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リッチーの娘はネクロマンサー   作者: オムレット
少女編
1/2

僕とわたしの出会い

初めましての方が多いと思いますので、初めましてですね。よろしくです。

別作の「異世界伝説巡り旅」(2018年2月現在、停止中)を見てくださった方は、見てくださってありがとうございます。

今作は、別作のキャラクターを考案した際に想像力を駆り立てられたので、いっそのことやっちまうか! というように例によって例の如く出来事でまた始まったわけです。

まぁ趣味の一環でやってるので今作も前作も投稿頻度は少ないです。

あくまでも「異世界伝説巡り旅」がメインとなるので、投稿数が少ないと思いますが、評判が良く感想等を頂ければモチベーションが爆発的に上がるので、2作品とも投稿頻度が上がります。

ともかく、長たらしい話はこの辺にして、そろそろ本編をどうぞ!

 彼の名はスパイン・ヴァウールという。

 彼は、辺りを森に囲まれたとある小さな国に生まれ、その国の城下町から少し離れた森の近くにある墳墓の墓守をしていた。

 墓守の仕事は、墳墓内の清掃やモンスターに対する結界の管理、墓の見回りなどである。

 時には亡くなった方の墓を作り供養することもあったが、戦争のあった時期は特に忙しく働いた。

 実は、彼は元から墓守だった訳ではない。

 墓守の仕事をする前は教会の聖職者として働く優秀な人材であった。

 しかし、当時の墓守が急死してしまったことから、誰もやりたがらない墓守という職業を請け負うこととなったのだ。

 墓守を始めてからの生活は確かに楽しいと思えないが何不自由なく暮らすことが出来ていたので不満など大してなかった。


 そんな何でもない普通の暮らしが、寿命が続く限りあるのだと思っていた。




 彼は人間ではない。

 今の彼は、リッチーと呼ばれる魔術に特化したスケルトンの上位種のモンスターだ。

 未だモンスターの発生について解明されたことは少ない。


 普通の人間だった彼に何があったのか。

 それは彼が墓地の見回り中に起きた出来事だった。

 不運なことに遭遇した墓荒らしによって口止めのため必死の抵抗も虚しく殺されてしまう。

 殺された筈の彼が目覚めた時には森の奥深くにいて、殺されるまでの1日の記憶が欠落していた。

 身体が重くて身動きが出来なかったので、勢いよく起き上がると土が舞い上がった。

 体半分ほどが土に埋まっていたのだ。

 そして次は、逆に異様な身体の軽さに違和感を感じた彼は自らの手を見て驚愕した。


 骨だ。


 だが、思いのほか早く冷静さを取り戻した。

 まずは置かれた状況を確認したくなった。

 いつまで眠っていたのだろうか?

 どうしてあんな場所にいたのか?

 どうして身体が骨なのか?


 森を出てこれまで生活していた墓地に帰ると、空は黒い雲に覆われ、ジメッとした重い空気が流れる。

 ようやく人影が見えたと思ったがそれは人ではなかった。

 腐敗した肉とボロボロの服を纏った本来動くはずのない死者の亡骸たち、ゾンビが徘徊していた。

 城下町を訪れると、活気は無く死体と瓦礫の山が広がっていた。


 彼の国は戦争などを起こしに行くような国家ではなく、そもそもそんな戦力もない。

 恐らく突如として我が国に侵略してきた国と交戦し、守りきれず国内攻め込まれ、その結果が敗北だったのだろう。

 敵はその死体が持つ国旗から当時最高の武力と兵力を持つ強大な帝国だったらしいということが分かった。



 生まれ育った愛すべき我が国が滅んだ後に蘇った自身の存在について悩みに悩んだ結果、彼はとりあえず新たな人生を歩むことを決意した。

 まず彼が行ったのは、壊れた街並みを直すことだった。

 せめて生き返った自分が出来る範囲で元の国を見たいというささやかな願いだ。


 今や彼の身体は人間ではない。

 ここで、ようやく己の中に生前より強大で膨大な魔力を持っていることを知る。

 徘徊するゾンビに対し魔力を与える事で支配下に置くことが出来た。

 そうして一帯のゾンビたちを使役して瓦礫の撤去から清掃を行い、細かな作業や建造物を建て直すのも魔法で全てまかなった。


 こうして、彼はおよそ10日を費やして元の街並みを再現することができ、呆気なく願いが叶ってしまった。


 それから彼は以前のように墓守としての仕事と街の管理も始めた。

 最初の願いは叶ったのだからもう少し大きな願いでも構わないだろう。

 誰もいない街だが、自分が消えて無くなるまでこの街だけは守りたいと思ったのだった。











 あれから月日は流れ、何も起こらない日々が続いていたこのかつて国だった土地に現れた1人の人間がリッチーとなった彼の2度目の人生に変化をもたらすのであった。



 それはあくる日の夜、相変わらず静かな墓地に1組の親子が訪れていた。

 この墓地は彼が管理しているため訪れる者をすぐにか感知し親子の様子を伺っている。

 今のこの国だった土地の中であれば管理しているスパインのおかげで無法地帯だった時に比べ安全になっている。しかし、この周辺の森林は広く蘇ってからの環境の変化を知らないが、ここよりもずっと危険だったはずだ。

