3-1 向かう先は
ニューエゥラ軍の本拠地となるアイリス家にシャルが加わってから早一ヶ月。
革命軍としては大した活動もなく、ギルドにて日々の困りごとを解決しながら平和的に暮らしていたツナグたち。そんな日々を送ってきたある朝のことだった。
「あれ? ヒトリさん、どこかへ用事ですか?」
玄関先でヒトリを見かけたツナグはそう声を掛けた。
「ああ、ツナグくんかい。……いやぁねぇ、ちょいと知り合いに呼び出されちゃってねぇ……」
「知り合いですか」
「そうなんだよぉ。なぁんか、あっちでめんどうなことが起こってるらしくてさぁ、革命家ならこっちのことも助けろって、えっらそうにわたしに頼むんだよ」
投げやりに話すヒトリは、心底めんどうくさそうだった。
そこへパタパタと何やら走ってくるような音が。駆け足で現れたのは、どうやら二人の話を聞きつけたであろうキズナだった。
「ちょっと、お姉ちゃん! もしかしてお出かけ!? それならわたしたちもいっしょに連れてって、だよ!」
「わたしたち『も』って……?」
ヒトリは恐る恐るといった様子で視線を上げる。キズナの後ろから現れたのは、ウィル、アムエ、シャルだった。
「僕はどうでもいいのだが、どこかへ行くなら剣士がひとりついていなくてはと思ってな」
「お出かけというのなら、わたくしもぜひ連れていってほしいです」
「ボクはなんとなく……みなさまに着いてきてみました」
ヒトリは頭を抱えながら、「君たちねぇ……わたしは遊びに行くわけじゃないんだよぉ……」と話すが、キズナは聞く耳を持たずなようで、「お姉ちゃんが出かけるならわたしも着いてく! だよ!」の一点張りだ。
「……えーっと、俺は別に留守番でもいいッスよ」
「何言ってるの、ツナグ! ツナグもいっしょに決まってるでしょ!」
面倒事からさりげなくフェードアウトしようとしたツナグだったが、それも空振りし、キズナに腕を掴まれてしまった。
ヒトリは腕を組み思案していたが、やがて「……わかった」と口を開く。
「いいだろう、着いてきなさい。ただし、わたしは遊びに行くわけじゃないからねぇ……あくまで頼まれごとを請け負いにいくのさ。くれぐれも、君たちはわたしの邪魔をしないでもらいたいねぇ」
「そりゃあもちろん! やったぁ! みんなでおいしいもの、たくさん食べようね!」
早速遊ぶ気満々のキズナ。
「というか、そもそもヒトリはどこへ行くのだ? キズナはすっかりお出かけモードに入っているが……」
ウィルはうきうきな様子のキズナを横目で見ながら、そう聞いた。それは真っ先に思いつく疑問である。ツナグたちはまだ、ヒトリがどこへ行くのか聞かされてはいないのだから。
ヒトリは口角を上げ、こう答える。
「――世界最凶の治安の悪さを誇る、『セキセイ国』さ」