道中
「……邪魔だよ」
前方から強襲してくる障害物を軽く瞬殺する。なんかこう……ズババッ!ダーン!みたいな感じで。
最初は戸惑い苦労した「殺し」も、今では慣れてきたのか片手間で、まるで作業でもするような感覚で「処理」できるようにまでなった。
キリングマシーン一直線のこの状況を生物としての成長と取るか、それとも人間としての退化と取るか。……もし社会が正常に機能していたら批難殺到、自身が掲げる主義主張で騒ぎ立てたりしただろう。クソどうでもいい狂信集団が。
なにはともあれ、正直この身体能力は異常の一言に尽きた。元のと比べて飛躍的に向上しすぎている。
「ははっ。そのうちステータスとか、出てきたりな。……しないよな? な?」
元々俺の中に眠っていた力が覚醒した──ということなら、大変喜ばしい。なぜ日常世界だったときに覚醒めなかったのか、そんな不満も浮かんで素直に喜べない……だが、それもこの際だ。ゾンビとなった魂の皆々様と共にあの世にでも投げ捨てておくとしよう。
(だって火葬どころか土葬すらできないしな。元気に(?)鬼ごっこしてるし。鎮魂以前の問題だよこれは)
才能の開花だとか、生命の危機によってリミッターが外れ潜在能力が解放されたとかならまだいい。この手の創作物ではよく見られる設定だ。
──だが、もし他の要因からもたらされたものだったとしたら?
俺が気付けていないだけで、実はゾンビになってしまうウイルス的な何かに既に感染しており、それが何らかの形で作用して肉体を強化しているという線。
最後に。パンデミック系のゾンビものかと思ったら、実はそんなカテゴリーには収まらない超次元的に定義破綻した代物でした、といった超展開。前者の、ある意味での人類の進化どころの話ではない。世界の根幹と考えられている今迄の常識がすべて覆ってしまう。
「『レベルアップ』のアナウンスか魔法でもあれば、もうこれ確定なんだけど……」
ファンタジー世界に様変わり──これだったら最悪だ。チートどころか、スキルさえ発現してないのだ。現在は『覚醒』のような感じで無双できて、ステータスチートっぽくなっているが違う。
他人と関わることが滅多にないために比較対象となる存在がいないせいだ。だから、自身に敵う存在なんていない……そんな慢心した感覚に陥ってしまう。
「ま、学校にさえ行けば」
一人くらい、似たようなのはいるだろう。
そんな確信が、あった。