ホネと少女の新生活
一話目から5カ月が経ってしまった。
H30,2/22
あの頃の私よ、修正だけでも2年経っちまったよ
アンデットはエネルギー摂取が必要ないので食糧を必要としない。
しかし人間が生活をする上で、特に食料は必須。
現状では衣食住のうち、住は有り余っている。
いくつかの建物に一部のゾンビが使っているものの使われてない建物は選り取り見取りだ。
とにかく住める場所はあっても生きて行くのに必要な食料が足りていないのは重大な問題だ。
飲み水は使用できるように確保している。
衣類はどこかの家に残っていると思われるのでそれで大丈夫だろう。
しかし、食料についてはこの国の周辺に生物は少なく、どちらかと言えばモンスターが多い。
キノコや木の実が森の中に転がっているものの、人間が食べても問題ないかは怪しいところと言わざるおえない。
スパインとカリンは図書館に向かった。
金目のものは戦争時に奪われてしまい、その後も盗賊が少しでも価値のありそうなものを盗んでいっている。
ただし、それらは価値を理解出来た者に限る。
それに一般人でも高価だと分かる書物は魔道書や高級そうな書物くらいだろう。
大半の書物は荷がかさばるのであまり盗られて行かなかったのだ。
理由はもう一つある。
それはさっきも言った通りこの土地の周辺にモンスター発生するためだ。
そしてそのモンスター発生率が各国の発生平均率より高い土地柄、元々の国は鎖国に近く、モンスターからも結界により国を守っていたため必要以上の兵力がなく、それが戦争の主な敗因でもあった。
「とまぁ、ざっくり説明するとこんな感じさ」
「ふ〜ん、よくわかんないや」
自信満々に説明を終えたスパインだったが、カリンにはさっぱり伝わってなかった。
「あらら、まだ理解するには難しい年ごろだったかな?」
その言葉にカリンはムー! と頰を膨らませて怒った。
「もう10さいだもん! むずしいことだってわかるもん」
「ああ、それはすまなかった。そうだね、君は立派なレディだよ」
「ああ! またバカにしたでしょ!」
「あはは、ゴメンゴメン。そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ」
スパインは心の中で子供心はよく分からないと呟いたのだった。
気を取り直して2人は食べられそうな食材を森で探す為にそれに関係する書物を探し始めた。
数分が経った後、大きなテーブルに集めた書物を広げた。
思いのほか沢山の書物を見つけられたようだ。
(うん? これは……)
スパインは、ある本に目に入った。
正確には目など無いが、どういった原理が分からない力で生前と変わらぬ景色が見ている。
『モンスター大百科』
「ねぇカリン、文字は……読める、よね?」
「もちろん! かけないけど、よむだけならできるよ! おかあさんが…おしえて…くれたから」
「そ、そうかい。じゃあ文字の書き方は私が教えてあげるよ」
スパインはカリンの頭を優しく撫でた。
「ところで、どうしてこの本を持ってきたんだい?」
「モンスターさんもたべられるかなぁっておもっただけだよ」
笑顔で答えるカリンだったが、心なしか目に光を感じなかった。
(これは思った以上に空腹なのかもしれない)
結局、モンスター大百科には所々に[なかなかの絶品だ!]とか[食べられたものでは無い]といった一言のあるモンスターが載っていたのだった。
「やったー! このモンスターさんはたべられるってさ!」
「う、うん……確かにこの地域に生息しているね」
「はやくモンスターのところにいこう! ね?」
「あ、ああ。そう、だね」
リッチになり空腹とは無縁となったスパインにはもう分からぬ感覚だが、空腹という生理現象は生きる者にとって重要であると再確認するとこととなった。
一方カリンは、空腹との葛藤で少々混乱しているのであった。
モンスター狩りの準備のためスパインはとある物を取りに行った。
霊廟の奥深くにそれはそれは悪い意味で存在感のある代物があるのだった。
その代物とは、禍々しいオーラを放ち、様々な動物の頭蓋骨が装飾されたグロテスクな杖である。
これはリッチーになってからちょっとした遊び心として、なんかモンスターっぽいアイテムが欲しいなぁと暇つぶしに作った結果がそれだった。
たぶん生身の人間が触れれば呪われるだろうというのは想像に難しくなく、むしろ見ただけでも気絶しそうだ。
能力的にはさすがリッチーが作っただけあって彼の特性を活かす力を持っている。
そういうことでモンスター狩りには丁度良いと思う反面、カリンには見せられないので布で包み、ある程度カリンに影響しにくいような封印を施し使うこととした。
出発したスパインとカリンは現在森の深く、ボアタンクという巨大なイノシシのモンスターがテリトリーとしている地域に来ていた。
スパインの魔法によって図書館からひとっ飛びで来ることができ、自分たちの身も魔法の障壁によって守られている。
ぐぅ〜〜〜
カリンのお腹が鳴った。
「おなかすいたよぉ〜」
「ハイハイ、もう少し我慢して」
「ボアちゃ〜ん、でておいで〜」
「普段なら出てきてほしくないけどね」
「ホントにでてこなかったらホネをカジっちゃうんだからね!」
「ゴメン、ゴメン。せっかくだから食べられる食材を探してくれるかい?」
そう言って植物図鑑をカリンに渡す。
「まかせて!」
「でも私から離れては駄目だよ」
「はーい」
数分ほど探索していると、近くの茂みがガサガサと音がした。
「何か来たみたいだ」
「うん……」
「さぁ、危ないからもう少し私の近くにおいで」
カリンはスパインのローブをギュッと握った。
空腹をずっと耐え、疲れが始めた矢先に実際にモンスターが現れたため恐怖が勝ってしまったらしい。
「BUuGOoooooo‼︎」
鳴き声をあげるとともにボアタンクが一匹姿を現し突っ込んできた!
