想いは時を超えて
某小説講座に送った作品。
小道具を生かした内容で、原稿用紙5枚程度という内容でした。
それでは、どうぞ。
心電図が鳴る。まだ生きているよと、叫ぶように。
私は目の前のベッドで眠る幼馴染みの手を握った。
連絡があったのは昼一時半を過ぎた頃。哲之と私の共通の親友から電話が入り、哲之が倒れて病院に運び込まれてきたと告げられた。
「早苗、大丈夫?」連絡をくれた看護師の裕美がそっと私の肩を支える。「哲のバカ、なんで彼女にも心臓の事を伝えてないのさ」
「きっと隠してたんだよ。私に心配させないように」
「でも、倒れたら何にもなんないじゃん」
白い病室に光が射している。その光は哲之を私の手の届かないところへ連れていくかのようで、私は哲之をさらに強く握った。哲之の心音が少しだけ速くなる。
「君が早苗ちゃんかね」
声の方を見ると医師が立っていた。私が頷くと、裕美は先生に問いかけた。
「センセ、どうかしたんですか」
「うむ、実は伝言を預かっていてね。彼が意識を失う前にね、言われたんだが――」
早苗、もし俺がいなくなっても、約束は果たして欲しい。
心配して付いて行きたがった裕美を病院に残し、私は小さい頃に哲之とよく遊んだ公園に駆けていった。小さな公園の隅の植え込みの下にまだあるはず。哲之が倒れたのですっかり忘れていた。そうか、今日だった。
植え込みのところに着くと、私は素手で地面を堀り始めた。
『なぁ、タイムカプセルって知ってるか?』
それは哲之が思い付いた遊びで、未来の自分に宛てた手紙を埋める、というものだった。
『今、俺たち七歳だろ。開けるのは二十年後の今日、二人一緒に開けるんだ。絶対だぞ、約束だ』
そうよ、二人で開けるって言ってたのに、なんで今私はひとりで掘っているの。
涙がこぼれ落ち、地面に水玉模様を作っていく。拭う事もせずに、ひたすら掘った。掘って、掘って……指先にかたい物がぶつかる。間違いない、昔ここに埋めたタイムカプセルの缶だ。
表面についた土を払い、蓋を開く。手紙は無事に残っていた。子どもの頃の私たちの文字が無邪気に並んでいる。
私は地面に座ったまま、汚れた手で手紙を開いた。自分宛の手紙ではなく、哲之宛の手紙を。
━━みらいのオレへ
オレからオレへ、いいたいことは ひとつだけだ。
いまのオレは さなえちゃんに きもちを つたえられていない。
だからもし、みらいのオレが
さなえちゃんと つきあってるなら、
いまのきもちが かわってないなら、
きょう、いまここで プロポーズをしろ。
ケッコンしてくれって。
がんばれ、みらいのオレ!
「なに、これ……」
手に力が入り、手紙がクシャリと音をたてた。おそらく哲之はこの手紙を私に読んで欲しかったのだろう。
「死んじゃったらどうしようもないじゃない。私は何も聞いてないよ。哲の口から、ちゃんと聞きたかったよ。ねえ、哲」
誰もいない公園で思わず声をあげて泣き出す。止めようと思っても止まらない。
すると影が差し、私は後ろからふわりと抱かれた。
「勝手に俺を殺すな。もう泣くな。あと……好きだよ、早苗。結婚しよう」
聞き覚えのある声だった。いつも優しく、イタズラ好きな哲之の。
強引に向き合わされると、そこには病院で眠っているはずの哲之がいた。
本当に死んでしまって、幽霊になってここに来てしまったのだろうか。私は哲之の手を握ってみる。温かく、確かにここに哲之がある。
「だからこの作戦やめようって言ったじゃん。早苗、訳わかってないし、完全に今の状況理解できてないって」
いつの間にか裕美も来ていたようだ。さらに絡まっていく私の思考を、哲之がゆっくりと話し、解こうとする。
「倒れたのも心臓病ってのも、全部俺の嘘。病院の先生にも演技してくれって頼んだんだ」
センセに協力してくれって頼んだのアタシなんだけど、と裕美がこぼす。
「早苗にちょっとしたサプライズなプロポーズをしたかった。それだけ」
「それだけって……」
まだ私の頭は話に追い付いていない。でも、ひとつだけわかっている答えがある。
それでさ、と裕美が私の肩を叩いてきた。
「散々人を騒がせたこのプロポーズ、早苗は受けるの、受けないの?」
「もちろん、喜んで」
さっきまでの涙とはまた違ったものが、私の頬を静かに流れていった。
指摘された大きな点は、
『ドッキリだとはいえ、人の生死に関するものはやめましょうよ』
という感じでした。
気持ちを素直に伝えられない主人公とその相手なら
このドッキリで仕方ないかなぁ、とも。
私の書いた人物、気持ちをハッキリ伝えてますからね!
直球で伝えろよって話なんだと思います(笑)
そして、一体どれが小道具やら(笑)
一応タイムカプセルが小道具のつもりでした。
とりあえず期間内に課題を終わらせなくては
という焦りから生み出された作品です。
課題の規定外れていますね、えぇ。
そしてまたラストが駆け足……。文字数に完敗。
あと、自分の語彙力、表現力にがっかりです。
課題の教材のような表現は思いつかなかったんですよ……。
もっと時間がほしかった。いや、あっても思いつかないですね。
評価だけでも飛び跳ねるくらい喜びます。
辛口コメントも甘口コメントも大歓迎です。よろしくお願いします。