兄さんは高スペック
「……兄さん。兄さん、好き……」
2017年、5月5日、日曜日。
午前7時。
「起きろー。ゆー、りー、あー。朝だぞっ」
布団を剥がされたのでうっすらと目を開ける。
うう、もうそんな時間なのか……。
でもまだ眠いから……。
「……起きた。おやすみ」
「こらぁ! 二度寝を企むな」
いつもと変わらない朝のやり取り。
とりあえず二度寝は諦めて、体を起こしてボケーっとする。
兄さんはその間にテキパキと動き、部屋中のカーテンを開ける。
うっ、眩しい……。
カーテンが開くと部屋の中が一気に明るくなる。
流石に眩しすぎるんですが……。
部屋の中が電気を付けているかのような明るさになった。
実際はついていない。
寝る前に部屋の電気を消すから。
「あ、兄さん。今日の朝ごはんは何? 」
ピンクのフリフリしたエプロンを着て、私の着替えを準備してくれてる最中に聞く。
そのエプロンは私の何ですが……。
まあそれはいいとして、聞こえてないようだ。
呑気に鼻歌を歌ってる。
よし、ちょっかい出しに行くか。
音を立てないようにベッドから降りて兄さんの後ろに回り込む。
そうして、抱きついてやるのだ。
「ど、どうしたの? 週に1回は抱きついてくれるよね。嬉しいけど……」
兄さんのことが男の人として好きだから抱きついている。
なんて言えないので。
「兄さんに抱きつくと安心するから抱きついているだけ」
「そっか〜。あ、朝ごはんは焼き魚と味噌汁、白米だよ~」
毎日しっかりとしたご飯を作ってくれる兄さんに今日も感謝する。
「ありがとね」
あ、ここらで私と兄さんの事を話そうか。
私は新木 ゆりあ。
魔界に住んでいて、人間ではない。
高校1年生のサキュバス、です。
そして、兄さんこと、新木 魁。(かい)
魔王様です。
炊事洗濯は得意。
勉強、運動どっちもできる。
高校2年生。
そんな2人の魔界でののんびりライフを描いたのがこの物語。