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保護

「こちらアルファ1。保護対象となる悪魔を発見。しかしながら瀕死の重体。救護班を要請します」


『了解。そちらの現在地を特定後、速やかに救護班を派遣する』


…誰だこいつは?人間?私が顔を上げると、人間は「じっとしてて下さい」と言い、私の傷の手当を始めた。


「何故、人間が私を助ける?」


「貴女が人間の敵ではないからです。それと喋らないで下さい」


「……」


良く分からん。止血のためか、人間は包帯を少し強めに縛った。その痛みで、私は小さく呻く。


「喋るなと言われたが、これだけは聞きたい。お前は何だ?」


「悪魔保護機関アルファ部隊隊長の、イーラ・ストレイティアです」


「女が隊長か。勇ましいものだ」


「っ…ありがとう、ございます」


悪魔にこんな事を言われると思っていなかったのか、イーラは少し驚いたような表情をした。


私は微笑を浮かべ、一言イーラに礼を言った。…しかしながら、もう長くは持たないのは確かだろう。


悪魔というだけで、この始末だ。人間とは恐ろしい。だが、イーラは私を助けようとしている。


「悪魔保護機関…だったか?何故悪魔を保護するんだ?」


「悪魔とはいえ、中には人間の味方をする悪魔がいます。そんな悪魔を保護するのが、我々悪魔保護機関の役割です」


「…それで、私はその保護対象と?」


「はい。あと、これ以上喋らないで下さい。ただでさえ瀕死なのですから」


「…分かったよ……」


私は目を閉じ、深く息を吸って吐いた。少し…寒いな。どうやら血を流しすぎたようだ。


意識も朦朧としてきた。本格的に…危険な状態のようだな。目を再び開けたのだが、視界が少しボヤけている。冷たい汗も全身から流れ、呼吸も荒くなってくる。


イーラは心配そうな表情を浮かべ、私の頬に触れた。返事を返す余裕もない。


だが次の瞬間、イーラの表情が険しくなり、視線が上を向いた。そして素早く私を抱え、後方に飛んだ。


ドガァァンッ!


先程まで私がいた所に何かが落ちた。いや、あれは何かではない。人間だ。


「また悪魔保護機関の方ですの?」


煙が晴れると、そこには両手に鎖鎌を持った、幼い少女がいた。…私はこいつにやられたのか……。


突然の不意討ちに、私は瀕死の傷を負わされた。あの鎖鎌ならば、それも可能だろう。死角からの攻撃。殺気を感じた時には既に遅い。敵であるが、見事の一言だ。


「……」


イーラが私を抱えてる腕に力を込めた。傷だらけのせいで、かなりの痛みだ。呻き声を上げてしまったが、我慢しなければ……。


幼い少女は今の私を見て、狂気の笑みを見せた。


「キヒヒッ、もう虫の息ですわね♪」


「っ…不意討ちを受けたからな…そりゃあ…虫の息にも…なる…!」


「喋らないで下さい!」


「あー…すまん……」


「キヒヒヒヒ♪」


幼い少女がこちらに向かって鎖鎌を投げ付けてくる。まるで生き物のように動く鎖鎌を、イーラは私を抱えた状態でかわす。


イーラの身のこなしも、かなりのものだ。幼い少女はそれを見て、驚いた表情で拍手する。


「貴女凄いですわね!わたくしの鎖鎌をこんなに華麗に避けるお方、初めて見ましたわ!」


「光栄です」


「キヒッ、じゃあこれはどうですの!?」


鎖鎌が二本追加され、更に避けるのが至難の技となる。しかしイーラは余裕で回避する。さながらこいつが敵でなくて良かった。


「……」


幼い少女の表情がだんだん険しくなってきた。自分の攻撃が当たらない事に、苛立っているのだろう。


肩が震えている。間違いなくご機嫌悪い。イーラはそれを挑発するかのように、くすっと笑った。


「こ…の……っ!」


数が更に増え、計八本の鎖鎌がイーラに向かっていく。


「切り刻んでやりますわぁぁぁぁぁ!!!」


その怒りが、イーラの狙いでもあったのだろう。鎖鎌の攻撃を掻い潜り、幼い少女に一気に接近した。


「…えっ?」


一瞬にして、怒りから驚愕の表情に変わった。その幼い少女の腹に、イーラは貫くような蹴りを入れた。


「ごぇあぁっ!?」


幼い少女は何歩か後ろによろめき、ガクガクと震える。生き物のように動いていた鎖鎌は、糸の切れた人形のように地に落ちた。


イーラは更に幼い少女に追撃を食らわせた。顎に向かって飛び膝蹴りをかましたのだ。


宙を舞った幼い少女は大の字で地面に落ちた。中々惨い事をする。それよりも……。


「私を抱えた状態で…よくできたな……」


「隊長ですから」


ドヤ顔で言われた。今は認めよう。


「うっ…あ゛ぁ……」


幼い少女は何とか起き上がろうと、必死にもがいていた。あの一撃を受けて生きているとは…最近の人間は頑丈だな。


「貴女では相手になりません。そのまま寝ていて下さい」


そう言って、イーラは幼い少女の頭部を蹴って気絶させ、その場から立ち去った。


しばらく歩いていると、一機のヘリが飛んできて、私達の上空でホバリングした。ヘリからハシゴが降ろされる。イーラは私を背負うと、ハシゴを登ってヘリに乗り込んだ。ヘリの中には何人かの人間がいて、直ぐに私をベッドへ寝かせて傷の治療を始めた。


痛みはない。ただ、急に眠くなってきた……。イーラは私に寄り添い、微笑を浮かべた。


「眠っても大丈夫ですよ。私達は貴女の味方です」


「……」


その一言に私は安心してしまったのか、ゆっくりと目を閉じて、意識を手放した。

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