第一章バイト編1
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サブローさんがバイトをやめても、私の生活に変化は起こらなかった。決して。何も変わっていない。食器洗い係が一人いなくなったところで何だと言うんだ。そりゃあちょっとくらいは私の仕事が増えたけど、すぐに次のバイトくんが補充される。そしたらもう元通りだ。
私の働いている場所はレストラン『SORA』。大学に付属している食堂だ。オムライスや、中庭が見渡せる大きな窓、広いスペースが売りだ。テラスもあるので外にご飯を持っていくこともできる。一応それなりに瀟洒な空間を気取っているのだが、大学食堂なので客の民度が低い。食べ物を注文をせず水だけ飲んで駄弁る学生もいる。お菓子を持ち込んだりすることもざらだ。まあそれは必要悪のようなもので仕方がないことなのだが、なにより残念なのは値段の高さだ。量がそんなにないオムライスひとつで五百円かかってしまうのが貧乏学生を忌避させる一員となっている。これは私が働かされているフィルターがかかっているのではなく、一般的な評価だ。そんなことはどうでもいい。私は週に三日、授業が少ない月、木、金曜日の四時から七時までここで働いていた。仕送りは最低限しかないため、友達と出かけたり趣味のものにお金を使うには働かざるをえないのだ。今日も私は黙々と皿を食器洗い機に突っ込み続ける。仕事に余計な感情はいらない。日々のルーチンワークとして、ただお金が必要だからその時間をこなす。機械の一部のように。
そうだ。何も、変わっていないんだ。