 そんな苦労をしてこの地に入ったのはそういった事情を知ったか知らずか、物音を立てないよう慎重に母親は子供の手を繋ぎ身を潜めつつ移動し、墓地の中心にある霊廟の前で止まった。

「…ここで待ってなさい。後で迎えに来るから」

「ヤダヤダ! いっしょにいく‼︎」

「ダメよ! 今はここにいるのよ。いいわね、良い子だから大人しくここで待っててちょうだい」

「いやだよぉ。こわいよぉ。ひとりにしないで!」

「分かって、私の愛しい子よ」

 母親は子どもをギュッと抱きしめた。

 そして一瞬ためらったようだが子どもを魔法で眠らせ、去ろうとした…


「お待ちなさい」

 驚いた母親は声のする方へ睨んだ。

 霊廟の中からゆっくりと現れたのはローブで身を包んだ怪しい人物だった。


 ……………。



 日が昇り、子どもは日差しを浴びて目を覚ました。

 辺りを見回すが母の姿は無い。

 それどころか見知らぬ部屋のベッドの上にいるではないか。

 状況がサッパリ分からず、徐々に不安や恐怖がどっと押し寄せて来る。シーツで全身を覆い、目をギュッと瞑り夢であって欲しいと祈ることと涙を流し母の帰りを待つことしかできなかった。


 ……………。


 丁度様子を見に来たスパインはすすり泣く小さな姿に狼狽していたが、彼女の母親との約束を思い返し彼はついに姿を現した。

(だ、大丈夫かい?)

 突然どこからか声をかけられ困惑したが恐る恐るシーツから顔を出してみると、骨のオバケが立っており恐怖する少女は、後ずさる。

「ひぃッ⁈ こ、こないで! 」

(ま、待ってくれ! 別にとって喰おうとは思ってないよ)

 カタカタと口を動かし近づく骨のモンスターに、より一層の恐怖を感じた女の子はついに気を失った。


 このときの彼は、自分の口から声が出ていないという事に気づいていないのだった。とはいえ今の姿になってからこれまで声が必要とされる事がなかったのでこればかりは気づき様がない。

(ああ、気絶しちゃった。やっぱりこんな姿じゃあ怖いのも当然かな?)

 まずは少女に安心させなければまた怖がらせてしまうので、ベッドのそばにあるテーブルに書き置きと地図を添えて立ち去った。




 しばらくして目覚めた女の子は周囲を警戒しながら見渡した。

 そして隣のテーブルに視線がいくと、書き置きと地図があることに気付いた。

 そこには、恐らくさっき現れたモンスター自身についての簡単な自己紹介と、良ければこの家を貸しますよ、と言う内容が書かれていた。

 長い間色々と考えた末、もしかしたら悪いモンスターじゃないのかも知れないと思った女の子は、さっきのモンスターに会うため地図を頼りに墓地へ向かった。


 不思議なことに街の至る所で何故か恐ろしいモンスターであるはずのゾンビが掃除をしている姿があった。

 本来ならゾンビは腐敗しているので肉が溶け落ちたり腐敗臭がするはずだが、ここのゾンビの身体は腐敗している部分が少なく、防腐の魔法が掛かっている。

 とはいえ魔法についてよく分からない女の子は襲って来ないどころか見向きもしない彼らに恐ろしさは感じなかった。

 好奇心が湧いたのかそっと彼らゾンビに近づいてもやはり自分のことなど気にも留めず作業し続ける姿に、少女はまだ夢を見ているような気がした。


 地図通り目的地のあの霊廟に着いた少女は扉を開けて中へ進んだ。

 すると先ほどのモンスターが読書をしていた。

 やはり怖いのだろう、足が震えて前に踏み出せない。

 だがここで待っていても意味がないので意を決した女の子はモンスターに声を掛けてみた。

「あ、あの、その……」

 女の子に気づいた彼は本を閉じ、不用意に怖がらせないよう注意して話し始めた。

(来てくれたんだ。怖かっただろうに勇気があるね)

 女の子は困った顔をして黙ってしまった。

(どうしたの?)

