第11話:魔石の適正レベルを調べる
今日、魔物をたくさん倒したのは、実験のためだけではない。ドロップアイテムの1つである、魔石の確保も重要な目的だった。
“従魔強化”の際に、魔石と“疑似水晶”を消費してさらなる強化が出来る。その際に使われる魔石は、そのときのレベルに見合ったものが望ましい。だから、なるべくいろいろな種類の魔物を大量に倒したのである。
真奈が、アイテムBOXから今日手に入れた魔石を取り出した。それと同時に、俺はスキル【鑑定】を取得する。これは、鉱物や魔石、ドロップ素材などの様々なものに対して使用でき、それについての情報を得ることが出来るスキルだ。ただ、普段と違って、スキルレベルを上げるとどのような効果が増えるのかという説明が書いてなかった。仕方が無いので少しずつやってみるしかない。
大量に置かれた魔石のなかから、適当に1つをとる。魔石の大きさは魔物によらず一定だが、色のデザインや重さなどが異なっている。手に取った魔石に対し、【鑑定】を発動する。
‘キックラビットからドロップした魔石’
であることがわかった。しかしこれだけではどうしようもないので、スキルレベルを2にする。
‘キックラビットからドロップした魔石’
‘強度:E、加工のしやすさ:B’
魔石は、魔力やアイテムと組み合わせて、武器や防具、道具などを作るときに必要なアイテムである。二つ目の情報はこのとき役に立つのだろう。
それは現在の目的とは違うので、レベルを3にして再度使う。しかし、望んだ情報は手に入らず、そのままレベル4、レベル5まで来てしまった。これで最大である。もしこれでもダメだったら、完全に想定外であり、少し困ってしまう。祈るような気持ちで、【鑑定】を発動する。
そして、思わずガッツポーズをする。俺が知りたかった情報が最後の最後に手に入った。
‘キックラビットからドロップした魔石’
‘強度:E、加工のしやすさ:B’
‘飛び道具に使用すると効果が1.1倍になる’
‘ハードタートルからドロップした魔石と組み合わせて使うと効果が1.2倍になる’
‘適正レベル3’
そう、この適正レベルというのが知りたかったのだ。“従魔強化”で合成する魔石の、”レベルに見合ったものが望ましい”、とはどういうことか考えた。そしてそれはおそらく【鑑定】によって知ることができると予想していた。案の定、魔石を鑑定したら、‘適正レベル’を知ることが出来た。
つまりこのキックラビットの魔石は、レベル3に上がった従魔に合成したときに最大の効果を発揮するのだろう。適正レベルを無視した魔石も合成可能だとは思うが、適正レベルのものを合成した方が効果が高いということは容易に予想できる。神が、ライブラリーの情報に曖昧な表現を用いたのは、そこに気付いた人が有利になるための措置なのだろう。
今日獲得した魔石全ての鑑定を行い、適正レベル順に並べてみた。どうやら、魔石のデザインは、適正レベルごとに分かれているようだ。つまり、例えば種類の異なる魔物からドロップした魔石でも、適正レベルさえ等しければ、同一のデザインであるということだ。
手に入っていたのは、小さい順に、
適正レベル3、4、6、7、8、9、12、13、14、16、19、20、22、23
だった。一日でこれだけ集まったのはすごいことであると思うし、レベル1の状態のイブが、適正レベル23の魔物を倒せていたことは驚きだ。
その魔石は、グリーンドラゴンのものだった。
それを倒したときのことを思い出した。そこは草原のタウンで、グリーンドラゴンがぐっすり眠っていた。【観察】を行うと、レベルがまだ1だった。というか、ヴィラ以外にいる魔物で、レベル1でなかったものは今まで見たことがないのだが。ちなみにヴィラにいる魔物たちは、ほとんどがレベル2だった。どういう違いがあるのだろうか。