プロローグ
「どうして私は囚われなきゃいけないのっ」
“彼女”は叫んだが誰も手を差し伸べてはくれなかった。
カツッカツッと足音を聞き、我に返った。
「あんた……!」
“彼女”は自分でも顔から血の気が失せていくのを感じた。
前に現れる影、迫り来る緊迫感。心臓が破裂しそうになりながらも、必死でなだめ、「落ち着け」と自分に言い聞かせていた。
前にいる影が暗く、重い声で言ってきた。
「お前は罪を犯した。死んでもらおう」
「嫌よ!あれは正当防衛だもの、罪じゃないと言っているでしょう!それに、私は死にたくないわっ」
“彼女”は縄で縛られた手をぐいぐい動かして抵抗した。
………だが、影は何も言わなかった。
「ここから出しなさい!出さないと言うなら自分で舌を噛み切って死んでやるわ!だから早くして!」
もう一度“彼女”は叫んだ。すると影はふうっと溜息をついてからこう言った。
「無駄な抵抗をはやめろ。そして、あれは正当防衛ではない。俺のプログラムを奪っただろう?」
「うるさい!いいから早く出しなさい!」
影は妙に思った。どうしてそんなにムキになるのか。
「うん?そんなにムキになるなんて何かあるのか?」
影が問うと、“彼女”は何故かフッと静かに笑い出した。
「あははっ…娘がいるのよ。今も家で待っているの!きっと何日も帰って来ないなんてきっと……ゲホッ…心配して…いるわっ」
“彼女”は急に咳き込み、血塊を吐いてしまった。
「名前は………フ、フーカよっ……ゲホッ…私がっ頑張って……付けた名前なんだからっ」
だからーと言おうとしたのだが、そこで永遠の眠りについてしまった。
「はははっだから無駄な抵抗はよせと言ったんだ。毒を仕込まれたのも気付かないなんてな。あとは……」
影――――いや、黒衣の男は少し考えてから言った。
「事後処理だけだな」
はじめまして☆
某雨系小説の掲示板でもお世話になっています、りぃーです。
次からは本当の主人公が出てきます。
また楽しみにしていて下さいねっ♪