「あ、あの……なにを、いってるか、わからない、です…」

 そう、少女からすれば何か伝えるための仕草としてカタカタと口が動いているのだろうということが何となく理解できただけ救いがあった。

 筋肉や皮膚がないのだから当然である。

(そうか……だから伝わってなかったのか)

 彼は少女と会話をするために頭の中に直接語りかけるという魔法を使ってみた。

「あ〜、聞こえるかな? 」

 は!っと目を見開きビックリした様子を見せた女の子は、周りを見渡す。

「え? え? もしかしていまのこえは、ガイコツさんですか⁈」

「あ、ああ、そうだよ。僕の名前はスパイン。良かったぁ〜」

 女の子は目の前のガイコツ、もといスパインがさっきまでとても恐ろしいく思っていたが、今のやり取りからもしかするととても良いモンスターなのではないかと思い始めたのだった。


「オホン、改めてよろしく……ああえっと、名前をまだ聞いてなかったね。良ければ教えてくれるかい?」

「う、うん。わたしのなまえは、カリンだよ…あッです‼︎」

「敬語じゃなくていいよ」

「ほんとうに、いいの?」

「構わないさ。それでね、カリン。これからの君についてどうしたいか聞きたいんだ」

「どうしたいって、どういうこと?」

「君のお母さんとお話ししたからどうしてここに居るのかは知ってるよ。そしてもうお母さんはここには居ない」

「え?…そんなのうそだ!」

「嘘じゃない、君のお母さんは大事な用事を終わらせるために行ったんだ。お母さんからは君を預かって欲しいと頼まれちゃったんだけど……」

「そんなぁ、おかあさん…」

「だけど僕も色々考えたんだ。それでね、君の気持ちを聞いてからでも遅くはないかなぁって思ったんだ」

 カリンはじっとスパインの顔を見つめる。

「お母さんの言うとおり迎えに来るのを待っていることが一番だろうけど、君が望むなら今からお母さんを追いかけてもいい」

「………」

 俯き考え込むカリン。

「意外だねぇ、まぁすぐに答えを出さなくていいよ。ゆっくり考えるといい。それまで君の面倒は私がみると約束だからね」

「ううん、だいじょうぶ。おかあさんはむかえにくるっていったの。だからまつの!」

「…分かった。それじゃあ迎えに来るまでこの国で暮らすといい。と言っても人間は君しかいないけどね。それとも人間がいる近くの村に行こうか?」

 カリンは頭を横に振った。

「ここがいい。ここでまっててっていわれたもん。だからよろしくね、お父さん!」

「お父さん⁈ どうしたらそうなるんだい⁈」

「うふふ、だってね、お父さんがいたらこんな感じなのかなって」

 この子はお父さんを知らないようだ。

 ならばと彼は父親の役を担うことにした。

 少しでもこの子が笑顔になるならと。


 この日から墓守のリッチーと人間の女の子の生活が始まったのだった。

はい、オムレットです。

初めましての方は初めまして。

別作(「異世界伝説巡り旅」)を見てくださってる方は、今作も読んで下さりありがとうございます。

今作についてはだいたい前書きで語ったので省きます。

今作のキャラクターについて、お話ししようと思います。今後の展開にいつてもね。

スパインさんをなぜリッチーにしたかというと、オーバーロードのアインズ様がカッコよかったので、骨キャラを別作の方で出したいなぁと思ったことがキッカケです。キャラクターの設定を考えていたらだんだんイメージが膨らんできて、このまま一つの話が出来るかもっと思ったら、出来ました。

カリンはスパインさんの設定で派生したキャラクターです。今回は彼女の容姿を全然出しませんでしたけど、わざとですからね⁈ 別に書き忘れとかそんなんじゃないんだからね!

まぁそういうことで、リッチーのスパインさんと捨て子のカリンを中心に展開します。

予定では少女編プロローグと青年編メインで書こうと思います(必ずしも予定通りに進むとは限らない)。

ということで、これからこの「リッチの娘はネクロマンサー」をよろしくお願いします。


※H30,2/22

加筆修正しました。

前は少々内容が薄いと感じていましたので足したり引いたり……。

あと、更新遅くてすみません。

のんびり続けますんで記憶の片隅にこんなのあったな態度で覚えておいてやって下さいまし!


※R2,4/14

お久しぶりです。いや、本当にね!

久しぶりだし活動報告の方も上げようと思いますので気が向きましたら読んでくださいね。

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