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恋愛サバイバー〜ヒロインたちの葛藤〜  作者: 鏡恭二


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2/2

出会い…


まどかは、目を開けた。

「……うぅ、ん……」

寝ぼけ眼で上体を起こす。見慣れた天井。差し込む朝の光。

――いつも通りの朝だと思った。


スリッパを履き、制服に着替え、鞄に教科書を入れる。

「朝ごはん、食べよう……」

玄関のドアノブに手をかけた――その瞬間。


「……あれ?」

目の前に広がっていたのは、見知らぬ廊下だった。

中世ヨーロッパの洋館のような装飾。

タイタニックのセットを思わせる螺旋階段。

大理石の床が冷たい。


(ここ……どこ?)


階段の下には、大きなテーブル。

白いクロスの上に十脚の椅子。

そして、タキシード姿の金髪の男が料理を並べていた。

給仕なのか、それとも――支配者なのか。


「おっと、ようやくお目覚めか。こちらへどうぞ、まどかさん」

突然、名を呼ばれ、まどかは凍りついた。

(どうして……私の名前を?)


恐る恐る椅子に腰を下ろす。

テーブルには、ハムエッグ、トースト、かぼちゃのスープ、そしてサラダ。

理想的な朝食。なのに、どこか不気味だった。


「食べないの? じゃあ、食べちゃっていい?」

聞き覚えのある声に顔を上げる。

――喜美だ。

彼女は何の躊躇もなく、まどかの皿のハムエッグをフォークで突き刺した。


「ちょ、ちょっと! 何してるのよ!」

「だって、まどかが食べないから」

呑気に笑う喜美。その図太さに、思わず苦笑いする。


その隣には、うつむいた眼鏡の少女がいた。

「……」

声も出せず、小さく肩をすくめている。

(優子……?)

まどかは息を呑む。雄介の幼馴染――優子だ。

どうしてここに?



やがて、黒いタキシードの男が階段を下りてくる。

その金髪が、照明に反射して輝いた。


「どうだい、朝食は? おいしいか?」

喜美が元気に手を挙げた。

「おいしい! おじさんが作ったの?」

「まあな。俺は恭二という」

金髪の男――恭二は、ニヤリと笑う。


まどかは睨みつけながら言い放った。

「ここはどこ? あなた誰? 私、学校あるんだけど!」

「残念だが、それはできないよ」

恭二の瞳が異様に光る。胸ポケットから、銀の鍵を取り出した。


「外に出るにはこの鍵が必要だ。そして――」

彼の左胸が変形し、鍵穴が現れる。

「ここが出口への鍵穴さ。俺を“ときめかせた者”だけが、ここを開けられる」


パチン――指を鳴らす音。

少女たちの右手に、スマートウォッチのような腕輪が出現した。


「これは、“ときめき指数”を測る装置だ。

 俺とお前たちの感情が数値で繋がっている。

 一定以上になれば、鍵が出現する。

 だが……下がりすぎると――」


恭二が冷たく笑う。

その瞬間、優子の体が透明になりはじめた。


「なっ、何これ!?」

「指数がゼロに近づくと、“物語”から消える。

 お前たちは元々、漫画の中のキャラクターだからな。

 存在しないものに戻るだけだ」


まどかは息を呑んだ。

(恋愛感情がなければ、存在できない……?)

喜美、優子――漫画の中では笑い合っていた仲間。

けれど今は、互いを出し抜かなければ消える敵。


(そんなの……できない……!)

膝を抱え、まどかはうずくまった。


「ようやくわかったろ。君たちの立場が」

恭二は指で部屋の奥を指した。

「5号室は衣装部屋だ。恋する女には必要だろう。

 俺は8号室にいる。……さあ、始めようか。

 恋愛という名の、生存ゲームを――」


階段を上がる恭二の背を見つめながら、まどかは気づいた。

――まだ七つの椅子が空いている。


「……あと七人?」

「本編の漫画世界と連動している。

 彼女たちも、すぐにここへ来るだろう。哀れな羊たちさ」


その言葉が、静かな朝に不気味に響いた。


こうして、恋愛を“生き残り”で測るサバイバルが始まった。


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