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転生の革命家  作者: みおゆ
第二章・屋敷の主とメイドの約束
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2-8 特訓――「守り」

 ヒトリとラバーの会話と同時刻、ツナグたちはシャルに案内された中庭にいた。


 ここでシャルから戦闘の特訓を受けるのだ。


 シャルは準備運動を軽く済ませてからツナグたちに向き直り、言う。


「さて、では早速始めましょうか。まず、戦闘には大きく分けて二つの基本動作があります。『攻め』と『守り』ですね」


 ツナグはしっかり頷き、脳内にしっかりメモをしていく。


「では、最初に『守り』の話をしましょうか。攻め込む前に、まずは自分の身は自分で守らなくてはなりませんからね」


 そう言うと、シャルはウィルと向き合った。


「そちらの剣士の方、ボクとお付き合いいただけますか?」

「ウィルと呼べ。……いいだろう」


 ウィルは剣を抜き、構えを取った。


「……ウィル様。まずは適当にボクに攻撃してください。今からツナグ様に『守り』の動きを見せます。……あ、遠慮せず、ボクに剣を当てにきて大丈夫です」

「ずいぶんな自信だな、わかった――いくぞ!」


 ウィルは素早い初速を見せ、シャルへ斬りかかる。一方シャルは軽い身のこなしでウィルの攻撃を躱し、スカートがフワリと翻る。その際、太腿に装備されたホルスターが目に入った。シャルは避けながらもスカートの下に隠されていたナイフを抜き取る。間髪入れず振り下ろされたウィルの剣を、まるで予測していたかのように、小さなナイフで弾き防いだ。


「……ふぅ、思ってた以上に腕の立つ人でした。焦りましたよ」

「そう話すわりには表情は変わらない――なっ!」


 ウィルは再び剣で斬りかかる。シャルは動きを見切り、ナイフで剣を受け止めた。


「このように、『守り』というのは基本的に相手の動きを読みながらやらなくっちゃあ、いけません。……じゃなきゃ間に合わないので。こんな感じで『守り』がある程度できるようになったら――」


 シャルはナイフを切り返し、身をかがめた。同時にナイフを持つ手とは逆の手を後ろへ引いており、次の瞬間、



「――〈クウ・トッ・ショウ〉」



 と、魔力を纏った手を突き出した。


 周りの空気は震え、ウィルは足で地面を引きずりながら数メートル飛ばされていく。


 ウィルは咄嗟に剣で守りを取っていたおかげで、特に怪我はなかったようだが、額にはうっすらと汗が滲んでいた。


「……と、こんな感じで、『守り』から『カウンター攻撃』を繰り出すこともできます」


 シャルは守りの説明を終えると、ウィルへ礼をした。


「……今のは少し焦ったぞ」

「そんな焦っただなんて……ウィル様は防ぎきってみせると、ボクはわかっていましたよ」

「……フン。本当に謙遜ばかりするメイドだ」


 ウィルは髪を払ってから、剣を鞘にそっと戻した。


 一旦、守りの指導を見終えたツナグたち三人は、それぞれ感嘆の声を洩らした。


「わ〜……。わたくし、とてもドキドキしました。お二人とも、お見事ですね」

「剣術も体術もカッコイイ、だよ! 二人に負けないように、わたしも魔法、上手く使えるように頑張らなきゃ!」


 アムエは拍手を送り、キズナは今の模擬戦闘に感化された様子。だが、ツナグだけは不安そうな表情を浮かべていた。


「……お、俺……絶対あんなふうに動けないって……」


 いつもの如く怖がってしまうツナグに、キズナは頬を丸く膨らませた。


「もー! またツナグはネガティブなこと言うんだから! ツナグだってやればできるよ! アンデル迷宮でもやってみせたじゃない! 〈革命拳(カクメイケン)〉!」


 ツナグは「ホントアレはたまたまっていうか〜……」と言い訳を並べはじめた。さっき特訓を受けると意気込んだツナグの姿はすっかり見えなくなってしまっている。


「…… 〈革命拳(カクメイケン)〉」


 シャルは会話の中で出たその言葉(ワード)に反応し、呟いた。


「〈革命拳(カクメイケン)〉とは、末裔を……チトモクを殴りつけた拳の名前ですか?」


 シャルの問いに、ツナグはぎこちなく頷いた。キズナはツナグの肩を持ちながら、「すごいんだよ! ツナグね、チトモクのやつを遠くまで吹っ飛ばしちゃったんだ!」と、まるで自分のことのように自慢した。


「そうなんですね。……(ちまた)では、あなたの拳は世界を変えるかもしれない拳だと評判です。ボクも、ツナグ様がこの世界にどんな変化をもたらしてくれるのか、あの日の新聞を見て以来、期待をしてるんです」

「そんな大したもんじゃ……! 俺はあのとき、無我夢中で……!」

「無我夢中になるほど、そのときのあなたは現状を打ち破るのに必死だったといえます」


 シャルは言い、屋敷を見上げた。


「ボクは確かに力はあるかもしれませんが、それだけです。あなたほどの勇気はボクにはありません。博士と出会わなければ、ボクは――永遠に路地裏を彷徨うだけの存在でした」


 シャルはツナグを見て、構えを取った。


「さあ、次は『攻め』の話をしましょうか。ボクが的だと思って、各々攻撃をしかけてみてください。まずはあなた方がどれくらい動けるのか、小手調べです」


 ツナグたちは「はい!」と返事し、それぞれ攻撃態勢を作った。

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