることが原因か、はたまたその両方か。それはわからないが、最高にうれしい。これで離れていても会話ができる。もっとも、一緒にいないことの方が珍しいのだが。それでもうれしいといったらうれしいのだ。



 イブは、かなり消耗してしばらく毛布の上に座り込んでいたが、じきに動けるようになると、俺の腕に抱きついてきた。かわいい。頭をなでてやった。


 イブは気持ちよさそうに瞳を閉じ、満足そうな表情をしていた。レベルを上げるのは明日にしよう。今日はもうこれで十分だろう。


 今回はイブが真ん中、両隣が俺と真奈という配置にして眠りについた。二人でイブの頭をなでたり、そっと手をつなぐと、眠っているイブがうっすらとうれしそうな顔をしたような気がした。


 そのまま俺と真奈も眠ってしまい、気付いたのは次の日の朝だった。手元には疑似水晶が転がっていた。二回目のリセットタイムが来ていたからだ。俺のが5個、真奈のが5個増えて、前回の余りも合わせて合計12個となった。


 ついに今日、やってみたいことが出来るかもしれない。まずは、さんざん引き延ばしにしてきたイブのレベル上げだ。ただし、イブを強化するのは3つまでにする。まあおそらくイブならば3レベルも上げなくても、俺の期待しているスキルを獲得してくれるだろう。


 早速、ハムステアのいるタウンにやってきた。慎重に、イブが一匹だけハムステアを倒す。そしてすぐに黒い部屋に戻ってきた。俺と真奈は、“疑似水晶”と、適正レベル2の魔石を用意して待っていた。それを、イブに握らせる。さらに、最大値である、魔力100,スキルポイント100に設定する。全ての準備が整った。ステータス画面の、“従魔強化”をタップする。


 イブの全身がぼうっと光り出した。そして、“疑似水晶”と魔石が光の粒のようにばらけ、イブの周りを少し飛び交うと、すぐにイブの中に吸収されていった。パートナー契約の時とは違い、苦痛では無いようだが、手足が少し震えているのがわかる。そして徐々に光が薄くなりやがて消えた。


 イブは、自分が強くなったことが感覚でわかるようで、明らかにはしゃいでいた。真奈に【観察】を使ってもらう。どうやらまだスキルは手に入れてないようだ。


 ステータスはおれの【観察】でも見ることが出来る。たった1レベル上がっただけで、とても上昇していた。イブはまさにチートのような存在だ。今まで大量に見てきた魔物の中で、イブに勝てる魔物は、たった一体しかいない。しかも、その一体を除けば、あとはどれも圧勝できるといえるだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