朔月の夜に
はじめまして、朔と申します。
ずっと小説を書いてみたいと思っていて、今回やっと挑戦してみました。
初めてだったので、かなり拙いと思いますが読んで下さると嬉しいです!
しばらくは短い小説を書いていければと思っています。
よろしくお願いします!
「朔月って言葉、知ってる?」
誰もいない深夜の公園で、ブランコに腰を掛けて少し漕ぎながら君は、隣のブランコに座っている僕に尋ねてくる。
「さぁ、知らない」そう返すと、君は
「今日は新月で月が見えないけど、その新月の別名を朔月って呼ぶんだって」と。
「初めてこの言葉と意味を知った時、何処かには存在してる筈なのに、目には見えない。何だか私みたいだなって思っちゃった」
君はブランコを漕ぐのをやめ、僕を見ずに月のない暗い夜空を見上げながら小さく呟いた。
「何で、そんな事を聞いたの?」と君に聞くと、君は「何となく。月が出てなかったし、あと君から私と同じ匂いがしたような気がしたから」って。
「そっか」
僕の、君の言葉に対して言った返事は、乾いた空気と共に暗闇に消えていった。
夏休みも今日で終わり、明日から二学期が始まる。
八月も終わりになると、夜の風は少し肌寒い。
寒色の街灯に照らされた君の横顔は、ひどく青白く見えた。
少しの沈黙の後、君は哀しげな表情とどこか震えた声で「私、ちゃんとここにいるよね?」と尋ねてきたね。
「うん。ちゃんとここにいるよ」
僕はそう答えて、「僕は?」と逆に聞いてみると、「君もちゃんといるよ」って。
それから、なぜか無言のまま二人で夜空を見上げていた。
少し冷たい風が吹き、木々の葉達が擦れ合う音が聴こえる。
しばらくして、君の「帰ろっか」と言う声が聞こえて、君はブランコから立ち上がると僕に手を差し伸べてくれた。
僕はその手を取って立ち上がり、公園の入り口で別れてそれぞれ帰路につく。
最後の別れ際、君の「じゃあね」って言葉がとても切なく聞こえたのを今でも憶えてる。
君は、二学期の始業式には来なかった。
そして、そのまま二度と君には逢えなくなった。
あの夜に差し伸べてくれた君の手の温もりは、ずっと残ってる。
でも、いなくなるなら僕も連れて行ってくれれば良かったのに。
そう、今でも考える時があるんだ。
僕も君と同じ、確かに今、生きている筈なのに透明なまま誰にも存在を認知されてない。
次の朔月の夜、何処にも行けず死ぬ勇気のない僕は、あの公園のブランコに座って、月のない夜空を見上げる。
ふと横に振り向けば、君に逢える気がして。
まだ、君が僕を一緒に連れて行ってくれる気がして。
でも、そこにはただすっかり冷たくなった風が通り過ぎ、少しブランコを揺らしているだけだった――。
読んで下さってありがとうございます!
評価を下さると、とても嬉しいです。