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時間回帰の荒御霊  作者: 佐守 竜空
ぐだぐだな序章編
5/16

遭遇と迫れる選択

 被害妄想染みたシックスセンスを信じて、帰りを急いでいた。といっても、ゾンビが集まっている危険地帯に突っ込むのは自殺行為なのでさすがにせず、迂回して進んでいる。


 こっちが急いでいても、ゾンビサイドにはそんな都合は全然関係ないので、いち早く発見し対処するために見晴らしが多少マシな道の中央を進んでいた。


 ど真中を歩いていれば、どこかの王道ラブコメのように角を曲がる際に誰かゾンビと衝突、そのまま熱烈な捕食キスシーンへ突入──なんてバッドエンドまっしぐらなイベントは発生せず、距離を確保して迎撃する余裕が存在する。


 それに、ぶつかるお相手が美少女ですらないグロ注意な死体というのは……是非ともご勘弁願いたい。


 「三次元に美少女はいない、二次元こそが至高だよね」と声高々に主張するのが、最近会っていない彼女持ちリア充である我が親友の談だ。「よって。偶然衝突した相手が美少女である、なんてのは創作物によって生まれた幻想にすぎないんだよ。三次元に夢を見るのはもうやめろ。お前も二次元を信仰し、こっち側に来い。先月発売されたエロゲなんて、会長さんがあまりにも可愛くてだな……」とも、そのスーパーリア充マンはいっていた。


……ほんとう、カノジョはどうした?という疑問が残る、とても残念な親友である。



 それは兎も角として。


 俺の視線の先──即席で作られたようにちぐはぐで、頼りない印象を受けるバリケード。さらにその奥には、その囲いに守られた小さな商店と思わしき建物があった。


 その周辺にある人影は、生存者らしき集団とそれを襲うゾンビ共。どちらも複雑に入り乱れて、激しい戦闘を繰り広げていた。


 やはり作りが雑だったのかバリケードの一部は破壊されており、ちょうど人ひとり通ることができるスペースが空いていた。そこからはゾンビ共がいまも雪崩れ込み、囲いの中へと侵入を許している。


 戦場の様子は、まさに『地獄』だった。


 泣き叫ぶような悲鳴。苛立ちが多分に混ざった怒声。己を鼓舞するような雄叫び。苦痛を堪えるような呻き声。気でも触れたのか、嫌に響く笑い声も聞こえる。


「…………やっぱりか」


 明らかに面倒事だ。……フラグ回収が早すぎる件について!?


 現在もゾンビに立ち向かう生存者達が全滅すれば、彼らに夢中だったゾンビ共は更なる標的──俺を狙うだろう。いまも生存者によって数が一体、また一体……と減っていくが、『敵』が複数になるだろうことに変わりはないので、俺のモチベーション(マイナス状態)に影響はない。


 面倒の程度が多少減っても、それが『面倒』であることに変わりないのである。


 そして、それより面倒で、最悪の状況なのが──


「お、おい! そこのお前! 見てないで助けろよ?!」


──生存者に、助けを求められた場合。


 生き残った人類に優しくないのが、いまの世界の現状だ。


 理由は明白で、『敵』の方が遥かに多い上、先程まで仲間だった人が『敵』に変貌することが普通にあるのだ。そんな難易度はハードを軽く上限突破して『地獄モード』、死んでも復活しない、空腹パラメータは常に変動、“魔法”なんて便利な攻撃手段もなく、“回復薬ポーション”のような一瞬で回復する『魔法アイテム』なんて存在しない……そんな、まさにクソゲー的な世界。


 そんな非日常な環境に放り込まれた、つい最近まで生温い日常を満喫していた人間がなにをしでかすか──それは、まったく予想が付かない。理性が残っているのかすら、分からないのだ。


 だからこそ、それにどう対処するかで困る。ゾンビのように、「こんにちは。死ね!」してもいいのか、平時と変わらず「こんにちは、いい天気ですね」すればいいのか。


──その面倒事の張本人達に、俺という援軍(と彼らには見えているだろう)を早々に認識された。


 ゾンビを警戒する都合上、遮蔽物がなにもない、視界が確保できる中央を歩いていたのが裏目に出た瞬間だった。

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