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薄幸の魔導師オメガが冒険者になったら、最強勇者の子供を授かりました  作者: 碧木二三
第一章 オメガの俺が最強勇者の子供を身ごもるまでの話

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     ➕ ➕ ➕

 


 ──旅の仲間で勇者であるレオスが、よもやこんな蛮勇を振るうとは。


 絶対ではないのだが、『勇者』を名乗る者がパーティにいれば、大抵はその人物がリーダー役を務めることが多い。

 レオスの場合もそうだった。

 もともとレオスのパーティには、彼自身を含めて四人のメンバーがいた。

 短剣や暗器を扱うのが得意な盗賊(シーフ)のキリィに、黒騎士のヴォルフ、そして紅一点である黒魔法使いのパット。本来はそこにもう一人、ケルスという年老いたベテランの白魔法使いがいたのだが、寄る年波には勝てないのか、あるとき体調を崩して以来、一時的にパーティを離脱していた。

 それでレオスたちは急遽、冒険者ギルドを通じて彼の代わりとなる貴重な回復役(ヒーラー)の白魔法使いを探していたのだ。


 冒険者になって三年目を迎えた頃。

 単独(ソロ)冒険者だった俺は、とある街のギルドに立ち寄った際、そこのマスターから不意にレオスのパーティの話を持ちかけられた。

 これまた偶然だったのだが、俺はその頃にただの魔法使いから白魔法使いへと職位(ランク)が上がったばかりだった。

 マスターは、それで全て決まりだと言うように両手を打ち鳴らして叫んだ。「ちょうど今、勇者(レオス)はこの街にいるんだ! これはまさにあんたの運命だ!」と。

 彼の興奮に巻き込まれるように、俺はその場で一度レオスに会うことを約束させられた。

 しかし、冷静に考えればまだ何の実績もない駆け出しの白魔法使いが、大陸全土に名を馳せる勇者レオス(しかもアルファだ!)の仲間になるだなんて、夢物語もいいところだ。

 どうせレオスの方から断って来るだろうと、開き直るようにして高を括ってしまえば、いっそ気は楽になった。

 ただ、超がつくほどの有名人に、たった一度きりでも直接会えるかもしれないという俗物的な期待はまあ、なきにしもあらずで……。

 だが、俺の予想は完全に外れた。

 善は急げとばかり、その翌日には早速マスターが手配した料理屋でレオスと初めて顔を合わせた俺は、何故かそこでレオスの熱量に押し負けてしまい、何が何だかよくわからないうちに期限付きで彼のパーティに入ることになってしまった。

 あまりにも展開が急で、しかもその結果が予想外過ぎて、俺の方から断ればよかったのだと気づいた時には、もう手遅れだった……。


 レオスのパーティの陣形は、基本通りのバランス型だった。

 前衛のアタッカーがレオスとヴォルフ。魔法が使える俺とパットが後衛からの支援と攻撃で、キリィは後衛のガードや、前衛の補助をする役割だった。

 ちなみに、俺とレオス以外の三人はベータだ。

 そもそもオメガはアルファ以上に希少な獣性だ。そのうえ冒険者になろうとする者もなかなかいないだろう。もし目指す者がいたとしても、ギルドに登録する時点でオメガであることを知られれば、申請が通らない可能性がある。

 冒険者になるための条件は、まず十四歳以上であること。ギルドが定める最低限の身体能力を有していること。それから発作性の持病等がない(発情期があるオメガはこの項目に抵触する可能性がある)健康体であること。

 だから俺は、ギルドに初登録したときからオメガのリーファスではなく、第二の性を持たないトワとして登録の申請を出していた。見た目の印象というのはやはり絶大で、俺の容姿からオメガを連想する者は誰一人いなかった。

 ついでに言うと、本名以外で登録することは別に規律違反でもなんでもない。世間的には『冒険者名』という言葉もあるほどだ。それだけ本名や身分を隠して冒険者登録をする者はたくさんいた。

 条件さえ満たしていれば登録自体は誰でも簡単にできるのだが、ただし初回の登録時には身元確かな保証人のサインが必ず要る。そこだけは本人確認作業を伴う非常に厳しい審査が行われるため、ギルドに登録されている冒険者たちの身元や経歴は皆案外と綺麗だった。実は冒険者ギルドの母体は、クナ大陸自由交易連合という、大陸中の主要な国々をまとめる巨大なネットワーク機構なので、そこはしっかり堅いのだ。


 レオスたちの仲間になってからも、自分がオメガであることはずっと隠していた。(パットにだけは女の勘とやらですぐにバレた)

 それが最後の最後で、よりにもよってアルファのレオスの目の前で発情するという失態を犯し……、だが、単純に考えてそれはありえない事態だった。何故なら俺は、いつも通りにちゃんと抑制剤を服用していたからだ。

 だから、もしかしたら俺には油断があったのかもしれない。

 思えば、レオスが俺だけを食事に誘うなんてことはこれまで一度もなかった。だが、今回ばかりは特別な理由があったのだ。

 準備期間も含め、丸一年をかけてようやく【蛇頭の魔王の撃破】という、成功すればかなりの経験値が得られる超難解クエストを達成した俺たちは、その報酬を受け取るためにクエストを受けたギルドがある街まで戻ってきていた。

 個別に精算された成功報酬を受け取り次第、今回のクエストのみの同行が条件だった俺はこの街で皆と別れることになっている。

 仲間たちは何度も……、例えケルスが戻ってきたとしても、俺もこのまま残って一緒に行こうと、特にレオスとパットはかなり強く(しつこく?)勧めてくれたのだが、その度に俺は断り続けてきた。

 それでようやくレオスも諦めてくれたらしく、


『お別れの前に一度、よければ二人だけで食事でもどうだ?』


 と……、遠慮がちなようでいて、どこか強引なその誘いを断りきれなかったのだ。



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