スパインは布で包んだ杖をボアタンクに向けた。
「せっかくだから少し実験台になってもらおうか」
すると杖の先から黒いオーラの様なものがボアタンクを襲う。
次の瞬間、意識を失ったボアタンクは魔法の障壁にぶつかった。
「キャッ!」
「大丈夫、大丈夫。もう動かなくなったしあとは持って帰って調理するだけかな」
ガサガサ、ガサガサ
「まぁ…テリトリーだし、これだけってわけじゃないよな」
案の定、ボアタンクが次々と現れた。
結局あと何匹か狩って帰った。
帰る頃にはすでにカリンは疲れて寝ていた。
スパインはカリンをベッドで寝かせてからボアタンクの下処理をした。
スパインは生前、親戚の叔父が狩りで手に入れた獣を持ってきたことがしばしばあったため、大抵の獣は捌くことができている。
そのあと保存のために冷凍室へと運ぶ。
「さて、何を作ってあげようかな……ふむ、煮込み料理にしよう」
自身に幻影の魔法を掛けて生前の姿になった。
少しでもお金になりそうなものを持って近くの町で換金したり、物々交換で市場から材料を買って帰った。
「久しぶりに料理するなぁ」
昔を思い出すように調理し始めた。
意外と感覚を覚えていたらしく慣れた手つきで食材を切っていく。
そして、様々な野菜とボアタンクの肉を寸胴鍋に入れて火にかける。
火が通ったら水を加えて煮込む。
彼が煮込み料理にしたのには理由がある。
ボアタンクはスジが多く肉が硬いために煮込み料理が最適と考えたのもあるが、一度にたくさんの量を作ることが出来るので数日は食料に困らないだろうという意味もあった。
2時間が経ち様子を見てみると案の定ボアタンクの肉は柔らかくなっていた。
あとは香辛料で味付けをして完成した。
スパインはベッドで眠っているカリンを優しく揺すって起こしてみる。
「カリン、ご飯が出来たよ!」
「……むぅ〜、わかったぁ〜」
明日まで寝てしまうかと思っていたがよほど空腹だったらしい。
まだ眠たそうだが目を擦りながら起き上がりテーブルについた。
スパインは器に料理をよそい、カリンの前に出した。
「いいにおい。おいしそう」
「さあ召し上がれ!」
カリンはスプーンで掬ってまずは一口食べてみる。
その様子をスパインは緊張の面持ちで見守る。
「どう、かな? 食べられる?」
「…………」
「やっぱり久しぶりだったし味見できなかったから美味しく無かったかな」
「……しい」
「ん? 何て言った?」
「おいしい!」
「ホントに、ホント⁈」
「ホントにとってもおいしいよ!」
「良かったぁ」
いまのスパインはホネだけなので舌が無く味見が出来なかった。
だから、食べてもらうまで美味しく出来ているか不安だったが、カリンは「おいしい」と言ってくれたのだ。
カリンもよほどお腹が空いていたのか何杯も満腹になるまでおかわりをしていたのだった。
どうも、オムレットです。
いやね、もう片方の作品に引っ張られてスランプ的な感じになってしまった。
しかし、不定期だとしていたのでこっちはそんなに問題ないかな(白目)
あ、それからモンスターが食べられるかどうかについてはちょっとした設定をつけているので、そのうち話そうと思います。
H30,2/22
加筆修正しました。