これは、魔法?
「もしかして、魔法?」
そんな事を彼は想像した。
何度かテレビで放送されていたアニメか何かでそんな表現を見た事があった、何もない所から何かを生成したり、宙に浮いたり、光線を放ったり、そんな超常現象の様な出来事を魔法と呼んでいた。
そして今、目の前でそれと似たような出来事はその魔法と言われる物と同じ。
しかし、あれはあくまで空想上の、物語の中での話だ。
現実にそんな事がありえるのだろうか。
「でも、さっきのあの感覚・・・」
水が出る瞬間の、全身の血液が右手に集まっていく感覚。
あんな事は初めてだ。
もし本当にさっきの出来事が魔法という物の力だと言うのなら・・・
「試すか。」
試しにもう一度、呪文を口にしてみる。
「水よ、深き渦よ、全てを呑み込みし力よ、今、解き放たれよ。」
サアアア。
と風で木々の葉が揺れる音だけが鳴り響く。
「や、やっぱり、さっきのは気のせいか!げ、幻覚かなんかだろう!」
そう言ってこの謎めいた状況を納得させようと自身に言い聞かせる。
しかし、濡れた地面や靴、ズボンなどが先程の出来事が幻覚なんかじゃないと物語っている。
仮にあれが魔法だとして、ならなぜ、今回は魔法が出なかったのか。
そんな風に彼が疑問に思っていると。
彼の足元に、雲1つない晴天だというのに、水滴がポツリと落ちて来たのだ。
その後、少しずつ彼の周囲に水が集まり始め、やがて、彼の目の前に小さな水流ができた。
「幻覚なんかじゃなかったな・・・。」
フラッと、体の力が一瞬抜け倒れそうになる。
「なんか、今日は疲れたな。」
あまりに衝撃的な体験に、体も心も疲弊してしまったようだ。
「今日はこの辺りで休もうか。」
そう言って彼は簡易テントを設置し、彼の1日は終わった。
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翌日。
「これからどうしようか。」
彼は深く悩んでいた。
昨日、あの後テントで休憩している時に再び考えたが、やはりあの現象は魔法としか言えない。
というかそう言われなければ、自分自身が納得できない。
では、仮にあれが魔法だとして、これからどう扱えばいいのか。
「正直滅茶苦茶自慢したいけど・・・まぁまずいよなあ。」
彼の現在の心境的には、今すぐにでもテレビ局に駆け込むでも、SNSに投稿するでもして、世界中に自慢したいという気持ちを、彼は押し留める。
「そもそも魔法がこの世界に存在した事自体が驚きだけど、これを見た国がどう捉えるか分からないよな。」
この世界においての魔法の立ち位置がわからない為、うかつに表に出すわけにはいかないと、彼は判断した。
実は一般の人間は知らされてないだけど、各国の裏では魔法が研究されたり、使われたりしてるかもしれない。
もしくは本当に初めての発見で、滅茶苦茶称賛されるかもしれない。
逆に魔法はこの世界の禁忌で、それを使っている俺の命を狙ってくるかもしれない。
あまりに沢山の可能性がありすぎる。
「無闇に世間に出すのは止めといた方がいいな。しばらくの間は隠しておこうか。それに、もう少し独り占めしたいしね。」